「最近猫が水を飲む姿を見ていない」「トイレの回数が少なくなった」「水が減っていない気がする」など、愛猫が水を飲まなくなったと感じると心配になりますよね。
そこで、猫が水を飲まなくなる原因や、猫が喜んで水を飲んでくれるようになる方法をご紹介します。
猫はもともと水をあまり飲まない
猫の祖先は砂漠に暮らしていたため、もともと少ない水分を効率的に使えるような体の構造になっています。
そのため、飼い主さんによっては愛猫が水を飲む姿をなかなか見ることができないことも……。
しかし、健康な猫であれば1日に数回は水を飲むはずです。
たまたま飼い主さんの目に止まらなかっただけならいいのですが、もしも明らかにいつもより水飲みボウルの水が減らないなど、水を飲まなくなったようであれば注意が必要です。
猫の1日あたりの水分必要量
猫が1日に必要とする水分量は、だいたい「体重1kgあたり40~50ml」。
飲み水に関しては、ここからフードに含まれる水の量を減らした分が必要になります。特にウェットフードを食べている場合、ウェットフードの8割は水分なのでその分飲む水の量が減ります。
猫が水を飲まなくなった時考えうる原因
猫は水にはかなりこだわる生き物です。もし猫が水を飲まなくなったと感じたら、水を飲む環境が問題なのかもしれません。考えられる主な原因を列挙します。
口内に痛みがある
歯周病や口内炎、その他怪我等で、口の中が痛くて水を飲みたくても飲めないという場合があります。
この場合水だけでなくフードの摂取量も減るので、普段の食事量も観察してみてください。
老化、もしくは水のある場所まで遠い
猫も加齢に伴い体を動かすのがおっくうになります。水の置いてある場所まで移動するのが面倒で水を飲まなくなったというのもよくあるパターンです。
特に寒い冬は高齢猫はもちろん若い猫であっても動きたくない模様。
そのため、口元まで水を運んであげると、今までが嘘のようにごくごく飲んでくれる「上げ膳据え膳」猫も……。
水が古い
猫は新鮮な水を好みます。
水はこまめに、最低でも1日に1回は取り替えましょう。
水の味やにおいが気に入らない
水道水の美味しさは意外と地域によって差があります。引っ越した場合など、同じ水でもこれまでのものと違うことを敏感に察知して飲まなくなることがあります。
また塩素などのにおいを嫌って、くみたての水は飲みたがらないことも。浄水器を使って水の風味を安定させるとよいでしょう。
他にも多頭飼いの場合、猫同士の仲が悪いと、相手のにおいがするのか「こいつの飲んだ水なんか嫌だ」とばかり新しい水にしか口をつけたがらない猫も……。
猫が水を飲まなくなると、泌尿器系の病気にかかりやすくなる
猫が水をあまり飲まなくなってしまうと、重大な病気を引き起こす可能性が高くなります。
そこに水分が足りなくなってしまうと、ただでさえ濃い尿がさらに濃くなり腎臓の負担が増え、結果「腎不全」という病気となってしまうのです。
また、尿が濃くなると「尿路結石」という病気のリスクも高まります。尿が濃くなったために尿の中に含まれるカルシウムやマグネシウムなど一部の成分が凝縮され結石となってしまうと、その結石が強い痛みを引き起こします。
さらにこの結石が尿道を塞いでしまうと「尿道閉塞」となり、尿が出なくなってしまいます。
特にオス猫だとメス猫よりも尿道が細長くできているので詰まりやすく危険です。
このように、猫が水を飲まなくなるという事態はあらゆる泌尿器系の病気をもたらします。
逆に言えば、水を飲ませることでこれらの泌尿器系の病気の多くを予防することができるのです。
猫によって「水を飲むタイミング」は違う
猫が砂漠で暮らしていた時代、当然ながら水はいつでも飲めるものではありませんでした。
そのため飲める水を見つけたらまとめてごくごく一気に飲んで、あとはずっと我慢するという「飲み貯め」が当時の猫にとっては当たり前。
その習性が今でも残り、「水を飲み始めたら一気に5分、10分と水を飲み続け、あとは全く飲まない」というような猫がいます。
その一方で、「フードを食べる前に水を飲み、フードを食べた後でも水を飲み、おもちゃで遊んで暑くなったらまた水を飲みに行く」というようなマメな猫もいます。
こういう猫の場合はかなりこまめに水を飲むので一見たくさん飲んでいるように見えるのですが、一度に飲む量が少ないと結果的に水分不足になってしまったりします。
このように同じ猫でも個体差でそれぞれ「水を飲むタイミング」というものがあり、一度に飲む水の量も全く異なります。
飲んでいるように見えても飲んでいなかったり、飲んでいないようで飲んでいたりするので、「なんとなく水を飲まなくなった気がする」という場合は少なくとも一定期間飲水量を計ってみる必要があります。
猫の飲水量を普段から管理しよう!
猫が適切に水分を摂取しているかを管理するためには、「飲んだ水の量(飲み水)」と「出た水の量(尿)」両方を調べる必要があります。
とはいえ、実際に病気などできっちりと管理する必要に迫られたというのでない限り、普段はざっくりで大丈夫。「うちの子はなんとなくこのくらい」というのを知っておくだけでも充分です。
毎日調べても苦にならない簡単な管理方法をご紹介します。
猫の飲水量の簡単な測り方
水の入った容器をあちこちに置いていて、いちいち計っていられない!という飼い主さんにもおすすめの、簡単に飲水量を計る方法があります。
例:水飲みボウルを5個使っている場合
- 計量カップに1L(きりのいいところ)まで水を入れます。
- 使っている水飲みボウル5個全てに水を適当に分配します。
- いつもどおりに水飲みボウル5個を配置します。
- 時間が経ち水を取り替える際、5個に残った水全てを計量カップの中に戻します。
- 計量カップの目盛りを見て、どれだけ減ったかチェックしてノートなどに記録!
あらかじめ全ての水の量を計量カップで計っておき、それを最後同じ計量カップに戻すことでどれだけ減ったか(飲んだか)がわかるという仕組みです。
この方法だと「こっちの器には200ml入れて、あっちの小さい器には150mlで……」なんて面倒なことを一切せずに済むので楽ちん!
水飲みボウルがいくら増えても対応できます。
自然に蒸発する分などがあるので厳密なチェックはできませんが、毎日記録していれば「このくらいまでは誤差」というのがわかってくるので問題ありません。
トイレをチェックしよう
水を飲まないということはトイレの回数も自然と減ってしまいます。
トイレ掃除の時ついでに、固まる砂のタイプであれば固まった砂の大きさや個数をチェックしましょう。
「いつもより小さい固まりしかない」「いつもは大きい固まりが2つあるのに最近は1つしかない」など普段からよく見ておくことで異変に気がつくことができます。
そこまでするのが面倒な場合は、猫がトイレから出てきた直後にさっとトレイを開けてトレイのシートにどれくらいの大きさの染みが出来ているかを確認するといった方法でも大丈夫。
できればシートを取り替えて最初の尿を確認したら、シートの向きを変えて空いているところに次の尿が落ちるようにすると並べて比較しやすいです。これもシートを取り替えるタイミングなどを使って日常的にチェックしておくとよいでしょう。
猫が水を飲まなくなった時の対策
猫の水の好みは千差万別なので、猫の水を少し変えるだけで、今までちっとも水を飲んでくれなかった猫でもごくごく飲んでくれることがあります。具体的にどう水を変えてあげればいいのか、いろいろな対策をご紹介します。
猫の水を入れる器を変える
水飲みボウルを別の器に変えてみると喜んで水を飲んでくれる場合があります。
例えば「ステンレス製から陶器製へ」といった素材の変更の他、「花瓶、コップ、洗面器、水槽」など猫が好むものを猫専用水飲みボウルとして大胆に活用する方法があります。
またボウルではなく「平ベったい何の高さもないお皿」に水を入れて置いておくと、水を飲むというより舐める感覚が好きで飲む猫もいます。
容器の変更は、お風呂場の水を舐めるなど「飼い主としてはあんまり飲んでほしくない場所の水を飲む」タイプの猫には効果のある方法です。
猫の水の置き場を増やす
猫の動きが鈍くなる寒い冬の季節、あるいは高齢の猫に対して特に効果があるのは猫の水の置き場を増やす方法です。
猫がよく行く場所、寝床の近くなどを中心に、猫の水の置き場を増やすとその分足を運びやすくなり、結果的に猫がよく水を飲んでくれるようになります。
給水器を置く
猫が流し台や洗面台にジャンプして、蛇口の水を飲んで困ったことはありませんか?
蛇口から出る水が好きな猫におすすめなのが自動で水が循環・濾過される給水器。流れる水に興味を惹かれて、「全然水を飲まなかったのに、給水器を置いたらごくごく飲んだ!」という猫はかなり多いようです。
電動ですので多少のお値段はしますが効果はてき面です。
いつもの食事にウェットフードをプラス
ドライフード主体の食事はどうしても水分が不足しがちです。
いつもの食事にウェットフードを混ぜてあげると水分補給の代わりになります。ウェットフードは実はその7~8割が水分。嗜好性が高くカロリーも低めにできているので、いつもの食事のトッピングとして利用できます。
またスープタイプのウェットフードもあるので要チェックです。
水ににおいをつける
水の中にかつおぶしをひとつまみ~ひとつかみ落としてあげてにおい付けすると飲んでくれる場合があります。
かつおぶしは塩分など余計なものが入っていないものを選びましょう。また、全部の水に入れてしまうと猫に選ぶ余地がなくなってしまうので通常の水も用意してあげてください。
あるいは、ささみやかつおなどを少なめの水で煮て、冷ました汁や具を与えると水分ごとよく食べてくれます。手作りウェットフードもどきの感覚です。
またたび水を作ってみる
いつもの水に少しだけまたたびの粉を混ぜてあげる「またたび水」という方法もあります。またたびのにおいにつられて普段水を飲まない猫でも水をよく飲んでくれます。
しかし、またたびそのものに反応を示さない猫、またたびが好きすぎて大暴れする猫、またたびが苦手な猫とかなり個体差があるので気をつけて。
また、何事もあげすぎは禁物です。常用もやめた方がよいでしょう。一時的に水分摂取量を増やしたい時、どうしても水を飲んでほしい時に、ごく少量から試してみるのがいいのではないでしょうか。
市販の猫専用水を購入する
一部のペットショップでは猫にもあげられるペット専用水や、普段の水に混ぜて塩素臭さをなくしたり、栄養分を足して水を美味しくするという製品が販売されています。水の風味を変えることになるので、猫によってはごくごくと飲んでくれます。
ちなみに市販の水として人間用の軟水ミネラルウォーターという選択肢もあります。ただし外国産のミネラルウォーターに多い硬水は尿路結石などの原因となるので与えるのはやめましょう。
浄水器の水を利用する
通常の水道水をそのまま使用すると、塩素のにおい(いわゆるカルキ臭)がしたり、水道管に付着した汚れなどが一緒に入って水の風味を変えてしまうことがあります。
面倒でも浄水器を通すことで、まろやかで美味しい水になりますので猫が喜んで飲んでくれます。
お湯を混ぜる、氷を入れる
猫によってはぬるま湯が好きという場合があります。お湯を混ぜたり、電子レンジなどで温めるなどして人肌程度の温度にした水を与えてみるとよいでしょう。くれぐれも猫が火傷しないように温度には気をつけて。
また、逆に冷たい水が好きな猫には水の中に氷を落としてあげるという手もあります。入れすぎはよくないので、ひとつふたつで様子を見ましょう。
また、このように水の温度を変える場合、普段の水もいつでも飲めるように置いておくのを忘れずに。
スポイトで飲ませる
スポイトに水を含ませ、猫の口に差し込み水を与えるという方法もあります。元気な猫の場合、たれてくる水に興味を持って自分から舐めとることもありますが、嫌がられることも多いので無理強いは禁物です。
泌尿器ケアフードを食べさせる
水をあまり飲まない日が続くと病気が心配です。直接水を飲ませるための対策の他にも、「腎臓に配慮」「泌尿器疾患になりにくいようにサポート」など書かれたフードをあげるようにすると予防効果が見込めます。
フードを食べさせつつ、水を飲ませられるようにあれこれ試行錯誤しましょう。
猫の好みを把握して、上手に猫に水を飲ませよう
基本的に、猫が飲むのは水だけです。
そのせいか、人間のようにお茶やジュース、お酒のような幅広い選択肢がないかわり、猫によって水の好みは相当な違いがあるように思います。
「何故その水が好きなのか」を考えつついろいろ試してみることで、愛猫好みの水を見つけることができるでしょう。