ノミやダニ、回虫に条虫、コクシジウム、トリコモナス、そしてフィラリア……実はこれ、全部寄生虫の名前なのです。野良猫を拾ったことのある飼い主さんや、犬の飼い主さんにはおなじみかもしれません。
しかし、「なんだか聞いたことあるけど、なんだっけ?」とすっかり油断しがちなのが、猫を完全室内飼いしている飼い主さんです。
「室内飼いだから感染なんてするはずがない」と思っていないでしょうか。実は思わぬところから寄生虫はあっさりと感染し、しかも場合によっては猫が突然死することもあるのです。
今からでも遅くありませんので、まだ予防なんてしたこともないという飼い主さんはぜひ、寄生虫対策をしていきましょう。
室内飼いでも油断できない!5匹に1匹が感染する猫の寄生虫
ノミやダニというと、だいたい野良猫ばかりが感染しているイメージですよね。
確かに寄生虫の多くは外にいるので、野良猫の方が感染率は圧倒的に高くなります。野良猫にむやみに触らない、あるいは、もし野良猫を拾ったら真っ先に寄生虫駆除をするというのは、猫を飼っている人たちの間では半ば常識と化しています。
その理由はやはり寄生虫予防に対する意識の差ではないでしょうか。犬は散歩が必要な動物なので、犬の飼い主さんは狂犬病の注射だけでなく、月1回のフィラリア予防など各種の寄生虫対策が欠かせません。
しかし猫の場合は室内飼いで予防そのものをしていないという飼い主さんも多く、結果的に犬より高い感染率を生み出してしまっているのです。
100匹に1匹ならまだしも、5匹に1匹となると、愛猫の寄生虫予防をする価値は十二分に出てくるのではないでしょうか。
対策不可!?室内飼いの感染経路はココ!
では、いくら予防をしていないとはいえ、何故室内飼いのはずの猫が感染してしまうのでしょうか。実は寄生虫の中には、人間がどうすることもできない感染経路を持っているものもたくさんあるのです。
室内飼いであっても特に注意したいケースをご紹介します。
服や靴、荷物についてくる
生きている以上、猫はともかく人間は家から出なくてはなりません。外に出かけた時の服や靴に寄生虫や寄生虫の卵が付着し、家の中に入ってしまうことがあります。
また、注意したいのが通販などで届くダンボールです。配送中にノミやダニが付着したダンボールに猫が喜んで入り、そのまま感染してしまうケースがあります。
ノミやダニなどは小さく発見しづらい上、ダンボールには寄生虫が隠れられる隙間がたくさんあります。単に底を拭いたり消毒スプレーをかけたりしただけでは落ちないので、外から来たダンボールはあまり猫に近づけない方がよいでしょう。
蚊が媒介する
夏になるとブーンと嫌な音を立てて蚊が飛んできますよね。どんなに対策していたとしても、全く蚊の1匹も入らないという家庭はないのではないでしょうか。この蚊が寄生虫、それも猫にとっておそろしいフィラリアを媒介するのです。
フィラリアに感染した動物の血を吸った蚊が、さらに猫の血を吸うことで感染します。家に入った蚊が猫を刺さないとは限りません。
確かに確率は低いかもしれませんが、その確率が低いことが起こってしまった時に取り返しのつかないことになるのがフィラリアです。万一症状が現れた場合、確実な治療法がないので、予防していくことが何より大切なのです。
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動物病院で感染する
前述したように動物病院に来る猫の2割が寄生虫(主にノミ)に感染しています。そして、動物病院に来るのは猫だけではありません。
動物病院に来た犬や猫から落ちた寄生虫が、待合室で愛猫の体に付着してしまうことでも感染することがあります。室内飼いの猫であっても健康診断や予防接種で、少なくとも1年に1回は動物病院に行かざるを得ません。
診療台の上なら獣医さんが清潔にしてくれていますが、待合室の椅子は犬が乗ったり、知らない人が座るのでどうしても確実に寄生虫がいないと言い切ることはできません。あらかじめ予防をしっかりしていくのが唯一の方法です。
室内の暖かい環境でノミやダニが繁殖する
ノミやダニといった寄生虫は、冬の寒い時期には活動を停止します。しかし家の中は別です。家の中は外に比べて圧倒的に暖かく、1年を通してノミやダニの繁殖に大変適しています。
特に猫が生活する空間は、飼い主さんが猫のために暖房や加湿器で快適に調節していることも多いため、寄生虫にとってまさに天国です。
冬場、猫が快適に暮らすためには一般的に「室温22℃、湿度50~60%」が目安とされていますが、この環境は寄生虫の成育環境にがっちりと当てはまります。
わずかなノミやダニが家の中でどんどんと増えていき、猫が感染する確率も上がってしまうのです。
寄生虫の宿ったゴキブリなどを猫が食べる
野良猫ほど必死に獲物を獲ることのない室内飼いの猫であっても、ゴキブリやネズミなどが家の中に入れば仕留めて食べてしまうことがあります。もし獲物の体内に寄生虫あるいは寄生虫の卵があった場合、猫は寄生虫に感染してしまいます。
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また、体についた寄生虫を猫が毛繕いの時に舐めとってしまうことで感染する場合もあります。
寄生虫ってどんな種類があるの?代表的な寄生虫と症状
猫に関係する寄生虫は、大きく分けて2つ、
- 猫の体の表面にくっついて悪影響を及ぼす「外部寄生虫」
- 猫の体内に入り内側から猫を侵していく「内部寄生虫」
とがあります。
それぞれ非常にたくさんの種類がありますので、主に室内飼いの猫によく見られる寄生虫を中心に、症状や発見方法などをご紹介します。
外部寄生虫:ノミ
誰でも知っているであろうノミも立派な寄生虫です。ノミが猫の体につくと、ノミが背中などから猫の血を吸います。その結果、猫は激しいかゆみを感じ、ひどいとかき壊して皮膚炎などになってしまうのです。
ノミは非常に繁殖力が強くしぶといので、知らないうちに家中に広がっている可能性もあります。
体長は2mmほどですので、肉眼でも確認することができます。「ノミ取りぐし」は文字通りノミを取ることができるブラシです。猫がしきりに体を掻いている時は、蚤取りぐしで梳いてみて、虫がつかないか全身を確認してみましょう。
また、万一ノミがついたら潰してはいけません。メスを潰すと卵が飛び散り、かえってノミが増えることがあるからです。また、ノミの体内にさらに他の寄生虫がいて、人に移ることもあります。
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外部寄生虫:ダニ
同じく、ダニも猫を悩ませる寄生虫です。ダニも猫に猛烈なかゆみを引き起こします。しかもダニは非常に小さく、肉眼でほぼ確認できない種類も多くいます。
カーペットの毛の間など家中に潜んでいるので、ダニを少しでも減らすためには毎日の掃除が必要不可欠です。
ダニが好むのは猫の耳の中や顔周りです。顔や首をしきりに掻いている、あるいは耳の中が黒いという場合はダニの可能性があります。
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外部寄生虫:マダニ
ダニの一種ですが、マダニは猫の血を吸って大きく膨れ上がります。数mm~2cmほどになることもあり、もちろん肉眼でも確認できるのが特徴です。マダニは全身につく可能性があります。
大きいのだから簡単に取れるかと思いきや、これがなかなかとれない上に、多数寄生されることもあるのがやっかいなところ。ひどいと貧血など猫に深刻なダメージを与える場合もあります。
マダニは主に草むらに生息するので、外で草むらの近くを通った時など服について運ばれていきます。
このように猫の飼い主さんにとって決して他人事ではない事例もあるので、駆除剤を使い十分に対策しておきましょう。
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内部寄生虫:フィラリア
猫を室内飼いしている飼い主さんにぜひ知っておいてほしいのがフィラリアです。
フィラリアは蚊を媒介して猫に寄生する内部寄生虫です。よく、動物病院で犬向けに「フィラリア予防をしましょう」などと貼り紙がしてあるので、名前だけは知っているという飼い主さんも多いのではないでしょうか。
フィラリア=犬専門というイメージではありますが、実はフィラリアは、犬だけではなく猫にも寄生し被害をもたらすことがあります。
フィラリアは猫の体に入った場合、通常は育ちきることができずに死滅していくので、猫にはなんの影響もありません。しかし万が一成虫になった場合、心臓や肺に侵入し、呼吸困難などの症状を引き起こします。
そして最悪は猫が突然死してしまう原因にもなるのです。
このフィラリアはおそろしいことに、診断が難しく治療法さえ確立していません。その一方で、予防は駆除剤を定期的に使用するだけでよく、とても簡単です。蚊の侵入は阻止できませんから、駆除剤の使用が唯一猫を守る方法となります。
内部寄生虫:回虫
代表的な内部寄生虫の1つが回虫です。ミミズを細くしたような虫が便の中から見つかった場合、回虫の可能性が高くなります。
卵は肉眼では確認できないほど小さく、猫の小腸に入った後血管に乗って全身を巡ります。最終的に再び小腸に辿り着き、そこで小腸が吸収するはずの栄養を奪って成虫となり、やがて卵を産んで増えていきます。
卵や成虫は小腸にいるため、便として排出されることがあるのです。回虫に寄生されていると、食欲不振や嘔吐、下痢などの症状が現れます。寄生されているにも関わらず一度の検査では見つからない場合があるので注意が必要です。
回虫は野良猫の半分以上が感染しているといわれる寄生虫です。野良猫を保護すると、便の中から数十匹もの回虫が出てくることもあります。
室内飼いの場合は、人間の服や靴についた卵を猫が口に入れてしまうのが主な感染経路です。また、母猫のミルクを通して子猫の体内に入るため野良猫でなくとも感染している可能性があります。
▼猫が回虫に住み着かれたときの症状については、こちらもご覧ください
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内部寄生虫:条虫
条虫も主な内部寄生虫の1つです。条虫を宿したノミや動物を、猫が食べたり毛繕い中に舐めてしまったりして、猫の体内に入ることがあります。そのため室内飼いでも注意が必要です。
白く細い紐のような姿をしていますが、紐状の回虫と圧倒的に違うのがその長さです。回虫は成長しても10cm程度ですが、条虫の場合は1m以上になることもあります。
猫の肛門から白いものが飛び出ていたり、猫の生活環境に白い欠片が落ちていることで発見される寄生虫です。寄生されても無症状であることが多いものの、大量に寄生すると体重減少や下痢などを引き起こします。
もし寄生虫がいた時は?正しい対処法
ノミやダニなどの場合は数が多く、飼い主さんだけで全て駆虫するのは大変に困難です。もし寄生虫を見つけてしまった場合は、放置せず速やかに病院に行きましょう。
便などから内部寄生虫が見つかった場合は現物を持っていくと特定が速くなります。
一度虫を発見したら、見た目にわからなかったとしても、また便から虫が出たのが仮に1回だけだったとしても、実は猫の体にまだまだ残っている場合があります。決して素人判断はせず、獣医さんに相談しましょう。
虫は潰さない
ノミやダニを見つけた、あるいは猫の生活環境から回虫の破片が見つかったなど、猫と暮らしている上でもし寄生虫が見つかった場合、つい寄生虫を潰してしまいたくなることがあります。
しかし寄生虫は潰してはいけません。潰すことで飛び散り、再び感染源となることがあります。虫は潰さず、そのまま慎重にビニール袋の中に入れたり、生きているようなら殺虫剤をかけたり洗剤に沈めたりして処理します。
寄生虫を一網打尽!猫に垂らすだけの駆除剤で予防しよう
ノミやダニ、回虫や条虫など、猫の寄生虫には実にさまざまな種類があり、初めて名前を聞く飼い主さんにとっては一体何をどうしたらよいのかわからなくなってしまうかもしれません。
しかし、幸いにも実はノミやダニなどの外部寄生虫から、フィラリアや回虫、条虫といった内部寄生虫まで、主な寄生虫を簡単に一網打尽にする唯一の方法があるのです。
それがフロントラインやブロードラインなどの駆除剤の投与です。特に飼い主さんにおすすめしたいのが、月に1回、猫の首にたらすだけというスポットタイプの駆除剤になります。
首に垂れた駆除剤が猫の全身に広がることで、猫についた寄生虫が死滅します。しかも強力な効果でありながら、子猫や母猫にも使える安全性の高いお薬です。
ノミやダニに寄生された経験のある飼い主さんにとってはうってつけですし、特に経験のない飼い主さんの場合も、治療の非常に難しいフィラリアを予防できるということは大きなメリットになります。
駆除剤は、動物病院で獣医さんに相談すれば入手することができます。
予防のためだけに薬を使い続けるのは心配、という飼い主さんもいるかもしれませんが、蚊が活発な真夏や年に1回の予防接種の時期などだけ投与することもできるので、一度検討してみてはいかがでしょうか。
人から猫へ、猫から人へ。寄生虫は人獣共通感染症
寄生虫のもう1つ怖いところは、寄生虫の中には人にも移るものがあるという点です。
マダニによる感染症で死亡した例、回虫が人間の眼や臓器に入ってしまい、幼虫のまま成長しないにも関わらず重大な障害を引き起こす例など、猫だけでなく猫の飼い主さんの感染例についても様々な報告があります。
猫の寄生虫を予防することは飼い主さんへの感染を予防することにも繋がります。駆除剤1本で簡単に予防できるので、面倒がらずにきちんと対策しておきましょう。
寄生虫の被害を抑えるために、飼い主さんができること
猫に駆除剤を投与する他に、飼い主さんが普段からできる寄生虫対策をご紹介します。
トイレをすぐに掃除しよう
普段から、猫が用を足したらできるだけ早く掃除するようにしましょう。猫の体内に寄生する内部寄生虫の場合、猫の便から寄生虫が確認されることがあります。
このとき寄生虫の含まれる便を放っておくと、やがて便に含まれる卵が孵化し、新たな感染源となります。飼い主さんが寄生虫に気づいている場合はもちろんですが、気づいていない時に便を放置して感染源となってしまうと大変です。
日頃から早く処理する癖をつけておくことで、再寄生を防ぐことができます。
▼猫が便をしたら飼い主さんがすぐに取り除いてあげることで、寄生虫を増やさないように予防できます
猫のうんちに虫がいる!しつこい寄生虫の感染経路と対処法
服の管理をしっかりしよう
室内外の猫の場合、感染経路として多いのはやはり、人間の服などについて外から持ち込まれるパターンです。
- 外から帰ったら服を着替える
- 一度着た服は洗濯する
- 草むらや茂み、汚れのひどい場所をできるだけ通らない
- 野良猫と接触しない
というようなことを普段から心がけることで、寄生虫のリスクを大きく抑えることができるでしょう。
家中を丁寧に掃除しよう
駆除剤を使うことで、猫に寄生している虫は駆除することができます。しかし、家の中に虫がたくさんいたら再び寄生されてしまい意味がありません。
猫に寄生される確率を少しでも下げるためには、日頃から家中の掃除をしっかりとしておくことが重要です。特にノミはしつこく、またダニもどこにでもいる上、掃除が不十分だとあっという間に増えることがあります。
寝具や床だけでなく、カーテンやソファなども重点的に掃除しましょう。また、猫が普段よく使うベッドや、よく入っているダンボールなども、定期的に洗濯したり取り換えたり、素材によっては煮沸消毒して清潔を保ちましょう。
室内飼いだからと油断せず、正しい知識を持って寄生虫から猫を守ろう!
猫の寄生虫には、無防備な室内飼いの猫こそ気をつけていく必要があります。
特に子猫や高齢猫など、寄生されていることに気づかずにいるうちにお腹の中でどんどん増えて深刻な症状が出ることもあるので、普段から猫の様子に異変がないか、また便が正常かなどよく観察しましょう。
一度寄生虫に寄生されてしまうと、二度目から過剰に反応してしまったり、検査や治療に時間がかかったりと大変です。
その一方で、予防は駆除剤を使えば簡単に行うことができます。薬を使うことが心配なら、まず獣医さんに相談してみるのもおすすめです。いざという時慌てないためにも、一通りの知識を持って猫と暮らしていくのが安心ですね。