ツシマヤマネコは長崎県の対馬だけに存在するヤマネコです。東南アジアを中心に生息するベンガルヤマネコの亜種と言われる、ツシマヤマネコは様々な要因ににより生息数が減少しています。
絶滅の危機に瀕しているツシマヤマネコを救いたい。そんな思いからツシマヤマネコを飼育下で繁殖させ、将来対馬に野生復帰をさせるプロジェクトが全国の動物園や保護センターにて行われています。
今回はそんなツシマヤマネコの保護繁殖事業に参加している、京都市動物園にてツシマヤマネコを実際に見てきました!
ツシマヤマネコとは
ツシマヤマネコは長崎県の対馬に生息している野生の猫です。かつては対馬に多く存在していて、当時はツシマヤマネコを専門に捕る猟師も存在していました。
しかし、時代が進むにつれツシマヤマネコは急速にその数を減らしていき、現在では70頭~100頭程度しか生息していないと考えられています。
ツシマヤマネコの特徴
ツシマヤマネコの体長は50~60cm、体重は3~5Kg程とヤマネコとついているわりにはイエネコと同じくらい、あるいは一回りくらい大きいです。
パッと見はイエネコとそんなに変わらないような気もしますが、よくよく見ると尻尾がイエネコよりも太くて長いです。また、耳の先は丸く裏に白い斑点があるのも特徴的です。
胴長で短足、イエネコではあまり見られないようなトラ柄に、淡い黄色の斑点が背中にあります。
ツシマヤマネコの性格
ツシマヤマネコは野性の猫のため、非常に警戒心が強い性格の持ち主です。普段は山の中で生活をしているが、時には餌を求めて集落の近くや田畑にやってくることもあります。
しかし、私たちの知っているイエネコのように人間から餌をもらったり、民家を出入りするようなことはなく、あくまでも人気のない時間を狙って麓に降りてきます。
用心深く警戒心が強いため、人間の前に姿を見せることはあまりなく、仮に人間と出会ってしまってもイエネコのようにすり寄ることはなく、一目散に逃げてしまうようです。
▼ヤマネコとイエネコの違いについてはこちらもご覧ください
イエネコの歴史とルーツ。ヤマネコとの違いや先祖の遺伝子のお話
ツシマヤマネコの生息数が減っている理由
かつてはツシマヤマネコ専門の猟師がいたほど生息していたツシマヤマネコ。しかし、現在ではわずか100頭程しか生息していません。いったいこれほど生息数を減らした理由とは何でしょうか?
その大きな原因は、生活環境の悪化です。都市開発によって行われる森林伐採により、餌となる小動物が激減するのに伴いツシマヤマネコも徐々に個体数を減らしていきました。
さらに、交通事故による死傷、野良猫による感染症の拡大も大きな原因となっています。
それらの原因から個体数はどんどん減少していき、対馬全体に生息していたツシマヤマネコは現在では北半分にのみ生息するようになりました。
そして、1971年に国の天然記念物に指定され、さらに20年後の1994年に国内希少野生動物種に登録されることになったのです。
NPO法人ツシマヤマネコを守る会の活動
減少の一途をたどるツシマヤマネコを保護し、何とか数を増やすことを目標に活動する団体があります。それがNPO法人ツシマヤマネコを守る会です。1993年に十数名で結成されたこの団体は、会員数を増やしていき現在では約350人にまでなりました。
ツシマヤマネコを守るための活動は多岐にわたり、ツシマヤマネコの生息調査と保護区の確保、ツシマヤマネコの餌となる小動物や野鳥の繁殖を行っています。
これらの地道な活動により、ツシマヤマネコの個体数もわずかずつ増えてきてはいます。
しかし、ツシマヤマネコが絶滅の危機に瀕していることに変わりはなく予断を許さない状態が続いているのが現実なのです。
ツシマヤマネコの保護繁殖活動
野生のツシマヤマネコを保護するだけではなく、飼育下で繁殖させる活動も全国で行われています。保護繁殖活動の最終目標は、対馬に野生復帰をさせることです。
この活動は1992年に福岡市動物園で始まり、2000年に繁殖が成功してからは順調に個体数を増やすことに成功しています。
ツシマヤマネコの保護繁殖活動を行っている施設
ツシマヤマネコを繁殖させるため、全国各地の施設や動物園が協力をしています。現在、ツシマヤマネコの飼育を行っている施設と動物園はこれだけあります。
- 対馬野生動物保護センター(長崎県)
- 西海国立園九十九島動物園(長崎県)
- 福岡市動物園(福岡県)
- 井の頭自然文化園(東京都)
- よこはま動物園ズーラシア(千葉県)
- 富山市ファミリーパーク(富山県)
- 東山動物園(愛知県)
- 盛岡市動物公園(岩手県)
- 沖縄こどもの国(沖縄県)
- 京都市動物園(京都府)
これらの保護施設には2018年現在で計30頭のツシマヤマネコが飼育されている。繁殖活動は順調なため、これからさらにその個体数は伸びていくはずです。
▼現在絶滅危惧種に指定されているヤマネコについてはこちらをご覧ください
絶滅危惧種に登録されている10の猫の種類。絶やすのも救うのも人間
実際に見られる!京都市動物園のツシマヤマネコはシャイだった
野生のツシマヤマネコはわずか100頭ほどしか生息していないため、地元の人でも見かけることは少ないそうです。
そんな貴重なツシマヤマネコを一目でも見たいと思っている方、実は前述したツシマヤマネコを繁殖している施設で公開展示されています。
ただ、繁殖のため複数飼育している施設や動物園でも、全頭数を公開しているわけではないので、施設や動物園で1匹だけした見られない場合もあります。それでも、貴重なツシマヤマネコをこの目で見られるというならぜひ見てみたいですよね。
そこで筆者自ら京都市動物園にツシマヤマネコを見に行きました!
ツシマヤマネコを実際に見られる貴重な施設、京都市動物園は平成27年にリニューアルオープンされたばかりなのでとても綺麗です。
ちなみに、京都出身の筆者は昔から遠足だったり、高校の生物の実習で訪れたりしていましたのでとても親しみのある動物園です。そんな京都市動物園の中に入ると・・・
ツシマヤマネコについて書かれたリーフレットを発見。中にはツシマヤマネコの豆知識や飼育過程などが詳しく載っていました。気になる方は、実際に京都市動物園を訪れた際にゲットしてください。
そんなこんなで、ツシマヤマネコとの初対面にドキドキしながら園内へ。ツシマヤマネコの展示スペースは入口すぐの場所です。
お名前はミヤコちゃん。ツシマヤマネコの保護繁殖活動を精力的に行っている福岡市動物園で生まれたそうです。なんと今までに合計10頭もの子供の出産経験を持つママ!いったいどんな姿なのでしょう?
ドキドキしながら展示スペースを見てみると・・・あれ?何もいない。と、思っていたらいました。よくよく目を凝らすと小屋の中で丸くなるツシマヤマネコのミヤコちゃんの姿が!
でも、ミヤコちゃんはシャイなようで名前を呼んでもこちらに背を向けたままピクリとも動いてくれませんでした。
ツシマヤマネコは警戒心の強い動物ですから、仕方がないと言えばそれまでですけど非常に残念でした。
ちなみに、展示スペースの横にミヤコの家系図なるものを発見しました。
こうしてみると、全国で飼育されているツシマヤマネコのほとんどがミヤコちゃんの子供なんですね。ミヤコちゃんはすごいです!
あと京都市動物園のツシマヤマネコはこんなに可愛い子猫も飼育されているようです。
(出典:ツシマヤマネコの子ネコの展示について | 京都市動物園)
こちらは、背中ばかり向けていたミヤコちゃんの画像です。健康診断をされて大変ご立腹のようです。
(出典:ツシマヤマネコのミヤコ | 京都市動物園)
こちらは繁殖棟にいるツシマヤマネコ達。正面から見るとイエネコとあまり変わりませんね。
(出典:ツシマヤマネコ繁殖棟だより | 京都市動物園)
写真で見る限りではなついてそうに見えますが、実際はお世話を毎日している飼育員さんにも全く馴れていないそうです。やはりこんなに可愛い顔をしていても、野生の猫だということですね。
(出典:ツシマヤマネコ繁殖棟だより | 京都市動物園)
私はツシマヤマネコの背中しか見られませんでしたが、運が良ければミヤコちゃんの歩いている姿を見られるかもしれません。
京都市動物園に、ぜひ直接ツシマヤマネコを見に訪れてみてはいかがでしょうか?
▼ツシマヤマネコはとても長い歴史を持っている貴重な存在であることが分かります
日本の猫の歴史。石器時代からイエネコ文化が根付いた平安時代まで
ツシマヤマネコの未来に幸あらんことを
ツシマヤマネコを救おうと様々な活動が各地で行われている反面、生息地である森林が着々と伐採され住みかを失っているという現実もあります。
ツシマヤマネコの命を奪うのも人間ですが、ツシマヤマネコを救うのも人間です。願うことならば、ツシマヤマネコの個体数が増えて再び対馬で伸び伸びと生活のできる日々が訪れればいいですね。