天疱瘡の猫とのつき合い方&ステロイドをうまく使う3つのポイント

猫も天疱瘡になることがあります。人では難病に指定されている皮膚炎ですが、猫の病気は難病指定という枠組みは今のところありません。

天疱瘡は、あまり馴染みがない病気ではないでしょうか。ただ、「自己免疫性の皮膚炎」と置き換えてみると、理解しやすくなると思います。

その治療にはステロイドが多く使われています。少し怖いイメージがあるステロイドですが、治療効果を得るためには正しく使うことが必要です。

元動物看護師の筆者が、猫の天疱瘡とそのステロイドの活用ポイントを説明していきます。

天疱瘡とは自己免疫性の皮膚炎

生物の体はよくできていて、外から悪いものが入ってきたとき、それを攻撃してくれる免疫というものがあります。外からの悪いものを抗原といい、攻撃してくれる方を抗体といいます。

ただ、なんらかの原因でその免疫がうまく働かなくなり、本来悪さをしない自身の体にあるものを抗原とみなして、抗体が攻撃してしまうことがあります。そのために病気になってしまった場合、総称して、自己免疫性疾患といわれます。

それが皮膚炎として現われると、自己免疫性皮膚炎と呼ばれます。天疱瘡は細胞と細胞を結び付けている部位が攻撃対象となります。そうなると、細胞同士の結びつきが弱くなってしまい、さまざまな症状が引き起こされます。

また、犬より猫のほうが発症は少ないため、詳細を解明することが難しいという実情があるようです。

猫の天疱瘡ってどんな症状が出るの?

天疱瘡の症状をみていく前に、専門的な用語を覚えてみましょう。というのも、皮膚炎の症状は専門用語で語られることが多く、少し小難しい感じがします。簡単に表にまとめてみました。

用語 読み方 意味
落屑 らくせつ 皮膚が乾燥し角質が落ちること
水疱 すいほう 水ぶくれ
膿疱 のうほう 水ぶくれが膿んで膿のたまったもの
潰瘍 かいよう 皮膚や粘膜の組織が深くまで欠損していること
痂皮 かひ かさぶた
鱗屑 りんせつ ふけ、落屑によって落ちたもの
びらん びらん ただれてしまうこと、その状態
紅斑 こうはん 皮膚が赤くなること

天疱瘡は攻撃対象や発症部分によって、大きく3つに分類されます。それぞれについて詳しくみていきましょう。あえて専門用語を使ってみましたが、診断は獣医師の仕事ですので、きちんと覚えなくてもいいと思いますが、おかしいな、と思ったら参考にしてみてください。

尋常性天疱瘡

  部位:爪、食道、肛門、口の中、鼠径部(足のつけ根のライン)、わきの下
  症状:腫瘤、びらん、潰瘍
  攻撃対象:粘膜や皮膚の上層部

落葉性天疱瘡

  部位:皮膚、特に目・鼻の周り、耳、肉球、爪
  症状:膿疱、破裂すると黄色や褐色の痂皮になる
  攻撃対象:皮膚の角質化細胞

紅斑性天疱瘡

  部位:主に頭部
  症状:膿疱、破裂すると脱毛、びらん、痂皮、鱗屑
  備考:落葉性が頭部から顔面に現れた場合をさす

治療に使われるステロイドを有効的に使う3つのポイント

治療には、その症状に応じた薬を使うことになりますが、天疱瘡の治療によく使われるのはステロイドです。ステロイドと聞くと怖いイメージをもたれる方もいらっしゃるかもしれませんが、人間より犬や猫はステロイドに強いと言われています。

もう少し詳しくステロイドについて説明します。

ステロイドとは体の中で作られるホルモンです

ステロイドは副腎皮質ホルモンのことで、体で作られているものです。その作用を強めるために、薬として外から体の中に取り入れることがあります。そうすると、体の中では「外から入ってきているから、中では作らなくてもいいんだ」と思ってしまいます。

ですので、体の中でバランスが崩れてしまわないように、獣医師から言われた処方の仕方をきちんと守らないといけません。

ステロイドを有効的に使う3つのポイント

  • 薬を飲ませる日
  • 薬量
  • 終了する日

これらのことをしっかり守らないと、せっかくの治療もうまくいかなかったり、他に弊害が出ることもあります。特に錠剤の場合は、飲ませる量が症状によって変わってきますので、指示通りに飲ませてください。

よく行われる手順は、飲ませる日から少しずつ薬量を増やしていき、症状がよくなっても、そこでスパッと終了するのではなく、徐々に薬量を減らしていって終了する、というやり方です。途中で指示通りに飲ませられなかった場合は、必ず獣医師に報告しましょう。

注射でステロイドを打つ場合は、打ったあとの症状がどうなったか見極める必要があります。注射を打ったからもう安心、というのではなく、しっかり効果があったのか観察することを忘れないようにしましょう。

ちなみに、人間の場合は塗り薬がよく使われますが、猫の場合は塗り薬はほとんど使われません。猫好きな方には、その理由がすぐお分かりになるかと思います。猫はグルーミングする習性がありますので、皮膚に塗ってもすぐなめ取ってしまうからです。

ですので、必然的に錠剤や注射での治療になります。

猫が天疱瘡になったときの自宅でのケア

皮膚炎にはさまざまな種類がありますので、検査にも時間がかかる場合があります。そして、天疱瘡だと確定診断された場合は、どのようなケアが必要になってくるのでしょうか。次の4点に分けて考えてみましょう。

  • 基本的にはうつらない
  • 指示通りの治療を
  • 遺伝、紫外線に注意
  • 気長につき合うつもりで

基本的にはうつらない

天疱瘡は自己免疫性の皮膚炎ですので、他の猫や人間にはうつりません。ただ、症状がひどくなり、さらに細菌感染など他の病気を引き起こす可能性もあります。その場合は、注意が必要になります。

指示通りの治療を

薬のコマーシャルでは必ず「用法容量を守って正しくご使用ください」と言っていますよね。もちろん、猫用の薬も同じです。ステロイドは、先ほど説明した理由から、特にきちんと飲ませることが重要になってきます。

遺伝、紫外線

原因がよく分かっていない天疱瘡ですが、遺伝や紫外線の影響があるという説もあります。一度天疱瘡になってしまった猫は、長時間の外出や日光浴はなるべく避けるのがよさそうです。遺伝については、繁殖させるときに注意が必要になります。

気長につき合うつもりで

皮膚炎は、ケガなどの外傷よりも治りにくい場合があります。次の項目で詳しく説明します。

天疱瘡は長期戦になることも。気長につき合う心持ちで

皮膚炎はすぐにスッキリ治るというより徐々に時間をかけて治っていったり、一旦良くなったかと思えば、またぶり返すこともあります。少し私の経験をお話します。

私も飼っている犬が膿皮症という皮膚炎にかかり苦労した覚えがあります。膿皮症は簡単に言うと、にきびみたいなもので、毛穴に細菌がつくことで起こります。抗生剤やひどいときはステロイド、家ではシャンプーなどでケアをしましたが、できやすい体質なのか、なかなかきれいには治りませんでした。

ベテラン獣医師のお見立てで、「これはスッキリ治すというより、ひどくならないようにマメに薬用シャンプーでケアしていった方がいいよ。長くつき合っていきましょう。」と言われ、少し気持ちが楽になった経験があります。

自分の体を間違って攻撃してしまう、自己免疫性疾患は、その原因が分かっていないこともあり、やっかいな病気といえます。きれいな皮膚ではない猫の姿を見るのはつらいですが、猫は自分が病気だという概念がありません。

飼い主さんが気負ってしまうことなく、普段通りに接してあげましょう。ツンデレな性格の猫もいますが、甘えたいときに甘えさせ、遊びたいときに遊んであげるように心がけましょう。急に飼い主さんの態度が変わってしまうと、猫も暗い気分になってしまいますよ。

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