猫の角膜炎の症状と原因。目薬のコツと日頃のケアも解説します

猫の目は人間と違って、丸くて少し飛び出しています。横から見ると、透明な部分がとてもきれいで吸い込まれていきそうです。また、明るい場所と暗い場所では瞳孔の大きさが違います。ですので、表情も変わった感じになり、そこも魅力の1つです。

そんな素敵な目が病気になると、とても心配になりますよね。

ここでは、元動物看護師が角膜炎について解説していきます。特に目薬のさし方のコツを覚えておくと役に立つでしょう。自分の猫ちゃんは自分でケアしたいですよね。

こんなときは要注意!猫の角膜炎に早く気づくための4つのポイント

角膜炎とはその名のとおり、角膜の炎症です。さて、角膜はどこでしょう?と聞かれてすぐに答えられるでしょうか。角膜とは、簡単に言うと黒目をおおっている透明な膜です。コンタクトレンズが接触しているところと言い換えると分かりやすいかもしれません。

角膜の場所が分かったところで、次は気をつけるべきポイントです。

  • 目をしばしばさせている
  • 片目をつぶったまま
  • 目やにが多い
  • しきりに気にしている

このような状態が続くようでしたら、そっと目をのぞいてみましょう。

  • 角膜が白く濁っている
  • 角膜にキズがついている

このような場合は要注意です。動物病院で診察してもらいましょう。

では、こちらの画像の猫はどうでしょうか。

角膜炎の猫の目の写真1

気がつくでしょうか。左眼が白くなっているのに気づきましたか。

左眼を横から見たときの画像です。

角膜炎の猫の目の写真2

白くにごっているように見えますが、これは角膜の傷です。

実はこの画像の猫は私が飼っている猫です。子猫のときに保護したのですが、その当時から角膜に傷がついていました。おそらく、保護する前に感染症にかかり、その影響で傷がついたのでしょう。

幸い、視力には問題なくちゃんと目は見えていますし、ひどい炎症にはなっていないので、私の場合は、そのままにして積極的な治療はしないでいます。ただ、外科的に治療することもできるはずですので、その選択は飼い主さん次第ということになるでしょう。

猫の角膜炎の主な原因は3つ

先ほど、私の猫の例をあげましたが、角膜炎の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 異物が入る、ケンカなどによる刺激
  • ウイルス、細菌、アレルギーなどの感染によるもの
  • 他の病気からの影響

この中でも、特に多いのが感染症によるものです。猫カゼと言われている、猫ウイルス性鼻気管炎という病気は、猫ヘルペスウイルスⅠ型というウイルスが感染することによって発症します。

この感染症の特徴的な症状として、角膜炎や結膜炎があるのです。抵抗力が無い子猫に発症することが多いのですが、ワクチンで予防できます。

眼科専門の獣医師による確定診断も有効です

ひとくちで角膜炎といっても、その症状によってざまざまな種類に分かれます。角膜より下の部分(中の部分)の組織の欠損(潰瘍:かいよう)があるかどうかで分かれます。そしてさらに分類されます。

  • 非潰瘍性角膜炎 → 実質性、分離性、好酸球性
  • 潰瘍性角膜炎 → 表層性、深層性

このような確定診断をするのは獣医師の仕事ですので、覚える必要はないとは思います。それより、飼い主さんが一番気になっていることは、次のことかと思います。

  • 治療すると治るのか
  • 失明の危険があるのか
  • 自然治癒するのか

これらのことをきちんと理解することで今後のケアが決まってきますので、セカンドオピニオンとして、眼科専門の獣医師に診断してもらうことも1つの手です。

少し専門的な話~血管新生ができているか注意しましょう

角膜には血管がありませんが、傷がつくと治そうとして新しい血管が出てくることがあります。それ自体は問題ないのですが、治った後もそのまま残ってしまうので、血管ができないように治療する必要があります。

時間がたつと新たな血管で組織が結合されたものが白く残ってしまいます。もしかすると、私の猫もそのために角膜の傷が白く残ってしまったのかもしれません。何事も、早期発見早期治療ですね。

治療の第一歩は目薬から!さし方のコツを覚えましょう

治療には点眼薬が使われます。液体と軟膏の目薬があります。どちらも同じような扱い方になりますので、ぜひコツを覚えて猫にストレスが無いように治療したいものです。目薬をさすときの順番でコツをまとめてみました。

1. 後ろから

正面からせまっていくと猫はびっくりしてしまいます。後ろからさしましょう。猫が足をバタバタさせるようでしたら、テーブルのような少し高いところに乗せたり、自分のひざで猫の後ろ足を軽くはさむように押さえます。

タオルを使って体を包んでもよいでしょう。くれぐれもタオルが嫌いにならない程度にしてあげてください。

2. 目じりから

液体の場合は1滴、軟膏の場合は数ミリで十分です。目の真ん中に落とさなくても、目じりから落とせばいいのです。その方が猫も驚かないでしょう。

3. 気づかれないように

普段と違う飼い主さんの態度に猫は敏感です。あまり気負わず、リラックスして遊んでいるあいだにできたら理想的です。

4. すばやく

必ずさす前に目薬の蓋は開けておきます。少しでも時間をかけないようにするためです。何度もトライしたりやり直したりを続けていると猫にもストレスを与えてしまいます。

できなかった場合はしばらく時間をおいてから再度やってみましょう。一瞬でできるようになると、猫にもストレスを与えずにすみます。

5. できたらご褒美

目薬イコール嫌なこと、と覚えてしまってはよくありません。しつけや芸を覚えさせる要領で、ご褒美も大事になってきます。ご褒美はおやつとは限りません。遊びが好きな猫、なでられるのが好きな猫など、好みに合わせてご褒美を与えてください。

その他の注意点

目薬は小さい入れ物に入っています。くれぐれも猫にいたずらをされないように、保管場所には注意しましょう。また、冷蔵で保管するタイプもありますので、獣医師の指示に従ってください。

手術をすることになったら~術後のケアに注意しましょう

外科的治療、つまり手術することになった場合は、手術そのものより術後のケアが大変になってきます。どんな病気でもそうですが、猫は「角膜炎で手術をしたので、安静にしていないといけない」なんて全く理解していません。

術後は、グルーミングで目の周りを毛づくろいするのはNGです。おそらくエリザベスカラーをしないといけなくなるでしょう。いやおうにもストレスがかかることですので、そのことも踏まえたうえで手術の選択を決めることになります。

角膜炎を予防する5つの方法を試して日頃からのケアを

日頃からケアをすることで、猫の美しい目を少しでも守れるようにしたいものです。

  • ワクチン接種
  • なりやすいタイプかを知る
  • ブラッシング
  • ヒゲを切らない
  • 目の周りをマッサージ

ワクチン接種をする

先ほど説明したように、感染症によって角膜炎になることがあります。猫の一番ベーシックな3種混合ワクチンでヘルペスウイルスⅠ型の感染症を防ぐことができます。

なりやすいタイプかを知る

短頭種、つまり鼻ぺちゃタイプの猫は、角膜感度が悪いというデータがあります。角膜感度とは、角膜への刺激でまぶたを自然に閉じる反射のことです。

つまり、ペルシャ、エキゾチック・ショートヘア、スコティッシュ・フォールドなどの短頭種は外部からの異物に対して、目を閉じるのが鈍いといえます。さらに解剖学的にも目が飛び出しているようなつくりをしています。

ですので、飼っている猫がこのタイプでしたら、より注意しなくてはなりません。

ブラッシング

ブラッシングすることで抜け毛を減らし、目に異物が入らないようにすることができます。

ヒゲを切らない

ヒゲにはたくさんの役割がありますが、周りの環境をチェックするセンサーになっています。よく見ると目の上にも長いヒゲがあります。切ってしまうと感度が悪くなり、異物が目に入ってきたとき、すばやく目を閉じることができなくなってしまいます。

目の周りをマッサージ

マッサージすることで、毛が抜けにくくなります。マッサージはこりをほぐしたり、リラックスの効果がありますが、体の異常を見つけるきっかけにもなります。ぜひ取り入れましょう。

目の異常に気づいてあげるのは猫本人よりも飼い主さんです

人間は目から得る情報が大半を占めますが、猫は視覚よりも聴覚がすぐれています。ですので、目に問題があっても、本人はそれほど生活に困る様子をみせません。

角膜炎は、傷がついたり潰瘍ができたりするので、目の病気のなかでも、比較的異常に気づくのが早いはずです。気づいたらすぐ動物病院で診察を受けましょう。猫の美しい目を守ってあげるのは飼い主さんの務めです。

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