トイプードルのようにくるんとカールした被毛が特徴のセルカークレックス。
その愛らしい見た目と人懐っこい性格で、世界中の猫好きからの注目を集めています。
「羊の服を着た猫」とよばれることもあるセルカークレックスは、日本ではまだめずらしくとても人気のある猫ちゃんです。
今回はセルカークレックスが誕生したルーツや身体の特徴、性格についてご紹介します。
この記事の目次
偶然から生まれたセルカークレックスという種類
セルカークレックスは英語で「Selkirk Rex」と表記されます。
この「Rex」とは遺伝子をあらわす専門用語です。例外もありますが、巻き毛の特徴を持っている猫は「~レックス」とよばれることがあります。
被毛のカールした猫は世界中でとても人気があり、セルカークレックスも3大レックスとよばれる猫の一種です。
3大レックスはセルカークレックスのほかに、コーニッシュレックスとデボンレックスがふくまれます。
ではセルカークレックスのルーツをたどっていきましょう。
セルカークレックスは1987年にアメリカのモンタナ州で発見された猫です。
なんと、セルカークレックスが発見された場所は動物保護施設。一歩間違えれば見つかることがなかったかもしれない、奇跡のような猫種なのです。
セルカークレックスの名前の由来は、動物保護施設の近くにあったセルカーク山脈からとられているそうです。
動物保護施設で見つけられたセルカークレックスは、ブルークリームとホワイトの巻き毛とくるんとカールしたひげが特徴の猫でした。
発見後はジェリ・ニューマンというペルシャのブリーダーに引き渡され、「Miss De Pest」という名前がつけられました。この名前はアメリカのドラマに出てくる巻き毛のキャラクターにちなんでいるそうです。
ペストが拾われた周辺の地域には巻き毛の猫が見られることがなく、ペストの兄弟もみんな直毛だったので、突然変異でうまれた猫かもしれないと考えられました。
ジェリ・ニューマンがペルシャとペストを交配させたところ、6匹誕生した子猫のうちペストと同じように被毛が巻き毛の3匹の子猫が生まれました。
この交配によって、ペストの特徴である巻き毛は遺伝的なものであることが確認されたのです。
ジェリ・ニューマンは養父から、猫種のなかで特別な存在にするためにも、人のような名前を付けたほうがいいのではないかとアドバイスされ、セルカークレックスと命名したともいわれています。
熱心なブリーダーたちによって、ペルシャ以外にも
- エキゾチックショートヘア
- アメリカンショートヘア
- ブリティッシュショートヘア
との交配がすすめられ、今のセルカークレックスになりました。
実は、セルカークレックスが猫種として認定されたのは平成に入ってからのことなのです。
1990年にTICA(The International Cat Association)という血統登録機関によって新品種登録の経過観察がはじまり、1992年にTICAで、1998年にはCFA(THE CAT FANCIERS’ ASSOCIATION, INC)という大きな団体でも、新しい猫種としてセルカークレックスが認定登録されました。
まだまだ歴史の浅いセルカークレックスですが、世界中の猫ファンから愛されている猫ちゃんです。
セルカークレックスの身体の特徴。低い鼻と丸い顔がたまらない!
セルカークレックスといえば、やはり最大の特徴は天然パーマのようなかわいらしい巻き毛ですよね。
毛のカールには個体差があるので両親に巻き毛の遺伝子がない場合、直毛の子が産まれることもあります。
直毛の猫ちゃんはセルティックとよばれますが、猫種としては巻き毛の子と同じセルカークレックスです。
毛色は
- レッド
- ホワイト
- ブルー
- チョコレート
- ラベンダー
- クリーム
など、さまざまなバリエーションが確認されています。
そのやわらかい被毛の下には、引き締まった筋肉が隠れています。
身体全体ががっちりと大きく、骨太のわりにはしなやかな細さの足元が特徴的です。尻尾は長すぎず短すぎず、バランスのとれた形になっています。
猫はその種類ごとの体型によってタイプがわかれることをご存知ですか?
大きくわけて
- コビー
- セミコビー
- フォーリン
- セミフォーリン
- オリエンタル
- ロングアンドサブスタンシャル
の6体格に分けられるのですが、セルカークレックスの体型は次の4種と同じセミコビータイプです。
- アメリカンショートヘア
- マンチカン
- スコティッシュフォールド
- シンガプーラ
顔立ちは、ペルシャと交配した影響から鼻に特徴があります。
低くてかわいらしい鼻に丸い頭など、愛嬌のあるルックスも愛されている理由の一つです。
セルカークレックスのオスの体重は4.8~6.5kg、メスは2.9~4.5kgとされていますが、個体によって体重にもちがいがあります。
猫の適正体重は1歳ごろだといわれているので、そのころの体重を記録しておくことで増減をチェックし、太りすぎを防ぎましょう。
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穏やかで優しいセルカークレックス。我慢強さに注意してあげて
歩くテディベアのような見た目通り、人懐こく甘えん坊なセルカークレックス。
子猫のころは元気いっぱいですが、だんだんと穏やかで優しい性格になっていきます。
社交性もあるのでほかの動物と暮らすことにストレスを感じにくいといわれ、多頭飼いや家族の多い家庭にも向いています。
セルカークレックスは、いつでも飼い主さんと一緒にいたい性格です。
自分からひざにのってくれたり、飼い主さんのあとをついて回るなど、甘えん坊なところがとてもかわいらしいですよね。
しかし、飼い主さんが大好きな性格であるがゆえに、長時間かまってあげないと寂しさからストレスを感じてしまうことも。毎日留守をしがちな家庭には向いていないかもしれません。
1日に1回はおもちゃで遊んであげるなど、コミュニケーションをとることが大切です。
飼い主さんがいなくて遊べないときも気がまぎれるように、一人で遊べるおもちゃやキャットタワーを用意してあげましょう。
また、セルカークレックスには我慢強い一面もあり、子どものしっぽを引っ張るようなイタズラに黙って耐えてしまうことも。
セルカークレックスだけではなくすべての猫ちゃんにいえることですが、子どもの乱暴なスキンシップは猫にとって大きなストレスです。
おとなしい性格の猫種は、「子どもが平気な猫」として紹介されることもありますが、加減のわからないスキンシップで猫が怪我をしてしまったり、人間が嫌いになってしまうことも。
子どもと猫を接触させるときは、必ず大人の目が届くところでさわらせましょう。
▼子どもが日頃からどんな風に猫とスキンシップを取っているかを知っておくことも大事ですね
猫と子供が暮らすメリット。猫にストレスを与えないための対策も大事
セルカークレックスと暮らすときに注意するべきこと
セルカークレックスの平均寿命は13~15歳だといわれています。
一般的な猫の平均寿命とあまりかわりませんが、これはあくまでも平均の寿命です。
バランスの整った食事やストレスなく暮らすことが、愛猫の長生きにつながります。
しかし、いくら大切に育てても、猫種によってかかりやすい疾患や遺伝的な病気は存在します。
万が一かかってしまっても、早期発見できるよう知識を増やしておきましょう。
かわいい巻き毛が病気につながることも
セルカークレックスの特徴のひとつでもあるカールした被毛。
巻き毛はもつれやすいので、1日に1回以上のブラッシングが必要不可欠です。
ブラッシングをしないと皮膚に汚れが溜まったり、からまってしまった毛が皮膚病の原因となることもあるので注意してください。
ブラッシングは皮膚を清潔に保つだけでなく、血行の促進にも効果があります。
皮膚を刺激することによって血の流れが良くなり、毛に栄養がいきわたりやすくなるだけでなく、抜け毛予防にもなるので定期的に行いましょう。
猫ちゃんのなかには、ブラッシング大好き!とうっとり身を任せてくれる子もいますが、もちろん身体をさわられることが嫌いな猫ちゃんもいます。
怖がったり、嫌がるようならすぐにやめて、無理やり続けないようにしてください。
ブラッシングが苦手な猫ちゃんは、寝起きなどぼ~っとしているときを狙って素早く行いましょう。1日に4~5分でも大丈夫です。
▼ブラッシングのコツをしっかり押さえて、快適で気持ちいいふれあいタイムにしましょう
猫のブラッシングは必須!なでる向きや順番、頻度など正しい方法
猫はグルーミングで毛づくろいをして、身体を清潔に保ちます。
いつもきれいな状態なので、定期的なお風呂が必須というわけではありませんが、被毛が汚れてしまったり、太りすぎてグルーミングができないときは、シャンプーをしてあげることも必要です。
シャワーが苦手な猫ちゃんには、濡れタオルで身体全体を拭いてあげるなど、一ヶ月に一度くらいの頻度で被毛のお手入れをしてあげましょう。
水をきらう猫ちゃんも多いのですが、優しくタオルで拭き取ることでストレスなく身体を清潔にすることができます。
最近は水を使わないシャンプーも販売されているので、チェックしてみてください。
また、巻き毛の猫種は、胃に毛玉が溜まりやすいといわれています。
猫はグルーミングするとき、同時に大量の毛を体内に取り込んでしまいます。
飲み込んだ毛が排便などで体外に排出できれば問題ありませんが、なめとられた毛玉は、消化しきれずに胃の中に溜まり続け、腸がつまったり、さまざまな疾患を引き起こす可能性も。
胃のなかに入る毛をすこしでも少なくするために、こまめなブラッシングを欠かさないようにしてください。
体内の毛玉が心配なときは、毛玉の排出を促すキャットフードや食物繊維が入っているサプリメントを活用しましょう。
特に年に2回の換毛期など、毛が抜け変わる時期は皮膚トラブルに特に注意してください。
ペルシャから引き継いだ!?遺伝的な疾患に注意して
セルカークレックスはペルシャの血を引いているため、遺伝子的にもペルシャと同じ病気にかかりやすいといわれています。
ペルシャがかかりやすいとされる疾患のひとつに肥大性心筋症という心臓の病気があります。
肥大性心筋症は心臓の筋肉が内側に向かって厚くなり、心室がせまくなってしまうことで身体全体に十分な血液を送りにくくなってしまう病気です。
猫の心筋症の約3分の2を占めるといわれる肥大性心筋症は、どの猫ちゃんにも起こる可能性のある疾患ですが、
- ペルシャ
- メインクーン
- アメリカンショートヘア
- ラグドール
- スコティッシュフォールド
などの猫種に多く見られることがあります。
胸の聴診のみで判断することがむずかしく、血液検査やレントゲン検査が必要です。
- ごはんをたべない
- 体重が減っている
- 元気がない
など、いつもとちがう様子が見られたらすぐにお医者さんへ連れて行きましょう。
ほかにもペルシャがかかりやすい疾患に、多発性嚢胞という遺伝性の腎臓の病気があります。
両方の腎臓のなかに水のたまった袋の嚢胞ができて、腎臓の働きを弱めてしまう病気です。
この病気は一度起きてしまうと完治することはありません。
ペルシャやペルシャと血縁関係のある猫に多くみられる、生まれつきの遺伝病だといわれています。
ゆっくりと進行するため、飼い主さんが気づきにくい疾患ですが、
- 尿の量が多い
- 水をたくさん飲む
- 元気がない
など、腎不全の猫と同じような症状があらわれたら、かかりつけのお医者さんに相談してみてください。
▼猫の腎不全に関してはこちらもご覧ください
猫の腎不全。予防のためにできる事&餌選びでチェックする成分2つ
また、セルカークレックスはペルシャと同じように涙管が短いので、涙が出やすい傾向にあります。目元に雑菌が繁殖しないように、こまめに拭き取ってあげてください。
▼涙がいつもより出ている時は、猫風邪を引いている可能性もあるので注意しましょう
猫の鼻炎の症状とケア。鼻炎の原因から猫を守る、家庭でできる予防法
どんな疾患にもいえることですが、早期の発見が症状を和らげることにつながります。
毎日の健康管理のなかで、いつもとちがう様子がないか気にかけてあげましょう。
セルカークレックスをお家に迎えるために
ビロードのような巻き毛がかわいらしいセルカークレックス。
巻き毛の状態で生まれてくる姿は、まるでお人形のようです。
実はセルカークレックスは生後半年くらいで巻き毛がなくなってしまいます。
これは正常な成長過程で、2~3か月かけてまた新しい毛が生えてくるので、被毛がなくなってしまったと心配しないでください。
セルカークレックスは巻き毛なので毛が抜けやすいように思われがちですが、抜け毛が多いというよりも、からまりやすく皮脂が溜まりやすいという特徴があります。
毎日のブラッシングで被毛を健康に保ってあげましょう。
子猫のころから身体のケアに慣れさせることで、トリミングの時間がリラックスタイムになります。
甘えん坊なセルカークレックスとのコミュニケーションにもなるので、ブラッシングは欠かさないようにしてください。
まだまだめずらしいセルカークレックスですが、ブリーダーさんを通じて購入することができます。
家族みんなで話し合い、ベストな環境でお家に迎えてあげましょう。