猫を拾ったら。動物看護師がお願いしたい野良猫保護の行動順序

私は認定動物看護師という資格を持ち、動物病院で働いた経験があります。

春は保護された子猫がたくさん来院しました。春に多いのは、猫の発情期のサイクルによるものです。

猫は日照時間が長くなると発情が始まるので、春に出産シーズンをむかえます。秋でも日照時間が長いと発情がきますが、寒い季節に成長する子猫に比べて、春に生まれた子猫は春から夏にかけて成長するので、育ちやすいと言われています。

このように、春になると子猫を保護する機会があるかもしれません。その時どのようにしたらいいのか、3つのパターンに分けて説明します。


そのまま飼いたい時はどうするべきか

縁があってかわいい子猫を保護したら、飼いたいなと思わずにはいられないでしょう。ご自身の生活状態に余裕があり、子猫の一生のお世話ができるようでしたら、そのまま飼ってあげましょう。

ただ、子猫のお世話は大変です。本やインターネットなどでさまざまな情報が出ていますが、少し意外性のあるポイントを紹介します。

  • 体重は必ず毎日増えることが必要
  • 食事は3時間おきで正しいのか
  • ミルクをあげる人は決まった人がいいかも

体重は必ず毎日増えることが必要

子猫の体重は毎日増えることが原則です。まず、保護した子猫が今生後どれくらい経っているのか見極めることが必要です。次の表を参考にしてみてください。

目安体重
生後1週間 200g
生後2週間 300g
生後1ヶ月 400~500g
生後2ヶ月 900~1000g
生後3ヶ月 1.5kg

生後10ヶ月くらいまでは日々体重が増えていきます。体重が増えないということは何かしらの問題があるということになります。

  • ご飯やミルクの量が少ない
  • 寄生虫などの虫に栄養を取られている

主にこの2つが原因と考えられます。ご飯の量を増やしても体重が増えない場合は、動物病院で検査をしてもらいましょう。

食事は3時間おきで正しいのか

生後1ヶ月くらいまでは、ミルクが必要です。1日4~8回くらいに分けて与えましょう。8回に分けると1日24時間ですから、3時間おきにミルクをあげなければいけません。

これは非常に大変なお世話です。夜も3時間おきに起きてあげなければなりません。ただ、少し長めの間隔の方がお腹がすく分、よく飲んでくれる場合もあるのです。

お腹を空かせた子猫を放っておくのではなく、ミルクを与えたら十分休息も必要ですから、子猫の生活リズムに合わせてあげてもいいでしょう。また、世話をする飼い主さんが体調を壊しては、猫の世話どころではありません。

ですので、セオリーをきっちり守ることにとらわれず、状況に合わせたお世話をしてあげましょう。

ミルクをあげる人は決まった人がいいかも

ミルクをあげる時期の子猫は、片手に持てるくらいの大きさです。左手に持って、右手で哺乳瓶からミルクを与えることになるでしょう。お世話をする家族が多い家庭では、数人でお世話をしてあげることになるかもしれません。

ただ、手で持つ感触が同じ人の方が仔猫も安心して、ミルクをよく飲んでくれるという考え方もあります。自然界では、同じきょうだい猫に囲まれて、母猫のお乳を飲みます。きょうだい猫や母猫に触れている感触が毎日一緒なのです。

そういう意味では、同じ人間の手の感触の方が安心するのも納得できます。

補足ですが、ミルクをあげるときは子猫があお向けにならないようにします。お腹が上に向いたままミルクを飲ませると、誤嚥してしまうことがあります。自然界で母猫のお乳を飲んでいる姿を想像すると、あお向けではありません。

人工的にミルクをあげるときも自然な姿勢で飲ませることが必要です。

まったく引き取れない(飼えない)時はどうするべきか

保護してしまったけど、自宅には病気の猫がいてどうしても一緒にできないなど、やむを得ない事情もあるでしょう。そのような場合は次のようなところに相談してみます。

  • 子猫を育てたことがある知人へ相談
  • 動物病院に相談
  • ボランティア団体や行政の愛護センターに相談・保護猫カフェ、ネット

子猫を育てたことがある知人へ相談

私もよく相談を受けますが、お世話の仕方など、実際に経験した方のアドバイスは信頼できます。また、そのような方は動物ネットワークのような繋がりを持っている方も少なくありません。そんな人間関係を動物保護に役立ててください。

動物病院に相談

なんと言っても飼育のプロ集団です。子猫の健康状態を確認するためにも、必ず行かなければいけませんので、飼い主さんを探しているということも相談してみましょう。ポスターなどを作って貼ってもらってもよいでしょう。

ボランティア団体や行政の愛護センターに相談

毎月のようにどこかのボランティア団体が保護猫の里親探しを開催しています。行政の愛護センターも殺処分を少なくしようと努力していますので、ボランティア団体との繋がりも出来てきています。

ただ、受入れ頭数の限界もあります。行政のセンターでは、期限付きで殺処分の可能性もまだあります。そのようなところに預けたら安心だ、という安易な考えではなく、よく調べたうえでお願いしてみましょう。

インターネット、保護猫カフェ

今まで説明した相談場所も、まずはインターネットで調べてみる人が多いでしょう。情報量の多さに惑わされないように、実際に電話で確認したり、その場に行くなどして信用のおけるところに預ける必要があります。

最近は、保護猫カフェも増えてきました。こちらも、まずは実際に行ってみることをお勧めします。

引き取れないけど一定期間保護は可能な時はどうするべきか

猫の譲渡が可能な時期は、生後3ヶ月経ち、ワクチン接種が終了してからだと言われています。可能な限り、その時期まで保護できたら理想的です。

ご家庭の事情で、そこまでの期間保護するのが厳しい場合は、先ほど説明したところに相談しましょう。行き先が決まるまでの間は、きちんとお世話をしてあげましょう。最初に説明した、体重・食事管理の他に注意すべき点をあげてみます。

  • 排泄のお世話
  • 寄生虫のチェック
  • 余裕があったらウイルスチェック
  • お世話をした記録を次の引き取り先へ報告

排泄をうながしてあげましょう

生後1~1ヶ月半くらいまでは、子猫は自分で排泄をすることができません。母猫は子猫のおしりをなめて刺激を与えると子猫は排泄をします。少し湿らせたカット綿で、食後お尻をやさしく叩いてあげてください。

子猫の便は柔らかいですが、極端に水っぽい場合は検査が必要です。また、出ない日が3日続いたら便秘の可能性がありますので注意しましょう。

寄生虫のチェックをしましょう

寄生虫には、中の虫と外の虫があります。ノミやダニなど皮膚などにつく外部寄生虫と、お腹の中に寄生する内部寄生虫です。

どちらも体力がない子猫にとっては危険な存在ですので、必ず動物病院で検査を受けてください。お腹の虫は便検査をすることで分かります。

余裕があったらウイルスチェックをしましょう

血液検査で、白血病(FeLV)や猫エイズ(FIV)の検査をしてみましょう。既に他の猫を飼っている場合や譲渡先に他の猫がいる場合は、他の猫に感染してしまうおそれもあるので検査が必要です。

検査のタイミングによって、結果が正確に出ない場合もありますので、動物病院で相談してください。

お世話をした記録を次の引き取り先へ報告

一番重要なのは、今までお世話をした記録を次の引き取り先へ報告することです。

  • 体重はきちんと増えているか
  • 食欲はあるか
  • 排泄の状態はよいか
  • 寄生虫はいないか
  • その他、特徴的なこと(好きなもの、性格など)

これらのことがあると、次にお世話をする人も安心して引き取ってくれるはずです。

猫を保護するということは、責任を伴うということ

かわいそう!と思って保護したものの、いざ実際にお世話をしてみると何をどうやったらいいのか、分からないことだらけかもしれません。まずは、温かくして安心させてあげましょう。

あきらかに様子がおかしい場合はすぐ動物病院に連れていってください。

  • ぐったりしている
  • 呼吸が早い
  • ケガをしている など

保護するということは責任を伴うということです。なんとかなるだろうという安易な気持ちからではなく、その猫の一生を見守るという意気込みで保護する責任を持たなければいけません。

もしかしたら、保護した猫が大変な病気を持っているかもしれません。そういうことも踏まえたうえで保護しましょう。

動物病院に勤務していたときに「手間がかかる子には、そういう飼い主さんがつくものだ」とよく言われていました。病気や障害などで大変な子の飼い主さんはとても熱心な方が多く、この子の飼い主さんはこの方で本当によかったと思ったものです。

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