動物看護師になるには?必要な資格と向いている人の特徴

私は、認定動物看護師という資格を持ち、動物病院で働いた経験があります。動物看護師とは、簡単にいうと「動物病院の看護師」です。

獣医師は病気を診る(みる、診察する)、それに対して、動物看護師は病気を看る(みる、世話をする)、と言われます。動物好きの方にはやってみたいと思う人もいらっしゃるでしょう。

動物看護師の仕事を詳しく解説しながら、実際になるための方法を説明します。ここ10年くらいで制度が変わってきていますが、2018年6月現在の情報をお伝えします。

動物看護師の仕事内容

動物看護師はAHT(アニマル・ヘルス・テクニシャン)やVT(ベティナリー・テクニシャン)と呼ばれることもあります。

テクニシャンということから、獣医療補助者として、血液検査やレントゲンなどの技術的なサポートというイメージが強い仕事になります。

アメリカでは、動物看護師の専門誌が「Today’s veterinary technician」から 「Today’s veterinary nurse」という名前に変更になりました。ベティナリーナースとして看護や治療に関わる機会が増えたことの表れのようです。

日本でも同様で、仕事の内容はとても幅広くあります。極端にいうと、獣医師にしかできないこと以外は全てやる!といったところでしょうか。細かく分けて説明していきます。

診察の補助・準備

「さあ、猫ちゃん、これから血液検査をするから、腕を出して下さい」と言われて、さっと腕を出してくれる猫はいません。そこで動物看護師の出番です。

動物看護師の一番の仕事はなんといっても、保定(ほてい)です。保定とは、動物をストレスなく安全に、そして獣医師が処置しやすいように、そして自分もケガのないようにおさえることです。

採血に重要なのは保定が8割と言われることもあるくらい重要な技術です。どこをどのようにおさえるか、診察する部位や動物の種類によっても異なります。ノウハウは分かっていても、経験がものをいう技術でもあります。

特に、猫は体が柔らかいので、おさえてもすっと抜けてしまうことがあるので、保定しにくい動物だといわれています。保定が上手な動物看護師はポイントが高いといえるでしょう。

それ以外に、診察の流れをみて、すっと必要な準備をすることも必要です。これは次に説明する手術のときにも同じことがいえます。

検査、手術助手

動物病院には、血液検査、レントゲン検査、顕微鏡での検査(鏡検)など、さまざまな検査があります。これらの検査器具の使い方をマスターして、検体を受け取り、検査をして結果を報告します。

手術のときは、手洗いをして獣医師と同じ滅菌状態で助手になる場合と、外回りで必要な準備や補助をする場合があります。必要な器具を準備することはもちろん、突発的な状況にも対応できることが必要です。

また、麻酔がかかった動物の状態をみて、麻酔量を調節したり、呼吸数、心拍数などのバイタルチェックをすることもあります。

動物のケア

入院している動物や預かっている動物のケアをします。ケージの清掃、糞尿の始末、食事、投薬、点滴などの器具の管理など、いずれもただやるのではなく、どのような状態だったかを観察して、獣医師に報告します。

例えば、食事の場合も、全部食べたのか、ドライフードは食べないけど、ウエットフードは食べたなど細かい観察が必要になります。普段から動物の状態をすばやく見極めることが重要になってきます。

掃除、洗濯

院内の掃除、白衣やタオルなどの洗濯をします。院内感染は絶対にあってはなりませんので、十分に注意する必要があります。きれいで清潔な動物病院は飼い主さんからも高評価となります。

また、手術につかう器具や白衣は、滅菌しなければいけません。

受付、会計、電話応対

受付や電話応対は、病院の顔とも言われるので、気を使うところです。特に緊急の場合の電話は、飼い主さんもパニックになっている場合がありますので、落ち着いて話の内容を聞き取ることができるようにしたいものです。

会計は、カード払いやペット保険などの対応が増えてきていますので、処理方法を覚える必要があります。

薬、フード、備品などの発注、在庫管理

必要な薬やフードが欠品していたら、診察ができません。在庫管理をしっかりして必要なものをそろえておく必要があります。業者さんとのやり取りもでてくるでしょう。

もちろん、動物病院の規模や方針によっても、仕事内容は変わってきます。新人は掃除や準備のみで、手術助手はベテラン看護師が担当するとか、受付は専任の人がいるところもあります。

トリミングを行っているところは、トリマーの資格を持っていたら看護師の仕事と兼任する人もいます。動物病院によって異なりますから、実際に求人に応募するときは注意しましょう。

動物看護師になるための2ステップ。資格が必要です!

動物看護師になるにはどうしたらよいのでしょうか。実は特に決まったルールはありません。極端な言い方ですが、ど素人でも現場で経験すればなれます。

通信教育などで、動物看護師のような資格を取ることもできますが、仕事として持つべきなのは、一般財団法人動物看護師統一認定機構で実施している、統一認定試験に合格し、認定動物看護師の資格を取ることが一番よいでしょう。

この資格ができる前は、各学校や団体がそれぞれ独自の資格を発行しており、動物看護師としての基準がバラバラでした。

統一認定機構の目的は、「社会の需要の動向に即し、動物看護職の知識・技術の高位平準化の推進のため、認定動物看護師の資格認定のための全国統一試験及び試験に基づく資格認定の統一実施を担うことによって、

適正な獣医療の提供体制の整備に寄与すること」となっています。つまり、社会的にも獣医療のためにも、動物看護師の統一資格は必要とされているのです。
具体的に、動物看護師になる方法を説明します。

ステップ1. 資格を取る

【試験日程】
年1回(3月頃)、前年の秋に申込受付

【受験料】
15,000円

【試験内容】
一般問題 90問100分 五肢択一・マークシート方式
実地問題(図表、写真を使用した問題) 30問40分 五肢択一・マークシート方式

【受験資格】
1.2015年度以降に、受験可能校にて機構推奨コアカリキュラムを修了し、卒業された方

2. 動物看護師統一認定機構の受験資格審査により個別に認めた者
(機構以外の団体の資格の有無、各種学校の卒業、動物看護師としての勤務年数によって、スクーリング(対面授業)の受講および自宅学習により統一認定試験の受験資格を取得する仕組みがあります。)

ステップ2. 求人情報から応募する

学生はその学校に届いている求人情報があるので、そこから応募するのが早いでしょう。他にネットでもたくさんの求人情報が検索できます。注意点としては次の4つです。

  • 現場で実習をしましょう
  • 自宅に近い勤務地を選びましょう
  • 求人の時期に注意しましょう
  • 求人内容は詳しくきいておきましょう

1.現場で実習をしましょう
ほとんどの動物病院は、応募者には数日間実習をしてもらい、その働く様子をみてから採用を決めます。

応募する方も実際の仕事内容を体験できるので決め手になります。できれば1ヶ所だけでなく数ヶ所実習してみると、動物病院の違いを実感できます。

仕事内容の他にも、獣医師やスタッフの人柄、患者さんの様子などに気をつけて実習するとよいでしょう。

2.自宅に近い勤務地を選びましょう
ハードワークの後、長時間かけて帰宅するのはつらいものです。できるだけ自宅に近い場所を選ぶとよいでしょう。

通勤手段も、電車だけでなく、自転車、バイク、車通勤ができるか確認します。以前、同僚だった動物看護師は、数年勤務したあと、動物病院に近いアパートに引越ししていました。

3.求人の時期に注意しましょう
学生の場合、3月に卒業をして4月から就職することになります。実は、新人が入ってくる4月から5月にかけてが動物病院にとって1年で一番忙しい時期になります。

猫専門の動物病院は、あまり関係がないかもしれませんが、4月から狂犬病の予防接種が始まり、5月頃からフィラリアの予防時期が始まります。

忙しい時期に新人さんが入ると大変になりますので、3月頃から事前にアルバイトとして経験させる動物病院もあります。

4.求人内容は詳しくきいておきましょう
休日は、休診日以外にあるのか。勤務日はシフト制なのか。セミナーなどの勉強会には出られるのか、参加費は負担してくれるのか。

交通費は全額でるのか、交通手段によって異なるのか。その他、残業、賞与、有休、社会保険などについて、聞きにくいことではありますが、入ったあと悩むことがないように、最初に聞いておきましょう。

ちなみに私の場合
私は社会人として一般企業で働いたあと、動物看護師になりました。働きながら夜間の専門学校で1年間学び、動物病院に就職しました。

当時は、実務経験が3年あれば統一認定資格の受験資格が得られたので、病院で働きながら、資格試験の勉強をし受験しました。ですので、私の場合は、20代が中心の業界のなかで、異例の存在だったと思います。

ただ、他の企業で働いた経験もあるので、獣医学業界だけでなく、広い視野を持つことができたと思っています。

動物看護師に向いている人とは

動物看護師になるのに、特別なことは必要ありません。社会人としての自覚がしっかりあれば大丈夫です。ただ、その中でも重要だと思えることを4つあげてみました。

動物好きだけじゃなく、人間も好きであること

記事のはじめに仕事内容について説明しましたが、ほとんどの仕事が動物だけでなく人間と関わる仕事です。チーム医療という言葉がよく聞かれますが、獣医師や他の病院スタッフと連携がとれていなければ、適切な医療の提供はできません。

また、言葉を話せない動物の代わりとなる飼い主さんから信頼を得ることも重要です。動物だけ接していればいい、という仕事ではないことを知っておきましょう。

観察力があり、気配りができる人

動物の状態をよく見て、何か変わったことがあれば獣医師に報告するのが動物看護師の役目となります。また、飼い主さんの気持ちを察することも必要です。診察のときは、次に何が必要かを瞬時に察して準備しなければいけません。

自分のことだけでなく、周りをよく見ることができる人が向いていると思えます。

好奇心があり、前向きな人

獣医療界は発展し続けています。新薬や新しい検査方法などが次々と出てきますので、それに対応しなければいけません。基本的に獣医師の仕事になりますが、それをサポートする動物看護師も必要な知識となります。

認定動物看護師に合格すると、動物看護職協会の会員になることができます。そこでは、職業としての動物看護師を後押しする活動を行っており、定期的にセミナーなどを行っています。

また、認定看護師の資格取得の一環として、学び直し講座を開催しています。私は復習のために2016年に受講して、終了証をいただきました。

終了証の写真

体力に自信がある人

ほぼ1日中立ちっぱなしで動きっぱなしの仕事です。30kgある大型犬を抱えることもあります。自身の健康管理も社会人としての努めですが、もう少し休日が十分に取れる職場環境にしてもらいたいものです。

体力とは少し異なりますが、猫などに引っかかれることも多くあります。ケガをすることは避けなければいけませんが、動物看護師の手や腕は傷だらけだったりします。

動物看護師の将来像

動物看護師は、職業としてまだまだ知名度が低い職業です。社会的な信用と公的資格化に向けて業界全体が努力を重ねていますが、課題が多いのも事実です。

例えば、資格がないとできない仕事になると、受け入れる動物病院側の対応も変化するでしょう。そういう意味では、いろいろな可能性がある仕事とはいえるのではないでしょうか。

また、動物看護師自身も日々の経験を踏まえながら、知識のブラッシュアップをすることも必要です。将来的に、動物看護師が世間からあこがれる仕事となり、子供たちのなりたい仕事にランクインできたら嬉しいかぎりです。

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