猫との引っ越し完全ガイド。物件選びから新居生活までシーン毎に解説

環境の変化に敏感な猫との暮らしは、理想でいえば生涯同じ環境下が望ましいです。ですが、結婚や転勤、ご家族の都合などで引っ越しをされる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、猫と一緒に引っ越すのは予想以上に注意しなければならない事が多いのも現実です。

この記事では、猫との引っ越しの流れやシーンごとの注意事項などを、実体験を交えて撮影した写真つきで紹介します。


猫との引っ越し、その前に。じっくり考えてください

まず、本当に必要な引っ越しか考え直してみましょう。

完全室内飼育で飼われている猫にとっては、お家がナワバリの全てです。それが一気に無くなって、いきなり新しい環境に晒される形になってしまいます。

環境の変化に敏感な猫にとってこれはストレス以外の何物でもありません。引っ越しを機に問題行動を起こす猫も多いでしょう。

段ボールと猫の写真

ですので、転勤などやむを得ない場合は仕方がないですが、飼い主さんの気分で引っ越しをするのは良い選択とは言えません。

物件選びも猫想いで。猫のためにチェックすべき条件4つ

さて、引っ越し以外の選択肢が無い場合、まずは人間の引っ越し同様、物件探しからになります。当然ペット可の物件から選ぶことになりますが、ネットの情報では落とし穴があることも多いです。

例えば、ペット可とされていても、犬のみという物件が意外とたくさんあります。このような事は具体的に話を進めてから判明することも少なくありません。

私の場合、最初に猫を迎え入れる為に物件を探していた時に、契約間際になってから猫はNGと言われて探し直した経験があります。

多頭飼育されている場合は、あらかじめ飼育可能な頭数の確認も必要です。現在住んでいる物件はさほど厳しく無い為、特に頭数制限は明記されておりませんが、以前暮らしていた物件では猫は一頭までと契約書に記載されていました。

前置きが長くなりましたが、以下に具体的な物件選びのポイントを紹介します。

日当たりが十分確保できる

陽だまりに猫、絵になりますね。という、情緒的な理由ではありません。日光浴は猫の健康にとって必須条件です。日光浴による効果として例えば以下の点が挙げられます。

  • ビタミンDの合成、吸収の促進
  • 体温維持
  • 殺菌効果
  • ダニ、ノミの予防

どれを取っても猫の健康には必要な内容です。人間にとっても日光浴は重要ですが、猫にとっては人間以上に日光浴が必要だとお考えください。

日光にあたる猫の写真

できるのであれば北向き以外の方向に出窓があると、日光浴と同時に外の見物も出来るので猫の気分転換にもなります。このような環境では猫のストレスが溜まりにくくなります。

玄関とリビングの間に洗面所がある

ドア一枚で外へ出られる間取りですと、猫の脱走の危険性がグンと上がります。また、外から帰宅した際、猫と接触する前に薬用ハンドソープなどで手洗いが出来る環境であれば、猫が感染症にかかる危険性が低くなります。

蛇足ながら、野良猫や猫カフェなど他の猫と接触した場合は、手洗いは徹底しましょう。特に猫風邪を引いている猫がいた場合、自宅の猫に触れる前に着替えてシャワーを浴びるくらいの気構えでもいいでしょう。

冷暖房設備が整っている

現在ですと、北国を除けばよほど古い物件でもない限り、エアコンは完備されていると思われますが、特に夏の熱中症はエアコン無しでは解決できません。

夏は25度前後、冬は20度前後が確保できる設備があるか確認しましょう。光熱費はエアコンのスイッチオンオフを繰り返すより一定の温度で常時運転した方が効率的な場合もありますので、さほどかかりません。

我が家の場合は埼玉、エアコンのみの冷暖房で電気代が、夏季が月8000円前後、冬季は10000円前後でした。

飼育書によっては20〜28度と記載されているものもありますが、我が家の猫がノルウェージャンフォレストキャットで高温多湿に弱い事もあり、25度以上になると吐く頻度が上がりました。

適温は猫種や年齢などにより個体差がありますので、ネットや飼育書の情報は目安と考えた方が良いでしょう。

広さが十分である

やはり狭い部屋より広い部屋の方が猫の運動不足を防ぐためには望ましいです。しかし、直接家賃に影響するので各ご家庭の都合もあり難しい問題です。

狭い部屋の場合でも、家具の配置やキャットタワーなどで上下運動できるような環境が作れるスペースは確保したいところです。

カウンターキッチンはキャットウォーク代わりにもなり、冬場は寒い床面から避難する場所としても重宝しますので、お勧めです。

人懐っこい猫であれば、目線の高さが飼い主さんと近くなるので、好んでカウンターに登って甘えてくる、なんてことも期待できますよ。ちなみに我が家の猫はこのパターンでよく甘えてきます。

完全室内飼育の場合は、お家が生活圏の全てになりますので、入居前に猫が安全で快適に過ごせる環境かのチェックを忘れずに!

引っ越し準備の注意点。業者選びで注目すべきことは?

物件が決まれば次は引っ越し業者選びです。

まずは見積り時に、猫を飼っている事を伝え、出来れば猫を飼っている方を当日の担当者に、少なくとも猫アレルギーの方は避けていただけるように要望を伝えましょう。

経験上、猫を飼っている担当者の作業とそうで無い方の場合は猫に対する気遣いの仕方が全然違います。

また、見積り時、ペット専門の移送業者を紹介されますので、ご家庭の都合に合わせてご検討されると良いでしょう。ただし、ペットホテルが苦手な猫の場合は一緒に移動する方が良いかもしれません。

私は単頭飼育だった事と自家用車で移動する必要があった事もあり、猫と一緒に移動する事を選択しました。

荷物の梱包のときに注意すべきこと

業者が決まった後は、荷物の梱包です。ワンルームの場合は仕方がないですが、複数部屋がある場合、猫のトイレ、フードなどを置いている部屋はなるべく最後に手をつけられると良いでしょう。

また、おもちゃを除くトイレ、食器などの猫グッズは前日まで手をつけない方が猫が混乱する事が少ないのでお勧めです。

ただ、肝っ玉の座った猫の場合、積み上げた段ボールですら遊び場になりますから、ここは各ご家庭の猫に合わせた対応で構いません。我が家の猫はこのタイプで、積み上げられた段ボールに登りご機嫌でした。

段ボールの上に乗る猫の写真

梱包の際、猫グッズはすぐに取り出せるように箱に明記しておきましょう。また、自家用車で猫と一緒に移動するのであれば、トイレ関連、フード関連、爪とぎはハンドキャリーされる事をお勧めします。

いざ引っ越し!荷物搬入、搬出当日は厳戒態勢で

引っ越し当日は大変です。何せ、猫にとっては見ず知らずの人が入ってきて、自分のにおいのついた物を次々と運び出すのですから、暴れたり怯えたりする猫もいるでしょう。

荷物の搬出搬入時は玄関を始め家中のドアが開けっぱなしになりますので、当然脱走の危険性も高まります。脱走を防止するため、猫はお風呂場かキャリーに避難させておきます。

引っ越し業者との約束の1時間くらい前から避難させておけば、搬入搬出時にはおとなしく寝てくれたりもします。引っ越し業者が来たら、まず責任者に猫がいる場所を改めて伝え、注意を促しましょう。

この件でたまに相談を受けますが、その時は

「猫が嫌がらなければお風呂場に入れてご飯とお水を出してあげてください。
但し、シャンプーなどでお風呂場が嫌いになっている子はキャリーに入れてできるだけ側にいてあげてください」

とアドバイスしています。

我が家の猫がまさにお風呂場嫌いで、最初の引っ越しの時はお風呂場に避難させていましたが、作業中ずっと出せ出せと鳴いていてかわいそうな事をしました。

その反省から2度目の引っ越しの時は搬出搬入共にキャリーに私のにおい付きのタオルと一緒に入れておきました。においで安心したのかずっと寝てました。

ちなみになぜお風呂場かと言いますと、搬出搬入ではまず立ち入らないところで、ドアを閉じたままにできる空間だからです。トイレもありだと思いますが、急にもよおした場合に困りますよね。

なお、猫のトイレですが、経験上安心できる環境だと認識するまで猫はトイレに行きません。なので、搬出当日の朝に片付けても構いません。

移動中も気は抜けない…引っ越し先への移動時の注意点

移動手段によって注意する点は異なります。

自家用車の場合

この方法が一番安心です。但し、長時間になる場合はたまに様子を見て、具合が悪そうであれば車酔いの可能性もありますので休憩を挟むと良いでしょう。寝ているのであればあまり心配する必要はありません。

我が家の猫の場合、最初に迎い入れる日が猛吹雪の大荒れの天気で、道もデコボコでしたが、約3時間のドライブの間ずっと寝て過ごしていました。

電車、バスを使用する場合

各会社により規定が異なりますので、それに従いましょう。中にはペット持ち込み不可の会社もありますので注意が必要です。

言うまでもありませんが、移動中はキャリーに入れ、開けないようにしましょう。脱走のみならず、同乗者とのトラブルの元になりかねません。

世の中には猫嫌いの方もいらっしゃいますので、充分気をつけましょう。

飛行機を使用する場合

こちらも航空各社で規定がありますので、それに従いましょう。飛行機の場合、ペットは貨物扱いになりますので、持ち込みのキャリーを使用したい場合はプラスチック製などのハードタイプしか受け付けてくれません。

航空各社でもキャリーの用意はしていますが、

  • 数に限りがある
  • キャリー間の移動を伴うため、脱走の危険性がある
  • 慣れないキャリーに対する猫の不安が増す

などの点から、ご自分のキャリーを使用する方が良いでしょう。

また、高齢や持病など健康面で不安がある場合、飛行機は使わないほうが無難です。飛行機にはペット用のスペースは無く、貨物室に入れられますが、温度や気圧の変化が大きく、猫への負担も大きくなるためです。

さらに、ペット預け入れ時に同意書のサインを求められますが、ここにはペット死亡時の免責も含まれています。もしもの事があっても何も対処はしてくれません。

フェリーを使用する場合

長距離移動で公共の交通機関を使用する場合、個人的には条件付きですがフェリーが一番良いと思います。今はフェリー各社ペットルームを用意しているため、ケージでの移動にはなりますが、移動中でもご飯やお水を摂る事もでき、トイレもできます。

ただ、「条件付き」としたのは、以前は共用のペットルームしか選択肢がありませんでしたが、現在は客室に持ち込むという選択もあるためです。

共用のペットルームの場合、同乗したペットと10数時間同じ室内で過ごす事になります。運が悪いとしっかり躾けられていない無駄吠えする犬と長時間一緒になるという、リスクもあります。

商船三井の場合、客室にペット持ち込み可能なサービスを提供していますからそちらを検討されるのも良いでしょう。(https://www.sunflower.co.jp/support/pet/)

私は2度、商船三井を使用しています。2度目は観光シーズンという事もあり、ペットルームもほぼ満室でした。しかも無駄吠えする犬が2頭もいたため、大分猫にストレスをかけてしまったなぁと後悔しました。

下船するまで下の写真の体勢を維持してフリーズしていましたので、よほど嫌だった事が想像できます。

多少割高でもペット持ち込み可の客室を予約する事を強くお勧めします(特に繁忙期)。

ケージの中の猫

なお、どの移動手段でも共通して言える事は、

  • 必ずキャリーに入れて移動する事
  • 移動中はキャリーを決して開けない事

の2点は必ず守ってください。

間違っても「うちの子は大丈夫」といった思い込みで口の開いたバッグで運ぶ、途中でキャリーを開けるなどの行為はしないでください。意外かもしれませんが、動物病院に来院した際にこういう飼い主さんをしばしば見かけます。

新居に着いてからはトイレと食事をするまで待ってあげよう

新居に着いたら、まずはトイレ、フード、お水を設置して猫の様子を観察します。あらかじめ猫と飼い主さんのにおいが付いた物を持ち込むのが良いでしょう。

最初に迎え入れた時と同様、トイレと食事をするまでは猫は最大限に警戒している状態とお考えください。順応力が高い猫であれば、小一時間もすればどちらも済ましてくれます。

流石に到着後、即新居に馴染む事はなく、下の写真の様に隠れたりもすると思いますが、そういう場合は自分から出てくるまで気長に待ちましょう。

隠れている猫の写真

神経質な猫の場合、可能な限り一緒に居てあげて、「ここは安全な場所だよ」と教えてあげると良いでしょう。ここが新居に着いてからの最初で最大の山場です。

ちゃんとナワバリと認識できないと、後々問題行動を起こす引き金にもなりかねません。トイレと飲食が済むまでは油断は禁物です。

我が家の場合、最初の引っ越しの時はなかなかトイレも飲食もしてくれず、内心不安しかありませんでした。しかし、数時間一緒に寝転がったりしているうちに、ようやく安全な場所だと認識してくれて、トイレも飲食もしてくれました。

2度目の引っ越しの時は最初の時の反省を活かし、普段から一緒に寝る時に使用していた毛布をハンドキャリーで持ち込み、初めから一晩一緒に居るつもりで臨みました。

それが功を奏して、1時間もかからずにナワバリ認識をした様子で、トイレも食事も済ませていました。結果、問題は無かったのですが、何も無い新居で一夜を共に過ごしました…

毛布にくるまる猫の写真

やはり、猫は嗅覚で判断しますので、におい付きのものを持ち込んだ方が馴染みは早いですね。

新居での荷ほどきは猫用品を優先して

荷物が届いたら、まずはおもちゃやキャットタワーなど、猫のにおいが付いた物を最初に出してあげた方が良いでしょう。前項の内容の様にナワバリ認識をしたとしても、やはり自分のにおいがするものがたくさんある方が猫は安心します。

また、先に出しておけば、飼い主さんが自分の荷物の荷ほどきをしている間も勝手に遊んでくれますので、結果的に効率よく荷ほどきができます。

これも我が家の2度の引っ越しの経験からのアドバイスです。

最初の引っ越しは、私自身がいっぱいいっぱいで、結構自分中心で進めていました。そのせいか、猫の幼少期の噛み癖が一時的に再発してしまい、苦労しました。

色々調べたところ、ストレスによる問題行動の一つだと気付かされました。その対処で、荷ほどきが遅々として進まず、結果、ひと月くらい開けていない段ボール箱がゴロゴロしてました。

2度目は、猫グッズを先に荷ほどきをしたのですが、猫も安心してすぐに部屋に馴染み、結果的に1週間程で全ての段ボール箱が片付き、問題行動もありませんでした。ちなみに、荷物の総量はさほど差はありません。

生活が落ち着くまで。新居に慣れさせるためのケア方法

一度、新居をナワバリと認識すれば程なく元の生活に戻る、とネットや飼育書で散見しますが、個人的には数日はなるべく一緒に居てあげて、猫の安心感を後押ししてあげる事をお勧めします。

とは言っても、一人暮らしのサラリーマンの場合は簡単に時間が取れないのも現実です。ここでもやはりキーポイントは、においです。

飼い主さんのにおい付きの服やタオルなどをあえて部屋の数ヶ所に放置して、猫に飼い主さんが近くにいるような錯覚を与えると、案外おとなしく留守番してくれます。帰宅時に服やタオルを確認すると、猫の毛がびっしり、なんて事も。

しかし、やはり落ち着くまでしばらくの間は、外泊など長期の留守番は極力避けた方が良いでしょう。特に、保護猫など人間に捨てられた経験のある猫は人間不信が再発する引き金になり、飼い主さんとの信頼関係が壊れる要因になりかねません。

やはり猫にとっては引っ越しはストレスでしか無い

以上、我が家の経験を交えて、若干過保護の感は否めませんが、猫との引っ越しの注意点をまとめました。

繰り返しになりますが、不要不急な引っ越しは環境変化に敏感な猫にとってストレスでしかありません。ですので、避けられない場合を除き引っ越しはなさらない事をお勧めします。

止むを得ず引っ越しされる場合でも、準備や移動など、猫にとっての非日常がしばらく続く形になり、猫にとっては大変なストレスです。引っ越し後のアフターケアをしっかりとしてあげる様、心がけると良いでしょう。

本文にも書きましたが引っ越しが問題行動を起こすきっかけにもなりかねません(と獣医さんに聞きました)。

また、猫の事を考えて部屋を選ぶと、家賃が多少高くなる事もあるでしょう。ですが、そこは「家族である猫のため」と割り切るのも大切です。

ちなみにこういう考えは万国共通らしいですね。「家は猫のものだ。我々はローンを払っているにすぎない」という格言ともアメリカンジョークとも取れる話もあります。

本記事が参考になって飼い主さん共々ストレスなくスムーズに引っ越しされれば幸いです。

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