猫に歯磨きを上手にしてあげるには?猫に嫌がられない歯磨きのコツ

猫の歯磨きは、猫のお世話の中でも最難関と言っても過言ではありません。

チャレンジしてみたものの、あまりの猫の抵抗に撃沈した飼い主さんも数多いはず!

猫もこんなに嫌がるし、難しくて上手くできるか不安だし、もうやらなくてもいいのでは……と諦めムードになってしまいますが、実は歯磨きしていない猫の多くが歯の病気を抱えているのです。

そこで愛猫の歯を守るため、猫の歯磨きが苦手、あるいは猫の歯磨きなんてしたこともないという飼い主さんでも簡単に歯磨きができるようになるためのコツをご紹介していきます。

猫も歯磨きをしないと歯の病気になる

人間と同じように、猫も食べ物を噛むことで歯垢がついてしまいます。

人間は毎日歯磨きをすることで歯垢を除去していますが、歯磨きをしない猫は歯垢が溜まる一方。

歯垢は細菌繁殖の原因となり、約3日~1週間で歯石に変わりますが、こうなってしまうと歯磨き程度では落とすことができません。

歯垢や歯石によって繁殖した細菌は徐々に猫の口内を蝕み、後述する歯周病など猫にとって非常につらい病気を引き起こすことになります。

歯周病などの歯の病気が進行すると、歯石除去などのために多くは全身麻酔をかけることになります。全身麻酔は獣医さんが細心の注意を払って行いますが、万一の可能性がないとはいえないものです。

また若い猫と高齢の猫とでは当然高齢の猫の方が歯垢も歯石も溜まっていますが、高齢になってからの全身麻酔は不可能な場合があり、そうなってしまうともう抜本的な治療はできず致命的です。

その上、ペット保険でも歯の治療に関しては一部補償対象外の会社が多く、飼い主さんとしても想定以上の高額な治療費を負担せねばならない場合があります。

猫の歯磨きを積極的に行うことで、歯周病の他、口内炎、吸収病巣などあらゆる歯の病気のリスクを低下させることができます。猫の健康を守り、飼い主さんの金銭的な負担を減らすためにも、猫に歯磨きは必須といってよいでしょう。

3歳以上の猫の8割は歯周病

実は、猫は人間とは違い虫歯にはなりにくいものの、歯周病に非常にかかりやすい動物です。

なんと3歳以上の猫の8割が歯周病とさえ言われており、一見なんともなくとも実は静かに口内で症状が進行しています。

歯周病になるとまずは歯肉が赤く腫れてくる「歯肉炎」、さらに炎症が進むと時には痛みが伴うこともある「歯周炎」へと進行していきます。この「痛みが伴う」というのは猫にとっては文字通り致命的な事態です。

お腹が空いてフードを口に入れた瞬間、痛みのあまり「ギャッ!」と叫んで食べられない、あるいは何も言わないけれどフードを残し続けるというような日々が続きます。

そしてお腹は空いているのにフードが食べられず、涎を垂らしながらも猫は次第に痩せていきます。猫にとってこんなに辛いことはありません。

こんなかわいそうな事態を引き起こさないためにも、猫の歯磨きを少しずつでも構わないので始めていきましょう。

猫の歯磨きの基本的な方法

猫の歯磨き方法は基本的に人間と同じように、市販されている猫用の歯ブラシを小刻みに動かして1本1本歯を磨いていきます。

しかし、猫の歯は人間の歯に比べてはるかに小さく、歯磨きといっても慣れないうちから人間と同じような力加減で磨いていくと歯ブラシで歯茎を傷つけて出血させてしまう危険もあります。

最初は練習と割り切り、磨くよりも羽根で撫でるくらいの感覚で歯ブラシを歯に当て、徐々に力加減を調節していくとよいでしょう。

それでは、さっそく歯を磨く手順を見ていきましょう。

1.猫用の歯ブラシを水で濡らす

乾いた歯ブラシだと摩擦で猫の歯茎を痛めてしまいます。まずは歯ブラシを水でしっかりと濡らしましょう。

また、歯ブラシはペンを持つようにして軽く握ると自然な力加減ができます。

2.猫用歯磨きペーストや歯磨きジェル、だし汁などで猫が喜ぶ味をつける

猫用歯磨きペーストや歯磨きジェルといった製品の多くには、猫が歯磨きを嫌がりにくいように猫の嗜好性が高い風味がついています。

持っていない場合はだし汁(塩分のないもの)などで代用できる他、慣れていないうちはウェットフードの汁部分などを使っても構いません。

この味のついた部分を舐めさせつつ歯磨きを行います。

3.猫の唇を横からそっとめくり、まずは臼歯(奥歯)を磨く

猫の歯の中で最も歯垢がたまりやすいのは奥歯です。

食事の際、猫がドライフードをガリガリかみ砕く時に使う歯だからですね。猫に嫌がられて逃げられないうちに、まずは奥歯をしっかり磨いてしまいましょう。

唇をめくったら奥歯に歯ブラシを45度の角度で当て、歯茎と歯の境目である「歯周ポケット」や、歯と歯の間など凹凸が激しく歯垢がたまりやすそうな場所を中心に磨いていきます。

歯ブラシは左右に小さく、細かく動かします。最初は磨くというより歯ブラシを震わせるくらいの感覚でいいかもしれません。

歯ブラシの形状にもよりますが、猫の歯は小さいので上下に動かすより左右に動かした方がよく磨けます。

また、猫の健康な歯は白く、汚れるほどに黄色く、さらに汚れが付着すると茶色くなっていきますので、そのような歯があった場合は重点的に磨いていくとよいでしょう。

4.犬歯、切歯(前歯)を磨く

奥歯を磨き終わったら、唇をめくって犬歯や前歯を磨いていきます。

特に前歯は小さすぎるので力を抜いて慎重に。犬歯は長く大きいので上下左右に磨き、磨き残しのないように気をつけましょう。

5.磨き終わったらおやつやおもちゃなどでご褒美タイム!

猫の歯を無事一周したら終了です!おやつでもおもちゃでも抱っこでも、愛猫の気に入る方法でご褒美タイムをとってあげてください。

ちなみに虫歯は気にしなくていいので、歯磨き直後のおやつは問題ありません。

「歯磨きをしたらご褒美がもらえる」と猫に覚えてもらうことが、歯磨きを嫌がらない猫にするためには必要不可欠です。

理想的な歯磨きの頻度は毎日毎食後ですが、普通はできるものではありません。現実的なラインとして、歯垢が歯石に変わってしまう3日以内に1回はしっかりと歯磨きを行うようにしましょう。

また、歯を何本かにわけて毎日少しずつ磨き、3日かけて口内を一周するという手も。自分に合ったペースを見つけましょう。

猫の歯磨きを始めたら、獣医さんにチェックしてもらおう

猫の歯磨きのハードルを高く感じてしまう原因は、猫が嫌がるということの他に「うっかり口内を傷つけてしまいそうで怖い」という飼い主さんの不安があるようです。

実際飼い主さんの中には「よかれと思って歯磨きをしたら、かえって傷つけてばい菌が入り病気になってしまった」という人も……。

そこで、猫に歯磨きを始めてある程度経ったら、一度獣医さんに猫の歯の様子を見てもらうことを強くおすすめします。

そうすると正しく歯磨きできているかどうか、猫に負担をかけていないかを早い段階で確実に知ることができるので、間違った方法で歯磨きを続けて猫の口を痛める心配がなくなります。

特に年に1回の予防接種が近い場合は歯磨きを始めるチャンスとも言えます。注射のついでに見てもらえば通院の負担も増えずに済むのでおすすめです。

猫に「歯磨き=気持ちいい、楽しい」と覚えてもらおう!

猫の歯磨き最大の壁は、なんといっても「猫が嫌がる」ことでしょう。

よく「猫の歯磨きは子猫のうちから慣らそう!」といわれますが、子猫のうちから始めても、「成猫から始めるよりは慣れやすい」というだけで、やっぱり最初は歯磨きを嫌がられます。

それでも慣れてくれればいいのですが、嫌がるのに続けているとトラウマになりかねません。

飼い主さんによって毎日だったり、週に2、3回だったりと多少の差はあれど、猫の歯磨きは継続して行うのが基本です。

猫が嫌がるのに歯磨きを続けていると、最初はなんとか歯磨きさせてくれていた猫でも、やがて歯磨きグッズがしまってある場所の近くに飼い主さんが行っただけで逃げるようになり捕まらなくなるなんてことも。

こうなってしまうと猫も飼い主さんも大変です。

そのためこの先ずっと歯磨きを続けていくならば、むしろ歯磨きグッズを取り出すと猫が寄ってくるくらい猫に歯磨きを好きになってもらうことが重要です。

猫に歯磨きを好きになってもらうには、

  • 歯磨きは毎回短時間で済ませる
  • 歯磨きが終わったらご褒美をあげる
  • 決して無理に猫を押さえ込んだりしない
  • 飼い主さんは決して声を荒らげず、猫撫で声であやしながら歯磨きする
  • 歯磨きの間顔周辺を優しくマッサージして歯磨き=気持ちいいと思い込ませる

というのがポイント。

ついやってしまいがちなのが、嫌がる猫を追いかけたり、逃げられて慌てるあまり飼い主さんが大声を出してしまったりすることですが、そうすると猫も「歯磨きは嫌なこと」と思ってしまい悪循環になります。

飼い主さんは常に笑顔でゆったりと構え、何も怖いことはないという態度で歯磨きしてあげましょう。

スキンシップのついでに歯に触って、歯磨きに慣れてもらおう

猫に歯磨きする際、最初のうちは寝起きでむにゃむにゃしているところを狙ってそっと口元を触り、マッサージのふりをして唇をめくってみるなどすると慣れやすいです。

また、額や鼻の上、喉もとなど猫が好きそうなところをそっと撫で、むしろ撫でるのがメインで歯磨きはおまけくらいのつもりでやってみると、意外とじっとしていてくれたりします。

磨き終わっていないからといって同じところを磨き続けると歯磨きに気がついて嫌がられます。最初はとにかく磨くことは二の次で慣れさせることを最優先にしましょう。

猫の中で「気持ちいいこと>嫌なこと」であるうちは口に触らせてくれるはず。

ちょっとだけ歯磨きしてすぐやめ、じっくりと喉を撫でてあげて気持ちよくさせてからまたさっと歯磨き……のような、猫にとって「今、何かした?」くらいのレベルでの歯磨き練習を毎日繰り返すことで、猫は次第に慣れていきます。

猫の歯磨き便利グッズ8選

難易度が高すぎてなかなか手が出せない猫の歯磨きだけに、各社から猫の歯磨きを楽に行うための製品が多数販売されています。

定番の歯ブラシの他、「歯ブラシだけは絶対に無理!」という飼い主さんでも気軽に試せる歯磨きグッズがありますので、筆者が使った中でおすすめのものを8つご紹介します。

猫用歯ブラシ

本格的に猫の歯磨きを習慣にしたい場合、最もおすすめなのはやはり歯ブラシを使って磨くことです。ペットショップでは猫専用に作られた歯ブラシが販売されています。

猫の口に合わせて作られているので使いやすく、猫さえ嫌がらなければ最も歯磨き効果が期待できます。

購入の際はヘッドの小さいものを選んであげると奥まで届きやすいですが、小さくなる分毛束も少なくなるのでやや磨きにくくなります。

消耗品ですので各社の製品をあれこれ試してみるといいかもしれません。全方向ブラシ型になっているタイプは初心者向きでおすすめです。

赤ちゃん用歯ブラシ

人間用の歯ブラシでも猫の歯を磨くことができますが、普通の大人用歯ブラシでは大きすぎて猫の口には不向きです。

人間用の歯ブラシを使う場合は「やわらかめ」の子供用、出来れば赤ちゃん用の小さな歯ブラシを使って猫の歯を磨いてあげるとよいでしょう。

赤ちゃん用でもヘッドが猫には充分大きいので、歯茎を傷つけないように注意する必要があります。

綿棒

いずれは歯ブラシで挑戦したいけど、歯ブラシを使うのはまだ怖い。そんな飼い主さんにおすすめなのが綿棒です!

歯ブラシの代わりとして、歯にあてて軽く擦るようにして汚れを落とします。やってみると意外と綿棒の先が黄色く汚れるものの、細かい隙間には入らないので歯ブラシほど効果は期待できません。

しかし、先端が綿なので歯茎を傷つけにくく、本物の歯ブラシを使う前の飼い主さんの練習用としては非常におすすめです。

まずは綿棒を使って歯磨きの練習をし、猫も飼い主さんも慣れたら本物の歯ブラシへ移行してみてはいかがでしょうか。

歯磨き用へちま

よくおもちゃに噛みついて遊ぶ猫、あるいはもともと噛み癖のある猫におすすめなのが歯磨き用のへちまです。猫がへちまをかじることで歯磨きになるという製品ですが、

  • 飼い主はただへちまを投げて放置しておくだけでいい
  • へちまで出来ているので猫が飲み込んでも安心
  • 猫が自発的にかじるので猫にとってストレスになく歯磨きができる

という点が最大の特徴。飼い主さんに口元を触らせてもくれないような猫でもへちまを噛むことで予防になります。

ただ、へちまがそれなりのサイズをしているので奥歯には届きにくくあまり効果がないかも……。他の歯磨きグッズと併用しての使用がおすすめです。また、噛んでボロボロになったへちまは形が崩れやすく、くずが散らかるのもやや難点。

製品によってはへちまの他に糸や紐などを使っている場合があります。

飲み込みおそれがある猫には糸等を使わずへちまだけで出来ている製品を探して与えるようにするとよいでしょう。

歯磨きジェル

猫の口の横から奥歯の方に差し込み、数滴垂らすだけで歯のケアができる歯磨きジェルもお手軽なのでおすすめです。

猫の好む味がついていることが多く、自分から舐めたがる猫もいます。

また、猫を歯磨きに慣れさせるために、この歯磨きジェルを綿棒や歯ブラシにつけて猫に舐めさせながら磨くことで猫が嫌がらなくなるという方法も。

他にも「歯磨きしたいのに逃げられた!今日はもうできそうもない……」という時にジェルだけさっと垂らしたりもできるので、1本持っておくとなにかと重宝するでしょう。

歯磨きシート

綿棒同様、こちらも初心者向きの方法です。シートを指に巻いて歯を擦ることで汚れを落とします。

シートそのものは細かい汚れをからめとるように工夫して作られていますが、やはり細かいところには入りにくいのが難点。

また指に巻いて使う場合、人間の指はどうしても猫にとって太く磨きにくいので、シートを小さく切ったり、綿棒に巻き付けるなどして使うのがポイントです。

歯磨きシートは犬でも使えるように兼用で作られていることが多く、猫には大きすぎるので基本的に切って使います。

猫用食べる歯磨き粉

トーラス社の「歯磨きラクヤー」など、毎日のフードにふりかけて食べさせることで口内環境を整える「食べるタイプ」の歯磨きが販売されています。

どうしても歯磨きさせてくれない!という場合、あるいはどうしても歯磨きは怖くてできないという飼い主さんの場合、お手軽に予防ができるので非常におすすめです。

しかし、ドライフードだけだと歯磨き粉が滑り落ちて食器の底に残ってしまいがちなのが欠点。ウェットフードと混ぜて使用すると全部食べることができます。

歯のための特別療法食t/d

ヒルズ社から「t/d」という歯のケアに特化した特別療法食が出ています。療法食ですので必ず獣医さんにあげてもいいか相談してから与えるようにしてください。

こちらはドライフードの粒を噛むことで物理的に歯垢をかき取るという製品で、猫に噛ませるために一般的なドライフードよりかなり大きな粒になっています。嗜好性が高いので、他のフードを残してt/dだけ食べたというような猫も……。

歯垢が心配だけどどうしても歯磨きを続けられないという場合は検討してみてはいかがでしょうか。

じっくり時間をかけて歯磨きに慣れてもらおう!

猫の歯磨きというと、「捕まえて、無理矢理やってみたけど駄目だった……」というように、いきなりやろうとする飼い主さんが多いように思います。

しかし、猫の歯磨きを完遂するためには焦りは禁物です。

猫の顔をふにふにと触ったり、口元を撫でたり、たまにぺろりと唇をめくってみたり、まずはスキンシップから始めましょう。

何日も何週間もかけてスキンシップだけを繰り返し、たまに思い出したように歯ブラシを当ててみる、くらいの気長さでやるのが歯磨き成功のコツです。

「そんなに時間をかけるの?」と思われるかもしれませんが、極端な話、猫の歯磨きができないまま1年間過ごすよりは、スキンシップを繰り返して1年かけて歯磨きを成功させた方が建設的です。

焦らずゆっくりと歯ブラシに慣れさせ、歯ブラシが出てくるといいことがあると猫に覚えてもらいましょう。

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