猫が気持ちいい歯ブラシの使い方。歯磨きの必要性と歯ブラシ活用法

猫にいきなり歯ブラシを使って歯を磨こうとしても、ほとんどの猫は嫌がるでしょう。

ただ、意外と歯ブラシのブラシの部分は猫にとって心地よい感触のようです。

その感触を利用して、猫が気持ちよく歯磨きができるようにトレーニングしてみましょう。

猫の歯磨きは大変!歯ブラシを嫌がる猫たち

猫は食べ物を丸飲みにする傾向があります。そして、犬と違ってものを噛む習性があまりありません。ですので、口の中に歯ブラシや指を入れられる行為を非常に嫌がります。

このような習性の他にも、猫の歯磨きが大変な理由として、現実的なお悩みポイントを3つあげてみます。

嫌がってかわいそう

猫との信頼関係も揺らいでしまいますので、無理強いはしたくないですよね。

「さあ、歯磨きするぞ」と構えたりしないで、まずは飼い主さんがリラックスしてのぞみましょう。雰囲気作りが大切です。

歯磨きしたら出血した

この場合は、すでに歯肉炎になっている可能性があります。動物病院で診察、処置をしてもらってから、改めて歯磨きをしていくことになります。

口が小さくてよく分からない

猫の歯は全部で30本あります。犬は42本です。歯の数も少ないですし、マズル(鼻口部)も短いので小さい口の中をケアするのは大変です。

後ほど説明しますが、特に気をつけたい歯がありますので、そこだけ集中する方法もあるでしょう。

猫の歯やその病気を知って効果的な口腔ケアをしましょう

口腔ケアをする前に、猫の歯と歯の病気について勉強してみると、歯磨きの必要性が理解できるでしょう。

猫の歯は人間と異なります

猫の歯は30本です。

切歯(前歯)が6本×上下、犬歯(牙)が2本×上下、奥歯は前臼歯(前側)と後臼歯(後ろ側)に別れますが、上の前臼歯が6本、下の前臼歯が4本、後臼歯が2本×上下あります。

ちなみに、乳歯は26本ですが、知らない間に永久歯に生え変わっていることが多いです。犬は乳歯が抜ける前に永久歯が出てきて、乳歯違残という病気が多いですが、猫にはほとんどありません。

臼歯は「臼」という感じを使っていますが、すりつぶすという機能はありません。食べ物を噛み切るだけですので、尖っていて、上下の歯がジグザグに納まるようになっています。

代表的な猫の歯の病気

人間は虫歯になりますが、猫はほとんど虫歯になりません。理由としては次の3つが考えられます。

  • 口の中のphが違う
  • 歯の形状が違う
  • 唾液の成分が違う

1つずつ説明していきます。

口の中のphが違う
ph(ペーハー)とは、酸性なのかアルカリ性なのか、という度合いを示す数値です。人間はph6.5~7.0で弱酸性です。猫はph8.0~8.5でアルカリ性です。

虫歯菌は酸性の環境で繁殖しやすいと言われています。

歯の形状が違う
先ほども説明しましたが、ねこの歯は尖った形をしており薄いので、虫歯菌がたまりにくい構造になっています。
唾液の成分が違う
「犬や猫は口で消化しない」と言われています。唾液の中にデンプンを糖に分解する成分がないため、口の中に糖があまりとどまりません。

このように、猫は虫歯にはなりませんが、歯垢がたまり歯石になりやすいため、虫歯以外の病気に注意する必要があります。気をつけたい猫の口腔内トラブルを説明します。

歯周病

歯垢の中に潜んでいる細菌によって、歯の周りの組織に炎症が起きる病気を歯周病といいます。

歯垢をそのままにしておくと歯石になります。そして、歯垢は歯磨きで落とせますが、歯石は落ちません。

歯周病は、歯肉炎から歯周炎と進行していきます。

【歯肉炎】

  • 歯と歯肉の間(歯肉ポケット)に歯垢や歯石が入り込む
  • 歯の表面が黄色~茶色に見える
  • 歯肉が赤く腫れる
  • 2歳以下の猫に多い
【歯周炎】

  • ポケット内で最近がさらに繁殖して、歯肉以外の組織にも炎症が広がる
  • 腫れがひどくなり、歯垢・歯石の付着も増える
  • 口臭や痛みが発生する
  • 歯を支える骨が溶けて歯がぐらついてくる
  • ポケット内に膿がたまり、漏れ出てくる。皮膚に穴があく場合もある。

猫の約90%に歯石がついているという報告もあります。高齢になるほど、付着率は増加します。また、一般的にドライフードよりもウェットフードの方が歯石が付きやすいと言われています。

炎症部分から細菌が血管内に入り、全身の病気を引き起こす可能性もあります。歯周病は歯だけの病気ではないのです。猫の体で一番汚いのは口の中だと言われています。

歯周病による猫自身のケアも必要ですが、飼い主さんとの接触により、口から細菌が感染する可能性もありますので、注意が必要です。

歯頸部吸収病巣(ネックリージョン、破歯細胞性吸収病巣)

少し長くて難しい病名ですが、猫に特徴的な口腔内の病気です。純血種で80%、雑種で40~60%もの猫が発症していると言われています。

何らかの原因で歯を溶かす細胞が増殖し、最終的に、歯が骨に置き換わってしまう病気です。激しい痛みがあり、歯周病があるとさらに痛みを伴うようです。

どちらの病気も、悪化した場合は抜歯することになります。全身麻酔が必要となりますが、症状を治めるためにも、抜歯は妥当な治療だと思います。

猫は食事を丸飲みしますし、唾液には消化酵素が含まれていませんので、歯が無くても比較的問題ないと言われています。

実際、私の義母が飼っている猫も歯周病がひどくなり、頬の皮膚が破れてしまいました。食欲が落ち、痛みからか元気もなくなりました。

治療はやはり麻酔をかけての抜歯でした。歯石がひどかった歯を抜き、抗生剤を注射で打つと数日ですっかりよくなりました。

この猫は義母と義父以外の人には、全く触ることができない猫でしたので、日頃からのチェックができなかったことが悔やまれます。

週1回はしたい歯磨き。特に磨いてあげたい歯はどれ?

先ほど説明しましたが、猫の口の中はph8.0~8.5でアルカリ性です。これは、歯垢から歯石へ変化する速さにも関係しています。この数値から判断して、猫が歯垢から歯石へと変化する速さは、およそ1週間です。

また、猫の前臼歯は食べ物を噛み切る役割があり、「裂肉歯」もしくは「機能歯」と呼ばれています。本数も上3本、下2本あり、歯全体からみた表面積も多いので、歯垢がたまりやすい歯です。

ですので、歯石になる前の歯垢段階で1週間に1回の歯磨きをお勧めします。また、前臼歯を中心に磨いてあげるとよいでしょう。どの歯か分かりにくい場合は、「奥歯の大きな歯」を見つけてみましょう。

猫が嫌がらない、気持ちのいい歯ブラシの使い方

歯ブラシでの歯磨きは最終ゴールです!猫に歯ブラシで歯磨きをしても、最初から受け入れてくれる猫はほとんどいないでしょう。歯ブラシでの歯磨きは最終ゴールと位置づけて、少しずつ慣らしていくのが鉄則です。

  • ステップ1. 口に触れられるようにしましょう。
  • ステップ2. 指で歯に触られるようにしましょう。
  • ステップ3. ガーゼや綿棒などを試してみましょう。

1つずつ説明していきますが、※のところはプラスアルファで試してみたいことになります。歯ブラシでの歯磨きが最終ゴールですから、ステップ1の段階から、歯ブラシで口を周りを触れるようにしてみるのも1つのやり方です。

ステップ1. 口に触れられるようにしましょう

第一関門は口に触れられるかどうかです。熟睡しているときやリラックスしているときに、猫が日頃好きな場所を触っていき、徐々にあごの辺りから口元を触れるようにしましょう。

嫌がったらすぐにやめて、しばらく経ってからまたやってみます。1日数分から初めて、毎日続けていきます。※歯ブラシで口元を触ってみる。

ステップ2. 指で歯に触られるようにしましょう

口に触れるようになったら、横から指をいれて歯に触れるようになりましょう。軽くマッサージする要領で、歯や歯茎を触っていきます。※歯ブラシで歯を触ってみる。

ステップ3. ガーゼや綿棒などを試してみましょう

指で歯に触れられるようになったら、ガーゼや綿棒など他の物を口の中に入れてみましょう。好きな匂いやペーストを付けると、早く受け入れてくれるでしょう。

※歯ブラシを口の中に入れてみる

歯磨きだけじゃない!歯ブラシの活用法

歯ブラシを歯磨きだけではなく、ブラッシングやトレーニングに活用する方法もあります。

ブラッシングでリラックス

歯ブラシのブラシは適度な硬さと柔らかさがあり、猫にとっては気持ちがいいものです。

ブラッシング用のブラシやコームほど大きくないので、細かいところにも行き届きますし、少しだけ試して反応を見ることもできます。使い古した歯ブラシを使って、頭や顔のまわりをなでてみましょう。

最初は、そっとせまい範囲で少しずつ頭をなでてみましょう。猫によって好みの場所が異なる場合もありますので、徐々に範囲を広げていって、どこをなでるとリラックスした表情が出るか、探っていきます。

嫌がるようでしたら無理をせず、猫が熟睡しているときや、落ち着いて毛づくろいをしているときなどに少しずつ試していきましょう。歯ブラシをおもちゃのように好きになり、気持ちよくなるものだと認識してくれたら、しめたものです。

嫌がるところを触るトレーニング

猫は触られるのが好きなところと嫌がるところがあります。

好きなところ 嫌がるところ
手足の先
お腹
あごの下 口の中

歯ブラシブラッシングでチャレンジしたいのは嫌がるところです。このような嫌がるところでも触れるようになると、とても役に立つことがあります。2段階に分けてやってみましょう。

ステップ1 猫が気持ちよくなるところを歯ブラシでブラッシングしてみる
直接嫌がるところをブラッシングするのではなく、まずは、気持ちよくなるところから試していきます。

ステップ2 ステップ1の状態をキープしたまま、少しずつ他の場所を触っていく
猫が歯ブラシブラッシングでリラックスしてきたら、少しずつ手足の先、お腹、口の中など嫌がるところを触っていきます。

1人で行うには両手を使うため大変かもしれません。協力してくれる家族がいたら、一緒にやってみてもいいでしょう。

一気にステップ1から2に進めなかったり、1回やっただけではできないと思います。毎日少しずつ根気よく続けてみましょう。

歯ブラシを使ったトレニーングについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
歯ブラシで子猫のしつけができる。セミナーで学んだハンドリング方法

猫と歯ブラシが仲良くなれるようにいろいろ活用してみましょう

猫の歯周病の怖さ、歯磨きの必要性、嫌がる猫へのケアの方法などを説明してきました。歯ブラシでの歯磨きをスムーズに行うようになるには、本当に根気が必要です。

最近は、ペットの口腔内ケアの重要性が高まり、歯ブラシも猫に合わせたタイプのものがたくさん出ています。

また、デンタルケアの商品も、おやつタイプやジェルタイプのものなどがあります。歯ブラシと一緒にこれらの商品を組み合わせてみてもいいでしょう。

「ローマは1日にしてならず」ではないですが、無理せず少しずつ徐々に慣らしていきましょう。そして楽しみながら、猫と歯ブラシが仲良くなれたらいいですね。

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