歯ブラシで子猫のしつけができる。セミナーで学んだハンドリング方法

犬と違って猫にはしつけは必要ないと思っていませんか?猫は人間と異なる動物ですが、人間社会で暮らす生き物です。

猫が家族の一員として生涯幸せに暮らすためには、人が猫を理解すること、そして猫がストレスなく人と暮らせるようにしつけ(=教育)が必要です。

そこで、私が実際に受講した「こねこ塾」のセミナーを紹介しながら、子猫のしつけの大切さを考えていきましょう。

人と暮らすために猫に必要な6つのこと

猫が家族の一員として生涯幸せに暮らすためには、しつけ(=教育)が必要です。まず家族が猫という動物を理解し、猫の習性に合わせて生活環境を整え、人と暮らすために必要なことを教えていきます。猫に必要なものは次の6つです。

  • バランスの取れた食餌
  • 適度な運動
  • 安心して眠れる場所
  • 本能を満足させる遊び
  • 社会的刺激を含む豊かな環境
  • メディカルケア

1つずつ説明していきましょう。

バランスの取れた食餌

猫は偏食傾向がありますので、子猫のときに食べたものが、その猫の一生の食事の好みに影響すると言っても過言ではありません。

「これしか食べない」ということのないように、子猫のときはいろいろなフードを試してみましょう。総合栄養食と書かれたキャットフードは栄養のバランスが取れていますので、総合栄養食を与えましょう。

適度な運動

猫の安全や健康を考えると、室内飼育が一番です。猫は本来外で生活していた生き物ですから、室内で生活していても外と同じような刺激が必要です。特に高いところに登って、見渡すことが大好きですから、上下運動ができる環境を作ってあげましょう。

本能を満足させる遊び

生まれつき持っている行動をとるとき、動物は幸せを感じることができます。猫は獲物を探して捕らえるという本能がありますから、このような習性を満たしてあげられるような遊びが必要です。

社会的刺激を含む豊かな環境

猫は単独行動をする動物ですが、子猫のときから人間や他の動物と接することで社会性を学ぶことができます。猫のさまざまな要求を人間社会に適応するかたちで満たしてあげる工夫が重要です。

メディカルケア

生き物ですから健康管理は必須です。子猫のときに必要なワクチン、検便。少し成長すると避妊去勢手術も考える必要があります。また、動物病院に慣れることも必要になってきます。

子猫教育で学ぶ5つのこと

私が受講したセミナー講師の獣医師は、病院で「こねこ塾」という、子猫の飼い主さんを対象に飼い方講座を開いています。その講座で教えていることは5つあります。

  • 猫のニーズを満たす
  • 人をかまない、引っかかない
  • 社会化
  • キャリーケースに慣らす
  • ハンドリング

1つずつ説明していきましょう。

猫のニーズを満たす

猫のニーズとは先に説明した6つのことです。人は猫の問題行動は猫に原因があると考えがちですが、実はこのようなニーズが満たされていないために起こっていることの方が多いのです。隠れる場所を作ってあげたり、狩猟本能を呼び起こすような遊びをしてあげるとよいでしょう。

人をかまない、引っかかない

かんだり、引っかくことは猫の本能的な行動です。このような行動パターンを身につけさせないことが大切です。そのためには、手足を使った遊びはしないことです。遊びにはおもちゃを使い、人の手足に来たら止まる・隠す・去るなどをして関心を示さないことです。

社会化

家族以外の人、他の猫や動物、動物病院など外の環境に慣れることが必要です。例えば、子猫をテーブルに自由にさせて、人は少し離れた場所から接します。人からではなく猫から近づけるようにします。そして、そばに来たら好物を与えるなどして慣らしていきます。

キャリーケースに慣らす

動物病院への通院や移動のためにキャリーに慣らしておくことが必要です。猫は環境の変化を嫌います。子猫のときからキャリーを使って初めての場所でもストレスを感じないように慣らしていきます。

ハンドリング

先ほど説明したメディカルケアを実践するために必要となります。体中に触る、爪切り、歯磨き、ブラッシング、投薬などを受け入れてくれるようにしておきましょう。このようなハンドリングができると、病気の早期発見や予防、そして治療や日常ケアに役立ちます。

歯ブラシを使ったハンドリングの方法

おもちゃを使って遊ぶこと・ハンドリングの必要性を説明しましたが、具体的に歯ブラシを使ったブラッシングをすることでハンドリングがスムーズにできるようになります。こねこ塾でも歯ブラシブラッシングを勧めていますので、セミナーで学んだことをまとめてご紹介します。

歯ブラシを使う理由としては、歯ブラシの感触は猫の舌でなめられたときの感触に似ているからです。また、歯ブラシの大きさも猫の舌の大きさに近いので、猫を細かくブラッシングするのに向いています。

歯ブラシブラッシングによるハンドリングのやり方を順番に見ていきましょう。

ステップ1. まずは歯ブラシブラッシングを好きになってもらう

歯ブラシブラッシングをするタイミングが重要です。猫がリラックスしてのどをゴロゴロ鳴らしているようなスイッチオフのときにします。このときに歯ブラシの気持ちいい感触を覚えさせていきます。

逆に、歯ブラシを手でつかんだり噛んだりしたときはスイッチオンのときですので、一旦中断して、オフのタイミングに再度挑戦してみます。

ステップ2. 体中を触る

スイッチオフのときに歯ブラシブラッシングが出来るようになったら、もう片方の手で他の場所を触れるようにしてみましょう。頭から手足の先、お腹も触れるようにしたいものです。嫌がったり手を噛んできたときは中止します。

ステップ3. 爪切りに挑戦

手足の先に触れるようになったら、肉球に進んでいきます。指先の肉球をつまむと爪が出てきますので、爪切りに近い金具などを触れさせて爪切りの感覚を覚えさせていきます。

ステップ4. 歯磨きをしてみましょう

歯ブラシブラッシングで気持ちよくなったら、そのままブラッシングをしながら口元を触っていきます。さらに唇をめくり、歯に歯ブラシをつけてみましょう。この場合も噛んでしまったときは中止します。

本格的に歯磨きをする場合は、歯ブラシブラッシングと歯磨きの歯ブラシは、違うものを使います。歯磨きには柔らかくてより小さいものがいいでしょう。

ステップ5. 応用編

猫に薬を飲ませられるようにしましょう。子猫のうちから薬を飲ませる練習をしておくと、投薬が必要になったときに問題なくあげられます。歯ブラシブラッシングを通じて、猫の全身を触れるようになり信頼関係もできていると、口を開けることもそれほど難しくないと思います。

猫の舌にはのどの奥に向かって刺が生えていますから、錠剤を舌の後ろの方に置いてあげると自然と喉に落ちていきます。

4つの宿題をクリアすると、さらにいい子になります

こねこ塾では受講した飼い主さんに次の4つの宿題を出すそうです。

  • 1日1回キャリーの中でご飯をあげる
  • 1日1回タオルの上でご飯をあげる
  • 寝てる時、食べている時に体中を触る練習
  • 1日2回はおもちゃを使って遊ぶ

1つずつ補足説明していきます。

1日1回キャリーの中でご飯をあげる

キャリーケースに慣らすために、キャリーの中は楽しいところだという認識を持たせます。キャリーはご飯を安心して食べられる場所であり、決してお仕置き部屋ではないのです。

1日1回タオルの上でご飯をあげる

タオルの上も同様です。自分の臭いがついたところでは安心していられるということを覚えさせます。

寝てる時、食べている時に体中を触る練習

歯ブラシブラッシングでもやりましたが、猫の体中を触れるようになると手を噛んだりしなくなりますし、日常のケアや病気の早期発見にも役立ちます。

1日2回はおもちゃを使って遊ぶ

人の手や足で遊ばせていると、それがおもちゃになってしまい、人の手足が噛んだりけったりする対象となってしまう恐れがあります。少なくても毎日15分×2回、おもちゃを使って遊んであげましょう。

次の画像は、私がこのセミナーを受けたあと、子猫を飼い始めた友人に書いてあげたものです。絵は下手ですが、要点を分かりやすくまとめてみました。

子猫のしつけ画像
子猫のしつけ画像2
子猫のしつけ画像3
子猫のしつけ画像4
子猫のしつけ画像5
子猫のしつけ画像6

尚、宿題の画像で「タオルの中」と書いていますが、正しくは「タオルの上」です。

猫にもハズバンダリートレーニングが必要です

ハズバンダリートレーニングという言葉を知っていますか?goo国語辞典によると「husbandryとは農業・畜産の意、世話・治療などがしやすいよう、飼育動物に行うしつけ。笛の音や手の動きなどの合図で特定の姿勢をとらせるなど。受診動作訓練。」と定義づけられています。

主に動物園や水族館で行われている、人間と動物が協力して行う健康管理の方法です。動物が日常行う行動を自発的に取らせるように訓練しておくと、健康チェックや獣医師の診察のときに、人間も動物も安全で無理なく行うことができるという方法です。

このようはハズバンダリートレーニングは、犬や猫にも必要だと最近は言われるようになっています。

犬や猫の小動物は、動物病院で病院のスタッフに押さえてもらって診察しますが、先ほど説明した体中を触れるようになるハンドリングができると、猫もストレスなく動物病院で診察することが可能となります。

猫の場合は、特に、手足の先、お腹、口の中に触られることを嫌いますので、チャレンジしてみましょう。

手足の先

猫は獲物をつかまえるとき、するどい爪で相手を押さえ込みます。そのため、手足の先はとても敏感です。ですので爪切りが苦手な猫も多いのです。爪が伸びすぎてしまうと、最悪、肉球に突き刺さってしまい、歩くと痛いため歩けなくなってしまう場合もあるのです。

お腹

猫の乳腺腫瘍はほとんどが悪性です。(犬は半々の確率で良性か悪性です。)避妊手術をしたメス猫は発症率は低いですが、早期発見、早期治療のためにもお腹をさわってしこりがないか発見できるといいですね。

口の中

口内炎や歯周病など口の中のトラブルは非常に多く見られます。歯周病については、こちらの記事を参考にしてください。

子猫からのしつけが猫との幸せな暮らしを約束します

猫を飼っている人は、猫と人間が良い関係を築き、両方が幸せに暮らしたいと思っています。
猫は犬のようにしつけ教室やしつけインストラクターがいないため、どうしても情報不足になってしまいがちです。

人が猫の習性を理解し、教育してあげることで、猫も人間ももっと幸せになれると思います。特に、子猫の時期の教育は大切なので、子猫を飼っている方はぜひ子猫教育をはじめてみましょう。

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