元気はあるのに猫が血尿を出した!すぐに病院に行くべきケースとは

猫のトイレ掃除をしていて、赤いものが見えた時、ドキッとしますよね。尿で固まった砂が赤やピンク、あるいは茶色に染まっている場合、ご想像のとおり血尿を疑う必要があります。

初めて見る飼い主さんは驚くかもしれませんが、実は猫にとって血尿はありがちな症状です。しかし、ありがちとはいえ、中には放っておくことで致命的な事態になるケースも存在します。

仮に元気があっても油断せず、できるだけ早めに病院へ連れて行きましょう。血尿を引き起こす代表的な病気や、血尿が出てしまったときの注意点などをまとめました。

元気があっても注意!猫の血尿は泌尿器系の病気のサイン

猫が血尿を出す場合、その原因の多くは泌尿器系の病気です。代表的なところでは、膀胱炎や尿路結石があります。

膀胱炎の場合、猫が尿を溜めておく膀胱、そして尿を排泄する尿道の先までの間に炎症が起き、その炎症部分からの出血が尿に混ざり血尿となります。尿路結石では、尿の中に含まれる成分が凝固し、結石となります。

結石が膀胱や尿管などを傷つけてしまい出血し、同じく血尿となるのです。猫にとってこのような泌尿器系の病気はよくある病気ではありますが、決して放っておいてよい病気ではありません。

また、仮に自然治癒したとしても、泌尿器系の病気は原因を取り除かないと再発を繰り返すこともしばしばです。

さらに、例えば尿路結石の場合、結石が大きくなり、あるいは増えて尿道に詰まると「尿道閉塞」といって尿が出なくなることもあります。放置しておけば、猫にとって致命的な尿毒症という病気になり2、3日で命を落とすこともあるのです。

泌尿器系の病気が原因で血尿を出している場合は、元気や食欲があり、トイレでいつもと同じ量の尿が出ている状態であれば1日程度の猶予はあります。すぐに動物病院へ行けない場合は、電話で確認してみるのもおすすめです。

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元気があっても危険!?中には一刻を争う事態の場合もある

泌尿器系の病気以外では、感染症やタマネギ中毒、まれではありますが「がん」でも血尿を出すことがあります。

肝臓病の場合も肝臓で分解されたビリルビンという成分が尿中に表れオレンジ色になり、血尿のように見えます。あるいは、特に外歩きをしている猫だと知らない間に怪我をしていて、内臓器官が傷つき、血尿が出ることもあります。

このような場合は一刻を争う事態であることも多く、早期治療によってかなり予後が変わります。

さらに、猫が血尿を出した場合で特に緊急性が高いのが「血色素尿」である場合です。通常の血尿では尿に血が混じることで赤く見えます。

しかし、血色素尿の場合は尿に血が混じるのではなく、尿に破壊された赤血球の色素が混じることで赤く見えるのです。

つまり、血色素尿とは「体の内部で出血している」のではなく「体の内部にある赤血球が何らかの理由でどんどん壊れていっている」状態です。一見すると血尿と変わりませんが、血尿とは似て非なる症状であり、危険度や緊急性も高くなります。
  • 元気や食欲がなくなる
  • 全体に真っ赤な尿を出す
  • 嘔吐など血尿以外の症状がある

という場合は血色素尿の可能性が高くなります。一刻も早く病院を受診しましょう。

元気で健康な猫の尿はどんな色?血尿の見分け方

健康な猫の尿は薄い黄色です(ただし「薄い」と言っても、猫はもともとかなり濃い尿を出す体の構造をしていますので、色がほとんどついていないような場合は逆に多飲多尿の症状を疑う必要があります)。

また、排尿回数は成猫で1日に2~4回、尿の量は体重1kgあたり20~30ml程度が目安となります。猫が血尿を出した場合、この色と排尿回数、そして量が重要な情報となりますのでよく観察しましょう。

「血尿」というと「真っ赤な尿」を想像しますが、実は猫の場合、一口に血尿といってもその色は様々です。

  • 全体的に真っ赤
  • 黄色い尿の一部に赤い色が混ざる
  • ピンク色
  • 尿の色が濃いだけにも見えるような茶色
  • 茶色よりやや明るいオレンジ色

など様々な色があり、これらは全て異常な状態です。また、一見血尿には見えない場合でも、獣医さんによって、尿検査してもらうことで潜血反応が出る場合もあります。

日頃から健康ないつもの尿の色や量を確認しておき、「いつもと何だか違う」と思ったらすぐに病院へ行き検査してもらう方がよいでしょう。

また、トイレ砂の色が濃いと、見分けがつきにくくなり発見が遅れやすくなります。

できるだけ薄い色のトイレ砂を使用するか、あるいは白い吸収シートを採用したシステムトイレを利用すると、格段にわかりやすくなるのでおすすめです(システムトイレの場合は、掃除の度にトレーを必ずチェックしましょう)。

キラキラしているのは結石!尿の見た目にも注意しよう

尿の異常は色だけでなく、濁り方でもわかります。健康な尿は濁りません。濁っている場合、尿の中に結石など、なにか通常出ないはずの成分が混ざっている可能性が大です。

また、トイレ掃除の時にはおしっこで固まった砂、あるいはトイレシートの表面がキラキラしていないかどうかをよく確認しましょう。実は結石は肉眼でも確認できることがあります。尿中に含まれた結石が光を反射してキラキラとするのです。

尿の色が一見普通でも、実は結石ができているということもあるので普段から注意しましょう。

スムーズな検査のために。動物病院へ行く前のチェックポイント

たとえ元気があったとしても、猫が血尿を出したら動物病院を受診するべきです。受診の際はスムーズに病気を特定するために、あらかじめ以下のような事柄に気をつけるとよいでしょう。

できれば採尿したものを持っていこう

血尿に気がついた時には既に砂やシートに血尿が染み込んだ後で、採尿は難しいかもしれません。

しかし、もしその場ですぐに動物病院に行くことができず、病院に行くまで間がある場合は一度採尿を試みることをおすすめします(採尿の方法については後述)。

また、血尿の染み込んだ砂やシートをそのまま持っていく、あるいは写真に撮っておくのもよいでしょう。

尿検査にはあくまで尿そのものを採取する必要があるため、砂やシートでは尿検査には使えませんが、色や量を判断するのには役立ちます。

猫の排尿の様子を観察しよう

血尿を出した場合、猫の排尿の様子をよく観察しましょう。ただし、猫に悟られないことが重要です(猫はデリケートなので、排尿中の視線をストレスに感じてトイレに行きたがらなくなってしまう可能性があります)。

  • 排尿の際に鳴いたり苦しそうな表情をする(排尿時に痛みを伴う)
  • 何度もトイレに行く(残尿感)
  • トイレで固まっている時間が長い(なかなか尿が出ない)
  • トイレでない場所で粗相してしまう(トイレが汚くて使いたくない)
  • しきりに尿が出る部分付近を舐める(違和感があり気になる)

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血尿時はもちろん、たとえ血尿がなくても、これらの様子が見られた場合は病気の可能性があります。これらは診断をする上で重要な手がかりですので、確認し獣医さんに報告しましょう。

他に症状がないかを確認しよう

血尿が出た場合、血尿そのものやトイレ周りの様子に目が行きがちですが、他にも

  • 食欲、元気があるか
  • 嘔吐していないか
  • 肉球や歯茎、耳などが正常な色をしているか
  • 外傷がないか
  • 触ったり、抱っこして痛がるところがないか

といった部分についても確認しておきましょう。また、血尿の場合は中毒の可能性もあるので、

  • たまねぎなど猫が食べてはいけないものを食べた形跡がないか
  • 普段何を食べているか(最後に何を食べたか)
  • その他変わったことがなかったか

といったことにも注意しましょう。

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突然指示されて慌てないために。猫の簡単な採尿のしかた

血尿を出し、動物病院を受診する場合、尿検査のために採尿が必要になることがあります。検便ならまだしも、採尿となると慣れないうちは難しいものです。そこで、できるだけ簡単な採尿方法をご紹介します。

ラップを砂の上に置いておく

採尿するための用意がなにもない場合、一番簡単なのはラップです。適当な大きさに切ったラップ、あるいはラップを被せた小さめの容器を猫が用を足す部分に置いておきます。

尿がかかったらさっと取り外して、ビニール袋にいれるか、スポイトなどで尿を採取します。ラップは薄くて見えにくいので、排尿中に邪魔されたくない猫でも採取しやすい方法です。

採尿用のシートを敷いておく

採尿用のシート(あるいはキット)が、ネットショップで販売されています。また、動物病院でもらえる場合もあります。

採尿用のシートについては、猫が普段用を足す場所に敷いておき、猫がシートに尿をかけたら、シートを取り出して絞ることで尿を採取できるという仕組みです。

猫が用を足す瞬間を待ち構えていなくていいので簡単ではあるのですが、シートを警戒して猫が用を足さなくなってしまう可能性もあります。

ガーゼやコットンを置いておく

医療用に清潔なガーゼやコットンがあれば、それをトイレの中にいれておくという方法もあります。

採尿用のシートを使う場合と同じような仕組みで、こちらも染み込んだものを絞ることで採尿することができます。また、絞る前のものをそのままビニール袋にいれて病院に持っていってもよいでしょう。

排尿のタイミングに合わせて容器を差し出す

猫はいったん尿を出し始めると動くことができません。それを利用し、用を足し始めたことを確認した上で、猫のお尻の下に適当な容器を差し出せば、そのまま新鮮な尿を採取することができます。

ちなみに、出る前に差し出してしまうと逃げてしまうので気をつけましょう。また、あまりに何度もやってしまうと猫も学習してしまい、トイレを使いたがらなくなってしまうので注意が必要です。

システムトイレを使う

採尿をする上で一番簡単な方法はシステムトイレを使うことです。システムトイレは猫の便と尿を別々に処理するタイプのトイレになります。トイレの底面にトレーが付いており、尿は砂を通過してトレーの中に落ちる仕組みです。

通常は専用のペットシートを敷いて使用するのですが、あえてシートを敷かないことで、トレーの中に尿をためることができます。

猫が用を足した後、飼い主さんはトレーを引き出して、トレーの中の尿を採尿用の器に移すだけでいいという手軽さです。

採尿時に猫に一切の負担がかからないこともシステムトイレのメリットのひとつ。もし病気が長引いて定期的な採尿が必要になった場合、トイレ環境を整える意味も含めて、システムトイレの導入を検討してみるとよいでしょう。

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せっかくの苦労が水の泡?採尿時の注意点

せっかく採尿しても、状態が悪いと尿検査することができなくなってしまいます。採尿時に注意したい点をまとめました。

1回に最低でも小さじ1杯程度を用意しよう

尿検査には最低でも小さじ1杯(5ml)以上の量が必要です。病院によってはもう少し多めに必要なこともあります。できるだけ多くの尿を採取できるようにしましょう。

清潔な容器を使用しよう!

正しい検査結果を得るためにも、採尿に使う容器やシステムトイレのトレー、スポイト等は全て清潔で乾いたものを使用しましょう。

また、システムトイレの場合は新しい砂を使い、砂とは別に余計な消臭剤なども混ぜないように気をつけましょう(一度砂を通すため、尿が変質する可能性があります)。

3時間以内に持っていこう!

動物病院に尿を提出する場合は、採尿から3時間以内の尿がベストです。無事尿を採尿できたら、病院でもらった専用の容器、あるいは煮沸消毒した密封容器に入れて冷暗所に置きましょう。

また、どうしても3時間以内に持っていけない場合は、採取日時を記入して、変質を防ぐためすぐに冷蔵庫に入れて保存しましょう。

日頃のケアが大切!血尿を出した猫に飼い主さんがしてあげられること

血尿の原因となる泌尿器系の病気は、実は普段の猫の生活環境が原因であることがほとんどです。いくら投薬や食事療法を続けていても、生活環境を見直さない限り、再発を繰り返してしまうこともあります。

もし猫が血尿を出してしまった場合、飼い主さんは具体的に以下のような事柄に気をつけてあげるとよいでしょう。

トイレを清潔に保とう

猫が血尿を出した時、飼い主さんが真っ先に注意してあげたいのが猫のトイレの状態です。実はトイレの清潔さと泌尿器系の病気とは密接な関係があります。

猫はとても綺麗好きな生き物です。トイレが汚いと猫は排泄を我慢してしまいがちになります。トイレを我慢してしまうことで、余計に膀胱に負担がかかり、膀胱炎や尿路結石といった病気を呼び起こすのです。

また、トイレが汚いと菌が猫の体内に入り込み膀胱炎の原因となることもあります。もし猫が血尿を出してしまったら、飼い主さんは猫のトイレを確認しましょう。

清潔な状態でいつでも安心して使用できるトイレの環境を整えてあげることが、猫の膀胱炎や尿路結石といった泌尿器系の病気の予防に役立ちます。

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泌尿器ケアフードを与えよう

粗悪な材料を使った激安フード、結石の原因となるカルシウムやマグネシウムを大量に含んだフードなどは血尿を出したことのある猫にとって良くありません。

特に、尿路結石となった場合、多くは獣医さんによってストルバイト結石を溶かすための専用の療法食を指示されることになります。

基本的には獣医さんに指示された療法食を与えていれば問題ありませんが、治療が終わった後に再び血尿の原因となるような成分を多く含んだフードを与えると、再発の原因となります。

療法食を与え続けるか、獣医さんに相談の上、泌尿器疾患に配慮などと記載のあるフードを選んで与えるようにしましょう。

泌尿器系の病気の場合、投薬だけでなくこのような食事療法が中心となります。猫のフード選びに気を使うだけで、猫の泌尿器系の病気のリスクを大幅に下げることができます。

▼猫の泌尿器ケアのフードの選び方については、こちらを参考にしてください
猫の泌尿器疾患用フード、療法食の選び方と食事で気をつけたいこと

水をたっぷり飲んでもらおう

猫はもともと非常に濃い尿を出します。しかし、尿が濃くなると、尿中に含まれる成分が凝固して結石となる確率が高まってしまいます。

そこでできる限り普段から水をよく飲んでもらい、尿を薄めるようにしましょう。また、水を多く取ってもらうことで尿の量や回数を増やし、できてしまった結石を排出させる効果も期待できます。

水をより多く飲んでもらうためには、給水器を使用したり、水飲みボウルの個数を増やすとよいでしょう。

▼猫に水を飲んでもらう方法については、こちらもご覧ください
猫が水を飲まなくなった時の原因と対策。猫が飲みたくなる水とは?

運動などストレス解消に努めよう

猫の血尿の原因のひとつである膀胱炎は、実はストレスによって引き起こされることがあります。また、尿路結石も肥満で確率が上がると言われています。

そこでできるだけ毎日よくおもちゃで猫と遊んであげるようにし、猫のストレスを解消させてあげるとよいでしょう。特に室内飼い、単独飼いの猫の場合、運動不足になりがちなので気をつけましょう。

ストレスや肥満は膀胱炎や尿路結石以外にも様々な病気を引き起こしますので、運動させてあげることはそれらの病気の予防にもなります。

元気があってもなくても、血尿が出たら病院へ!家でもケアを徹底しよう

猫の血尿が出た場合、それは猫の体に何らかの異常があるサインです。一見元気があっても、放っておけば命に関わる場合もあります。血尿を発見してしまったら、できるだけ早めに必ず動物病院を受診しましょう。

また、血尿の原因となる泌尿器系の病気は、飼い主さんがトイレ環境を整えてあげたり、猫のフードに気を使ってあげることで、大きく再発のリスクを下げることができます。

猫は綺麗好きでトイレについてはデリケートな生き物ですから、日頃から清潔を保ち栄養バランスの整った食事を与えるように気を付けてあげましょう。

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