保護猫とはどんな猫のことでしょうか。ノラ猫、捨て猫、地域猫など最近はいろいろな呼び方がありますが、このような特定の飼い主がいない猫を保護した場合、保護猫と呼ばれます。自治体やボランティア団体などでは、保護猫に新しい飼い主を見つけてあげる活動を行っています。
保護猫とペットショップで売られている猫とは何が違うのでしょうか。保護猫のイメージをアンケート調査した結果を紹介しながら考えてみましょう。また、保護猫を譲渡する活動について、一連の流れをみながら、保護猫を家族にむかえるときの注意点なども考えていきましょう。
保護猫とはどんな猫?
最近よく耳にするようになった、保護猫という言葉ですが、具体的にどんな猫を指しているのか考えてみましょう。
保護猫の定義とは
文字通り、保護された猫です。もう少し詳しく言うと、ノラ猫、捨て猫、飼育放棄された猫が、自治体の保護施設やボランティア団体などに引き取られて、保護されている猫のことです。自分で拾ったりして保護した場合や、人づてにもらった場合は当てはまりません。
ですので、猫を入手するときは、大きく3つの手段に分かれるでしょう。
- 保護猫を引き取る
- ペットショップより購入
- 拾う/もらう
メディアの影響もあり、以前に比べて保護猫を引き取って飼う方が増えてきました。「アニマル・ウェルフェアサミット2017」という動物福祉の啓発イベントが開催され、横浜商科大学とアニマル・ドネーションが実施した調査の結果が発表されました。
そこにも、保護猫を家族にむかえる人が増えている現状が反映されています。
調査内容:インターネットによる全国の現在犬猫を飼育している人が対象、有効回答921人、実施期間2017年7月6日から7月16日
今飼っている猫を入手した先はどこですか?というアンケートの結果は次の通りでした。
- 保護猫を引き取る 53%
- ペットショップより購入 9%
- 拾う/もらう 38%
ちなみに犬の場合は、拾う/もらうといったケースはなく、保護犬 44%、ペットショップより購入 56%でした。
実際の調査から分かった、保護猫のイメージ
保護猫は、その生まれ育ちが明確でないからか、病気や障害があるといったイメージがあるようです。その理由としては、次のようなことが考えられます。
ノラ猫・・・外での生活→衛生面での問題→病気を持っている?
捨て猫・・・手離した理由→猫に問題→障害がある?慣れない?
ただ、先ほど紹介したアンケート結果では、保護猫を引き取った理由で一番多かった回答が「かわいかったから」でした。犬の場合は「かわいそうだったから」が一番の理由でした。猫も次点は「かわいそうだったから」でした。
猫の場合、身体的な問題や不憫であろうという感情的な理由よりも、見た目のかわいさが勝っているようです。
さらに、保護猫を飼っている人と、保護猫ではない猫を飼っている人とでは、保護猫に対してどういったイメージの違いがあるのか、細かい調査結果があります。
保護猫のイメージ | 保護猫ではない猫を飼っている人 | 保護猫を飼っている人 | 差 | |
---|---|---|---|---|
1 | しつけがされていない | 2.4 | 2.0 | 0.4 |
2 | 人を怖がる | 3.2 | 2.9 | 0.3 |
3 | 人に慣れていない | 3.2 | 2.7 | 0.5 |
4 | 病気や障害がある | 2.8 | 2.6 | 0.2 |
5 | 医療費がかかる | 2.6 | 2.5 | 0.1 |
6 | 栄養や健康状態が良くない | 2.6 | 2.5 | 0.1 |
7 | 衛生的ではない | 2.4 | 2.0 | 0.4 |
8 | 子犬/子猫ではない | 2.1 | 2.7 | △0.6 |
9 | 雑種が多い | 3.1 | 3.6 | △0.5 |
この結果では、保護猫は人に慣れていないというイメージの差が顕著に出ました。つまり、一般的に保護猫は人に慣れないだろいうと思われていますが、実際に保護猫を飼ってみると、そうではなく、保護猫だって人に慣れます!ということが言えそうです。
猫たちにとってみれば、慣れない環境が怖かっただけなのです。愛情をかけてあげると、人にも慣れてくれますので、個人的には、保護猫も普通の猫と一緒だと思っています。
ボランティア団体などの保護猫活動を具体的にみてみましょう
それぞれの団地によって活動内容は異なりますが、おおよそ次のような流れになっています。
- 猫を保護する
- 健康チェック、人に慣らすための生活訓練
- 譲渡会の開催
- 希望者宅でのトライアル
- 正式譲渡
それぞれについて説明します。
1. 猫を保護する
各団体が保護する方法は、自治体の施設に持ち込まれた猫を引き取ったり、団体に直接依頼があって、個人や自治体から保護したり、さまざまあります。近年では、災害などで飼い主と離れ離れになった猫を引き取るケースもあります。
某団体では、自治体に持ち込まれた猫は全て引き取ります!という強い使命感のもとに活動しているところもあります。ただ、引き取ったあとの管理を考えると、むやみに受け入れるのも良し悪しかという思いもあります。
2. 健康チェック、人に慣らすための生活訓練
引き取った猫は、健康チェックをします。その際、避妊去勢済なのかもチェック項目の1つですが、子猫の場合は避妊去勢手術をしてから譲渡するか、手術をすることを条件に譲渡する場合があります。なかには、自然のままがいいという理由で避妊去勢をしない団体もいます。
譲渡するには、シャーシャーと怖がってばかりの猫はもらい手がつきませんし、猫にとってもストレスになりますから、人に慣れておかなければいけません。団体のシェルターでお世話ができない場合は、預かり専用のボランティアさんが、人間の生活環境に慣れるようにお世話をします。
3. 譲渡会の開催
団体の施設やショップ、カフェ、動物病院などで、譲渡会を開催します。1つの団体で月1回ほどのペースで開催されています。事前にどんな猫が譲渡会に参加するか、ホームページなどで紹介していることもあります。
譲渡会の規模にもよりますが、私が参加した譲渡会の1つは、たくさんの人と動物でごったがえしていて、誰がスタッフなのか、どの動物が譲渡対象なのかよく分かりませんでした。たくさんの譲渡会に参加して、親切で気持ちよく対応してくれるところを見つけたいものです。
4. 希望者宅でのトライアル
譲り受けたい猫が決まったら、自宅でトライアルをします。約2週間の間、自宅で実際に生活してみます。家庭環境、家族全員の意見、既に先住動物がいた場合の相性などをチェックするための期間となります。
5. 正式譲渡
トライアルで問題なければ、正式譲渡となります。書類などにサインをして、家族の一員として一生を過ごすことになります。
譲渡会やカフェで出会いの場を広げる
団体が主催している譲渡会は、場所を借りて、およそ月1回のペースで開催されていますが、最近は猫カフェのようなスタイルで保護猫を紹介しているところも増えてきました。カフェですので店舗の営業時間に合わせて行くことが出来ますし、くつろぎながら猫を観察することができます。
一般の猫カフェはお客さんを癒すための猫たちがいますが、保護猫カフェは、新たな飼い主探しの場であり、売上が保護猫たちのケアや新たな保護活動の費用に使われたりします。
他にも、ネスレ日本のペットフード事業である「ネスレ ピュリナ」が「ネコのバス」を作り、移動もできる猫カフェで譲渡会を開きました。同社のブランドであるキットカット500円を購入するとそれが乗車券になります。企業もユニークな企画で保護猫の活動を後押ししています。
保護猫ドキュメンタリーの紹介
映像を通して、保護猫を知ることもできます。テレビでは「ザ・ドキュメンタリー『猫ブームの裏側 “ワケあり”猫の行く先は』」という番組がありました。“ワケあり”とタイトルにあるように、痛ましい姿の猫が紹介される場面もあります。特に保護猫カフェ「ねこかつ」の現状を知ることができます。
映画では「犬と猫と人間と」という作品があります。犬猫の殺処分の現状を発信したパイオニア的な作品です。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
保護猫をおむかえするときの注意点
新しい家族の一員として保護猫を譲り受けたあとで、トラブルにならないために、注意するべき点を説明します。次の2点に気をつけましょう。
- 情報収集(猫のこと、譲渡の条件など)
- 家族、先住猫、他の動物との関係
詳しく説明していきます。
事前の情報収集がこれからの猫との生活につながります
譲り受ける保護猫に関する情報は、どんな小さなことでも知っておきましょう。生年月日など分からないことも多いかもしれませんが、他のことでも小さな情報から推し量れることはたくさんあります。
例えば、遊び好きな猫であった場合、どんな遊びでどんなおもちゃが好きなのか、そのような情報でも今後の生活に役立つでしょう。
また、斡旋してくれる団体には、新しい飼い主さんの条件が必ずあります。必ず正直に、その条件に合っているかを報告しましょう。少しくらいは大目に見てくれるだろうと過信しないで、条件に合わない場合は相談のうえ、検討しましょう。
猫と接する周りの環境に気を配りましょう
保護猫に限らず、家族の一員として譲り受けるのですから、家族全員にかわいがられるようにしないといけません。特に小さい子供や介護が必要な高齢者がいた場合、お互いのストレスにならないように配慮が必要となります。
また、既に猫を飼っていたり、他の動物がいる場合は、トライアル期間中から存在を知らせておき、反応をよく見ておきましょう。
保護猫活動を通して言えること
自治体の発表によると、犬や猫の殺処分数が減っています。理由としては、保護猫に新しい飼い主をみつけてあげる活動が盛んになっていることが考えられます。ただ、自治体に持ち込まれた犬や猫の引き取りを、行政は拒否できますから、数字の減少は当然のことだといえます。
引き取り拒否された動物たちが幸せになっているのか、そもそも持ち込まれないようにする対策はあるのか、保護活動をしている団体の費用や運用内容は適切か、などたくさんの問題が考えられます。
これらのことが少しずつでも解消していき、本当の意味で保護猫が幸せになり、将来的には保護猫と呼ばれる猫がいなくなるような社会にしてきたいものです。