目を細め前足をぴんと伸ばし、喉をごろごろ言わせながら布団や毛布、時には飼い主の上に乗って足踏み・・・
猫好きな人なら、誰もがほっこりしてしまう猫のしぐさです。しかしどうして、何のために猫は足踏みをするのでしょうか?
そこには子猫時代に経験していた、お母さん猫との幸せな記憶が関わっていました。足踏みをしている時、猫はとても温かくて懐かしい気持ちになっているのです。
可愛すぎる猫の足踏み、その理由をこれからお話ししていきます!
猫の足踏み、それは授乳時にしていた行動の名残
乳飲み子時代の子猫は、おっぱいを飲むときに母猫のおなかを前足でふみふみします。こうすることで母乳の出を促しているのです。
この時の記憶は成猫になっても潜在意識下に残っており、それがことある毎に出てきて足踏みをさせるのです。
また、猫は足踏みする時に大抵「ゴロゴロ」と喉を鳴らしますが、これはそもそも子猫が安心していることを母猫に伝える「安心信号」です。
この「ゴロゴロ」と「足踏み」により、母猫のほうも「ちゃんとお乳を飲んでくれているんだな」と安心することができるのです。
このように、猫が足踏みしている時というのはとても幸福を感じていることになります。お母さんの優しさに包まれていた子猫の頃の、温かくて幸せな時間を思い出しているのです。
猫が足踏みしたくなるときの気持ち。基本は甘えたい時!
猫が足踏みをするとき、次のような理由があるようです。
- 母猫の感触と似たものに触れた時
- 寂しい気分になった時
- ストレスを感じている時
- 眠る前の睡眠導入行為
- 後ろ足での足踏みは狩猟本能
- お尻を高くあげたり、腰を振りながらの足踏みは発情に伴うもの
- 飼い主を母親だと思って、思い切り甘えたい時の足踏み
これから、猫が足踏みをする理由を順番に解明していきたいと思います!
母猫に似た感触のものに触れた時
やわらかい毛布や温かい飼い主のお腹の上、そんな場所にいると猫は安心してきます。
母猫の感触と似ているものに触れることで、授乳時に感じていた幸福感が甦ってきて自然と足踏みしてしまうのです。
そのまま眠ってしまうことが多いですが、満足して(飽きて?)どこかへ行ってしまうこともあります。
▼この足踏みはニーディングとも呼ばれています
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寂しい気分になった時、幸せだった子猫時代に戻って気持ちを落ち着かせようとしている
催促しても飼い主が構ってくれない時や、一緒に住んでいる仲良し猫が遊んでくれなかった時。なんだか寂しい気持ちになった猫は、足踏みをすることで満足感・幸福感を得ようとすることがあります。
うちの猫も私が忙しかったりもう一匹の猫が寝ている時など、若干寂しそうな顔をしながら足踏みしていることがあります。
そんな姿を見てしまってはもうダメです、全てを後回しにしてでも可愛がってあげることになります。
ストレスから心を解放するための足踏み
上の「寂しい気分」とやや重複しますが、何らかのストレスを感じている時に安心感を得ようと足踏みすることもあるようです。
例えばお腹が空いてきた時などは、母乳を飲んでいた頃の自分を思い出して慰めているのです。
うちでは常にカリカリを出してありますのでそういう理由はないのですが、あげればあげただけ食べてしまう猫がいる場合そうもいきません。
一日何度、と時間を決めてあげているお宅の場合は、その合間にお腹が空いて足踏みしていることもあるでしょう。
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飼い主を母猫だと思って甘えている
安心できる人間にだけ、猫は上に乗って足踏みをします。安心できる人間筆頭は、もちろん飼い主です。
飼い主は何の見返りも求めず、ごはんをあげて全力で可愛がってくれます。猫でも人間でも、そういうことをしてくれる存在は基本的に親だけです。
そう、猫は飼い主のことを母猫だと思っているのです。
母乳が出ないことは分かっているのに足踏みするのは、要するに子猫時代を思い出して甘えているということです。思い出すというより、子猫の心そのものになっているのかも知れません。
また、猫の肉球からは自分の縄張りを示すフェロモンが出ています。飼い主の上で足踏みすることで自分の匂いを着け、「お母さんは自分のもの!」と主張する意味もあるのです。とってもいじらしいですね。
人間にとっても猫にとっても至福の時ですので、存分に甘えてもらいましょう。
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睡眠導入行為としての足踏み
眠い時に、いわば睡眠薬代わりとして足踏みすることもあります。
うちの猫も一度私の上で足踏みした後で、お気に入りの寝床に移動して眠るというパターンをとることがあります。そのまま私の上で眠ることが多いですが、それはその時の気分なのでしょう。
後ろ足での足踏みは狩猟本能によるもの
たまに、後ろ足で足踏みをする猫がいます。
おっぱいを飲む時は後ろ足を使いませんから、これはまた別の理由が混ざっていると考えられます。実は猫が獲物を狙う際、身を低くして後ろ足で足踏みをするのです。
これは人間でいうと格闘家のステップみたいなもの。タイミングを計りつつ、即座に動けるように身体を慣らしているのです。特に獲物やおもちゃもないのに後ろ足で足踏みする場合は、甘えと狩猟本能を同時に満たしているのかも知れません。
▼猫が狩りをする時のことを思い出しているんでしょう
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発情による足踏み
これもまれですが、発情に伴う足踏みというのがあります。主に雌猫の行動で、この場合はお尻を高くあげての足踏みになります。雄猫でも腰をふりながらの足踏みは、やはり生殖本能に関わっているといわれます。
避妊手術をすればそういった行動はしなくなるのですが、猫によっては手術後も名残として続くことがあるようです。
うちの猫がしていた4本足での足踏み
狩猟ではないのですが、うちの猫が後輩の猫を襲う直前によく4本全ての足で足踏みしていました。その飛びかかる寸前の画像がこれです
すごい目で見ています。しかし、これはもちろん本気で攻撃しようとしている訳ではありません。襲うといっても「首の後ろに噛みついて引っ張る」という、いわゆるマウンティング行為でした。
マウンティング行為には「自分の方が上なんだぞ」と誇示する意味があるといわれますが、どうも可愛さ余っての行動のようにしか見えませんでした。実際よく可愛がっていましたし。
引っ張られた子はそのあと激怒して引っ張った子を追いかけ回す、というのがいつものパターンでした。この子は猫にしてはかなりしつこく、5分~10分は追いかけ回していました。
引っ張った猫にしてみたら、ここまでを含めての遊びだったのかも知れません。
▼発情に伴うマウンティングについての記事はこちらです
猫がマウンティングする理由と対策。猫の関係性を理解しやめさせよう
野良猫が足踏みする姿を見たことはない
人に飼われていない野良猫は足踏みをしないようです。私がたまにお手伝いしている猫シェルターにも元野良猫がいっぱいいますが、そのほとんどがよほど懐かないと人間には甘えてきません。
足踏みをしている姿も見たことがないです。もしかしたら猫同士でこっそりとやっているのかも知れませんが。
野良の子猫はある程度の長い期間母猫と一緒に暮らしているため、十分な愛情をもらっていたと考えられます。
そして親離れ・子離れした後は自力で生活せねばならず、甘えている余裕もなくなります。
飼い猫にはずっと親代わりの飼い主がいて、ずっと甘え続けることができます。それと対照的に野良猫は自活のため精神的に自立する必要があるので、このような甘えたしぐさはしなくなるのです。
逆に言うと、飼い猫はずーっと甘えたがりの赤ちゃんということになります。猫にとっては甘えるのが仕事みたいなものですので、成猫になったからといって突き放さず、赤ちゃんを相手にするつもりになって接してあげましょう。
ちなみに、時たま野良猫の中にも異常なまでに人懐っこい子がいます。地域猫活動などで人間に面倒を見てもらっていることを自覚している子や、そもそもなぜだか人間好きな子です。
私の知っている猫で母猫からはぐれた野良猫がいるのですが、人間を見るとすりすりと近寄ってきて自分から保護されました。
とても愛嬌のある子ですぐに里親さんが見つかりましたが、すごく頭が良いか、生来の性格なのかも知れませんね。
また、初めて会った私の身体によじ登って来た野良の成猫もいました。もともと人間に可愛がられていた子だったのかも知れません。
飼い猫なのに足踏みしないのは、子猫時代に母猫からいっぱい愛情をもらっているから
飼い猫でも足踏みしない猫はいるようです。例えば上で書いたように、保護された野良猫を引き取った場合などは足踏みしないことが多いでしょう。
そうではなく子猫から飼っているのに足踏みしない、という場合にはその子が精神的に自立しているためだと思われます。
子猫時代に母猫と十分な時間を過ごし、甘えるだけ甘えた猫はきちんと親離れできています。ですので、大人になってまで子猫のように甘えるということをしないのですね。
飼い主としては寂しい気もしますが、その子は幸せいっぱいの子猫時代を過ごせたということです。ほとんどの猫が早い時期に母猫から引き離されていることを考えたら、むしろ喜ばしいことだと思ってあげましょう。
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ウール製品を噛みながら足踏みしている場合は注意が必要です
足踏みは母乳の出を促す行為ですので、その時は毛布や飼い主の服などを乳首に見立ててちゅうちゅう吸うことが多いです。
いわゆる「甘噛み」でとても可愛らしいのですが、それがウール製品の場合は繊維を飲み込んでしまっている場合があります。
足踏み行為とは別に「ウール・サッキング」という異常行動があるのですが、これはウール製品を好んで食べてしまう猫のことをいいます。
足踏みでそこまで食べてしまうこともないかと思いますし、ほとんどの場合飲み込んだ繊維は便として排泄されます。
ただし稀に腸管に詰まって手術が必要になるケースもありますので、吸いついている箇所が破れてきたり繊維がなくなっているような場合には注意が必要です。
その時はウール以外の、繊維が取れにくい材質の布に変えてあげるのも良いでしょう。
人間の上に乗ってくる場合は木綿のシャツにも吸いついてきますので、必ずしも「モフモフ」でなければダメということもないようです。良く観察し、心地良く安全な足踏みをさせてあげましょう。
飼い猫はずーっと子猫、そしてお母さんはあなたです
猫の足踏みの考察、いかがでしたでしょうか。意外な理由もあれば、「やっぱり」と感じたものもあるかと思います。特に「甘えている」というのは人間から見ても一目瞭然ですよね。
種は違えど、動物同士にはそういった信号を敏感にキャッチする能力があるようです。
足踏みをしている猫は、幸せだったお母さんとの記憶を思い出しています。全てが満ち足りていた、子猫時代の気持ちを思い出しているのです。
そしてあなたに足踏みをする時は、あなたをお母さんと思って甘えています。こんな飼い主冥利に尽きることはありませんよね。
次に足踏みされた時はぜひ、あなたもお母さんになりきって思い切り可愛がってあげてください。きっとその気持ちは猫にも伝わるはずです。もっとも私に言われなくても、猫好きのあなたならいつもそうしているかも知れませんが。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
あなたとあなたの猫ちゃんが、ずーっと幸せに暮らせますように!