ペットの寿命が延びている今、腫瘍を患う猫ちゃんは以前より増える傾向にあります。「腫瘍」というと、人間に置き換えてみても、やはり、とても大変な病気だという印象がありますよね。
腫瘍には良性のもの、悪性のものがありますが、残念なことに猫ちゃんの場合は悪性のケースが多いのが特徴です。悪性腫瘍は直接生命にかかわる病気ですが、それでも早期発見により完治が可能なケースもあります。
猫に多い腫瘍にはどんなものがあるのか、早期に発見し治療するためには、飼い主として何をすべきなのかなど、腫瘍の基本的な知識と共にお伝えします。
そもそも「腫瘍」とはどういうもの?
腫瘍とは体内の細胞が勝手に増殖してしまう状態をいいます。
良性の腫瘍と悪性の腫瘍(がん)に区別されますが、悪性の方が増殖性が強く、転移や再発の可能性があります。
良性腫瘍は境界が明瞭であるのに対し、悪性腫瘍は明瞭な境界を作らずに周囲の組織を破壊しながら増殖します。
猫ちゃんに多い悪性腫瘍4つ
腫瘍は全身に出来る可能性があり、種類も様々です。中でも、猫ちゃんが発症しやすい悪性腫瘍は次のようなものがあります。
リンパ腫
リンパ球のがん、いわゆる「血液のがん」で、様々な部位にできる可能性があります。体の内部で進行するため、見つけることは非常に困難です。腫瘍の出来る部位によって症状は異なり、食欲不振、体重の減少などが見られます。
発病は猫白血病ウイルスが関与することもあります。
▼猫のリンパ腫は飼い主さんが触って分かるものもあるので、コミュニケーションを兼ねてチェックしてあげましょう
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【予防法と治療法】
原因の1つである猫白血病ウイルス感染症をワクチンで予防しておきましょう。治療は抗がん剤治療と放射線治療が中心です。
肥満細胞腫
ヒスタミンを出している肥満細胞が腫瘍化したもので、内臓に出来る腫瘍と皮膚に出来る腫瘍があります。
内臓に出来るものはほぼ悪性といわれていますが、皮膚にできるもの(首回りや頭部が多い)は良性のものも多いです。
若いシャム猫の発症例が多いとされています。
【治療法】
患部を切除、同時に放射線治療を行うこともあります。
乳腺腫瘍
乳腺にできる腫瘍。猫の場合は約9割が悪性といわれ、出産経験の有無にかかわらず7歳以上のメス猫がなりやすい疾患です。
乳腺がある箇所に、ぼこぼことしたしこりができる、乳頭から黄色っぽい液が出るなどの症状がみられます。肺やリンパ節への転移が多いです。
【予防法と治療法】
生後1年以内に不妊手術を行えば、ほぼ100%予防は可能です。治療は手術で腫瘍や乳腺を切除します。その後、必要に応じて放射線治療、化学療法を行いますが、他の部位に転移がある場合は取りきれないこともあります。
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扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん
皮膚や粘膜を構成する扁平上皮にできる腫瘍で、皮膚に出来るものは紫外線の浴びすぎが原因のことも。
外出する白猫が特に紫外線の影響を受けやすく、発症しやすいといわれています。まぶたや鼻、耳などに炎症やしこりが出来ます。
口腔内に出来る場合もあり、その場合は歯茎や舌などにしこりが出来たり、ただれたりします。口臭やよだれが病気のサインになることも。
【治療法】
腫瘍が出来た部分を中心に切除、抗がん剤治療、放射線治療を同時に行うこともあります。
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悪性腫瘍の治療には2つのパターンがある
愛猫が悪性腫瘍の診断を受けた場合、次の2パターンの治療方針が提示されるでしょう。おおまかな2種類の治療パターンをご紹介します。
根治治療
完治を目的とした治療。腫瘍が転移のない状態で、外科的切除をしやすい部位であれば、根治治療が可能です。
緩和治療
根治が難しいがんに適応される、症状改善のための治療。苦痛の軽減や機能不全の回復を目的に、具体的には、外科療法、放射線治療、化学療法の3つから単独、あるいは組み合わせての治療になります。終末期治療も含まれます。
治療計画提示の際に飼い主さんが確認すべきこと3つ
獣医師は、腫瘍の進行状況や猫ちゃんの年齢、飼い主さんの希望などを考慮し、治療計画を提案します。
その際、飼い主さんが確認しておくべきことは、
- 現在の猫ちゃんの状態と今後の見通し
- 治療の際のリスク(副作用など)
- 診療にかかる費用
などです。
費用については、動物病院の診療はすべて自己負担なので、治療法によっては非常に高額になるケースもあります。特に緩和治療の場合は治療が長引くことが多く、飼い主さんの経済的な負担も大きくなります。
負担軽減のため、早めにペット保険加入を検討してみても良いでしょう。
▼猫のペット保険の詳しい内容については、こちらをご覧ください
あなたの猫にペット保険は必要?ペット保険の選び方・市場大手の比較
腫瘍の共通した初期症状をチェック。早期発見のためにしてほしいこと
腫瘍を完治するには、初期の段階で気づくことがとても重要です。多くの腫瘍に見られる初期症状には次のようなものがあります。
しこりがある
皮膚に近い部分の腫瘍(乳ガンなど)であれば「しこり」として確認できます。早期発見には飼い主さんの触診での全身チェックが有効です。ブラッシングやスキンシップの際には、是非、チェックしてあげましょう。
出血の影響がある
身体の中に腫瘍ができると出血が起きます。そのため、便に血が混じったり(腸の腫瘍)血尿になったり(腎臓、膀胱の腫瘍)また、貧血によるふらつきが見られたりします。
体重が減少する
体重の減少が著しい場合は、腫瘍発生の可能性があります。
もしも気になる症状があったり、しこりをみつけた際は、たとえ小さいものでも動物病院で診断を受けましょう。(しこりが急激に大きくなっているようなら、迷わずにすぐに受診してください。)
また、腫瘍のタイプによっては触診では見つけにくい場合もあるため、日頃の全体的な健康チェックが大切になります。そのため、高齢の猫ちゃんの場合は、積極的に定期健診を受けることをお勧めします。
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後悔しない治療のために飼い主さんができること
動物医療の発達に伴い、治療の質も向上し、治療方法の選択肢も以前より増えています。腫瘍科認定医の資格を持つ獣医師さんもいますし、セカンドオピニオンを積極的に受け入れている動物病院もあります。
後から後悔をしないためにも、不安な点は獣医師さんと十分相談しながら、愛猫に寄り添う治療をしていきましょう。