猫は人間よりも早く成長し、あっという間に飼い主の年齢を抜かしていきます。おおむね7歳以上の猫をシニア猫とし、この時期になる頃から老猫としてのケアを必要としていきます。
愛猫の老いという現実を受け止めるのはつらいこともあります。現在の飼い猫の平均寿命は15歳位であり、シニア期を長く過ごす猫も多いのです。
愛猫に老後を元気で過ごしてもらうためにも、ケアは不可欠なものとなるのです。猫が歳を取った時に必要な事を、自分の経験を交えながらお伝えしていきます。
猫の寿命が伸び、猫の介護が必要となった
ここ数年、昔は数少なかったペットの介護用品の種類も増えています。
それは犬や猫といったペットが長生きをするようになったからであり、年を取ったペットをしっかりケアすることが飼い主の役目でもあります。
江戸時代、10年(地域によって年齢は異なる)生きた猫は猫又になるという伝説が示す通り、昔は猫が10年以上生きるのはまれでした。
戦後、医療が発達しペットは家畜ではなく家族であるという認識が高まり、猫の平均寿命はどんどん伸びていきました。
シニア期に入った猫に特に注意することは、食事と環境と病気です。項目ごとに、気を付けていきたいことをあげていきます。
7歳を過ぎた頃からシニアフードへ切り替えを
若い頃は沢山食べていた猫でも、年齢と共に食欲が落ちていきます。若い頃は体を作る為に体が栄養を欲する為食欲旺盛でしたが、ある程度年を取ると体の成長も止まり代謝が低下していきます。
年を取ってくると必要以上の栄養は必要なくなるため、体が沢山の食事を受け付けられなくなるため、自然に食欲も低下していくのです。
人間でも、10代の時はお腹がすいて沢山ご飯を食べたけれど、20代半頃からあまり沢山食べられなくなったという経験がある方は多いと思います。それと同じ理由なのです。
もちろん必要な栄養は取らなくてはなりませんので、量よりも質に重点を置いてシニア食への切り替えをしていきます。
食べやすいフードがどれなのかを見極める
食欲が低下し固形のフードを食べてくれない場合、ペースト状になった流動食もありますので、どの食事が合うのか試行錯誤しながらシニア食に切り替えていきます。
ある日を境に突然すべてシニア食に切り替えなければいけないということはありませんので、猫の健康状態を確認しながら食べやすい食事を見つけていくようにしましょう。
リンの取り過ぎは腎臓に負担をかける
注意したいのはフードの成分です。病気の項目で詳しく説明しますが、老猫がかかりやすい病気の1つに慢性腎不全があります。
腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、ミネラルの1つであるリンを多く摂取する事により腎臓に負担をかけてしまうのです。
気づかないうちに腎臓の機能が低下している場合もありますので、腎臓が悪い猫は特に食事が重要になります。
塩分が高い食事も腎臓に負担をかけるため、人間用の加工肉やかつおぶしなどは厳禁です。
食事の器の高さはちょっと高めで衛生の良い状態を心掛ける
食事の内容だけでなく、食事環境そのものも変えていかなければなりません。
年を取ってくると首を下げて食事をとるのがおっくうになってきます。食事の器を台に乗せて、少し高めにしてあげると食べやすくなります。
高さは猫によりそれぞれ好みが違いますが、我が家では猫壱というメーカーの脚付きフードボウルを使っています。この足の高さが7.5センチで、大人の猫が楽に食事ができる平均的な高さとして設計されているそうです。
市販の食器の中には高さを調節できるものあります。
水は複数個所に。水道水のカルキの臭いは抜くようにする
水分も同様です。水分も猫により好みが異なり、水道から直接飲むのが好きな猫もいれば、流しに溜まった水を舐める猫もいます。せっかくきれいな器を用意しても、その水はなかなか飲んでくれないということもよくあります。
水は複数個所に用意しいつでも清潔にしておくのはもちろんですが、水道水のカルキ臭さを嫌って飲まないこともあります。
この場合はカルキ抜きを試してみるとよいでしょう。
水道水をペットボトルなどに汲み置きしておき、2.3日放置するとカルキが蒸発していきます。
蓋をしてしまうとカルキが逃げていかないので、蓋を時々緩めたりラップで蓋をして楊枝でいくつか穴をあけて、空気の逃げ場を作るなどしておきます。
一番早い方法は100℃以上に沸騰させる事です。水道水を100℃以上40分沸騰させることで、カルキが蒸発していきます。沸騰後、冷まして飲み水にします。
ただし火を使う為、40分間見ていないといけないという必要性が出てくるため、生活スタイルによってカルキ抜きの方法を変えていくと良いでしょう。
猫が安心して寝られる空間を作る
次に老猫のための環境作りです。年を取れば取るほど睡眠時間が長くなっていきます。
元々猫は良く寝る生き物ではありますが、若い頃よりもさらに良く眠る様になっていきます。その為、安心して眠ることが出来る寝床を作っ手上げることが重要です。
猫は狭くて暗い場所を好みます。このような場所に入る事で、自分の巣穴の中にいるような気分になり落ち着くためと言われています。
猫用のハウスは、そのような猫の習性に合わせて設計されています。夏は熱がこもったりする場合もあります。
猫ちぐらという藁で出来た小さなかまくらの様なハウスがあり、通気性も良い為、夏と冬で猫ハウスを使い分けるのも良いでしょう。
特に複数の猫がいる場合は個々のハウスを用意することで、自分だけの落ち着いた空間をつくることになります。
トイレのふちは低めに。粗相用にペットシートも敷いていく
老猫になるとトイレもおっくうになってきます。足腰が弱ってくると、トイレのふちをまたぐのがうまく出来なくこともありますので、この場合はトイレのふちが低い物に切り替えます。
排泄自体が上手くいかなくなることもあります。トイレに間に合わなくなり、トイレ以外の場所で粗相をしてしまう事もあります。
スキンシップをしてあげることで、猫の体調の変化に気づくことも
老猫だからといって、勝手に寝かしておけばいいというものではありません。寝ている所を無理やり起こす必要はありませんが、スキンシップも大事です。
飼い主に撫でてもらうことで、猫は安心感を覚えるのです。一説には撫でて貰うと、子猫の時に母猫に舐めて貰った時の事を思い出すから、と言われています。
毎日スキンシップで撫でてあげることで、ちょっとした体調の変化に気づくこともあります。毛に艶がないと感じたら、内臓に不調がある確率が高くなります。
また人間同様、猫も老化すると被毛に白い毛が混じるようになります。元々色の薄い猫だとわかりにくいですが、黒猫だとはっきりとわかります。そのことで、猫の老化を見極める事も出来ます。
毛並みや顔周りのケアも行うようにする
若い頃は念入りに行っていた毛づくろいも、老化してくるとあまりやらなくなってきます。そのため被毛が汚れたままになったりバサバサになってきたりしますので、毎日のブラッシングは欠かさない様にします。
特に寒い冬に無理やりお風呂に入れることはお勧めできません。夏であっても体が冷えてしまい、注意が必要になります。
我が家で使っているケア用品を紹介します。
▼猫用ボディータオル つややかシルクプロテイン速乾タイプ
体をふくだけで汚れを取るシャンプーシートというものもありますので、体が汚れてきたり臭ったりする場合はこのようなシートでケアをしてあげると良いでしょう。
▼AVO DERM(アボダーム)ドライシャンプー
長毛種の猫の場合、シートで拭くだけでは綺麗にならない場合もあります。水で洗い落す必要のないドライシャンプーもあります。
シャンプーを体にスプレーし、数分後にタオルでふき取るタイプのものです。
ケア用品も色々なものがありますので、活用するようにしましょう。
顔を洗わなくなってきますので、目やにもたまりやすくなります。
▼目垢トルトル 目ヤニ・イヤーシート
目やにを取る為のシートやこれと似たタイプで、耳掃除専用シートといった部位ごとのシートがあります。
耳は年を取ってくるとベタつきやすくなりますので、常に清潔にするように心がけます。
口内炎に注意。口まわりのケアが最も大事
一番注意したいのが口まわりです。歯磨きの習慣がついていれば良いのですが、そうはいかないことの方が多いです。
猫は顔に手を近づけられるのを嫌います。歯磨きをさせてもらえないため、歯石が溜まりやすくなります。
そうすると、歯肉が炎症してしまい口内炎の原因になります。口内炎になることで食べ物を食べられくなるという事態にもなるため、出来れば若い頃から歯は清潔に保っておきたい所です。
スプレーするだけの歯磨きや、歯磨きシートというものもあります。
口内ケアは特に根気が入りますが、食事という猫にとっても大事なことに直結しますので、少しずつケア方法を行うことが大切です。
猫に多い腎不全。日頃の行動をよく見ておこう
老猫は体力や抵抗力が落ちてくる分、病気にもかかりやすくなります。
食事の項目でも触れた通り特に腎臓の病気は老猫にはとても多く、早いうちからの予防が重要になります。日頃から気を付けるポイントを押さえておくことが大事です。
- 水をよく飲むようになった
- よく吐く
- 食欲がない
- 毛づやが悪い
- 元気がない
- 脱水症状が多い
- よだれが多い
- おしっこの回数が増えた
- うんちが固くコロコロしているのが多い
- 口臭が気になる
このような状態が見られるようになった場合、腎臓系など様々な病気が隠されているサインとなります。
逆に食欲がやたら増えてきたと思った場合は甲状腺の病気の可能性があります。
循環器系や神経系の病気の場合は見た目ではわからない事も多く、検査をしてもらう必要があります。
猫は野生の性質を色濃く残している動物なので、体調が悪くてもそれを隠してしまう傾向があります。
一見大丈夫そうに見えても、実は病気が進行していたということもありますので、出来れば1年に1度は健康診断をしておきたいところです。
運動量も減る為、肥満には注意する
老猫になれば運動量も減ってくるため、肥満になってしまう事もあります
猫は広い空間よりも上下運動を好みます。
年を取ったからと言って、まったく運動が必要でないというわけではありません。運動する事で刺激にもなり、猫の認知症の予防にもなります。
飼い主がずっとそばにいてあげられれば一番良いですがなかなかそういうわけにはいきませんので、猫がお留守番中でも安全に過ごせるように、様々な工夫をしてあげることが重要なのです。
猫の介護は日ごろの観察から始まる。おかしい時にはすぐ病院へ
猫の様子は毎日確認し少しでもおかしいと感じる事があれば、すぐに病院へ連れていくことで病気の早目の対処にもなります。
これぐらいなら大丈夫、という根拠のない安心をしてしまうのが一番危険です。見た目ではわからない病気が気づかないうちに進行し、気づいた時に手遅れという事にもなりかねません。
老猫は若い頃以上に注意してあげなければなりません。だからといって、あまり過保護になり過ぎるのも良くないでしょう。
これまで通り、でも健康管理だけはこれまでよりも注意してあげることで、猫も安心して老後を過ごすことが出来ます。
老猫は若い頃よりも手間がかかる部分はありますが、老猫には老猫の可愛さがあります。最後までケアが出来ないのであれば、猫を飼う資格はありません。
リラックスして猫が老後を過ごすことが出来るように環境や食事を改善し、工夫していくことが何よりも大切なのです。