猫草はほんとに必要?与えるときに注意すること

ペットショップやホームセンターでよく見られる、猫が食べる植物「猫草」。

しかし、基本的には肉食で、植物の消化ができないといわれている猫に、猫草は必要なものでしょうか?また、なぜ猫は消化ができない猫草を好んで食べるのでしょうか?

今回の記事では、猫草を与えるときの注意点や、自分で育てる方法など、猫草のあれこれをくわしくご紹介します。

そもそも猫草とは?猫草の種類を知ろう

猫草とは猫が好んで食べる草を指します。猫草という特定の植物があるわけではありません。

猫草はホームセンターやペットショップ、花屋さんでも購入することができます。タネから育てる栽培キットもあるので、猫の好みに合わせて選びましょう。

猫草とよばれる植物についてご説明します。

猫草の種類・燕麦(えんばく)

燕麦はイネ科の穀物で、カラスムギの若葉です。

  • オート麦
  • オーツ麦
  • カラス麦

など、さまざまな名前があります。

ペットショップで猫草と表記して販売されているものはほとんどがこの燕麦です。

外国の朝食で良く食べられているオートミールやシリアルコーン、ビール、ウイスキーなどの原料に使われます。

猫草の種類・エノコログサ

いわゆる猫じゃらしのことで、日本全土に分布するイネ科エノコログサ属の一年草です。

猫が食べたりじゃれたりと食いつきが良いので、猫といえば猫じゃらしと思いがちですが、実は危険な一面もあります。

このエノコログサの先端についている「ノギ」とよばれる棘状の突起が猫の身体に付着すると、猫にとって重大な症状を引き起こす可能性があるという報告があるのです。

被毛をよくブラッシングしたり、エノコログサがたくさんある場所で遊ばせないなど、予防と対策を徹底しましょう。

また、猫じゃらしで遊ぶときも、必ず飼い主が注意して見守り、部屋の中に放置しないようにしましょう。

なぜ猫は猫草を食べるの?理由として考えられている説いろいろ

ではなぜ肉食の猫が猫草を好んで食べるのでしょうか。

実は、その理由はまだはっきり解明されていません。

猫が猫草を食べる理由にはさまざまな仮説があるので、ご紹介します。

排せつを良くするために食べる説

猫は肉食なので、大変便秘になりやすい生き物です。

猫草にはお通じを良くする食物繊維がふくまれています。

猫草を食べることで食物繊維を摂取し、便秘を解消したり、毛づくろいで飲み込んでしまった毛の排せつを促す役割もあるといわれています。

草の刺激で毛玉を吐くため説

猫はグルーミングという身体をなめる仕草、つまり毛づくろいをします。

猫はざらざらした舌で身体をなめることで体毛をきれいにしているのですが、全身の体毛をなめるので、かなりの量の毛を体内に取り込んでしまいます。

なめとられた毛玉は、消化しきれずに胃の中に溜まり続け、腸がつまったり、体調悪化につながることも。

猫草のようなつんつんとした草の先で胃を刺激することで、少しの水分と猫草、毛の塊を吐き出す作用があります。

くちゃくちゃ、人間のガムといっしょ?食感を楽しむため説

猫草を食べているところを観察すると、猫が草をくちゃくちゃと噛んでいるのが見られます。

猫草は人間でいうとガムのような、猫にとっても嗜好品のような存在であるといわれています。

一種のストレス解消や気分転換のために食べているという説も。

まさかの吐く前提!?胸やけ・胃もたれを解消するため説

猫は吐くことを目的に猫草を食べているともいわれています。

食べ過ぎてしまったり、いつものフードと別のものに変えたときに猫草をよく食べるようなら、猫の胃の調子が良くない可能性もあります。

胃の不調やむかつきなど、体調が悪いときほど猫草を食べたがるともいわれています。猫草の消費量が増えたときは、注意しましょう。

猫草の食べ方をよく観察してみてください。

猫草に含まれる葉酸が目的かも?ビタミン補給のため説

猫草には葉酸というビタミンが多くふくまれています。

葉酸はタンパク質を分解する酵素で、細胞をつくるための核酸の合成に使われるので不足すると成長が阻害されてしまいます。

しかし、ビタミンはキャットフードにふくまれているので、ビタミン補給のために猫草を食べなければならない!というわけではありません。

猫草にまったく興味のない猫もいるんですよ。

胃腸の毛玉は大丈夫なの?と心配な飼い主の方もいらっしゃると思います。体内の毛玉が心配な場合は、毛玉の排出を促すキャットフードや食物繊維が入っているサプリメントを活用しましょう。

また、こまめなブラッシングで飲み込む毛の量を減らし、胃腸に毛玉がたまらないよう注意してあげてください。

猫草を与えるときに注意すること

猫草といっても、植物なら何でもよいわけではありません。

道端の草や観葉植物のなかには、私たちにとっては無害でも猫にとっては害のあるものがたくさんあります。

また猫草の食べ過ぎや、子猫に与える場合も注意が必要です。

食べすぎに注意!腸がつまって手術が必要になってしまうことも

猫は植物を消化することができません。食べ過ぎて消化できなかった猫草はそのまま体内に残り、腸がつまってしまうこともあります。

ほとんどの場合は嘔吐や便によって排出されますが、ひどいときは開腹手術でとりのぞかなければならないことも。

主食として与えるのではなく、おやつのように、量を調節して与えてください。

子猫・高齢猫はのどの粘膜などが傷ついてしまうかも

消化能力の弱い子猫や高齢の猫に猫草を与える場合は、十分注意して与えてください。

猫草を食べることでのどの粘膜や胃、食道が傷ついてしまう恐れがあります。

また、成猫でも胃腸の調子が悪いときには与えないようにしましょう。

危険!猫が食べると危険な植物もある

猫は基本的に食べられない植物が多いのですが、イネ科の植物は比較的安全に食べることができます。

しかし、猫にとって有害・有毒な植物は700種類以上もあるといわれています。

私たちはさまざまな野菜を食べますが、同じような感覚で猫に与えてしまうと、中毒やひどい場合は死に至ることもあり、大変危険です。

例えば、

  • ネギ
  • アサツキ
  • 玉ねぎ
  • ニンニク
  • ニラ
  • ワケギ

などのネギ科の植物を与えた場合、血液中の赤血球が壊れて溶血性貧血を起こす可能性があります。

尿の色が濃くなり、ふらつき、嘔吐、下痢などの症状が見られます。重症化すれば死に至ることも。

加熱しても毒性は残るので、注意してください。

  • ナス
  • トマト
  • じゃがいも

などのナス科は、触ると皮膚のかぶれや結膜炎を引き起こし、口に入れば嘔吐や下痢、腹痛、 呼吸困難などの症状があらわれることも。

  • あんず
  • スモモ
  • モモ
  • さくらんぼ

などのバラ科は、体内で分解されることで青酸が発生し、呼吸困難、虚脱、痙攣、チックなどの症状があらわれ、最悪の場合死んでしまうことも。

  • ユリ
  • チューリップ
  • スズラン
  • ヒアシンス

などのユリ科は猫にとってもっとも危険な植物のひとつです。

目に入ると失明の恐れもあります。口に入れると嘔吐、下痢、血便、呼吸困難、全身まひなどのひどい状態に陥り、死に至る確率も高いので注意が必要です。

回復しても慢性腎不全や膵炎を発症することも。

ほかにもシクラメン、パンジー、アイビー、ポトス、ドラセナ(幸福の木)など、人気の観葉植物も猫にとっては有害です。

これらは花の部分だけでなく、花瓶の水などにも注意してください。

猫草を自分で育ててみよう。猫草の栽培方法

育ったあとの猫草を購入するのも良いですが、自分で育てることで安心・新鮮な猫草を育てることができます。

猫草のタネはホームセンターやペットショップ、ネットでも購入できるので、ぜひ試してみてください。

猫草の栽培に必要なもの

猫草を育てるときに必要なものは4つあります。

  • 鉢底石
  • 猫草のタネ

まずは猫が食べやすい高さの鉢と、土の排水性や通気性をよくする鉢底石を用意します。

鉢底石は根腐れの予防になるので、必ず使いましょう。

鉢は大きいサイズをずっと置いておくよりも、月に4回程度植え直すくらいのサイズが鮮度を保つことができます。多頭飼いならすこし大きめのものを用意してください。

土は保水性の高い野菜用のものを。私たち人間が食べるときと同じように作ってあげることが大切です。

さっそく猫草を植えよう!タネを鉢に植えるときの手順

  1. タネを水につける
  2. 鉢を準備する
  3. タネを入れる
  4. 土をかぶせる
  5. 発芽を待つ
  6. 日当たりの良い場所に置く

この手順をきちんと守って猫草を植えると、1週間ほどで猫が食べられるくらいに育ちます。

まず、乾燥した状態で売られているタネを水につけて、給水させてください。水をふくむことで発芽率があがります。

10センチ程度の鉢に大さじ2杯くらいのタネを、鉢とは別の深めの容器に入れて上からたっぷり水をかけます。

浮いてくるタネはすべて浸るようにかき混ぜて、1時間ほど浸してください。表面が乾いているタネがないよう気をつけましょう。

鉢底石を鉢の底が隠れる程度につめ、土を7分目くらいまで入れます。このとき指でぎゅっと押してしまうと、土がつまって根がはりにくくなるので注意してください。

土の上にタネをゆっくり注ぎ入れ、その上に隠れる程度の土をかぶせます。

水を全体にまんべんなくかけ、発芽するまで日の当たらない場所において、毎日の水やりで土を乾かさないようにしましょう。

温かい季節だと約3日で発芽が始まりますが、寒い時期は発芽しにくいので、アルミホイルをかぶせると発芽しやすくなります。

発芽したあとは日の当たる場所におくと、数日で成長し、食べられるようなります。

猫草に興味がない猫がいる一方で、猫草がだいすきな猫もいます。特に植えたての猫草はやわらかく、好んで食べる猫が多いといわれています。

あまりにも食べ過ぎて吐いてしまったり、ご飯を食べなくなるようであれば、猫草の量を調節しましょう。

一日に与える量を決めて、摂取量のコントロールを心がけてください。

猫草は猫にとっての嗜好品

猫草は、猫にとって必須のものではありません。好んで食べる猫も、まったく興味を示さない猫もいます。

また、害がないだけでなく、身体に良い影響を与えるわけでもありません。

しかし、猫にとって猫草は良い刺激になります。無理に与える必要はありませんが、猫草にどのような反応をするか試してみてもよいでしょう。

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