今や空前のペットブーム時代。特に猫に関しては数年前から息の長い一大ブームとしてメディアやグッズ展開も著しく、それこそ外を歩いていて、家でネットを見ていて、猫や猫関連のものを目にしない日はないのではないでしょうか。
愛くるしい猫様のお姿を眺めているうちに、あんな可愛い生き物が自分のおうちの中をうろうろしてくれたらどんなに素敵だろう、そう思うのも無理はありません。
でもちょっと立ち止まってみてください。猫を飼うと決めたものの「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまう例もあるんです。かわいいだけじゃなく、かわいさの対価を次々と飼い主に付きつけてくるのも猫の一面です。
これから初めて猫を飼おうと思っている方、飼い始めてから後悔しないために、一度シミュレーションしてみませんか?
こんなはずじゃなかった!?猫を飼うことで後悔しがちなこと
生き物を飼うのは大変なこと、とよく言われます。頭ではわかっていても、実際に暮らしてみないとピンとこないこともあります。以下、一般的なポイントを列挙してみました。
抜け毛がすごい
猫の毛並み、きれいですよね。見た目滑らかなボア生地のようなあの体は、一本一本の毛ですから、当然抜けます。毎日抜けます。ごっそり抜けます。黒っぽい服で抱っこしようものならびっしりと毛がはりつきます。
黒いスエードのバッグも猫がスリスリすればあっという間にアレンジ完了。季節の変わり目にはふわふわの毛だまりがフローリングのそこかしこに荒野のタンブルウィードのように転がっていきます。
ブラッシングするたびに一握りの猫毛フェルトが、最低3つは採集できます。そしてそこまでブラッシングしてもやっぱり抜けます。毛布やニットに絡みついた猫毛を取るのは粘着ローラーをもってしても容易ではありません。
家・家具が傷む
柱やふすま、お気に入りのデスクの足やふかふかのソファー、猫はそういったもので爪を研いだり、粗相をしたりするのが大好きです。特に奮発した籐イスの背もたれや張り替えた直後の障子などは張り切って手がけてくれます。
チェストの上の思い出の品(ワレモノであればあるほど確率アップ)をしっぽで薙ぎ払って落下させてはなぜか褒めてオーラを出しながらこちらを見つめてきます。
爪とぎキズを防止するシートや、ソファーを守る防水カバーなども市販されていますし、ある程度は自衛できますが、それでも予想外の物理被害が生じるのが猫との暮らしです。
糞尿が臭い
アイドルはう■こしない、そんなわけない、みたいに。かわいいかわいい猫様もその愛くるしさに反比例して非常に匂いの強い糞や尿をします。
トイレのしつけが完璧でも、普通にトイレ砂に収まりきらない側面部分も汚してくださいますし、用を足した後はトイレ砂を肉球の間に挟んで歩き回ります。
毎日のこまめな掃除を怠ると家のあちこちにトイレ砂がぽろぽろ、マーキング癖のある猫ですと、さらに家中がどことなく常に臭うようになってしまいます。
猫に粗相された布製品から臭いを完全に取るのは難しく、下洗い→熱湯+重曹で漬け洗い→洗濯と手間がかかります。そして乾いた頃合いをみて、またもや粗相してくださるのが猫というものです。
旅行に行けない
猫がひとりでお留守番できるのは二泊三日が限界のようです。フードや水、トイレを多めに用意しておけばもう少しはのばせるかもしれませんが、猫の機嫌は確実に悪くなります。
一度猫を飼ってしまうとそもそも心配で外泊を伴う旅行の計画に心理的なストッパーがかかるようになります。
ペットホテルに預けるか、ペットシッターさんをお願いするという手もありますが、自宅から出ることや見慣れない人を嫌がり、ストレスで体調を崩す猫も多いので難しい点はあります。
費用がかかる
ペットフードメーカーが行ったアンケートが叩きだした猫の年間維持経費は食費・トイレ砂・ペットシーツ・毎年のワクチンだけで年間8万円と試算されています。
昨今の猫の平均寿命を15歳とすると、猫の生涯費用は基本的なものだけでも120万円。実際はこれに定期的な健康診断、おもちゃやケージ、キャリー、猫タワーなども必要になってきますし、ひとたび病気にかかれば更に医療費が掛かります。
思いどおりにならない
お膝に載ってくれない、抱っこもさせてくれない、思ったようになつかない。毎晩猫と一緒に眠るようなラブラブの蜜月を夢見ていたのに私がお布団に入るのと入れ違いに猫は出て行ってしまう…。
どの個体を見ても一様にかわいらしい猫たちですが、その性格は十猫十色。お迎えしてから思っていたような性格の猫じゃなかったという話は珍しくありません。
しつけに関しても、猫は犬のように結果を返してはくれません。覚えていても自分の判断で「やる」「やらない」をある程度決めてきます。(群れを作らない猫族としての性質の話であり、躾を順守する犬族の皆様に判断力が無いと言っているわけではありません)
アレルギーを発症した
それまで病識はなかったものの、猫を飼ってから体調不良に悩まされ、病院に行ったら猫アレルギーの診断が下りてしまった、というのはよくある話です。
中には猫によって見た目にも影響が出るような激しいアレルギーを発症したお子様のお母さまが猫さえ飼わなければとご自身を責めるような痛ましいケースも。
飼い始めてから起こるアレルギーを事前に察知しておくのは難しいことですが、日ごろから猫と触れ合ってみて体調に異常はないか、異常が出るようなら皮膚科やアレルギー内科でアレルギー検査を受けてみる、など出来る範囲でチェックしておいた方が良いでしょう。
あるある?猫を飼っている人が感じている後悔
猫を飼っている人、特に今飼っている猫が人生最初のmy猫である人3名に「猫を飼う上で後悔した点はありますか?」と聞いてみたところ、皆さん一様に怪訝な顔をされましたので「猫を飼っていて困ったことはありますか」に質問を変えました。
以下、回答を列挙します。
- 外出しようとしても猫が家を出してくれない。
- 何があっても2泊以上の外泊ができない。
- 本気のじゃれつきで珠のお肌に消えないキズが残る。
- 早朝、大声で鳴いて起こしてくるので隣の部屋からクレームが出た。
- 夏場冬場の温度管理のための電気代がすごい。
- リフォーム直後に速攻で柱とドアと襖をガリガリされた。
- 引越しの時に「ペット可だけど猫は不可」物件ばかりで苦労した。
- 飼い猫のために犬を飼ってる人と付き合えなかった。
- いたずらをされないための気苦労が常に絶えない。
- 充電ケーブルは基本、食いちぎられるもの。
- PCを勝手にいじって妙な設定を施したり、SNSに怪文を投稿する。
- お膝に載られたら最後、身動きが取れない、トイレにも行けない。
- 目覚めるとなぜか猫が枕を使ってお布団の中心におり、飼い主は外。
- 外出しようと思っても猫が可愛くて出られない。
そうですね、末尾3件は完全にあれですね。のろけですね。
冒頭の一つ目は「ブラックフォーマルで家を出ようとした瞬間に猛然とすり寄られ、急いでいるのにコロコロしていて結局少し遅刻してしまった」
二つ目は「冠婚葬祭や出張など、旅行と違って自分で内容をどうこう決められない用事で遠方へ行かなければならないとき、2泊以内にスケジュールを収めるのに苦労した」という事情で、なかなかに切実です。
しかしどの飼い主も最後には口をそろえて「困ることはあっても猫を飼っていることを後悔してはいない」と語りました。まさに猫との暮らし、プライスレス。
後悔しないためのチェック項目
上記のことをふまえ、これから初めて猫を飼う人に向けて後悔しないためのチェック項目をご用意しました。
- 家族全員が猫を飼うことに同意しており、かつ協力的か
- 留守の時に頼れるあてはあるか(親類・友人・業者など)
- 本人、家族に現時点で自覚している猫アレルギーはないか
- 今後想定できる範囲で転居や生活環境の変化の可能性はないか
- 飼育にかかる時間的、精神的、金銭的余裕はあるか
- 猫に何をされても大丈夫と思えるくらい猫が好きか
あとから後悔しても、途中で簡単に中断できないのが生き物を飼うということです。せっかくの猫との暮らしが「こんなはずじゃなかった」にならないために、しっかりシミュレーションしておきましょう。
可能であれば、猫を飼っているお宅へお邪魔してみるのも良いでしょう。
私もまだ猫を飼っていないころ、猫を室内飼いしているお宅に伺ってトイレの始末の大変さと抜け毛のすごさに圧倒されましたが、そのおかげで、のちに猫を飼い始める時にはある程度の覚悟が出来ました。
それでも猫を飼いたいのなら
酷な言い方になりますが、猫を飼っても後には何も残りません。むしろ部屋を荒らされ物を壊され、時間とお布団は奪われて、腕は傷だらけになります。
しかし、それでも猫がうちにいてくれるだけで幸せだ、猫が満足そうに暮らしているのを間近に見られるのならどんなことも後悔しない、そう思えるのなら、あなたは猫を飼うべきですし、きっと猫のことも幸せにできるはずです。