猫のお腹には普段、幸せが詰まっています。ヘソ天で眠る猫のお腹がゆっくりと上下している様などは見ているこちらまで幸せになれるようです。
健康上の問題はともかくとして、太った猫の魅力というのも満ち足りたそのお腹の安定感にあるのではないでしょうか。
猫のお腹はまるいもの、しかし、それが病気による原因で膨らんでいるのだとしたら、これは看過できません。猫のお腹が膨れる病気とその見分け方について解説していきます。
猫のお腹が膨れる原因3つと、それぞれの見分け方
猫のお腹が膨れる時に原因として考えられるものは
- 肥満(食べ過ぎ)
- 妊娠
- 病気(内臓の異常)
があります。どのように見分けるべきでしょうか。
まず肥満の場合は、お腹だけでなく全身の肉がまんべんなく厚くなります。背中にもおしりにもどっしり肉がついているようでしたらそれは肥満です。
それはそれで様々な疾患の原因となりますので、ダイエットの検討をおすすめしますが、ひとまず病気によるお腹の膨れとは見て異なることがわかります。
標準体型の猫でもガツガツと暴飲暴食してしまった直後はお腹がぽっこり膨れてしまうこともありますが、消化、排泄を経て元通りになる一時的な物でしたら心配いりません。
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次に妊娠です。避妊済の完全室内飼い猫では起こりえませんが、避妊していない出入り自由な若い雌猫の場合は妊娠の可能性があります。その場合は、直前に発情期のサインが出ていたり、乳が張り、乳首がピンク色になったりとお腹が膨れる以外の兆候が露わですので判別できます。
肥満でも妊娠の可能性もないのにお腹だけが不自然に膨れていたら病気の可能性があります。次項から詳しくご説明します。
猫のお腹が膨れる病気
猫のお腹が病気で膨れるといっても、膨れている直接の原因は腹水、腫瘍、膿、ガス、臓器自体の腫れと様々で、その症状を引き起こしている病気の可能性は多岐にわたります。お腹が膨れる、それだけでは判断材料に乏しいため、他に現れてきた症状も加味して動物病院での検査で判断していくことになります。
以下、猫のお腹が膨れる時に考えられる主な病気を列挙しました。
猫伝染性腹膜炎(FIP)
非滲出型と滲出型がありますが、罹患猫の75%が滲出型で、炎症を起こした腹膜や胸膜から水がにじみ出して腹水や胸水が溜まってお腹が膨れます。
コロナウイルスによるもので、目を始め様々な臓器にも異常が現れますが、それらの症状は慢性的にじわじわと進行するため、腹水がたまって判明したときには既に手遅れという恐ろしい病気で、完治する方法はまだ見つかっていません。
▼猫伝染性腹膜炎の詳しい症状については、こちらをご覧ください
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内臓型肥満細胞腫
肥満細胞と呼ばれるアレルギー反応や免疫を司る細胞がガン化して起こる病気で、皮膚型と内臓型があり、後者の場合は小腸が好発部位です。そのため、腫瘍がお腹にしこりとして感じられるほか、臓器の腫れや腹水も伴ってお腹が膨れます。
この細胞は造血幹細胞の一種であり、血管回りを始め体内の様々な部位に存在するため、これがガン化すると転移を起こしやすく危険です。肥満細胞の名前は細胞自体がふっくら丸いことによるもので、肥満の猫のみにリスクが高いというわけではありません。
▼猫の内臓型肥満細胞腫についてはこちらをどうぞ
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肝臓の異常
肝炎を始めとする一連の胆管系の炎症も途中経過の症状として腹水が出ます。黄疸や多飲多尿、尿の色の黄変などの症状を伴い、最終的には肝細胞が繊維状に硬化する肝硬変に至り、この頃になるとお腹の膨れは腹水ではなく、硬化した肝臓がしこりとして感じられます。
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子宮の異常
発情期、猫の子宮頸がゆるんだ時に細菌に感染すると子宮内膜炎を起こすことがあり、これが悪化すると膿が溜まって子宮蓄膿症へと移行して膿によってお腹が膨れます。
開放型ですと外陰部から膿が出る事によって発覚しますが、閉鎖型の場合には膿が外に漏れださずにどんどん溜まってしまうため、最悪の場合、体内で破裂してしまう恐れがあります。
子宮ガンでも腫瘍によってやはりお腹が膨れてくる外見的症状が出ます。出産予定のない雌猫の避妊手術が推奨されているのは、望まれない子猫が生まれないようにということ以上に、こうした子宮のトラブルのリスクを減らす目的があります。
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胃の異常
胃袋が水や食べ物、飲み込みすぎた空気、内部の異常な発酵で発生したガスなどで膨張してしまった状態を胃拡張と呼び、それによって胃の位置がねじれて他の臓器にも悪影響を及ぼしている状態を胃捻転と呼びます。食べすぎや食後の急激な運動で起こるとされますが原因はよくわかっていません。
急激なお腹の膨らみと、吐くそぶりを見せても吐くに吐けない様子で大量のよだれを垂らすなどの症状が出ます。大型犬に多く見られ、猫の発症はまれと言われていますが、可能性の一つとして留意しておいてもよいでしょう。
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腸の異常
腸閉塞ではガスや食べ物・液体・誤飲した異物・腫瘍・寄生虫など、なんらかの要因で腸が詰まり、そこにどんどん送りこまれてくる消化物が行き場を無くしてお腹が膨れます。
痛みを伴うのでお腹をかばうようにうずくまったままになったり、触られるのを嫌がるそぶりを見せます。詰まりが自然に解消されることはまず無く、放置すると腸が壊死してしまいます。
巨大結腸症は便秘が繰り返されることによって結腸が巨大化して便秘が重篤化する病気です。そもそもの発端の便秘が、なんらかの原因で結腸が巨大化した結果ということもありえます。これもまた、便が詰まってしまうため、お腹が膨れて見えます。
何度もトイレでいきむのに便が出ない、という事が続くようでしたらこの病気の疑いがあります。
猫のお腹が膨れる時、家庭でできるチェック方法
猫の膨らんだお腹の両側に軽く手を当て、片方をごく軽く叩いてみましょう。
膨れているお腹が張っているようならガス、一部が不自然に固くなってしこりのようなものが感じられれば腫瘍や内蔵の腫れが疑われます。
しかし、家庭での見立てはあくまでも肥満かそうでないかのチェック程度にしかなりません。少しでも不安があれば可能な限り早く動物病院へ連れていくことが先決です。
▼猫の様子がなんだかいつもと違うと思ったらそのままにせず、飼い主さんがまずチェックをしてあげましょう
猫の元気がない時のチェックポイント。不調のサインを見逃さないで!
普段から猫の様子をメモするようにすると役立ちます
お腹が膨れる病気は生命の危機に直結するものが多く、急に膨れてきた場合はそれだけ事態も早急に、深刻に切迫していることになります。
愛猫の健やかなお腹とその命を守るため、早期発見に心がけたいものです。
病院に行く際には
- いつからどのように膨らんできたか
- 他に気になる症状はあるか
など、普段と異なる点や気になる点はなんでも書き出して持参するのをお忘れなく。
その猫の普段を一番よく知っているのは飼い主さんだけです。きっと診察の役に立つでしょう。