突然ですが、害虫捕獲用の粘着シートいわゆるゴキブリホイホイを踏んでしまった経験はありますか?使用前、使用済み、また素足、靴下、靴越し、どのような条件下であってもあれはイヤなものですよね。
ゴキホイよりも更に強力なのがネズミ捕り用の粘着シートです。踏んだのが人間であればこそ、力で引き剥がすこともできますが、そのネバネバは煮溶けたおもちのように足のほうにも残り、うかつにそのまま歩き回ればあたりの床などにもベタベタの汚染を広げてしまいます。
目的用途からすれば仕方の無いこととはいえ、踏んでしまうと厄介なこの粘着シート。家庭内で、屋外で、人のみならず猫までもがウッカリかかってしまうことがままあります。
あのふわふわな猫の体がガッチリ粘着シートに捕まってしまったときの対処法をまとめました。
家庭でできる猫と粘着シートのはがし方、4ステップ
猫が粘着シートを踏んでしまうのは、人間が踏んでしまうのよりもずっと深刻なトラブルです。
人間であれば「しまった!」と即座に事態を理解して、冷静に剥がしにかかりますよね。しかし猫はどうでしょうか。「なんニャこれ!」と猫にはそれが理解できません。くっついてきた不快なベタベタを剥がそうと体を擦り付けてみたり前足で押してみたり、舐め剥がそうと頭を寄せてみたり…。
結果、踏んだ瞬間には一ヶ所だった被害部位が、外そうともがくうちに広範囲に渡ってしまい、ますます外し難くなってしまうのです。勿論、その頃には猫のメンタルも大パニックです。
【1】
猫が粘着シートにかかってしまったら、まずは被害を広げないように、まだくっついていない部分をできるだけ切り取って下さい。
【2】
お次はシートです。とにかくべたついている箇所に小麦粉を振りかけて可能な限り粘着力を奪ってください。こうすることでこの後の作業を進めやすくするためでもあります。
【3】
そうしてあらかたベタベタしなくなったら次はいよいよ剥がすフェーズに移行します。くっついてしまっている箇所に食用油を流しながら、ゆっくりと溶かして剥がしていきます。力任せに剥がすのは禁物です。ゆっくり確実に溶かしていきましょう。
粘着シートを販売している各種メーカーのサイトではペットから粘着シートをはがしたい時には小麦粉、ベビーパウダー、ベビーオイル、サラダ油、クレンジングオイル、ハンドクリームなどが推奨されています。間違って舐めてしまうことも考えると(あとで洗い流すとはいえ)極力、小麦粉や食用油などを口に入れることを前提としたものを使いたいものです。
【4】
そしてなんとか剥がし終えた後はしっかりと洗浄してください。小麦粉や食用油は口に入れても大丈夫とはいえ、それはあくまで人間向けのお話です。全量を舐め取ることは猫の体に良いとはいえません。
猫用シャンプーや石鹸液を使って完全に落とせるまで洗浄を繰り返します。どうしても落ちない頑固な汚れには薄めた台所用の中性洗剤も有効ですが、最終的には成分が残らないように洗い流しましょう。
動物病院にお願いする場合
猫がパニックで暴れて作業どころではない、もしくは肉球など、毛の生えていない部位もくっついている、またそれら以外でも「とにかくこれ以上は手に負えない」と感じたらその時点で速やかに動物病院へ行って下さい。
被害状況や猫の状態に応じ、接着した被毛の洗浄、あるいは切除、時には全身麻酔をかけての除去作業になるようです。
いずれにせよ、動物病院においてもネバつきによる作業の難航がネックになります。上記の「できる限り未着部分を切り取る」「小麦粉を振りかける」行程は(可能であればですが)行っておきたいものです。
もちろん初っ端から猫がパニックに陥っていて、未着箇所を切り取ることさえ猫を傷つけかねないような時には最初から病院へ行って下さい。その場合の移送の際にはキャリーケースではなく、切り開いたり破ったりできる段ボール箱を使いましょう。
トリミングサロンにお願いする場合
接着してしまった範囲にもよりますが、トリミングサロンでトリマーさんに被害を受けた被毛だけ刈り取ってもらうという選択肢もあります。
粘着シートに被毛がくっついてしまった猫について、問い合せてみたサロンでは「一番範囲の狭いバリカンで刈ることになり、猫の興奮状態の度合いによっては引き受けられなかったり、中断する可能性もあります」とのことでした。
動物病院ですら状況次第では全身麻酔を前提にしている施術です。病院併設でない場合は請けかねるのも無理はありません。
料金が開示されているようであれば長毛種の猫のトリミング料金を参考にすると良さそうですが、犬が主体で猫の受け入れをしていないところもありますので、まずは最寄りのサロンにお問い合わせください。
処置が終わった後にも注意を
無事に粘着シートを剥がせた後にも油断はできません。
暴れたり、強くシートごと引っ張ったことによる皮膚へのダメージや、粘着シートにかかっていた害虫/害獣からのダニやノミの寄生、そして意外に多いのが除去に使った残留物を舐めたことによる下痢など、予期しなかった二次被害が出てくる可能性があります。
しばらくは猫の体調に気をつけていて下さいね。そして再発防止のため、粘着シートの設置箇所や猫の飼育環境を見直していきましょう!
猫を粘着シートから守るために
ご家庭で粘着シートを使う場合は猫の通り道を避けるのは勿論のこと、通れそうな場所、手の届きそうな場所も徹底して避ける事が大切です。
筆者の体験談になりますが、猫も潜れないし大丈夫と思って冷蔵庫の下にゴキホイを設置していたことがあります。そしてある時、猫が落ちていたペットボトルのキャップをドリブル→冷蔵庫の下にシュート→前足を突っ込んでカキカキ捜索→からの、猫ホイホイ。と相成ったことがあります。
また、子供の頃住んでいた家は縁の下と天井裏がフルオープンな古い家で、梁の上にネズミ捕りシートを乗せていました。ある時、普段そこへは上らない飼い猫が、シートにかかったネズミ狙ってアタック…祖母が油と安全剃刀で四苦八苦しながら剥がしていたのを覚えています。
普段行かないような場所でも興味が向けば行ってしまうのが猫というもの。できれば猫のいるご家庭では粘着シートを使わないことが一番かもしれませんね。
そして粘着シートの危険は家庭の中ばかりではありません。私が直近で聞いた身近な事例では内外の出入り自由な飼い猫と野良猫、といずれも屋外での被害でした。
わりとカントリーな地域では、たとえば畑仕事や大工仕事のための小屋(隙間の多い簡易建築)も多く、縁の下に猫が出入りできるような伝統的な日本家屋もあります。そういった猫が入り込めるような場所に害虫/害獣捕獲のために粘着シートが置かれることもあります。
また、猫に対する虐待、あるいは撃退目的のために悪意や害意を以って猫の通り道に粘着シートが設置されているパターンが近年増えてきています。
粘着シートのメーカーは対象となる害虫/害獣以外を想定した使用、また屋外での設置を禁止しています。しかし例えば個人宅の庭などの場合は外部から制限することは現実的には難しいものがあります。
いくら猫を迷惑に思っていたとはいえ粘着シートを置く行為は全く肯定できませんが、設置者にそうさせたのは外飼い猫が個人の敷地に侵入して起こしてきたトラブルに起因する可能性だってあるのです。
ひとえに猫の安全のために、猫の完全室内飼育をお勧めいたします。
粘着シートは「からめとる」ためのもの
ゴキブリホイホイ、ネズミ捕りシートなどを作るメーカーにネバネバの原料を卸している企業の方にお話をうかがったことがあります。その時に印象深かったのは、あれらは糊や接着剤ではなく、イメージ的には水あめや餅のようなものだということでした。
つまりは接着ではなく「からめとってそのまま死なせること」を目的とした捕獲用品です。
粘着シートにかかった大きなネズミが逃れようと暴れた結果、粘着シートに皮膚ごともって行かれたのを見たことがあります。たとえば接着箇所を被毛ごと切り離そうとしても、皮膚ごとひっぱられて体を切ってしまった、という痛ましい事故も起きています。
決して無理をして剥がそうとせず、粘着シートを甘く見ず、家庭での処置が難しいと感じたら早急に動物病院にお任せしましょう。そして猫を粘着シートに近づけないようにすることが何より第一の手立てなのです。