猫が油を舐めたがる理由と、舐めてもいい油&だめな油の種類

猫の飼い主の皆様、目を離していた隙に猫が台所に侵入して料理の残り油を舐めちゃった!という経験はありませんか。

また、最近飼い猫が夜な夜な行灯の油を舐めているのでそろそろ化け猫になって人語を喋れるようになるかもしれないと期待でソワソワしてるのに一向にその気配が無くてやきもきしている、ということはないでしょうか。

猫さんといえば肉食キャラとしてブレイクしていますから、例えばサラダよりはきっと揚げ物を選びそうですし、スイーツか焼肉かで言えば断然後者、と油や脂が好きなイメージがありますよね。

油を舐めたがる猫は多いものですが、実際のところ油は猫の体に良い物なのでしょうか。そして油を舐めると化け猫になってくれるのでしょうか。猫と油にまつわるあれこれをお話ししていきます。

猫が油に惹かれる理由

猫はもともと獲物を狩って暮らしていました。一匹丸ごとの小動物には肉のたんぱく質のみならず、骨のカルシウム、胃の中の食物繊維、血液のミネラルと様々な栄養が詰まっています。とりわけ猫が好んだのは肝臓で、そこには油やビタミンが豊富に含まれていました。

今では栄養バランスの整った良質なフードが広く市販されていますので、飼われている猫たちは手軽に栄養を摂取できます。ところが江戸時代の猫たちはどうだったでしょうか。飼っている人間の食事がそもそも大豆製品や穀物、野菜を中心としていて、動物性の食品と言えば精々お魚ぐらい。

そんな環境で飼い猫に与えられるゴハンといえばどうしても猫まんまや魚の骨です。当時は屋外飼育が当然のご時世なので、猫たちは自力で狩りをして栄養の不足を補っていましたが、どうしても慢性的に油分に飢えていました。

そこで行灯です。菜種油がスタンダードでしたが、庶民は安価な鰯油を使うことも多かったようです。匂いが強く、煤も多く、室内で使うには些か難も多い魚油は、しかし猫にとってはまさに魅惑的な代物でした。

江戸の飼い猫暮らしに不足しがちな油分を補うために、猫が行灯の高さに届くよう二足で立って油を舐める姿が人々の目に異様に映り「すわ化け猫か」と思われたのが「化け猫が油を好む」の真相です。

油を好んだからと言ってイコール化け猫、というわけではないのです。二足歩行して喋る愛猫に会いたかった飼い主さんには残念なお知らせですが。

詳しくは後述しますが、魚油は不飽和脂肪酸の含有量も高いため、江戸の粗食状態にある猫が時折舐める程度であれば、健康にも役立つ代物だったと思われます。猫は自分に必要なものを見つける力が本能的に備わっているんですね。

そんなわけで、現代に生きる化ける予定のない我らが飼い猫たちも油の事が好きです。必要な栄養素はフードでしっかり摂れていても、油を舐めすぎるのがたとえ健康に良くなかったとしても、油の放つ匂いや味などの「脂肪分」感は猫の本能に訴えかけるようです。

蓋をしていなかった揚げ油の残り、油ギッシュな料理の残り皿…一舐めペロリ、くらいならまだしも、好きなだけ舐めすぎてしまうとお腹を壊してしまいますし、日常的に舐め続けてしまうのは深刻な病気へと繋がりかねません。

「猫は油を好むもの」という前提をしっかりと認識して、猫が油を舐めてしまわないように気を付けましょう。

猫の本能は油を求めていますが、栄養バランスのきちんとしたフードを毎食食べていれば油分はとりわけ必要というわけでもありません。しかしちょっとでも健康に良さそうなものなら愛猫にあげてみたいと思うのが飼い主というものです。

猫の健康に役立ちそうな油、やめておいた方がいい油、身近な油を例に見ていきましょう。

猫に与えて良い油

油分というとダイエットの大敵、コレステロールの援軍、とにかくカットしておけばヘルシー!そんな風潮が感じられる昨今ですが、油分(脂質)は三大栄養素の一つ、必要な成分です。大切なのは油を摂らないことではなく、その種類とバランスであり、それは猫にも言える事です。

「トランス脂肪酸は体に良くない」「不飽和脂肪酸が含まれているといいらしい」…など、油界隈は何やら難しいけれどその実よくわからない、というような言葉が飛び交いますよね。

かなりざっくりした説明になりますが、飽和=分子レベルで安定した状態を指します。融点が高く、常温で溶けにくい油に多いのが飽和脂肪酸です。

不飽和脂肪酸は飽和していませんので酸素と結合(=酸化)しやすいのですが、これを多く含んでいると常温で液体でいられる油が多いのです。

そこで例えば”常温=私たちの体温”とイメージしてください。食べて摂取した時、体内、血中で固まってしまう油と、溶けてサラサラと流れていく油。前者の方が体への負担が大きそうですよね。

そしてトランス脂肪酸とは本来、固まらないはずの植物油(不飽和状態)を人工的に水素を添加することによって安定させた(飽和状態にさせた)代物に含まれていることが多く、マーガリンやショートニングなどが代表的です。

ドレッシングなどにも使用できるように、冷たい状態でも透明サラサラでいられて長期間劣化(酸化)しないことが求められたサラダ油も加工が施されているためにわずかながら発生しています。

農林水産省は飽和脂肪酸の割合が増えるために心疾患のリスクに繋がることを示唆しつつも、科学的な根拠での断言はしていません。1日2g以下であることが望ましいと提示されていますが、昨今の油脂メーカーの努力もあって含有量は減少傾向にあり、日本人の平均摂取量からするとむしろ塩分過多の方が深刻であるとしています。

油と健康を語る上で外せないのがオメガ3とオメガ6です。これらは必須脂肪酸と呼ばれ、人間も猫も自力で体内では作れないために油分の摂取などで積極的に取り入れていく事が良しとされています。

とはいえオメガ6の方は日々の食生活の中で摂取過多の傾向にあるため、オメガ3を積極的に取り入れてバランスを取るために”オメガ3系の油”が健康に良いとされているんです。

それでは話を猫に戻しましょう。私たちより体の小さい猫のこと、私たちにとって大したことのないような量でも健康状態に直結しかねないのはどのような食品においても言える事です。

人工的に処理されたサラダ油は酸化防止のため、また高温処理の過程で失われた成分を補うために添加物が多く含まれている場合があります。舐めたところでただちに害は無いのですが、健康のために与えたい油としてサラダ油は除外しておいた方が良さそうです。

オリーブオイル

小腸で吸収されにくいオレイン酸が逆に腸の刺激となることで排便を促し、ビタミンEが自律神経に働きかけて血行が良くなることで腸の動きが良くなる効果が期待されます。オイル自体の性質が腸内の滑りを良くすることも相俟って、猫の便秘解消に一役買うことが知られています。

亜麻仁油・エゴマ油

どちらの油もオレイン酸がオリーブオイルと同じくらい含まれています。更に特筆すべきは積極的に取り入れたいリノレン酸(オメガ3)が多く含まれている事です。100g中の成分を比較するとオリーブオイル600mgに対して亜麻仁油は57,000mg、58,000mgと実にオリーブオイルの95倍ほどの含有量です。

まぎらわしいのですが、オメガ3なのがリノレン酸で、オメガ6なのがリノール酸です。

ごま油・グレープシードオイル

ごま油はオレイン酸とリノール酸(オメガ6)がほぼ80%を占めています。グレープシードオイルもオレイン酸の他にリノール酸を多く含み、無味無臭なので慣れない風味を嫌がる猫にも向いていると言えそうです。

老化に抵抗するための抗酸化成分であるビタミンEやポリフェノールも含んでいる点で近しい両油ですが、100g中の成分を比較するとごま油41,000mgに対し、グレープシードオイルは63,000mgと高く、オメガ6の摂りすぎが気になるようでしたらごま油の方が向いているという見方もできます。

猫に油を与えるときの注意点

いずれの油も猫の体重4kgに対して小さじ1杯を超えないようにして下さい。そのまま舐めさせたり、ウェットフードや手作りごはんに混ぜたりして使用します。

一度に大量に与えること、長期にわたって過剰に摂取させ続けるのは肥満のリスクを高める他に、脂肪を分解する膵臓、栄養を貯蔵する肝臓への負担が増して内臓疾患を引き起こしかねません。

また、加工が施されていない天然の油ほど、自然な状態なので当然ながら酸化しやすくなります。酸化した油や、リノール酸(オメガ6)を過剰に摂取しすぎると、アレルギー反応を示す場合もあります。

油の鮮度に気を付ける事は大切ですが、良質な油であればどんな猫にも必ず健康につながるというわけでもないのでくれぐれも猫の様子をみながら、異常があればすぐに獣医師に相談してくださいね。

猫のお手入れに使える油

我が家では椿油と馬油を人間の髪や肌のために使っていますが、これらは猫にも人気です。瓶の蓋を開けるとすぐに寄ってきてスンスン、蓋の閉め方が甘かった時には蓋回りを一生懸命に舐めていたりもします。

椿油も馬油もオレイン酸とリノール酸を多く含み、これらの成分が炎症や菌の繁殖を抑える働きをするとして古くから膏薬としても使用されてきました。皮脂の成分に近いため、肌の上でよく伸びて浸透しやすいのも嬉しい効果です。

人間が使った後、手にわずかに残った状態で撫でてやるだけでも充分ですし、猫用に木の櫛を用意して油で手入れした状態で梳いてもツヤツヤになります。

毛づやを保つことは、肌の保湿や体の保温にも繋がります。自前の皮脂が潤沢に出ている若猫にはあまり必要ないとは思われますが、ちょっとパサつきが気になる高齢猫のお手入れには使えそうです。

ホホバオイルなども皮脂に近い成分として美容目的として人気の高い油ですが、これば植物性の蝋、つまりワックスなので食べても消化できず、大量に摂取すると胃腸に負荷がかかります。例えば犬などには向いてもグルーミングで体を舐める猫に敢えて使用することもないように感じます。

椿油や馬油はグレードによっては食品として用いられますので、多少舐めたところで問題はないのですが、美容用品として売られているものは食品として与えることは避けてください。

猫には避けたい油

人間では美容と健康に効果的!と一時流行したココナッツオイルやパームオイル、自宅でエスニックな料理を作るときに取り入れると独特な風味が意外に癖になる良い油ですが、ちょっと涼しい場所に置いておくとすぐに白く固まりますよね。

つまり植物油でありながら飽和脂肪酸が高いため、猫の場合には膵炎を引き起こすリスクが他の油より高いこと、2/3を占める中連鎖脂肪酸が肝臓に負担をかける事で猫に与えることを懸念する声もあります。

人間の頭皮へのマッサージにはとても効果的ですが、猫の場合は舐めてしまうため、やはり被毛のお手入れにも使わない方が無難です。

また、アボカドオイルはアボカドの持つペルシンという成分が猫に下痢や嘔吐、最悪の場合は呼吸困難などの中毒性を示すため決して与えないでください。

大切なのは良い油を適量取り入れること

良質な油の摂取は血管を柔らかくし、体の潤いを保つことで内臓の働きを良くしてくれる働きが期待できます。

ノンオイルばかりが健康に良いというわけではありません。人間でも、良い油を使う天ぷら屋さんに行って満足いくまで堪能した翌日はなんとなく髪の毛がしっとり、肌ツヤが良いような感覚がありますよね。

猫にあげてみたい、あるいは飼い主さん自身が使ってみたい油がある時におすすめなのが文部科学省の食品成分データベースです。油ごとにオレイン酸やリノレン酸などの成分の含有量をかなり細かく検索できます。

猫が好んで舐めたがる油、便秘の時には心強い助っ人にもなる油、しかし何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。良質なキャットフードを食べていれば油分もそこそこ摂取できています。くれぐれも与えすぎないようにしてくださいね。

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