「猫風邪」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、実は、そもそも「猫風邪」は病名ではありません。
病名というよりは、そのウイルスに感染することによって起きる症状を猫風邪とよびます。
一般的にいわれている猫風邪は、猫鼻器官炎ウイルスや猫カリシウイルスなど、病原体の感染によって引き起こされるものです。
また、猫風邪には、
- 鼻炎
- 発熱
- 結膜炎
- 呼吸器官の炎症
など、猫ちゃんにとって非常につらい症状もあります。
ではそもそも、なぜ猫風邪にかかってしまうのでしょうか。その原因についてご紹介します。
つらい猫風邪の原因は怖いウイルス!?
猫風邪のつらい症状は、さまざまなウイルスに感染することによって引き起こされます。
猫風邪の原因となる主なウイルスとして、
- 猫ヘルペスウイルス
- 猫カリシウイルス
- 猫クラミジアウイルス
などがあげられます。
ときには2つのウイルスに複合して感染してしまう場合も…。
病原体となるウイルスについて詳しくご説明します。
悪化すると大変なことに!猫ヘルペスウイルスに気を付けて
猫ヘルペスウイルスというウイルスが原因で起こる疾患を猫ヘルペスウイルス感染症とよびます。
ヘルペスウイルスといえば、口のまわりなどにできるブツブツなどを想像しますが、猫に感染するこのウイルスは、
- 発熱
- 食欲不振
- 鼻水
- 結膜炎
- 口内炎
- せき
など、いわゆる猫風邪の症状をすべて集めたような疾患を引き起こします。
ウイルスの潜伏期間は2~10日で、鼻炎や結膜炎、気管支炎などを発症することもあるので、猫ウイルス性鼻気管炎ともよばれています。
ただの猫風邪だろうと対策やケアをせずに、どんどん症状が悪化すると、肺炎やウイルス血症などを引き起こし、失明などの深刻な症状によって死に至る場合も。
また、ドイツではこの猫ヘルペスウイルスが原因でライオンが致死的な脳炎を発症したというケースもあるので、ただの猫風邪と軽く扱うことはやめましょう。
猫ヘルペスウイルスはウイルスに感染した猫との接触によって感染するので、野良猫などとの接触はできるだけ避けてください。
猫同士のグルーミングや同じ食器を使うことによっても感染します。多頭飼いの家庭は、ゲージなどで隔離し、感染を防ぎましょう。
この猫ヘルペスウイルスは、恐ろしいことに、再発する可能性が極めて高いウイルスです。
一度症状がおさまっても、神経細胞内に潜伏していたウイルスが、
- 免疫力の低下
- ストレス
- 出産
などをきっかけに再発してしまうことも。
子猫やシニアの猫など、免疫力が低下し、身体が弱っている猫は、肺炎などの重大な疾患を併発する可能性もあります。
さらに、妊娠中の猫が感染すると、流産してしまう危険性もあるので、ただの猫風邪だから…と油断せず、しっかり対策をたてましょう。
体内に残る!?やっかいな猫カリシウイルスとは
猫カリシウイルスに感染すると、猫カリシウイルス感染症とよばれる病気を発症します。
猫ヘルペスウイルスと同じで、
- 口内炎
- 発熱
- くしゃみ
- 鼻水
- 食欲不振
- 結膜炎
など、風邪のような症状が特徴です。
感染力が大変強いウイルスなので、ウイルスにとって良好な環境では3~4週間生き続けることも。
猫の体内にウイルスが残る確率が高いといわれていて、猫風邪だけでなく、猫のインフルエンザとよばれることもあるやっかいなウイルスです。
一度でも感染してしまうと、口のなかなどに隠れて生息しているといわれ、ワクチン接種していても感染してしまう可能性があります。
その感染力の強さから、一度でも感染すると回復後もウイルスが残り保菌状態となります。症状がでていない猫でも保菌している可能性が高いので、回復後も気をつけて見てあげましょう。
猫ヘルペスウイルスと同じように、猫カリシウイルスに感染している野良猫などと接触することによって感染します。
飼い主が感染した猫に触った場合も、同じように室内猫に感染するため、注意してください。
また、くしゃみなどによる空気感染も確認されています。網戸のままでも、野良猫が近寄ってきて、くしゃみやよだれによって感染することがあります。
比較的簡単に感染が広がってしまうウイルスなので、十分に対策しましょう。
注意!猫クラミジアウイルスは人間に感染することも
猫クラミジアウイルスは、クラミジアという病原体によって引き起こされます。
このウイルスは恐ろしいことに、猫から人への感染が確認されている、いわゆる人獣共通感染症のひとつです。空気感染のほかに、感染した猫に噛まれることから発症する場合もあるので注意してください。
主な症状として、
- 目の炎症
- 鼻水
- 気管支炎
- 肺炎
など、風邪と同じような症状があげられます。
感染後3~10日で目の炎症が起こり、結膜炎を発症することもあるので、発熱などと同時に目の炎症があらわれた場合は要注意です。
猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスと同じように、クラミジアウイルスに感染した猫との接触によって発症します。多頭飼いの場合、一匹の猫に発症するとあっという間に感染してしまうことも。
また、母猫から子猫に感染する確率が非常に高いウイルスです。
免疫力のない子猫は、肺炎などの疾患を起こして死亡してしまうこともあるので注意が必要です。
複合感染でより重い症状に
猫風邪は、さまざまなウイルスが複合してかかるケースもあります。
症状が軽い猫風邪の場合、安静にしていれば自然回復することもありますが、複合感染してしまった猫は衰弱がひどくなり、時には命に関わることも。
例えば、猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスを複合感染した症状はウイルス性呼吸器感染症とよばれます。
高熱や食欲不振のほか、さらにさまざまなウイルスに併発してかかるケースもあるため、対策をせず放置すればどんどん症状がひどくなってしまうことも。
感染経路もさまざまなので、まずはお医者さんで診察し、薬などの対症療法をはじめましょう。
猫風邪の原因ウイルスは判断不可能
猫風邪の原因となるウイルスは、発熱やくしゃみ、鼻水など、どれも似たような症状を発症します。どのウイルスが原因なのか、素人では判断することができません。
ただの風邪だからと軽く見るのではなく、いつもとちがう様子を感じた場合すぐにかかりつけのお医者さんへ連れて行きましょう。
また、ストレスや免疫力の低下も猫風邪の大きな原因のひとつです。
愛猫にとって住みやすい環境をつくり、毎日の体調をチェックして健康に気をつけることで、猫風邪を予防しましょう。