何となく猫の元気がない、ぐったりしているという場合、猫の耳を見てみて下さい。もし普段はピンク色のはずの耳に血の気がない場合、貧血を疑う必要があります。
実は、猫も貧血を起こすことがあるのです。猫の貧血は危険な状態で、決して放っておいて自然治癒するようなものではありません。猫が貧血を起こす場合は必ず何らかの病気などの原因があります。
猫の貧血の見分け方、貧血を起こす原因や、飼い主さんが自宅で注意すべき点などについてご紹介します。
赤血球が少なくなると、猫は貧血となる
猫の血液内にある、赤血球が数を減らしてしまった状態を貧血と呼びます。赤血球だけでなく、ヘモグロビン濃度や血球容積と呼ばれるものが正常値を下回った場合も貧血と診断されます。
見逃さないで!猫の貧血の症状
猫が貧血気味になると、まず
- 食欲がなくなる
- 元気がない
- じっとしている
- 運動をしたがらない
- 少しの運動でも疲れやすい
といった様子が見られます。
そして、さらに貧血が進むと
- 呼吸困難
- 脱水症状
などを引き起こしてしまうこともあります。ここまで来ると一刻を争う事態です。診療時間外の場合は夜間救急病院などを探してでも、速やかに病院へ行きましょう。
簡単!猫の貧血を確認するチェックポイント
貧血は文字通り血(赤血球)が足りない状態なので、飼い主さんが一番判別しやすいのは猫の体で本来ピンク色の部分を観察することです。血が通っているはずのピンク色の部分が血の気を失って白い場合、貧血の可能性があります。具体的には、
- 歯肉の色
- 耳や肉球の色
を重点的に観察しましょう。特に耳はすぐに血管の様子を観察できて、わかりやすい部分です。
健康であってもやや白っぽい場合はありますが、健康であれば指で押すと押した部分がより白くなり、周辺がやや赤くなります(人間も指の腹などを押すと、押した部分が白くなるはずです)。そして押すのをやめると元に戻るはずです。
この変化がほとんど見られない、あるいは戻るまでが長い場合は貧血の疑いがあります。肉球がピンク色の猫であれば、肉球を押してみるとわかりやすいでしょう。
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他の病気のサインだった!猫の貧血の原因
大前提として、猫の貧血とは、何らかの病気や怪我による症状のひとつとして現れるものです。貧血そのものが病名というわけではありません。
つまり猫が貧血を起こした場合は、その裏に何か貧血を起こすような病気が隠れているということです。
猫の体が血液に含まれる赤血球を作る際、まず腎臓が赤血球を作るよう命令を出します。そして命令を受けた骨髄が、鉄分を使って赤血球を作ります。このため、
- 命令を出す腎臓に異常がある
- 赤血球を作る骨髄に異常がある
- そもそも材料になる鉄分が足りない
- せっかく作った赤血球が体の中で壊されている
- 出血により、血液ごと赤血球が不足している
このどれかの状態になると赤血球を作れなくなり、あるいは赤血球が足りなくなり、貧血になるのです。つまり貧血になった場合は、
- 腎臓や骨髄、鉄分に影響を及ぼす病気(腎不全やFeLVなど)
- 赤血球を破壊するような病気(玉ネギ中毒や猫伝染性貧血など)
- 怪我あるいは体の内部で出血している状態(潰瘍、腫瘍など)
になっている可能性があり、この病気そのものを治療していかねば貧血を治すことはできません。あるいは、事故などで出血し、物理的に血が足りなくなっている場合には輸血が必要です。
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貧血を起こしている病気を特定するために、日頃の観察が重要!
貧血そのものは動物病院で血液検査をすれば容易に判別できます。しかし、その貧血を引き起こしている病気を特定するためには、血液検査以外にも様々な検査が必要です。
迅速に病気を特定するために、飼い主さんの日頃からの観察が何より重要となります。特に病気の場合は、貧血の他にも何らかの症状があることが多くなります。
- 体重が減った
- 水を異常に飲む
- 尿や便の異常
- 嘔吐する
- 黄疸が出る
など、変わったことがないか注意しましょう。そして何か気がついたことがあれば、どんなささいなことでも獣医さんに報告しましょう。
猫が貧血になった時、飼い主さんがしてあげられること
猫が貧血になった時、飼い主さんが一番注力すべきであるのは貧血を起こしている原因である病気の治療です。病気を治せば、自然に貧血も改善するはずです。
貧血そのものに対して、自宅でできることはあまりありません。まずは貧血を疑った段階ですぐに病院へ行きましょう。そして、獣医さんの指示に従って適切な治療をしてあげましょう。
サプリメントを使用する場合は獣医さんに相談してから!
人間が貧血を起こした場合、よく「鉄分を補給するといい」と聞きますよね。確かに、猫の場合も「鉄分が不足していることで貧血を起こしている」という場合であれば、鉄分や葉酸、あるいはビタミンなどを補給してあげるのも有効です。
しかし、そもそも貧血の原因となっている、大本の病気を治療するために療法食を指示されることも少なくありません。療法食は、それだけでその病気の治療にあったバランスで各種の栄養が摂取できるように厳密に調整されています。
療法食の効果を正しく得るために、療法食以外のものは与えないのが基本です。また、療法食でなくとも、総合栄養食と記載のあるキャットフードを与えていれば、もともと必要なだけの鉄分は十分に含まれているはずです。
鉄分の与えすぎは別の病気の原因となる可能性もあります。また病気によっては効果がない場合もあります。サプリメントの使用を検討する場合、獣医さんに必ず相談してから与えましょう。
猫の貧血を予防するために、飼い主さんがしてあげられること
病気になることで起こる貧血ですが、あらかじめ飼い主さんが予防できる場合もあります。貧血予防のため、飼い主さんが普段注意したい点をご紹介します。
室内飼いを徹底する
貧血の原因のひとつである「猫伝染性貧血」はノミやダニから感染することがあります。また、他の感染している猫との接触でも移ることがあります。そのため外歩きをさせず、室内飼いを徹底することが大きな予防になります。
また、フロントラインなど、寄生虫の駆除剤を定期的に使用するのもおすすめです。
さらに、外歩きの猫の場合は大怪我をする可能性も高くなってしまいます。もともと怪我をさせない環境、すなわち室内飼いを徹底することで、猫の貧血の可能性を大きく下げることができます。
▼猫の寄生虫駆除剤については、こちらもご覧ください
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玉ネギなど危険なものを徹底的に排除する
健康な猫であっても注意したいのが、玉ネギ中毒による貧血です。
- 調理中にたまたま床に欠片が落ちてしまい、猫が拾い食いをした
- 猫が玉ネギやにんにくなどの入った料理を舐めた、食べた
なんて、「うっかり」を、長年猫と暮らしていると経験してしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
玉ネギ中毒になる量も個体差があり、同じ量を口にしてピンピンしている猫もいれば、中毒になって最悪死んでしまう猫もいます。「ちょっとくらい大丈夫だろう」と思わずに、猫に毒性のあるものを扱う時は細心の注意を払いましょう。
また、場合によってはキッチンに猫をいれない工夫も必要です。
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猫の貧血は危険!様子を見ないで病院へ行こう
怪我による出血でない限り、貧血の裏には必ずなにか病気が潜んでいます。貧血ももちろん危険な症状ではあるのですが、貧血以前に貧血を起こしている病気を治療することの方が重要です。
貧血の兆候があったらすぐに病院へ行き、なにが原因で貧血となっているのか検査してもらいましょう。また、玉ネギやダニ、ノミなど日常生活の中で貧血を起こす原因となるものは極力猫の周りから排除するように気をつけましょう。
▼室内飼いであっても、ノミやダニによって痒がる仕草をしていないかしっかりと注意してください
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貧血による初期症状は元気がないとかだるそうにしているなど、あやふやな状態であることが多いので、すぐに飼い主さんが気がつけるかどうかが重要です。日頃から観察を怠らないようにしたいですね。