猫もフィラリア予防は必須!検査と予防の方法、費用について

ごくまれですが、猫にもフィラリアが寄生することがあります。フィラリア症については、犬を飼っている方ならご存知だと思いますが、猫だけを飼っている方はあまりピンとこないかもしれません。

怖いのは、フィラリア症で猫が突然死をすることがあるということです。

ただ、この病気は予防できる病気です。猫では症例が少ないので、どれだけ対策ができるかは飼い主さん次第です。

これからの春の時期が予防をスタートさせる季節になりますので、覚えておきましょう。

フィラリア予防が必要な理由、突然死の原因にもなるフィラリア症

猫を脅かす寄生虫といえば、猫をかゆがらせるノミやダニ、うんちと一緒に出てくる回虫や条虫などを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、実は他にももう1つ、最近感染の報告が増えている寄生虫がいます。それがフィラリアです。よく動物病院で「フィラリア予防をしましょう」と貼り紙がしてあるので、名前だけは知っている飼い主さんも多いはず。

しかし、ほとんどの猫の飼い主さんは、フィラリアなんて聞いてもピンと来ません。何故なら、フィラリア予防を推奨されているのは主に犬だから。そう、フィラリアは本来犬の感染する病気です。

猫の体の中に住み着く内部寄生虫「フィラリア」

猫に感染するフィラリアは「犬糸状虫」とも呼ばれる、文字通り本来は犬を宿主とする内部寄生虫です。

フィラリア顕微鏡写真

幼虫(ミクロフィラリア)は血管内を移動できるほど小さいものの、体内で脱皮を繰り返し、育つとオスは10~20cm、メスだと30cm近くにもなります。

成虫はそうめんのような白い糸状の姿をしていて、主に猫の肺動脈や心臓に住み着いて、猫の命を脅かします。

猫も飼い主さんも感染する可能性が!蚊がフィラリアを媒介する

フィラリアは、蚊に刺されることで感染します。

  • フィラリアに感染した犬などの動物の血を蚊が吸う
  • 血と一緒に、蚊の体内にフィラリアの幼虫が移動する
  • フィラリアを内包した蚊がさらに、今度は猫の血を吸う
  • 蚊の中で育ったフィラリアの幼虫が猫の体内に移動する

という過程を経て感染が成立します。蚊は日本全国どこにでもいますし、絶対に接触しないようにすることはほぼ不可能です。そのため、たとえ室内飼いであっても油断することはできません。

「犬糸状虫」と呼ばれるとおり、感染するのは主に犬ですが、他に猫、キツネやタヌキ、クマやアライグマ、イタチやフェレットなどもフィラリアに感染することがあります。

さらに、人間が感染するリスクもゼロではありません。人間の感染例は国内で100例ほど確認されています。人間が感染した場合はほとんど無症状のまま終わりますが、まれに咳や呼吸困難などを引き起こすことがあります。

実は猫の10%がフィラリアに感染している!?

フィラリアはもともと犬の体内で成長しやすいため、犬に感染した場合は多くの犬が命を落とします。何も予防をしないと9割近くの犬が感染してしまうため、動物病院や犬の飼い主さんは、犬のフィラリア予防を積極的に行っているのです。

一方、猫の場合でも、実は10匹に1匹、1割の猫がフィラリアに感染しているというデータがあります。しかし、犬と違って猫の場合、仮に感染したとしても猫の体内ではフィラリアはほとんど生き残ることができません。

幼虫のまま終わってしまうため、また感染したとしても無症状のことが多く、猫の場合ではあまり問題視されないのです。

しかし、もし万が一猫の体内でフィラリアが成虫になった場合、フィラリアは猫にとって致命的ともいえる症状を引き起こします。

猫の突然死の原因上位にある、フィラリア症

猫がフィラリアに感染した場合、ほとんど無症状ということもよくあります。元気がない、疲れやすいといった曖昧な状態のことも多く、猫の飼い主さんはなかなか気がつくことができません。

重篤な場合は、フィラリアは最終的に肺や心臓に寄生するため、呼吸器系の症状をよく引き起こします。咳や呼吸困難、食欲減退の他、時に嘔吐や下痢を伴うこともあります。

そして本当に怖い症状は、このフィラリアが成長し、死滅する時に起こります。

フィラリアの体が血管を詰まらせ、時にはフィラリアの残骸から出た成分によって猫がアナフィラキシーショックを起こし、猫が突然死することがあるのです。

実のところ、猫の突然死の3分の1はフィラリアが原因とさえいわれています。

フィラリアは成長に伴って、寄生する場所も異なります。蚊によって猫の体の中に入り込んだフィラリアの幼虫は、成長しながら体の中を移動して、成虫になると肺動脈から心臓に到達します。その時期によって、フィラリア症の症状は2つに分かれます。

1 肺動脈に到達する時期 感染してから3~4ヶ月後
  • 血管の炎症
  • 呼吸器症状
  • 嘔吐
  • 下痢
2 フィラリアの死滅時期 上記以降
  • 血管内に詰まる
  • アナフィラキシーショック
  • 呼吸困難
  • 虚脱

突然死の原因は2の方です。

まずは検査、それから予防。順番を間違えないで!

犬の場合は、蚊を見かけたら1ヶ月以内に検査をしてから予防を開始します。基本的に猫も同じです。検査をして、フィラリアが見つかったら、それを退治する治療をします。

見つからなかったら、感染して心臓に到達する前に退治する(予防をする)ことになります。

猫のフィラリアは検査で見つかりにくい

この猫のフィラリアですが、事前に感染しているかどうか検査して確かめるのは、実は非常に困難です。

犬と違い、猫の体内でフィラリアが育つ可能性はほとんどありません。そのため、猫の体内で仮に生き残ったとしてもわずか1~3匹程度ということがほとんどで、検査をしてもなかなか引っかからないのです。

本当は感染しているのに、フィラリアが見つからずに陰性となってしまうケースがよくあります。

そのため「猫に感染する確率が低い」というよりは「感染しても見つからない」ために、猫におけるフィラリアの認知度が低くなっている現実があります。

検査をしないで予防を先にしてしまうと…

もし、検査をしないで予防を始めたら、どうなるでしょうか。退治されて死んだフィラリアが血管に詰まってしまいます。先ほど説明した、2の状態になってしまいますので、大変危険です。ただ、猫の場合、寄生するフィラリアの数が少ないので、検査で発見されないことが多く、診断が難しいとされています。

検査をしてから予防するのが大前提ですが、その検査結果が不確かだという矛盾があることが、猫のフィラリア検査の難しいところです。検査方法も1つだけではありませんので、総合的に判断することになります。

予防には、錠剤やスポットタイプの液体が主流です

予防には、錠剤を飲ませる、もしくは、スポットタイプの液体を皮膚にたらす方法があります。また、予防の期間も考える必要があります。予防薬という言い方をしていますが、実際は、感染して、最終地点である心臓に到達する前に退治するための駆虫薬になります。

ですので、蚊を見かけた後1ヶ月以内に検査をして予防をスタートさせることになります。そして、1ヶ月に1回予防を続けて、蚊がいなくなって1ヶ月後に最後の予防をします。基本的に、フィラリアのライフサイクルや薬の有効期間のため、1ヶ月に1回の予防をすることになります。

費用は、それぞれの予防方法で金額が異なります。予防薬1回の金額×5~12月まで予防したとして8ヶ月分の費用がかかります。病院によって扱っている薬の種類や金額が異なりますので、かかりつけの動物病院にご相談ください。

予防する期間も、地域によって異なります。蚊が多く発生する温暖な地域では、予防期間も長くなります。

実際、動物病院のスタッフに聞いてみたところ、猫では発症例も少なく、予防をしている猫はまだ少ないそうです。予防薬を販売しているメーカーは、啓蒙活動をしていますので、ポスターやリーフレットを見かけることも多くなっていますが、まだ認知度は低いようです。

猫のフィラリアポスターの写真

月1回のひと手間が猫を守る!飼い主ができるフィラリアの予防方法

検査や治療が困難なフィラリアですが、対して予防は非常に簡単です。飼い主さんができることを紹介します。

蚊に接触させない!室内飼いを徹底する

フィラリアは蚊が媒介します。つまり、室内飼いを徹底することである程度の予防になります。できるだけ蚊に接触しないような環境を作ることが大事です。日頃から蚊取り線香などを積極的につけるのもおすすめです。

ただし、いくら室内飼いをしていても蚊に接触するリスクはゼロにはなりませんから、過信は禁物です。

体内のフィラリアを根絶。駆虫剤を投与する

もう1つ、フィラリアを完全に予防する方法として駆虫剤を投与する方法があります。フィラリアの駆虫剤は「要指示医薬品」のため、動物病院でのみ処方してもらうことができます。市販では入手できません。

フィラリアは幼虫のまま猫の体内に入り、数ヶ月ののちにごくわずかな確率で成虫となります。そのため、感染した後、症状が出る前にフィラリア予防の駆虫剤を投与してしまえば、フィラリアは成虫になることができず、猫の安全が守られます。

フィラリアの駆虫剤で一番簡単なのは、首筋に液体の薬を垂らすスポットタイプを使用することです。

首に垂れた薬が猫の皮膚から体内に吸収され全身に行き渡り、フィラリアはもちろんノミやダニ、回虫や条虫といった猫に寄生するあらゆる虫も根絶します。しかも、使用は月に1度でよく、猫への負担も最小限です。

蚊は地域にもよりますが、だいたい4~11月の間に発生します。そのため、その時期だけ、毎月駆虫剤を投与し続けることで、猫のフィラリアを予防することができるでしょう。

ギリギリの時期に感染してしまう可能性も考え、予防は蚊がいなくなった後1月先まで行うのが一般的です。

猫のフィラリアはいったん発症すると治療困難

猫におけるフィラリアは検査だけではなく治療も困難になります。

フィラリアを駆虫する薬はあるのですが、成虫を駆虫すると猫がアナフィラキシーショックを起こしかねないなど合併症のリスクが大きく、ほぼ使うことができません。

さらに、外科手術で取り除くのも、心臓や肺動脈といった場所であるだけに非常にリスクが高くなります。

このようにフィラリアの症状が出たとしても、根本的治療が難しいため、咳が出ていれば咳止め、呼吸が苦しそうなら気管支拡張薬の投与といったように対症療法しか行えない場合がほとんどです。

感染し、発症した時のリスクが高すぎるために、そもそも猫をフィラリアに感染させない、フィラリア予防が非常に重要となります。

予防に勝るものはなし!正しい理解と適切な対応を

完全室内飼いの猫は、外で蚊に刺される心配はありませんが、蚊は窓から入ったり、飼い主さんが持ち込んだり、普通に家の中にいますから、室内飼いだからと言って油断はできません。

これは、ノミの予防でも同じです。ノミは蚊より家の中にいる可能性が高いのですが、毎年しっかり予防している猫は、意外と少ないのが現状です。フィラリア予防のネックになっているのは、発症例が少ないことと、費用の問題だと思われます。

どんな予防も同じですが、発症してから辛い思いをして後悔しないために、予防をしておくと気持ちのうえでも安心できます。

飼い主さんそれぞれの考え方、環境、費用の問題などを考慮して、予防をするかしないかを決めましょう。

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