2018年の11月に、一般に販売されている虫ケア用品を使っていた猫の身体に異変が表れるという事件が起こりました。その事件の概要はどのようなものだったのでしょうか。
そして、猫の虫ケア用品には実際にはどのような危険性が隠されている可能性があるのでしょうか。本来なら猫を害虫たちから守るために使うものですよね。
しかし、それで猫の体調が悪くなってしまっては元も子もありません。実際に虫ケア用品にどんな薬品が使われているのか、猫を飼っている人なら知っておきたいですね。
この記事の目次
猫の虫ケア用品に起きていた事件の概要を知ろう
それでは、さっそく冒頭で触れた事件の概要を見ていきましょう。今回問題となったのはアースペットが販売している製品である「薬用アースサンスポット猫用」というものです。
この製品の目的としては、猫を蚊やダニなどの害のある虫から守るというものがあります。使い方としては、まずはあらかじめパッチテスト(首筋に2~3滴垂らす)をします。
半日経過して異常が出なければ、肩甲骨間に2箇所に分け、半分ずつ薬品を垂らします。薬は猫の皮脂によって3~5日程度で全身にわたっていく、と記載されています。
猫の皮膚に直接液体を数滴たらすことになっているということで、飼い主としてはやはり心配な気持ちになるものですが…
そこで実際に使った飼い主さんたちから、アマゾンへのレビューやツイッターにてたくさんのコメントが寄せられているんです。その一部をご紹介していきますね。
- 薬品を使用してから猫の行動が落ち着かなくなった(耳を常に動かしたり、身体がピクピク動いている)
- 薬を塗ったところを舐めようとする。翌日にはその部分が赤く腫れてしまった
- 薬をたらした箇所の毛が抜け始め、一ヶ月経過した頃には剥げてしまった
- 商品を使ったあとに、猫の食欲がなくなり寝込んでしまった
どれも、とても心配になるような症状ばかりですね。
この商品は猫の身体(皮膚)に直接垂らすものなので、影響を受けやすいとも言えますが…それにしても悪い影響が強く出ていて驚くばかりです。
特に、一ヶ月後に剥げてしまうという症状からは、薬剤の成分がなかなか猫の皮膚から排出されずに残ってしまっていると考えられますよね。これらの報告を受けて、アースの会社からのコメントをまとめたものは以下になっています。
- この商品自体は2001年に最初に販売が開始されたものである
- 改良を繰り返したのち、現在販売されていたのは2014年に開発された商品だった
- 現在ではこちらの商品の6本入りは販売終了になっていて、3本と1本バージョンのみが販売されている
- 「商品を使用する前にパッチテストをしてください」という書き込みがあり、場合によっては強い副作用が出ることもあらかじめ記載されていたが質問コーナーでの記載にとどまっていた
- この商品は農林水産省で正式に販売の許可を得たものである
- 今回のことがあって会社で再度安全性の検査をした結果、問題なしということになった
要するに、「農林水産省からの許可はきちんともらっているし、製品を使うことによって起こりうる副作用のこともしっかりと記載しているから問題ない」というように聞こえます。
前もってパッチテストをする時には、猫の首筋に2~3滴を垂らすことになっていますが、そもそもこの場所に垂らす理由は猫が自分で舐めたりできないためなのです。
ここである症状が出た場合には使用を中止するようにと書いてありますが、その症状は「ひどく痒がったり、毛が抜けたり、皮膚が赤くなったり、よだれを出したり…」という恐ろしいレベルのものでした。
もともと体調不良であったり、シニアの猫だったりするとこれらの症状が起きやすくなると言います。さらに説明書へ副作用として「健康状態の猫であっても副作用が出る可能性はある」とも記載されています。
実際にパッチテストに加えて1,2度の使用の際には問題がなかったけれど3度目の使用で異常が出てしまった…という猫もいるんですね。
どちらにせよこのような症状が起きるかもしれないと最初から分かっているのなら、商品として販売するのにはとても危険であると飼い主なら感じることでしょう。
アース側の措置としては、独自のアンケートを行った結果記載していた副作用以外の内容はなかったということで、これからは以前よりも「大きく」副作用とどのように処置を行うのか?ということを記載することになりました(以前は濡れタオルで拭き取る…程度でした)。
説明書の文書自体が全体的に大きくなり、さらにパッチテストの説明文書も以前より分かりやすくなったんですね。そして、製品に含まれている薬剤も分かりやすく記載されるようになっています。
猫の虫ケア用品に含まれている危険物質
今回の虫ケア製品にはフェノトリンという虫を殺すための危険物質が含まれていたことが問題視されていますが、その他にも一般的な虫ケア用品に含まれている成分はいくつかあります。
- フェノトリン(スミスリン)…即効性は低いが、駆除した虫の蘇生率が低いという特徴がある
- ジョチュウギクエキス…除虫菊(キク科の植物)から採れるエキス。天然成分によるもので即効性が高く、残効性は低い。蚊取り線香などによく使われている
- ピレスロイド…あまり採れない除虫菊の代用品として登場した成分で、哺乳類に対する毒性は弱い(昆虫や両生類などへの毒性は強い)が、合わせる成分によって効果が高まる
- ピリプロキシフェン(スミラブ)…哺乳動物に対しての安全性は高い。蛹から羽化して成虫になることを阻害できる
猫の虫ケア用品に一般的に含まれているのはこれらになりますが、この中でも特にピレスロイドやフェノトリンは猫にとって脅威になるとされているんですね。
しかし、日本で販売されている虫ケア用品にはこの2つの成分が含まれているものがとても多いのも事実なんです。
それらを作成しているメーカーとしては「農林水産省に許可されている」として安全性が高いことを唄ってはいますが、実際にどのような検査がなされたのかははっきりとしてはいないんですね。
特に猫の習性として「自分の身体を舐める」というものがありますから、これらの薬剤による悪影響も出やすくなってしまうことも飼い主さんは覚えておくべきでしょう。
飼い主さんは、猫の虫ケア用品という言い方にもしっかりと注意しておくべき
そもそも、「猫の虫ケア用品」という言葉からは「なんとなく、優しいイメージがする」のではないでしょうか。
しかし虫をケアする?というのは違う気がしますよね。もともとは「殺虫剤」でしたし、虫を殺すという目的としては今現在も変わりはありませんから。
今回問題となっているアースが、2020年の東京オリンピックのオフィシャルパートナー(家庭用の殺虫剤や虫よけ、除草剤など)に就任したことから呼び方を「殺虫剤」から「虫ケア用品」に変更しているのです。
まだ定着していない呼び方ではありますが、これかるは少しずつ主流になってくることが考えられますよね。このネーミングにした理由としては以下のことが挙げられています。
- 殺虫剤という呼び方はどうしても、環境に悪いイメージ・毒性が強いイメージが浮かんでしまう
- 「暮らしと生命に寄り添いつつ、地球と共生していく」ことをテーマに製品の安全性を高めていきたいから
- 虫を殺すというよりも人間や生き物を守るための製品であることを全面的に推していきたい
つまり、殺虫剤というネーミングではどうしても「殺す」というイメージが付いてしまうので、それを和らげるためにも「虫ケア用品」に変えていきたい…という思いがあるんですね。
確かに製品の中にはオーガニックのものもありますが、飼い主さんが猫のために配合されている成分を調べてそれが猫の身体にどのような影響を与えるものであるのかを知っておく必要があるのです。
つまり、以前よりも優しいネーミングになったからといって中身は変わらない危険物質であることは大いにあると言えるでしょう。「ケア」というネーミングで安心することのないように、しっかりと製品の中身を知ることが大事だということですね。
猫の虫ケア用品を選ぶときに飼い主さんが注意しておきたいこと
それでは、猫の虫ケア用品を選ぶ際に飼い主さんがチェックしておくべきことをまとめておきましょう。
- 猫の身体にとって危険な成分がふくまれていないか、詳細情報をしっかりとチェックする
- 行きつけの動物病院で、虫ケア用品の薬を処方してもらう
- 液体を垂らすスポットタイプは皮膚に悪影響を及ぼすことがあるので、肌が弱い猫の場合はスプレーか口径薬を選ぶこともできる
- 虫ケア用品を使わないという選択肢もある
やはり市販で購入することのできる猫の虫ケア用品は、危険があるので自分で使用されている内容成分をしっかりとチェックするべきだと言えます。
特にスポットタイプで猫の皮膚に直接付けることになる薬の場合、飼い主さんがしっかりと責任を持ってどの商品を購入するかを吟味する必要がありますよね。
動物病院で処方されたものなら、猫の体調などに合ったものを先生が選んでくれるので安心度が高いです(もちろん、動物病院で出してもらえる薬だから副作用が必ず起こらないという保証はないのですが)。
そして、基本的に猫の皮膚に直接薬剤を垂らすスポットタイプはどうしても副作用が出やすくなってしまいます。肌が弱い猫ならば、スプレータイプか水に混ぜて飲む口径タイプを選ぶこともできるのではないでしょうか。
さらに、完全室内飼いをしている猫ならばそこまで虫にさらされることは少ないですから、飼い主さんの日頃のケアで対策をすることができるかもしれません。ノミ取りのクシで丁寧にブラッシングをすれば、時間はかかりますがノミは駆除できますよね。
オススメの猫の虫ケア用品をチェックしよう
上の項目でチェックしたポイントを押さえつつ選ぶなら、猫の身体に良い成分を使った虫ケア用品を見つけ出すことができるでしょう。オススメの虫ケア用品はこちらです。
レニーム – エフエルエフ (FLF)
- 天然植物エキス「ニーム」(インド原産)が主原料になっているので、毎日安心して使用することができる。このスプレーを使用することで、虫除けと共に皮膚を健康に保つという効果も期待することができる。
- 材料は精製水・ニームオイル・ムクロジエキスのみ
- このスプレーを使用することで、虫除けと共に皮膚を健康に保つという効果も期待することができる
- スプレーした時の臭いがほぼ無くてベタベタしない、というのも嬉しいところ
やはり、天然成分を100%使ったオーガニックな製品なら安心して使用することができそうですね。虫除けの効能だけでなく、使用するだけで皮膚を健康に保つことができるのはとても嬉しいです。
フロントラインプラス – ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスジャパン
- 動物病院でも使われているフランスの製品。
- 主成分はフィプロニルと(S)メトプレン
- ノミの成虫に加えて卵の駆除も期待できる…メトプレンの効果
- 生後8週以上の猫の肩甲骨部分の1部位に全量を垂らす
動物病院でも処方される製品ということで信頼度が高いです。(S)メトプレンの成分によってノミの成虫だけでなく、卵も同時に駆除することができるという所も助かりますね。
ぺディペディハーブ – Peddy Peddy
- 天然成分が100%配合されているので、猫が舐めても安心
- 農薬成分は使われていない
- 防虫効果に加えて、スプレーをすることで静電気も防いでくれる
- 天然ハーブによるリラックス効果も期待できる
- 臭いがきつくない、優しいシトラスの香りも口コミで好評
天然成分が100%使用されているので、猫が舐めたり子どもが猫に抱きついたりしても安心ですね。猫だけでなく人間にも優しいというところがポイントです。
天然ハーブが配合されているのでリラックス効果があったり、きつすぎない香りも好評です。口コミ内容で、リピーター率が高いのもうなづけますね。
そして、すべての商品において同封されている注意書きをよく読んで、用法容量をきちんと守って使用することは大前提になります。もちろん実際に使用する前に、必ずパッチテストは必要になることを覚えておきましょう。
猫の虫ケア用品の危険性は実際にある!成分を見極めて選ぼう
本来虫ケア用品は、猫を害虫の被害や病気の感染から守るために使用するものです。しかし、実際にそれらの用品によって猫の健康が害されることがあるのも事実です。
猫の虫ケア用品には危険性の高い成分である、ピレスロイドやフェノトリンが含まれていることがあるので、特に飼い主さんはしっかりと吟味して商品を選ぶ必要があるでしょう。
そして「殺虫剤」から「虫ケア用品」というネーミングに変わってきたことで、気持ち的に安心することがないようにしたいですね。