ご飯の時間、いつもはがっついて食べていたのに、最近は残すことも多くなった。そういえば口臭もあるし、よだれも垂れている。そんなときには、猫の口の中を見てあげてください。口内炎で赤くなっていませんか。
人間の場合、口内炎はそれほど大きな病気ではないでしょう。しかし猫の場合には、口内炎を放置すると食欲がなくなり衰弱していってしまいます。
また口内炎の原因に重大な病気があることもあります。早めに動物病院へ行くことがとても大切なのです。
人とは違う猫の口内炎!口の中が広く真っ赤にただれてしまう
「口内炎」と聞くと、口の中にポツンとできてしまった赤く小さな炎症を想像されるかもしれません。普段、人間の口の中にできる口内炎はだいたいそんな感じのものでしょう。
しかし猫の口内炎はそれとは全く違います。歯肉や舌など口の中の広い範囲が、真っ赤に腫れたりただれたりしてしまいます。出血してしまうこともあります。
そして人間の口内炎との違いは治癒のしかたにもあります。人間の口内炎でしたら、少し食事に気をつけるようにしたり睡眠をしっかりとるようにすることで自然に治ってくるでしょう。けれど猫の場合にはそうはいかないのです。
「そのうちに治るかな」などと安易に考えて放置してしまうと、猫は痛くてご飯が食べられないためにどんどん体が弱って抵抗力が落ちていきます。脱水を起こしてしまうこともあり、症状はさらに悪化していってしまうのです。
異常に気付いたときには、なるべく早く動物病院へ連れて行ってあげましょう。
口内炎の症状とは
口内炎は、高齢の猫や病気などで体の弱っている猫が発症してしまいやすい病気です。ただ口の中を見てあげる習慣がないと、すぐに異常に気付くことは難しいかもしれません。
もしもお宅の猫ちゃんに次のような様子があれば、口内炎や歯周病といった口の中の病気を疑ってみてください。
- 口臭がひどい
- よだれを垂らしている
- ご飯を食べにくそうにしている、食べ方が何となくいつもと違う
- 食欲がない、いつもは残すことのない量のご飯の残してしまう
- 食欲はありそうなのに、ちょっと食べてすぐ止めてしまう
- 水もあまり飲まない
- 口の回りや頬の辺りを触られるのを嫌がるようになる
- 前足でしきりに口の辺りを触ったりして気にしている
- 毛繕いすることが減る
- 元気がなくなってくる
口の中に何らかの問題が起きていると、このような症状が現れることがあります。口内炎でなく、歯周病かもしれません。どちらにしても口腔内の病気になってしまっている可能性が高いですから、必ず口の中を見てあげてください。
早く気がつけば気がつくほど、治療もしやすくなります。ご飯が何も食べられなくなってしまったときに気付いたのでは、口の中の状態はかなり悪くなってしまっているかもしれません。
食事の際に様子が違うときには、口の中を見てみましょう。できれば普段から口の中や体全体の状態を、一緒に遊びながらチェックするようにしておくとよいでしょう。
歯垢や歯石が口内炎の原因になることもありますから、歯磨きをすることも大切です。
口内炎の原因に大きな病気があることも
人の口内炎と違い、猫の口内炎は何らかの病気が原因になっていることが多くなります。口内炎の陰に重大な病気が隠れている可能性もありますから、注意が必要です。
口内炎の原因として、次のようなものが考えられます。
病気
ウイルスに感染したことが原因で免疫力が低下してしまい、口内炎を発症してしまうこともあります。また糖尿病や腎臓病などになってしまった場合にも免疫力が低下し、口内炎になりやすくなります。
- 猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫カリシウイルス感染症
- 糖尿病
- 腎臓病
このような病気が原因で口内炎になってしまっているかもしれません。早めに動物病院へ行くようにしましょう。
歯垢や歯石
歯垢や歯石が溜まってしまうと、口内炎になりやすくなります。また歯周病にもなりやすくなりますから、注意してください。
歯垢や歯石が溜まったところには、細菌がたくさんいます。その細菌が繁殖して、口内炎や歯周病を引き起こしてしまうのです。
ひどくなると口を触られるのも痛がるため、歯石を取るために麻酔をする必要もでてきます。そうなってしまわないためにも、子猫のうちから歯磨きを習慣にしておくとよいでしょう。
栄養不足
栄養不足が原因で口内炎ができてしまうこともあります。ビタミンAが不足すると口の中の粘膜が乾燥してしまい、口内炎になりやすくなります。
異物による傷など
間違って異物を口にしてしまったために傷ができ、口内炎になってしまうこともあります。例えば次のような可能性が考えられます。
- 魚の骨のような鋭いものなどが刺さった
- 電気コードを噛んで感電してしまい、炎症になった
- 体についた洗剤や薬剤を舐めてしまったために、口の中が強い刺激を受けて炎症した
- 歯が欠けたり折れたりしている
- 猫が自分で口の中を噛んでしまった
このようなことが原因で、口内炎になってしまうこともあります。
屋外を自由に歩き回る猫は、もちろん事故にもあいやすいでしょう。しかし完全室内飼いの猫も、事故にあってしまう危険はたくさんあります。
電気コードを噛んでしまったり洗剤を舐めてしまったりする事故は未然に防ぐこともできますから、注意をするようにしておいてください。
原因がはっきりしない口内炎もあり
上記のようなはっきりとした原因がないのにも関わらず、口内炎ができてしまうこともあります。治療法もよくわかっていません。
口腔内だけでなく、全身の状態を検査し治療していく
口内炎ができてしまった場合には、まず口の中の状態をきちんと確認する必要があります。ただ猫は痛いために、検査を嫌がってしまうこともあるでしょう。そのようなときには麻酔をかけることもあります。
口内炎の原因に他の病気があるということも多いため、全身の状態を調べるための血液検査なども行われます。原因になっている病気がわかれば、まずはその病気の治療が行われていきます。
もちろん口の中の洗浄・消毒も行われ、もしも歯垢や歯石がたくさん溜まってしまっているようならそれらを除去する治療も行われます。歯石などの量が多いと除去にも痛みが伴うため、この場合にも麻酔が必要になります。
症状によって抗生剤、抗炎症剤、ステロイド剤などが使われます。症状がひどいために薬だけで改善させられない場合には、患部をレーザーで焼くという治療法がとられることもあります。
炎症がかなり激しくなってしまっている場合には、抜歯治療が行われる場合もあります。「歯を抜く」と聞くと不安になってしまうと思いますが、歯を抜いたことで細菌が繁殖しやすい環境がなくなり、口内炎も改善されます。
ご飯が食べられなくなるのではないかという心配もされるかと思いますが、もともと猫はあまり噛まずに飲み込んでしまうため、歯がなくなってしまっても食事の問題はありません。落ち着けば、以前のように食事ができるようになります。
抜歯治療はとても効果が高いとされますが、他の病気がある場合や体調によってはできないこともあります。また全身麻酔を行う必要もあります。どの治療法が一番良いのかについては、獣医さんとよく相談してみてください。
全身麻酔は適切な検査や治療のためには必要不可欠なものですが、同時にリスクもあります(人間でも同じです)。できるだけそのような状態になる前に異常に気付き、治療を受けていくことが望ましいでしょう。
口内炎を予防するためには、普段から歯磨きをしておくことが大切です。毎日できないとしても、3日に1回くらいは行うようにしましょう。
歯垢や歯石が溜まらなければ、口内炎にもなりにくくなります。また定期的に口の中の様子を見てあげることで、異常が起きたときにすぐに気がつけます。
口内炎など口の中の病気は、歳をとるほどかかりやすくなります。そのときになってから歯磨きを始めても、猫ちゃんは慣れないことに嫌がってしまうでしょうから、子猫のうちから歯磨きに慣れさせておくことが大切です。
まずは口を開けること、そして口の中をいじられても嫌がらないようになるところから徐々に慣れさせてみてください。