猫鉤虫症の症状と感染経路。血が混じった黒い便に要注意!

寄生虫は他の種類の生物の体内に気づかれないように侵入し、勝手に栄養を横取りして生きています。猫にもいろいろな寄生虫が寄生してしまうことがあるのですが、今回はそのうちの「鉤虫」についてみていきましょう。

鉤虫は体長1~2cmで、猫の小腸に寄生し血を吸って生きています。鉤虫により発症する病気が「鉤虫症」ですが、大人の猫であればあまり症状は出ません。しかし子猫の場合には死んでしまうこともあるため、注意が必要になるのです。

鉤虫は猫の血を吸って生きている

「猫鉤虫症」の原因は、「猫鉤虫」という寄生虫の感染になります。猫鉤虫は体長1~2cmで、白い糸のような小型の寄生虫です。

猫鉤虫の画像
(出典:動物由来感染症(回虫症、鉤虫症、鞭虫症):綾部動物病院 より)

線虫類に属する寄生虫であり、同じ線虫類には回虫やギョウ虫などもいます。

ちなみに猫には「猫鉤虫」が見られますが、犬には猫鉤虫とよく似た「犬鉤虫」が見られます。鉤虫は他にも種類があり、人間には「ズビニ鉤虫」「アメリカ鉤虫」などが寄生します。

猫鉤虫は猫の体内に侵入すると、小腸に住み着きます。鉤虫の口には「歯牙(しが)」と呼ばれる鋭い牙のような構造があるのですが、なんとこの牙で小腸の壁に噛みついて猫の血を吸って生きているのです。

そしてそこで卵を産むと、卵は猫の便と一緒に排出されます。その卵が外界で発育して幼虫になるとまた別の猫の体内に侵入していき、こうして感染が広がっていくのです。

▼室内で飼っているから大丈夫、と安心できないのが寄生虫の感染なのです
猫の寄生虫は室内飼いこそ注意しよう!寄生虫予防のための基礎知識

鉤虫症の症状。血の混じった便をすることがある

鉤虫が猫の体内に侵入して小腸に寄生すると、さまざまな症状が現れます。ただ他の寄生虫症と同じく、大人の猫の場合にはあまり大きな症状が出ないということが多くなります。

しかしまだ体力のない子猫が感染してしまった場合には注意しなくてはいけません。重い症状が現れて次第に衰弱していき、場合によっては命を落としてしまうこともあるのです。

鉤虫症では、次のような症状が現れることがあります。

  • 血の混じった黒っぽいタールのような便をする
  • お腹が痛そうにする
  • 貧血気味になる
  • 下痢をする
  • 食欲がなくなる
  • 元気がなくなる
  • 体重が減ってくる
  • 毛ヅヤが悪くなる
  • 脱水症状になる
  • 衰弱していく

これらの症状の現れ方は猫の年齢によっても違いますし、また感染している鉤虫の数によっても違ってきます。鉤虫の数が多いほど症状は重くなってしまいます。

子猫の場合には重い症状が出やすく、命の危険もあります。もしも血の混じった黒い便をしているときには、すぐに動物病院へ連れていくようにしましょう。気づかず放置してしまったりすると、衰弱して死んでしまうこともあります。

▼猫の血便の状態がどのようになっているかで、その原因を導き出すことができます
猫の血便が続く時は?猫の血便の原因と慢性化した時の対処法

大人の猫であっても、たくさんの鉤虫が寄生しているといろいろな症状が現れるようになります。血を吸われたことや噛み付かれた傷口から出血したために、貧血状態になってしまうこともあります。貧血になると目や口の中、歯茎などが白っぽくなります。

▼猫の歯茎が白っぽくなっている場合に考えられる原因はいくつかあります
健康な猫の歯茎はピンク色。がん等の危険な病気のときの色や特徴は?

大人の猫の場合には、便に異常が見られないこともあります。もしも食欲がなくなり痩せてくる、元気がなくなる、だんだん毛ヅヤが悪くなるなどあれば、原因は何であれ何か問題が起きていると思われます。念のため、診察を受けるようにすると良いでしょう。

鉤虫症の感染経路。口だけでなく、皮膚から侵入することも

猫鉤虫はどのようにして猫の体内に寄生するのでしょうか。

猫の小腸に寄生した猫鉤虫はそこで卵を産み、卵は猫の便と一緒に排出されていきます。外界に出た卵はそこで発育して孵化し、やがて幼虫になります。

この幼虫が何かに紛れて他の猫の口に入ってしまうと、その猫にも感染が広がっていくのです。

さらに信じられないことに、この幼虫は、猫の皮膚から侵入してくることもあります。土の中で孵化した幼虫が、屋外で遊ぶ猫の足の皮膚から侵入して感染してしまうこともあるのです。普段から屋外で自由に遊んでいる猫ちゃんは、特に気を付けてあげてください。

▼猫が屋外に出ることで、マダニに噛まれるという恐ろしい危険性もあるのです
猫もヒトも危険なマダニ対策。噛まれたときの症状と対処法

その他にも、妊娠した母猫から子猫に感染してしまうこともあります。母猫が感染している場合には、胎盤を介して胎子に幼虫が移行してしまったり、また母乳を介して子猫に感染が広がってしまうこともあるのです。

子猫が感染してしまうと症状は重くなりやすいため、注意しなくてはいけません。子猫を守るためにも、母猫が寄生虫に寄生されていないかについても気をつけておきましょう。

鉤虫症の治療や予防。普段から猫の便はすぐ片付けよう

もしも猫が血の混じった黒い便をしているようなことがあれば、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。その他にも普段と様子が違ったり気になる症状があるようであれば、念のため獣医さんにみてもらってください。

鉤虫が感染してしまっているかどうかについては、猫の便を検査することですぐ診断ができます。

▼猫の便を持参して獣医さんへ見せるまでの順序はこちらです
猫の検便の正しいやり方&持っていき方。検査でわかる病気と費用は?

そして感染してしまっていたとしても、駆虫薬を投与することですぐに駆除することができますから心配はいりません。下痢がひどい時には下痢止めを投与したり、腸内での出血がひどいような時には止血剤を投与したりもします。

そして何より大切なことは、鉤虫に感染してしまわないように普段から予防をしておくことです。

鉤虫症だけでなく他の感染症を予防するためにも重要なことですが、猫が便をしたときにはすぐに片付けるようにし、トイレはいつでも清潔にしておいてください。

便と一緒に排泄される鉤虫の卵ですが、幸いにも排泄された直後には感染力がありません。感染力を持ってしまう前に感染源の便を片付けておくことで、感染が広がることを抑えられるのです。

▼猫の便は、飼い主さんが見つけ次第片付けるようにしておくと安心ですね
猫ちゃんのトイレのお掃除、清潔なトイレをキープしてあげよう

多頭飼いをしている場合には特に気をつけましょう。1匹でも感染してしまっていると、他の猫たちも感染しやすくなってしまいます。飼育環境を清潔に保つようにし、また他の猫たちも検査を受けてみてください。

また屋内外を自由に行き来している猫の場合には、感染の機会がどうしても増えてしまいます。定期的に検査をするなどしておくと良いでしょう。(できれば室内飼いにされる方が安心です。)

猫鉤虫症は日本で少なくなってきている。それでも予防が大事

実は最近、猫鉤虫症の日本での発生は以前に比べるとかなり少なくなってきています。ひと昔前には猫鉤虫症は猫に普通にみられる寄生虫症だったのです。ただ発生件数が減ったからといっても、感染してしまう危険はあります。

予防はしっかり行うようにし、気になる症状があったときにはすぐに診察を受けるようにしてください。

あなたの一言もどうぞ

ページトップへ