小さな子猫は、まだカリカリなどの固形のごはんを食べることができません。離乳ができる時期に入るまでは、子猫はミルクを飲んで成長していかなくてはならないのです。
人間が子猫にミルクをあげる場合には、さまざまな事に気を付けておく必要があります。ミルクの選び方から、子猫が飲むミルクの作り方、そして量も把握しておかなくてはいけませんよね。
実際にどのようにミルクを飲ませていくのかも知っておく必要があるでしょう。猫としてのベースを作ることになる子猫時代のミルク。ぜひしっかりとマスターしてくださいね。
この記事の目次
子猫のミルクをしっかりとあげるべき理由
母猫から生まれたばかりの子猫は、まだ固まりのあるごはんを食べることができません。なのでこの時期には、子猫はミルクをきちんと飲めているか?ということがとても重要になってくるんです。
- 子猫から成猫になる上で、20倍から40倍にまで体重が増える
- 人間の場合と比較すると、実に15倍も成長が早いことになる
- きちんとミルクを飲んでいないと、栄養不足によってうまく身体が大きくならないこともある
- 生後4週間までは栄養がたっぷりある母乳かミルクで育てるべき
猫は、子猫から成猫として成長するまでに体重が20倍から40倍にもなると言われています。この比率は、人間の赤ちゃんのケースに比べてなんと15倍も早く大きくなっている…という驚きの結果もあるほどなんですよ。
この時期にきちんとミルクを飲んでいないと、栄養不足によって身体が大きくならないこともあるんですね。この時期にはミルクがとても重要であるということを、しっかり覚えておきましょう。
人間用のミルク(牛乳)は与えていいの?
猫にあげるミルクとして、人間が飲んでいる牛乳をあげるのはどうなのでしょうか。基本的に牛乳は牛の乳であり、牛は草食動物ですよね。猫は肉食動物ですから、猫の身体に牛乳は合わないと言えるのです。
実際に、猫に牛乳をあげてはいけない理由を見てみましょう。
- 牛乳の中にある乳糖を分解できなくて、お腹を壊してしまうから
- 牛乳では、子猫に必要とされる成分をそれだけで補うことができないから
- 牛乳にはナトリウム・リンが多く含まれているので猫の腎臓への負担になるから
牛乳の中には乳糖が含まれていて、これを体内で分解するにはラクターゼという成分が必要になります。人間でも猫でもこのラクターゼという成分が体内にあるのですが、量は人によって違いがあります。
ラクターゼの量が少ないとうまく乳糖を分解することができなくなるので、結果的にお腹を壊してしまうことになるんですね。さらにこのラクターゼは、加齢によっても減っていく成分でもあります。
牛乳に含まれている乳糖の量は、母猫の母乳や猫用ミルクに含まれている量よりも多いこともあって、お腹を壊しやすくなっているんですね。
他にも猫自身の体質に牛乳が合わないという理由で、お腹を壊すことだってあるんですよ。さらに牛乳と猫用に作られたミルクでは、その内容成分が全く違います。
いきなり子猫を保護した場合にその夜仕方なく…というならまだしも、ずっと牛乳を猫用ミルクの代用として与え続けるなら、発育不良を引き起こしてしまうかもしれません。
特に牛乳にはナトリウムやリンなどのミネラル系成分がたくさん含まれているので、どうしても腎臓に負担がかかったり、尿路結石になりやすくなるのです。
緊急で猫ミルクが買えない時に代用となるもの
緊急で猫ミルクが買えないというときに応急処置として牛乳を使う場合には、以下のように対応することができますよ。
- 牛乳に水を入れて薄める
- 牛乳200ccに対して卵黄1つ(白身は入れない)と砂糖小さじ2杯
- 乳糖が入っていない牛乳(低脂肪とは違うので注意してください)
- 無乳糖の赤ちゃん用の粉ミルク
そして、すべての代用において共通に言えることですが、必ず人肌程度に温めたものをあげるようにしてください。代用の時に使う哺乳瓶として人間のものが頭に浮かぶかもしれませんが、子猫には大きすぎるでしょう。
この場合はスポイトやお弁当に使われる醤油さしなど、子猫の口のサイズに合ったものを探してくださいね。そして、あくまでもこれは代用であり緊急の時のみの対応なので、すぐに子猫用のミルクを準備してあげましょう。
猫用のミルクをあげることが大切である理由
やはり、猫の体質に成分が合わせられ、腎臓などにも配慮された猫用ミルクを選んであげるようにしましょう。
猫用のミルクをあげることが猫にとって大切であるのには、理由があります。
- 猫の母乳に近い成分で作られているから
- 乳糖が入っていないので下痢をしないから
- 子猫に必要な栄養素がしっかりと配合されているから
上の項目で「牛乳は牛の乳であり、牛は草食動物である」という所がありましたよね。つまり「猫用のミルクは牛乳とは違って、猫の乳である」んです。
それゆえに、猫の母乳にできる限り近づけた成分が使われている、と考えることができるんですね。さらに猫用のミルクは猫が分解しにくい乳糖もカットされているので、下痢を起こしてしまう心配もありません。
さらに子猫用のミルクには、猫に必要とされる成分(ビタミンAやたんぱく質など)が配合されているんです。ごはんとしてしっかりとミルクから栄養を取らなくてはいけない子猫には、ぴったりですよね。
猫用ミルクの選び方
猫用のミルクは、どんなものを選べばいいのでしょうか。ポイントはこちらです。
まず粉末タイプと液体タイプがあります。粉末タイプは賞味期限が長くなっていて、液体タイプは手間がかからないので便利だと言えるでしょう。そして猫のミルクは大きく分けて3つの種類に分けることができます。
- 離乳する前の子猫用…栄養たっぷり。なるべくラクトフェリンが含まれるものを選びたい
- 成猫のおやつ用…たんぱく質は多めで、カロリーは控えめ
- シニア猫のための栄養補給として…低脂肪タイプで栄養が豊富なので、健康維持のために活用したい
猫用ミルクには、離乳する前の子猫の時期に必要な成分がたっぷり含まれているので、かならずどの時期に適応している猫ミルクかをしっかり確認してから購入するようにしましょう。
さらに、子猫用のミルクの中でもラクトフェリンが含まれているものがあるのでできれば選びたいですね。この成分は初乳に含まれているものなので、子猫の免疫アップ効果も期待できます。
1日に何回与える?与える一回の量と一日中の量の目安
子猫のミルクは、1日に何回与えるべきなのでしょうか。さらに、1回に与えるミルクの量、1日を通してのミルクの量についても知っておきましょう。
生後1~10日 | 1回に5~8ml 1日に8回 1日で40~80ml |
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生後11~20日 | 1回に8~12ml 1日に8回 1日で60~80ml |
生後21~30日 | 1回に10~20ml 1日に6回 1日で80~100ml |
これらはあくまでの平均の値です。実際には子猫の健康状態や体重に生後何日かを照らし合わせて考えていくことになります。基本的に生後20日になるまでは、3時間おきにミルクを与えることになります。
この時期はかなりマメにミルクを与えなければならないということで、あらかじめ覚悟しておく必要があるでしょう。
子猫用ミルクの作り方
それでは、ここから実際に子猫用のミルクを作っていきましょう。小さな子猫は免疫力がとても低いので、殺菌することでバクテリアを減らしていくことが大切です。
最初は少しドキドキしてしまうかもしれませんが、何度かやっていくうちにだんだん慣れていきますよ。
- 道具を使用する前に、すべて煮沸消毒する(煮沸は3分間以上行う)
- お湯を沸かして、70度くらいまで冷ます
- お皿(哺乳瓶でも良い)にミルクとお湯を計って入れる
- よく混ぜて、ダマにならないように溶かす
- 人肌程度になるまでそのまま冷ます
まず、ミルクを作るのに使用する道具は最初に全て煮沸消毒をしておきましょう。器具を洗剤で洗ったあとに、鍋に水を張り沸騰させてください。道具がすべて浸かるようにしてお湯の中に入れ、熱湯で3分以上煮沸消毒します。
それからいよいよミルク作りの本番に入っていきましょう。お湯を沸かして、そのお湯を70度くらいまで冷まします。
お皿(哺乳瓶でもOKです)にミルクとお湯を計量して入れます(ミルクの粉、お湯の順番がやりやすい)。ダマになりやすいので、しっかり混ぜて溶かしてください。そこからまたミルクの温度を冷ましていきます。
最終的に人肌程度になったら子猫に与えられるので、実際にそこまで冷めたことをよく確認しましょう。温度が人肌になっているかどうかを確認するためには、一滴腕にたらしてみるやり方がオススメです。
ミルクの最適な温度は約38度です。低すぎるのも熱すぎるのも良くありません。ミルクを作るときの濃度はパッケージに書いてある分量に従うことができますが、この濃度は「元気な猫用」であることを覚えておきましょう。
子猫が保護されたばかりで弱っている場合などには、規定の濃度よりも少し薄めに作った方が良いです。そこからだんだん規定の濃度にしていくようにしていってください。
ミルクの作り置きは、バクテリアが増えてしまうので絶対にしてはいけませんよ。
必見!子猫へのミルクの飲ませ方
それでは、実際に子猫にミルクを飲ませていきましょう。全体的に気を付けておきたいことは、やはり小さな子猫なので優しく取り扱うことです。
- 子猫の首を優しく抑えて安定させる
- シリンジを子猫の口に近づける
- ちゃんとミルクを飲めているか、喉をさわって確認する
- ミルクは1時間以内に飲ませる
- 飲み残ったミルクは残さず捨てる
まず子猫を腹ばいにした状態で、頭を少し上に向くようにしましょう。そして子猫の首を優しく後ろから抑えてください。
首が動かないように安定できたら、シリンジを子猫の口に近づけてあげましょう(この時の角度は45度くらいがいいです)。そうすると、子猫は反射的にミルクを飲み始めることができます。
ちゃんとミルクを飲んでいるか分からない場合は、子猫の喉をさわって確認してください。子猫がミルクを飲むときは、前足でしっかりとしがみついてくる動作をします。
これは「ミルクトレッド」と呼ばれるもので母乳をたくさん出すための本能から来る動作なんですね。この時子猫の爪がチクチクして痛い場合には、シリンジを持っている手を子猫の横に持ってくるようにしてみてください。
ミルクは1時間以内に与えるようにして、それで残ったミルクは残さずにすべて捨てるようにしましょう。口の周りに残っているミルクは、毎回綺麗にふいてあげてくださいね。
そして、子猫にミルクをあげた後には温かくて湿り気のある布を使って子猫のお尻を刺激してあげてください。生まれたばかりの子猫(生後3週間くらいまで)は、まだ自分の力で排便をすることができないからです。
通常なら母猫が赤ちゃんのお尻を舐めることで刺激を与えて排便を促しますが、これを代理でするということで湿り気のある布を使うんですね。ミルクをあげる度に、このようにして優しく刺激を与えてあげてください。
ミルクを与えるときに、プラスして気を付けておきたいこと
子猫の体温が下がってしまうと、それが原因で命取りになってしまうこともあります。特に冷え性の人は手が冷たいので、ただ猫を触っただけで猫の身体が冷えてしまうこともあるので気を付けておくべきなんですね。
自分の手が冷たいと思ったらお湯に浸けたりして暖めてから、子猫のお世話を始めるようにしましょう。
懐に入れたり、タオルにくるんだりして体温を上げてあげることもできます(電気毛布などを猫の寝床の下に敷いてあげるのもいいですが、自分で這い出せるように一部だけにしてください)。
この時点で猫の体温がかなり下がっているなと感じたなら、さらに嘔吐や下痢をしているような様子が見られるなら低血糖になっている恐れもあります。この場合はミルクをあげるよりも先に、砂糖水やガムシロップなどを摂らせましょう。
ミルクを吐き出してしまったらどうすればいい?
まだ小さく、体力も弱い子猫はミルクを哺乳瓶で飲むことは至難の技だといえます。少しでもタイミングが合わなければすぐに吐き出したり、むせたりしてしまうものだということを覚えておきましょう。
ミルクを吐き出してしまった時、哺乳瓶を使っているなら「哺乳瓶の乳首のサイズが大きすぎるか」「哺乳瓶の乳首の穴のサイズが大きすぎるか」ということを確認してください。
もし哺乳瓶を少し抑えた時にミルクがドバッと出ているようなら、それは哺乳瓶の乳首に空いている穴が大きすぎると考えられます。その場合は新しい哺乳瓶の乳首を準備して、十字か斜めに切るようにしてください。
そして、子猫にミルクをあげるときには、無理矢理口に乳首を押し込まないように気を付けましょう。
乳首によって子猫の喉が刺激されてしまうからです。あくまで優しく、子猫が自分で飲めるようにサポートする感じで行いましょう。
まだ離乳していない子猫にとって、ミルクは命を繋ぐために不可欠なものだった
子猫は、生まれてから4~8週くらいまでは母猫の母乳をしっかりと飲んですくすくと成長していきます。
母猫が育児放棄をしてしまったり、子猫が保護された場合には、人間が母猫の代わりにミルクをあげなければいけないことになるでしょう。
牛乳ではなく猫用のミルクを選ぶこと、猫用ミルクの中でも子猫専用のミルクであることー。どちらにも理由が存在しています。さらにミルクの作り方から、実際にどのようにして与えていくのか?までマスターしておきましょう。
この時期の子猫は免疫力がとても弱く体力も少ないので、消毒をすることと子猫の体温を下げないようにすることをしっかりと意識をしてくださいね。