猫の毛が抜ける病気を部位ごとに解説。脱毛と季節性換毛との見分け方

柔らかくてなめらかでふわふわした被毛も猫の魅力の一つ。あれだけの毛に覆われていると、当然の事ながら、撫でられるたびに、すり寄るたびに、耳の後ろをカキカキするたびに、惜しげもなく抜け落ちてコロコロや掃除機が間に合わないほどですよね。

猫の毛は私たちの髪と同じように、毎日抜けては次々と新しく生え変わっていきます。抜け毛が多いのは猫の美しい毛を保つためには当たり前のこと、しかしあまりにゴッソリと抜け落ちるようなら、それは病気の可能性があります。

自然な換毛と病気の抜け毛はどのように違うのでしょうか?

猫は春と秋に換毛期が来ます

猫の毛穴からは1毛穴につき5本以上の毛が生えており、皮膚1cm四方あたり600本の毛が生えています。猫ごとに表面積が異なるので個体差はありますが、ざっと100万本ぐらいは生えている計算になります。

ヒトの毛髪の平均が10万本ですので、ヒト10人分の髪の量に相当する毛があの小さな体にぎゅっと生えているわけで、つまり抜ける量もヒトの抜け毛の10倍。毎日たくさん抜けるのも頷けますね。

猫には夏毛と冬毛があり、それぞれ春と秋に換毛気を迎えます。この時期になるとその100万本の毛が全部抜け替わることになりますので、それはもうたくさん抜けます。

ブラッシングの度に両手で握れるほどの毛の塊が収穫でき、それでもあとからあとから抜けた毛の塊が、フローリングの上を荒野のタンブルウィードのように転がっていくほどの抜けっぷりです。

しかし、それほどまでに抜けても、抜け方が満遍なく、猫の全身が相も変わらずふわふわともふもふしているならそれは自然な換毛ですので、心配いりません。

逆に、地肌が見えるほどに毛が薄くなったり、局所的に抜け落ちるなどの不自然な脱毛に加え、発疹やフケが出ていたり、該当箇所をかゆがったり執拗に舐め続けるようであれば、それは病気と考えられます。

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毛が抜ける部位・抜け方別、毛が抜ける主な病気

毛が抜ける症状が出る病気の原因は、寄生虫やアレルギー、日光やストレス、ホルモン異常によるものまで様々です。毛が抜ける部位や抜け方別にご紹介していきます。

円形に毛が抜ける

皮膚糸状菌症(白癬)が考えられます。これはカビの一種、真菌によるもので、かゆみを伴い、毛が束になって抜けてカサブタができます。

真菌は水虫の原因として知られているように、人間にも他の動物にも感染する人獣共通感染症です。ストレスや病気や栄養失調によって免疫力が低下していたり、まだ免疫が十分に発達していない子猫の場合に発症しやすくなります。

一度罹患すると抗真菌薬の経口摂取や塗布による長期的な治療が必要となります。

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顔まわりの毛が抜ける

ヒゼンダニ症(疥癬)、食物アレルギー、日光過敏症が考えられます。

ヒゼンダニは目に見えないほど小さな寄生虫で、猫の皮膚の表面に穴をあけて住み着きます。ダニが活発化する春先から夏にかけて最も多く、初期段階では顔や目の周りの毛が抜けて強いかゆみを伴い、赤い発疹ができます。放置すると全身に広がり、毛の抜け落ちた後の皮膚が硬化してシワが寄ります。

こちらも人獣共通感染症です。ヒゼンダニと一口に言ってもその種類は多岐にわたり、基本的には宿主となる動物ごとに種類が異なり、ダニごとに特定の宿主動物でしか繁殖はできません。とはいえ、宿主以外の動物でも、刺されると一時的にかゆみを伴う赤い発疹に悩まされることになります。

食物アレルギーは食事の1時間以上後から耳や額から首にかけて、皮膚が赤くなり、発疹を生じ、皮膚の表面が剥がれたり毛が抜け落ちたりします。

日光過敏症は紫外線によるアレルギーで、発現するメカニズムはまだあまり解明されていません。白い猫、あるいは顔周りに白い部分のある猫など、メラニン色素をあまり持たない(=紫外線の影響を受けやすい)猫に多くみられます。

発症すると耳や目の回り、口元、鼻の頭などに赤い斑点が生じ、毛が抜けます。重度では腫れたり爛れたりして潰瘍になることも。そのまま放置すると扁平上皮がんに移行する恐れがあるため、早期治療と猫をあまり日光に当てないようにすることが必要です。

ビタミンB2、あるいはB6の欠乏症によっても頭部の毛が抜けることがあります。この場合は口内炎など口腔内の炎症も併発するため、併せてチェックすると良いでしょう。

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首まわり~全身で毛が抜ける

ノミアレルギー性皮膚炎はノミの唾液に対するアレルギー反応として引き起こされます。首周りからしっぽ回り、背中など、猫が舐めづらい部分にかゆみを伴う発疹と脱毛が起こります。

このノミはただかゆみと抜け毛を引き起こすだけではなく、病原菌や瓜実条虫などの寄生虫も媒介します。猫からヒトに移る病気の中でも有名な「猫ひっかき病」などはこのノミが持つバルトネラ菌が原因です。

一昔前ですと猫とノミはセットのイメージすらありますが、重症化すると貧血に至る怖い病気です。見つけたら即刻駆除しましょう。

あまりかゆがらず、脱毛部位に大量のフケがカサブタ状になるほど発生している場合はノミではなく、ツメダニの疑いがあります。

上記の寄生虫以外にも毛が抜ける病気として、全身のさまざまな部位が脱毛し、強いかゆみとともにただれを起こすプラーク(好酸球性肉芽腫性症候群)、しっぽの付け根のみが丸く膨らんで脱毛し、炎症を起こすスタッドテイル(尾腺炎)などがあり、発疹を伴わない脱毛の場合にも注意が必要です。

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左右対称に毛が抜ける

対称性の脱毛症はホルモンバランスの異常によって起こると考えられていますが、詳しい原因は不明です。毛の根元が委縮するために起こり、後ろ足から始まった脱毛がおなか、腰、背中と広がっていきます。完全に毛が抜けるというよりは毛が薄くなり、引き抜けやすくなってしまいます。

同じように左右対称に毛が抜ける病気に、クッシング症があります。こちらは炎症やかゆみの治療に使われるステロイドによって副腎の活動が活発になりすぎ、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで引き起こされます。

上記のホルモンバランスによる対称性脱毛症は脱毛部位の皮膚が固くなりますが、このクッシング症の場合は皮膚が薄く傷つきやすくなるほか、多飲多尿や食欲の増加、不自然なお腹のふくらみなどが見られます。

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下あごの毛が抜ける

猫のあごのニキビです。初期にはあごの毛の根元部分にぽつぽつと黒い汚れがたまっているように見えますが、悪化すると人間のニキビのように赤い発疹が出来たり、掻きむしりすぎて化膿したり毛が抜けたりします。

人間でも同じですが、あごの下には皮脂腺があり、なおかつグルーミングしづらい場所にあるため、どうしても汚れから毛穴のトラブルになりがち。とくに黒い猫では毛色に汚れが同化して初期の発見が遅れることもあるので触ってみてザラザラぼこぼこしていないかチェックしてみてください。

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猫にも起こるストレス脱毛

人間のストレス症状として知られる「円形脱毛症」は猫にも起こります。

猫はストレスを感じるとグルーミングして自分を落ち着かせようとする習性がありますが、その際に同じ場所を執拗に舐め続けた結果、毛が抜けてハゲてしまうのです。

舐め続けていなくても、ストレスで血管が収縮すると毛根まで十分に栄養が行き渡らなくなって、やっぱりハゲが出来てしまいます。

猫の不自然な脱毛に気付いたら

猫の毛が抜ける病気、原因は様々ですが、いずれも放っておくと重篤化する厄介な病気ばかり。愛猫の不自然な脱毛に気づいたら、早急に動物病院で診断と治療を受けることが第一です。

そして日ごろから、猫用品や室内を清潔にして、菌や寄生虫、アレルゲンとなる花粉やハウスダストを減らすようにしたり、猫の免疫力を低下させないようにストレスや栄養状態に気を付けるなど、家庭でできる脱毛予防に心がけていきましょう。

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みんなのコメント

  • 匿名 より:

    おしっこのトラブルがあり、ウロアクトを用法通り毎日2個与えておりましたところ、首周りの毛がごっそり抜けており、びっくり。
    ウロアクトはサプリメントなので、副作用というよりはアレルギーのように感じました。

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