猫のカーミングシグナル一覧。しぐさに隠された猫の気持ち

落ち着きのない子供に対し、お母さんが「少し落ち着きなさい」といいますが、これを英語でいうと Calm down a little のような表現になります。Calm down は「カームダウン」です。

犬や猫の世界でも Calm down という命令が人間から出されることがありますが、犬猫は人間の命令とは無関係に相手をなだめ、自らを落ち着かせようとします。そのための行動をカーミングシグナルと呼びます。

意外な意味が隠されている猫のカーミングシグナル(Calming signals)を今回は検証します。

猫の意思表示のひとつ、カーミングシグナルとは

犬のカーミングシグナルには実に27種類もある(諸説あります)といわれますが、猫のカーミングシグナルにもたくさんの種類があります。猫と暮らしていると日常的に目にする猫の行動がいくつもあります。

しかし意外にも、その多くが猫のカーミングシグナルで、場合によっては飼い主の責任で「見逃すべきではないカーミングシグナル」もありますので、猫ちゃんの飼い主さんはぜひ参考にしていただきたいと思います。

冒頭で少し触れましたが、猫(もしくは犬)のカーミングシグナルは、主に対峙する相手や自分自身をカームダウンする、すなわち「落ち着かせる」ことを目的とした行動です。

もともとは犬の行動を分析するノルウェーの動物学者・トゥーリッド=ルーガス氏が犬のカーミングシグナルをまとめたのが発端でしたが、近年では猫のカーミングシグナルについてもまとめられています。

たとえば「あくび」という、猫も犬もヒトも当たり前に行う行動も、特に猫についてはカーミングシグナルの1つに数えられることがあります。イメージ的に「習性」に似ますが、微妙に異なります。

▼猫はあくびによって自分の気持ちを表しています
猫のあくびの原因は眠さだけじゃない!意外な他の理由がかわいすぎる

猫の習性は「遺伝を含む必要に迫られた特定の行動全体」であるのに対し、カーミングシグナルは特に「相手への意思表示」という側面を持つと解釈されます。猫の習性の中の意思表示分野という感じでしょうか。

猫のあくびも実は同じです。猫は人知れずあくびをすることもあるでしょうが、飼い主が猫にコンタクトを試みるとき、割と高い確率であくびをします(人を小馬鹿にしてぇ…もう!と思うこともありますね)。

要は、物言えぬ猫が飼い主や相対する者(猫やヒト、ほかの動物など)への意思表示を試みたボディーランゲージがカーミングシグナルなんですね。だからこそ、飼い主は猫からのサインに気を付ける必要があるんです。

まとめましょう。猫のカーミングシグナルとは、

  • 不安・ストレスを感じた時に発する「カームダウン」のボディーランゲージ
  • 上記以外の目的での相手への意思表示・意思伝達

となります。

猫の行動・しぐさにご注目!猫のカーミングシグナル一覧

では、猫に見られる主要なカーミングシグナルを一気に紹介していきたいと思います。普段の猫のしぐさを思い出していただくと「あっ!これは・・・」と思い当たるかもしれませんね。

ではでは、さっそくいきますよー!

猫のキモチや意思 カーミングシグナル
うれしいとき のどをゴロゴロ鳴らす(眠ってしまうと鳴らなくなる)
満足のキモチ ヒゲがピン!となる(ちょっとエラそうに見える)(※画像あり↓)
猫同士のあいさつ 鼻と鼻をくっつけ合って「おはよう!」や「はじめまして!」を表現
しっぽピン!&顔すりすり 甘えている(子猫が母猫にお乳やエサをねだるしぐさ)
しっぽピン!&先っぽだけちょろちょろ 緊張を感じながらも興味はある→なんだこれ?と興味深々のとき
感情の高ぶり しっぽをブルンブルンと振る(猫にとって良い感情でも悪い感情でも高まれば)
強い恐怖・脅威
  • 尾を巻いて股の間にはさむ
  • 低い姿勢をとる
  • 尾を太くする
  • 強い恐怖では全身の毛(特に背中側)を逆立てる
  • 耳を平たくする(このあとフーっと威嚇することが多い)
攻撃的な感情
  • 身体を斜めに構えて自分を大きく見せる
  • 耳を伏せぎみにする(恐怖のときほど平たくはならない)
  • 背中の毛を逆立てる
  • 鼻にシワを寄せて「フーっ!」と威嚇
  • 背を丸めてお尻を振る(その後攻撃対象に向かって飛び掛かることが多い)

猫のゴロゴロ音は、猫(族)であることの証ともいえる独特のカーミングシグナルですが、眠っているときには鳴らさないんですねぇ。でも、あれ?ウチの猫は眠っていてもゴロゴロいうけど・・・

と思う猫ちゃんの飼い主さんもいると思います。しかしあれ、眠っていないんです。半分近くは眠っているかもしれませんが、飼い主さんが来てちゃんと愛情表現をしているんですね。

▼ゴロゴロ言っている猫の気持ちについてはこちら
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猫なのに「たぬき寝入り」をしながらも、猫なりの意思表示をカーミングシグナルで行っているのです。

喜びや楽しい感情がヒゲにあらわれることがあります。少々判断しづらいですが、太いヒゲの一番上のほうがピン!と斜め上向きになっていますよね。これは、猫の喜びや楽しさの感情の典型的な表現です。

▼猫のヒゲの向きってとっても重要なんです
ひげの向きからわかる猫のきもち。ひげは口ほどにものを言うにゃ!

ほかにも

  • 目を大きく見開く
  • 耳をピンと立てる

といった様子も猫の喜びや楽しさの気持ちのあらわれです。ただし目や耳はほかの感情でも変化があらわれますので、ヒゲの「ピン!」がカーミングシグナルとしては適切でしょう。

一方で猫のヒゲの動きにもいろいろな種類があります。たとえば、

  • 鼻先よりも前に突き出す・・・強い緊張・警戒心や興味・関心を示している
  • だらんと垂れ下がっている・・・特に何も考えていない、だるい・眠い

などなど、ヒゲはなかなか猫の表情を豊かにしますね。

「感情が高まって尾を振る」というカーミングシグナルは、猫にとってプラスの感情でもマイナスの感情でも見られます。その前後や周辺の状況などから判断し、猫がどんな気持ちであるかを察する必要があります。

猫が尾を振るカーミングシグナルでは、主に

  • 強い不快(けっこうイライラ)
  • 大喜び
  • めちゃくちゃうれしい
  • 大きな落胆(ガッカリ・・・)
  • 強い戸惑いや不信感

が猫の感情として湧き出したタイミングでみられます。という具合に、ごく当たり前の猫の行動が、非常に奥深い意味を持っているというこを確認していただけたかと思います。

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物言わぬ猫だから考えていることが理解できない・・・頭ごなしにそう決めつけてしまうのは、猫にとっても猫と良好な関係を築きたい人間にとってもプラスはありません。

しかし猫の意思表示であるカーミングシグナルを少しだけでも理解することができれば、話ができるようになるわけではありませんが、猫との意思疎通がもっと潤滑になることは間違いなさそうですね。

あ、そうそう。上で「あくびもカーミングシグナルの1つですよ!」というお話をしたんでしたね。そう、あくびもそう解釈されることが多いんです。ただし、眠いときに出るあくびはカーミングシグナルではないです。

猫はヒトにくらべるとはるかに鋭い感覚で生活しています。それだけに不安やストレスを抱えやすい動物であると解釈する必要があります。そうした不安・ストレスをあくびによって解消するという手法を猫はとるんです。

これを一般に「転位行動(てんいこうどう)」と呼びます。あくびだけではありませんよ。たとえば毛づくろいをしてみたり爪とぎをしてみたり、猫の転位行動にはあくび以外にもいろいろな方式があるんです。

▼グルーミングや爪とぎによるカーミングシグナルについてはこちらです
猫の毛づくろいに隠された大事な理由。知れば思わず手伝っちゃう!?
猫ちゃんの爪とぎには意味がある!きちんと理解して対応しよう

謎多き猫の行動に意味を見出すためにもカーミングシグナルを理解しよう!

今回は猫の一般的なカーミングシグナルについてお話してきました。いきなり覚えようとしても覚えられるものではないと思いますが、カーミングシグナルと思われる猫のしぐさや行動に意識を向けるだけでも違います。

人間には猫の意思を理解することが難しい(もしくは思い込みにより猫の行動を誤解してしまう)と感じられるかもしれませんが、猫はちゃんと人間のことばや行動を理解しています。

もっと言ってしまえば、猫と人間の意思疎通がうまくいかないと感じるとき、その原因は猫ではなく人間のほうにある可能性が高いと考えるべきです。どうしても猫のせいにしがちですが、それは誤りです。

せっかく何かの縁でともに暮らすことになったわけですから、互いに誤解し合って暮らしをともにするよりは、どうせならある程度互いを正しく理解し、猫との良好な関係を築いていきたいものです。

カーミングシグナルでがそのための重要な手がかりになることは間違いないでしょう。耳やヒゲ、鳴き方に尻尾の動きなど、猫の何気ないしぐさに少しだけでも注意してみてはいかがでしょうか?

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