猫は、しなやかな体を使って全身のバランスを取りながら歩きます。その姿は、人間にはたびたび優雅と表現されるほど、後ろ姿で猫だと分かる特徴的な歩き方をしています。
そのため、普段が優雅と表現できる歩き方をしているので、歩き方がおかしいとすぐにわかってくるのも早いでしょう。そしてそれに違和感を感じるのも素早いはずです。
猫の歩き方がおかしい場合、身体のどこかに異常がある可能性が浮上します。そこで今回は、猫のある歩き方がおかしくなる可能性について、その中でも病気について紹介していきます。
猫の歩き方に影響する原因と考えられる病気や症状7つ
今まで不通通りに歩いていた猫が、ある時を境に不自然な歩きをしていたら不安になるのは当然です。猫に限らずペットは人間に言葉で伝える術がありません。だからこそ、飼い主が注意深く飼い猫を見て、その猫の状態をチェックすることが大切です。
猫の歩き方がおかしくなる原因には、下記のようなこともあります。生き物である以上、病気に注意してください。
【1】外飼い猫なら注意したい、怪我と脱臼
猫は好奇心が旺盛であると同時に、縄張り意識がとても強い動物です。そのため外に外出する猫は、その縄張りの中を見回ったりすることがあります。
そんな時、猫は多くの危険と隣り合わせです。それは車であったり、出会う人間であったり、はたまた他の猫であったりします。家に帰ってきた猫の歩き方がおかしい時は、外で何かトラブルがあったとみていいでしょう。
特に多いのが、「怪我」と「脱臼」です。これは厳密には病気ではありませんが、注意したい事柄であり、場合により骨折まで発展してしまったり、怪我が悪化すれば病気に繋がってしまうので注意が必要です。
室内飼いであっても、飼い主とぶつかって脱臼してしまったりする可能性がります。また、多頭飼いをしているならば、喧嘩で外傷を折ってしまうこともあります。
また、高い所が好きで、飛び降りても平気な猫ですが、着地に失敗すれば脱臼や怪我の恐れは十分にあります。人間でも急に肩が外れたりと脱臼するのです。
猫なんてひょいひょいと気まぐれに高い場所に昇ったり降りたりしているので、脱臼や怪我の心配の種は尽きません。
何かにぶつかったり、外から帰宅した時などに、少しで歩き方がおかしいと思ったら、悪化して病気に発展しないようにすぐに獣医さんに連れていくことも大切です。
【2】平衡感覚が狂ってしまう、中耳炎・内耳炎
耳の奥にある、中耳や内耳など耳に炎症が起こる病気が、「中耳炎」「内耳炎」です。この部分は平衡感覚を司る部分のため、炎症が広がれば悪影響が身体にあらわれます。
それが歩行がふらつくことと、自分の意志とは関係なく眼球が動いてしまう眼振、そして顔面神経麻痺などの症状です。
これらの病気は、耳の中に痛みが発生しているので、猫がしきりに頭を振っていたりする光景がみられます。また、人に触れることを好んでいた猫ならば、人に触られるのを嫌がるという分かりやすい行動に出るようになります。
治療としては、耳の中を綺麗にする洗浄や、治療用の投薬が行われます。
【3】視力が低下していく、白内障
球内の水晶体が白濁し、視力が低下していく病気が、「白内障」です。猫の白内障の場合は、猫種による先天性のものと、糖尿病や緑内障などの病気や目の外傷が原因となり発症する、後天的なものの二種類あります。
目が見えずらいと、猫はふらふらと歩き方がおかしくなったり、壁伝いに歩行するばかりになります。治療には外科手術を行う大掛かりな場合もあるため、少しでも目が濁り始めたら、すぐに獣医さんに行きましょう。
【4】肝臓がきっかけになる、肝性脳症
肝臓の機能不全や、先天的な血管の異常により発症してしまうのが、「肝性脳症」です。これは厳密に言えば、血中にアンモニアなどの有害成分が増えていき、その一部が脳に達してしまうことで引き起こされる病気です。
肝性脳症になってしまった猫の症状は多岐に渡り、ふらふら歩く・食欲不振・体重減少・嘔吐・腹水・多飲・痙攣などの症状が見られます。
治療方法としては、まず第一に肝臓の機能不全の原因となっている病気を特定し、肝機能を改善させるための治療を最優先で行います。そして、血管の異常がある場合には、症状により外科手術を行うこともあります。
これらの処置が完了した後は、体内でアンモニアが増えないように、低タンパク食による食事療法を行います。さらに場合により投薬が開始され継続します。これら一連の治療方法が、肝性脳症の治療方法となります。
読んで分かるように、治療に長い月日がかかることもあるため、いち早く獣医さんに行くことをおすすめします。
【5】老廃物が残ってしまった、尿毒症
本来なら尿として体外に排出されるはずの老廃物が血中に残ってしまい、その濃度が高くなることで発症するのが「尿毒症」です。原因は、腎機能の低下や尿路閉塞などによる排尿異常であることが多いです。
症状としては、貧血を招くため歩き方にふらつきがみられることと、歯茎の色が青白くなることが多いことです。また、この病気の恐ろしい所は、放置すると毒素が血中に蓄積していき、場合により痙攣や昏睡状態を引き起こして死に至ってしまうことです。
治療方法としては、血液中の老廃物の濃度を薄めることを重点的に、輸液や輸血を行うことで有害な老廃物をなるべく体外に排出する方法を行います。また、これらの症状を引き起こした根本的な病気があるならば、そちらの治療にも取り掛かります。
他にも、投薬によって、老廃物を腸内で吸着して排出させる薬物を用いる方法もあります。
いずれは死を招く病気です。もし少しでも不安におもったら、すぐに獣医さんに駆け込みましょう。
【6】異常が発生してふらつく、小脳障害
小脳に異常が発生することで、体のバランスを保つことができなくなったり、眼球運動を上手に行えないなどの症状が発生するのが、「小脳障害」です。
症状としては、ふらふら歩く・直ぐによろけてしまう・歩幅が一定に歩けていない・距離感が測れていない・眼球があちこちに動く眼振などが多く、これらの症状が出ていたら小脳障害の可能性があります。
この病気は、先天性と後天性と二つの原因が考えられます。特に先天的な疾患の場合、今のところ有効な治療方法は存在していません。
後天性の場合は、別の病気により引き起こされている場合があり、その原因となっている病気の治療を行えば完治が可能です。
【7】おでぶ猫ちゃん要注意、変形性関節症
近年、餌のやりすぎやおやつの与えすぎ、室内飼いの猫によくある運動不足などにより、肥った猫が多くなっています。そんな太った猫に多く見られるのが、この「変形性関節症」という病気です。
変形性関節症は、増えすぎた体重を支える前足に負担がかかり、関節に炎症を引き起こす病気です。つまり太った体重に、足が負けてしまうわけですね。
負担が同じ部位にかかり、炎症が繰り返し起こることで、骨が異常に増殖します。場合により、関節の軟骨がすり減ったりということもあります。人間でも多々見られる膝の故障の原因です。
症状としては、歩き方がおかしい・運動を嫌がる・触ると嫌がる・関節が腫れたり変形したりしているなど、診てわかるような症状があらわれたら、この病気を疑いましょう。特に太り気味と言われている猫に当てはまりやすいです。
治療方法としては、まず体重を減らすこと。当たり前ですが悪化させないためにはダイエットが必須です。体重を減らして、平均的な体重の猫ちゃんか、スリムな猫ちゃんにしてあげてください。
また、炎症そのものの治療方法としては、鎮痛薬や抗炎症薬などを使った対症療法を中心として行われます。
猫の歩き方がおかしいと思ったら、すぐに獣医へ行きましょう。
猫の歩き方がおかしくなる原因について、一部を簡単に紹介いたしました。
猫の歩き方がおかしいなら、きっと足に異常がある。そう考える方も多いかもしれませんが、今回紹介したことで、足だけが問題ではないと知っていただけるきっかけになったのならば、嬉しいです。
愛猫の歩き方を毎日チェックして、それを健康の目安にしてみてください。気づかずに放置していたら、最悪の状態にまで病気が進行していた時は、苦しむのは猫であり、飼い主である貴方です。
基本的に猫はハンターであり、自分の弱い部分をみせたりすることを嫌う動物です。ハンターとしての本能が、弱点を隠してしまうのです。そのため、明らかに歩き方がおかしい時は、弱点を隠せない程に弱っている時があります。
そのことにいち早く気づき、歩き方がおかしいと異変を感じたならば、すぐに獣医に診察に行ってみてくださいね。