猫は狩りをしたり、身を守ったり、高い所を上り下りしたりと、様々なシーンで爪をフル稼働させています。
爪は猫にとってなくてはならない武器・防具・道具であり、それ分、負傷する機会が多いのも爪なのです。
猫が大事な爪に怪我を負ってしまったとき、飼い主はどうすればよいでしょう。落ち着いて対応したいものですね。
対処法を紹介しますので、いざというときの参考にしてください。
猫が爪を折ってしまったらすべき4つの手順
猫の爪は古いものから新しいものへと生え変わるとき、爪ごと取れます。爪が取れてしまったことに驚いて動物病院に駆けつける飼い主もいます。でも、これは、自然の生え変わりですから心配はいりません。
一方、爪が折れてしまった、爪がはがれている、爪からだらだらと出血している、こうした事態には応急処置をします。場合によっては、動物病院での治療が必要です。
猫が爪を怪我したら、次のことを順番に行っていきましょう。
- 傷口をきれいにする
- 出血していたら止血する
- 傷口を保護する
- 容体によって動物病院に連れていく
まず、猫の体中を調べ、傷口がどこにあるかを確認します。他の猫とケンカして傷を負った場合などは、傷口が一カ所ではないかもしれません。傷の深さや大きさ、猫の様子を観察しましょう。
次に、傷口に触れないように、付着した汚れを洗い流します。水道水を嫌がるときは、猫をバスタブや洗面台シンクの中に入れて、容器で水をかけながら傷口をきれいにします。
出血がひどければ、傷口を清潔な布やガーゼでおおうようにカバーをし、傷口から少し離れた箇所を軽く押さえるという止血を行います。
血も止まり、ふだんどおりの生活に戻っても、数日間は様子をみましょう。後になって、化膿することがあるからです。手当てがしっかりできているか心配なら、かかりつけの動物病院に電話して指示を受けるとよいでしょう。
猫は興奮状態になっているかもしれませんが、飼い主がつられてあわててはいけません。ここはぐっとこらえて、冷静に処置をしてあげましょう。すると、猫にも伝わって安心するようですよ。
こんなときは動物病院に
応急処置をした後、傷が深い場合やいつもと様子がちがう場合は動物病院に連れて行きます。特に、以下の症状を見せているときは、なるべく早く診察を受けましょう。病院では傷の消毒や化膿止めなどの手当てを受けます。
- 爪が折れて見えない、根元からの切除が必要
- 体を触らせず手当てができない
- 食欲がない、下痢をしている
- うずくまったまま動かない
- 血が赤黒い
爪が折れてしまったら、また生えてくる場合と生えてこない場合があります。骨よりの部位が折れていると、爪が死んでしまい再生しなくなるのです。
ここに注意!猫を観察してチェックしてほしい3点
猫は弱みを見せることを警戒し、ひどい怪我を負っていても隠そうとする習性があります。そのために手当てが遅れかねません。
ふだんとちがった点はないか、様子をよく観察して、猫の異常に気づいてあげましょう。たとえば、爪をしきりになめている、こんなしぐさを見せるときは爪を怪我していることがあります。
とりあえず消毒しておけばよいかな、と考えがちですが、人間用の消毒液を使用することは控えてください。動物病院で処方される消毒液以外は、皮膚の回復を遅らせる上に、炎症のもとになりかねません。
さらに、猫が傷口をなめないように気をつけましょう。猫の口内は雑菌だらけなのです。そういう場合には、首の周りにエリザベスカラーをはめておけば安心です。
エリザベスカラーは既製品以外にも、子供用のシャワーハットなどで代用でき、クリアファイルやカップめんの容器で作ることもできます。手作りなら首回りの締めつけすぎや緩めすぎに注意し、クリアファイルなどの切断面をテープでガードすると安全に使えます。
それから、傷が完全に治るまでは感染症などのリスクがあるので、外に出すことは厳禁です。膿(うみ)がでてきたら完治も近いでしょう。
爪のトラブルはなぜ起きるのか。原因になり得る4つのこと
猫の爪は折れやすいため、屋内にしろ、屋外にしろ、爪を折るトラブルにあうことはめずらしくありません。猫が爪を負傷する原因として、以下のものが挙げられます。
- ケンカ
- ひっかけなどのアクシデント
- 病気
- 深爪
屋外に出ている猫は家にいる猫と比べて、怪我の原因やケンカの相手をつきとめるのが難しく、ウイルスや感染症にさらされるリスクはどうしても高くなります。爪を怪我して帰ってきたら、化膿や感染症への対応が重要です。
猫が爪を何かにひっかけることは日常茶飯事です。屋内でもカーテンやカーペットなどにひっかけたはずみで、爪がはがれたりします。爪がひっかかっている現場を見つけたら、すみやかにはずしてあげましょう。
爪の生え変わりのとき、根元に炎症を起こすことがあります。前足は爪とぎをしますが、後ろ足の古い爪は口でひっぱったり、何かにひっかけてはがしたりします。その際にばい菌が入ると、かゆみや腫れが出て、治療が必要になります。
年をとった猫で、骨が弱くなって爪が折れやすくなる病気や血が止まりにくい病気などを患うケースもあります。怪我をしていないのに、爪が折れる、出血するという場合は病気を疑います。
原因に挙げた「深爪」とは、人間が猫の爪を切る場合のことです。これについては後で説明します。
爪とぎには意味がある。怪我の防止のためにも爪とぎ器を見直そう
猫が爪とぎをするとき、そこにはいくつかの目的があります。
体を大きく伸ばして床などをガッシガッシとやる、あの爪とぎには、エネルギーやストレスを発散させたり、リラックスしたりする効果があります。
また、爪とぎをしながら、前足の臭腺でマーキングをしてなわばりをアピールします。
そして、爪のケアもそのひとつ。猫の爪は何層にもなっています。古くなると新しい爪を出すために爪とぎをして、外側の層をはがしているのです。
このように爪とぎにはいろいろな用途がありますが、ここでは爪をケアする爪とぎのみにアプローチ。とにかく、猫の爪を怪我から守るには、爪が伸びすぎていないことが大切なのです。
猫が好む爪とぎ器を
外に出ている猫は、戸外にいる間に自然に爪とぎを行っています。木や塀(へい)に登ったり、地面を蹴って歩いたりするだけでも、爪はとがれるのです。
室内飼いの場合には、家の中に爪をとぐ場所を設置してあげるとよいでしょう。爪とぎ器を使う習慣ができれば、家具や壁、柱などを傷つける心配も減ります。
とはいっても、猫にはそれぞれの好みがあるので、あてがわれた爪とぎ器を素直に使ってくれるとは限りません。そこで、以下の点に注目しつつ、猫の“お気に入り”を探ります。
- 爪とぎ器の素材(段ボール、木材、カーペットなど)
- 設置する場所
- 置き方や立てかける状態
試行錯誤の甲斐もなく、爪とぎ器にいっこうに興味を示してくれないときは、次のことも試してみましょう。
- これまで爪とぎをしていた家具などにカバーをしてしまう
- 爪とぎ器にマタタビを振る、または、臭腺(しゅうせん)のにおいをつける
- 古くなった爪とぎ器を新しいものに替える
多頭飼いなら、全員が同じ部屋、同じ時間に爪とぎをできるように、爪とぎ器の数を人数分そろえるなどの配慮をします。これだけ気を配っても、やっぱり柱が好き、という猫もいるかもしれませんね。
これなら爪切りも安心!猫の爪を切るときのコツ
猫の爪を守るため、また、同居する人間を猫ひっかき病や感染症から予防するためにも、もし爪が鋭いままになっていたら切る必要があります。
肉球に爪が食い込んだら
若いうちはまめまめと爪とぎをしていた猫でも、シニア期(7歳以降)に入るとだんだん爪とぎの回数が減ってきます。
爪とぎをしないと、伸びた爪をひっかけやすくなります。さらに、古い爪が巻き爪となって肉球に刺さってしまう可能性があります。
肉球が傷み化膿でもしたら、歩行にも支障がでてしまいます。もし、肉球に爪が刺さっていたら、刺さった爪を爪切りで切って取り除き、刺さった部位を洗って清潔にします。必要ならエリザベスカラーを装着します。
たとえ爪とぎをしていても、爪の伸びは速いためうかうかできません。巻き爪などの事態を避けるには、伸びすぎていないか、爪の長さを定期的にチェックしてあげるとよいでしょう。放置していると、爪は厚く硬くなってきます。
猫をリラックスさせてから
猫の爪切りは大変というイメージがあります。実際に、ハサミを見ただけでこわがる猫もいます。まず、切る態勢を整えましょう。猫の爪を切るポイントは「無理をしない」です。
- 膝にのせる、なでる、遊んであげる、落ち着く姿勢にするなどして、猫をリラックスさせる
- ハサミをこわがる場合は、猫の顔をよそに向けたり、目をふさいだりする
- どうしてもこわがって暴れるなら、洗濯ネットに入れる、バスタオルで全身をくるむなどして安心させる
- 切るときに猫が動かないように胸付近で抱え込む、あるいは足ではさむ
「やさしく、手短に」が切るコツ
猫をリラックスさせた状態で抑え込めたら、いよいよ切る段階に入ります。
まず、足をやさしくもち、肉球に隠れている爪を出します。その際、親指と人差し指でそっと爪をはさみ押し出す、または肉球を軽く押してむき出します。
終始、「やさしく」を心がけましょう。
爪を出したら、先端にある1、2ミリの白い部分だけをカットします。全ての爪を一度に切ろうとせず、数回に分けて切るくらいにしましょう。猫に爪切りを意識させないように、なるべく短時間ですませます。
道具は「猫用爪切り」を使うと、方向を選ばずに切れるので便利。「人用爪切り」を使うなら子供用が使いやすいです。人用で注意する点は、爪を上下にはさまず、左右からはさんで切ること。そうすれば爪を割らずにすみます。
切る頻度は月1、2回くらいのペースが理想的です。子猫のうちに始めると、抵抗なく習慣化できます。やっぱり自分では切れそうもないという人は、動物病院でやってもらうといいでしょう。
深爪をしたら
猫の爪を切っていて、うっかり深爪にすることがあります。先のとがった部分だけを切るはずが、爪の根元、ピンク色に当たる部分まで切ってしまうのです。
しまった!と思った瞬間、想像以上の出血で驚くかもしれません。この部分は毛細血管が通っているため出血量が多くなります。きちんと処置をすれば危険なことはありません。
深爪になったときの応急処置は以下の手順で行います。
- 出血した部分をガーゼでおさえて止血する
- 出血がおさまらなかったら止血剤をぬる
- 出血が続くようなら病院に行く
爪を切る際に、念のために止血剤を用意しておくとよいでしょう。猫が爪切りを嫌いになる恐れがあるため、できれば避けたいアクシデントですね。
飼い主さんが猫の爪を守るには
猫が爪の健康を保つためには、飼い主の目配りやケアが期待されるところです。年とって爪とぎをしなくなっているなら、なおさら爪の伸びすぎには注意してあげましょう。
いっそ爪を抜いてしまえば、猫も人間も大変な思いをしないですむ、という考え方もあります。それぞれに事情のあることですが、もし、うちの猫に爪がなかったらどうなるかと想像をめぐらせ、当事者の猫とよく向き合って決めたい事柄ですね。