町や公園を歩いていると、さまざまな毛色の猫たちに出会うことが出来ます。日本の猫で特に多い模様はトラ模様、各種ブチ、黒猫などだそうですが、まれに白いボディに鼻先と手足としっぽだけが焦げたような、シャム猫に似た子に出会うことがあります。
とはいえシャム猫というわけではなく、体形が和猫のそれであったり、焦げているのは頭とお耳だけだったりと完璧なシャム猫ではなくても珍しさと美しさに目を引かれます。そんな猫の模様がポインテッド。
上品な白色系のしなやかボディに濃色の差し色がアクセント、ブルーの瞳がトレードマーク、そんなお洒落上級者、ポインテッド猫の魅力をご紹介します。
ポインテッド猫は末端の毛色でいろんな呼び方があります
ポインテッドとは、ホワイト、クリーム、アイボリー、ベージュといった白色系の体毛に、顔、耳、四肢の先端、しっぽなどの体の末端に濃色が入った毛色を指します。
濃さによって呼び方が違い、
- シールポイント(黒に近いビターな濃い茶色)
- チョコレートポイント(シールよりはマイルドな濃い茶色)
- ブルーポイント(青みがかったグレー)
- ライラックポイント(淡いグレー)
下に行くほど淡い色となります。上記四つはシャム猫で公認されたポイントカラーの例ですが、他にもレッドポイント、クリームポイントなどの色があります。
さらに単色のみならず、ポイント部分が縞模様になっているものはリンクスポイント、さび猫模様のものはトーティポイントと呼びます。
ポインテッドが特徴的な品種としては、タイ原産のシャム猫と、シャム猫から派生したバリニーズ、作出の過程でシャム猫を取り入れたヒマラヤン、そしてミャンマー原産のバーマン、作出の過程でバーマンを取り入れたラグドールが知られています。
▼ふわふわな毛並みが魅力のラグドールについてはこちらをどうぞ
ふわふわのラグドールは大人しく抱っこできる優しくて飼いやすい猫
他の品種でも顕現することがあり、こうした品種公認でないポイントカラ―を持つ子たちを例えばカラーポインテッド・ブリティッシュ・ショートヘアーといったように、品種名の前にポインテッドを付けて呼んだりもします。
勿論、純血種ではない雑種の子でもポインテッドになる遺伝子を受け継いでいればこうした毛色が生まれることがあります。次項で詳しく説明していきましょう。
ポイント模様の決め手は遺伝子
猫の毛色に関連する遺伝子は10種類以上ありますが、メラニン色素に関する遺伝子座のA・B・C・D・Eのうちポインテッドに関わるのは着色因子のC遺伝子。
さらにそのアルビノ変異型であるCs遺伝子(サイアミーズの遺伝子)とCb遺伝子(バーミーズの遺伝子)いずれもが生成するチロシナーゼ酵素というアミノ酸の働きによるものですが、この酵素は温度によって毛色を変える性質があります。
チロシナーゼ酵素は温度が低いと活性化し、濃くなります。その結果、体温の高い胴体部分が白く残り、体温の低い末端部分は濃い色になるというわけですね。
当然、気温や気候にも影響されます。寒い地域ではより濃く、温暖な地域では淡くなります。同一個体でも夏毛は淡く、冬毛は濃くなったりします。
ポインテッド猫の子猫は生まれた時はほぼ白いか末端にわずかに色が乗るのみ。ポイント部分は次第に濃くなり、完全に色が変化しきるまでに一年以上かかることもあります。実例として宅の猫をご紹介します。
宅の猫は出会ったときは、それはそれは可憐なブルーポイントのある中猫ちゃんでした。新鮮なしめじ茸のかさ部分のようなポイントと、石突部分のようなアイボリーのボディから、「しめじ」と命名したのですが…。
なんということでしょう。一年後、そこには立派なしめじ色のトラ猫が。
やはり冬は濃色部分が強くなり、しめじというより椎茸色になっておりました。C遺伝子、いい仕事してます。
ポインテッド猫は目の虹彩の部分にメラニン色素が無いため、深い青だったり淡い空色だったりしますが、必ず青い目になることも特徴の一つです。
▼猫の目とメラニン色素の関係性については、こちらをご覧ください
愛猫の目の色は何色?4つの目の色の種類とメラニン色素のお話
ポインテッド猫の性格は飼い主のことが大好き!
品種ごとに性質もある程度安定化されている純血種の猫たちとは違い、交雑の進んだ猫ちゃんたちは性格もバラエティ豊か。それでも毛色によってある程度性質の傾向があるそうです。
ポインテッド模様を顕現させる遺伝子は劣性遺伝のため、それが現れているからにはポインテッドの原種、シャム猫やバーマンの性質を強く受け継いでいる可能性があります。
シャム猫は活動的で感受性が高く、我が強い面があると言われます。見慣れない人、物への警戒心は強いのですが、飼い主に対しては愛情深く甘えたがり、犬のように忠実でさえあり、他の品種との共同生活は難しいとされます。
▼シャム猫の特徴についてはこちらもご覧ください
シャム猫は甘えん坊な性格。おしゃべりがすきなので鳴き声には注意
バーマンは温和で従順で人懐っこく、激しい運動をあまり好まず鳴き声もひそやか。バーマンの血を引くラグドールに至っては、ベースとなったペルシャ猫のおっとり温和な性質もあいまってか、あまりのおとなしさにラグドール(ぬいぐるみ)と名付けられているほどです。
▼バーマンの特徴についてはこちらもどうぞ
バーマンの基本情報&ブリーダーから迎える3つのメリット
シャム猫はスリム型、バーマンはがっちり型と体型も違いますので、ポイントカラ―の他に体型も性格を判断する基準になりそうですね。
シャム猫のように気高く忠実で愛情深いか、バーマンのように協調性が高く穏やかで従順か。どちらにせよポインテッド猫は飼い主の事が大好きなタイプの猫ちゃんです。
我が家のポインテッド猫の性格
我が家のポインテッド(っぽい)猫、しめじは温度で変化する体毛のように、相手によって態度を変化する猫でした。
飼い主に対しては毎日お見送りお出迎えを欠かさず、お風呂にまでついてくるほどべったり。飼い主の目の前では来客や獣医さんにも愛想をふりまきますが、離席したとたんに豹変する裏表の激しさに定評がありました。
さきほどの基準に当てはめてみますと、体型はバーマン寄りでしたが、あのわがままさはシャム猫寄りだった気がします。
ポインテッド猫は劣性遺伝のため、基本的には両親がポインテッドでないかぎり現れませんが、突然変異的に遺伝的要因を発露して現れることもあるレアな毛色です。交雑種のポインテッド猫を見かけたら遺伝の妙に思いを馳せてみるのも楽しいですね。