猫と一緒に暮らすとき、注意しなければならないことのひとつに「ノミ」などの寄生虫があります。
この寄生虫たちは小さなカラダですが、非常に生命力が強く、毛や皮膚に潜伏して猫や人間を苦しめます。
刺されたあとの強いかゆみがストレスになり、傷跡から菌が入って皮膚炎になってしまうことも…!
最近毛づくろいが激しくなったなと感じたら、一度ノミやダニによる感染を疑ってみてください。
今回は、猫や人間を苦しめるノミを毎日のフードで見直す方法や、繁殖しないための予防方法、駆除時に気をつけるべきことなどについてご紹介します。
うちの猫は大丈夫?ノミが潜んでいないかチェック方法
次の様子が見られた場合、愛猫の身体のどこかにノミが潜んでいるかもしれません。チェックしてみてください。
- 毛がところどころ抜けて皮膚が赤くなっている
- 身体の毛をなめるだけでなく噛むように毛づくろいしている
- 体毛のなかに黒い粒がある
- 寝ていても落ち着かず後ろ足で蹴るように身体をかいている
これらの症状が見られたら要注意。気づかないうちにノミがいる可能性があります。
黒い粒はノミのフンです。猫の寝ていた場所に黒い粒が落ちていないか確認しましょう。
ノミは毛の表面からは見えない場合が多いので、毛をかきわけて探してください。
飼い主がきちんと気をつけてあげることで、ノミの増殖を防ぎ、薬やフードで早めの対策をすることができます。
すでにノミ・ダニが寄生してしまっていたら、まずは獣医さんに相談
もうノミが寄生してしまい、皮膚のかゆみや発疹・脱毛などの症状が出てしまっている場合はどうすればよいのでしょうか。
皮膚病にかかると、猫の身体の表面がかさかさになって猫がかゆがり、身体をこすりつけることでさらに症状が悪化してしまいます。
まずは獣医さんに相談し、皮膚や被毛をケアするため、皮膚病専門の療養食を試してみてください。
ノミやダニが寄生してしまった場合は、皮膚を強くするためのフードで対策をしましょう。
毎日のフードを見直してノミ・ダニを予防する
ノミやダニは一度繁殖してしまうと完全に駆除することがむずかしい寄生虫です。見つけてから対策をするよりも、予防からはじめましょう。
では、ノミやダニを愛猫に寄せ付けないためにもっとも大切なことはなんでしょうか。
それは、健康な身体・皮膚をつくることです。毎日のフードを見直すことで、ノミやダニを予防する方法をご紹介します。
毎日のご飯に入っている添加物に注意する
愛猫の主食であるキャットフードの原材料を確認しましょう。香料・保存料・着色料などがふくまれていませんか?
添加物がたくさん使われていて、猫に必要な栄養が十分に含まれていないキャットフードは、ノミの繁殖につながることがあります。
添加物の多いフードは、体臭がきつくなり、ふけなどが出やすくなることがあります。このような猫の身体は、まさにノミやダニが好む環境なのです。
また、栄養素の足りないフードを毎日食べることで免疫力が低下し、皮膚が弱くなってしまうことも。
毎日のものだからこそ、添加物の少ない身体に良いフードを選びましょう。
キャットフード以外の予防・対策方法
さまざまな病原体を持っているノミ。強いかゆみだけでなく、感染症を引き起こしたり、人間にも寄生するなど、できればノミと縁のない生活を送りたいですよね。
ノミから愛猫を守るために、日ごろからできることをまとめました。
まずは迷わず病院へ。フロントラインを処方されます
ノミを発見したら、まずは病院でノミ駆除用の薬をもらってください。
主にフロントラインという薬が使用されます。ノミの卵や幼虫の発育までも阻止し、首にたらすと24時間以内にノミを撃退する効果があります。
- 猫がなめてしまわないようにする
- 多頭飼いの場合、ほかの猫がなめてしまわないようにする
お風呂にいれてノミ取りシャンプーですっきり!
お風呂にいれて、ノミ取りシャンプーを使いましょう。
ノミ取りシャンプーはノミを殺すわけではありませんが、ノミをとりやすくしてくれます。
シャンプーのあとにノミ取りくしでブラッシングして取り除きましょう。
ブラッシングを嫌がる猫も多いのですが、ノミを身体の表面から取り除くためにはブラッシングが一番です。根気強く続けてください。
また、お風呂もきらいな猫が多いので、早めに終わるようにしてあげて、終わったら美味しいごはんと水をあげてください。
ノミ専用のシャンプーは刺激が強いので、普段使いのシャンプーは低刺激のものにしましょう。
さらに、とったノミをつぶしてしまうと、ノミの体内にある卵が飛びちってノミを増やしてしまうことになります。気をつけてください。
猫を苦しめるノミや寄生虫の正体とは
ノミにはさまざまな種類があります。
その数はなんと世界で2000種類以上!日本だけでも70種類以上のノミが確認されているのです。
猫につくノミは「猫ノミ」とよばれ、ジャンプ力が大きいので、生物が吐く二酸化炭素に感知して飛びつくといわれています。
ちなみに、犬に寄生するノミを犬ノミといい、まれに猫に寄生することもあるようですが、めったにありません。逆に、犬についているノミは猫ノミが多いといわれています。
また、猫を苦しめる寄生虫はノミだけではありません。その種類や特徴についてご説明します。
「猫ノミ」は猫の身体でどんどん増える!梅雨から夏にかけて注意
猫ノミは雄で1.5~2.5ミリ、雌で3~4ミリの大きさで、動きの速い生き物です。気温18~27℃、湿度75~85%の環境、つまり高温多湿を好みます。
また、13度あれば孵化することができるため、室内で飼われている猫の身体の表面でどんどん増殖していきます。
ノミは、卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫 の4段階のライフサイクルで、成虫1匹につき1日4~20個ほどの卵を産み、一生のうちで1000個以上の卵を産むといわれています。
卵は早ければ2日で幼虫になり、快適な室内で寄生と産卵を繰り返してあっという間に繁殖してしまうのです。
成虫の生存期間は1~2ヵ月で、繁殖は梅雨から夏にかけてピークであるといわれています。
しかし、私たちの部屋のなかはノミにとって最高の環境が整っているため、冬でも暖房をつけていれば一年中繁殖してしまいます。
猫ノミは吸血するだけでなく、大変恐ろしい病気を引き起こすこともあるので、注意が必要です。
「マダニ」は見つけても無理矢理とろうとしないで
猫の天敵はノミだけではありません。実は「ダニ」も猫を苦しめる恐ろしい生き物なのです。
ダニもノミと同じで、ホコリや髪の毛などを栄養にして生きています。0.1~0.3ミリなので、肉眼で確認しにくく見逃してしまいがちです。
湿度60~80%、温度25~30度の環境を好み、寝具やカーペット・ソファーなど、人間がよく過ごしている場所に繁殖します。
ノミは特にひざから下を刺す傾向にありますが、ダニは露出していない身体のやわらかい部分、お腹や腕の内側、わき腹などを指すことが多いので、刺された部分を注意して確認しましょう。
ダニの一種であるマダニは、多くの病原体をふくんでいる大型のダニです。一生のうちに1~3種類の宿主に寄生し、血を吸って栄養を補給します。
マダニは血を吸うことで体が肥大化するので見つけやすいのですが、ピンセットなどでとることは絶対にやめてください。
ダニの口はサメの歯のようにギザギザでするどく、皮膚を切り裂いて血を吸います。ピンセットで無理やり引きはがしてしまうと、口の先端が猫の身体に残って炎症し、化膿してしまう危険性があるのです。
痛みやかゆみだけでなく、マダニの体内にあるさまざまな病原体を猫の身体に送りこんで重大な感染症が引き起こされたり、血をたくさん吸いとって貧血になってしまうことも。
ダニを見つけたら、すぐに動物病院で診察を受けましょう。
「ミミヒゼンダニ」は耳の中も生息するので、耳掃除を定期的に
いわゆる耳ダニといわれるダニで、人間には感染しません。
耳ダニに感染している他の動物と接触することで感染する場合があります。室内での感染はほぼなく、成猫よりも子猫がかかりやすいといわれています。
体長0.3~0.5ミリの小さなダニで、耳のなかに寄生して耳垢やかさぶたを栄養源とします。
耳のなかが黒くなり、激しいかゆみを伴うので、足で耳をかきむしったときに爪で引っかいた傷口から炎症につながってしまうケースが多く、注意が必要です。
耳の手入れ不足で耳垢がたまると、ミミヒゼンダニとって住みやすい環境が整ってしまうことになります。嫌がる子も多いですが、耳のなかをこまめにチェックし、定期的な耳掃除をしてあげてください。
ノミやダニが好むのはホコリやチリです。部屋中を掃除機でかけるだけでなく、じゅうたんや布団なども徹底的に掃除しましょう。
また、ノミの卵などを吸い取ってしまうことがあるので、掃除機のフィルターを小まめに取り替え、掃除機のなかのゴミは早めに捨ててください。
ノミの根絶はむずかしいといわれていますが、部屋を清潔に保つことが基本です。根気強く頑張りましょう。
なぜ猫にノミがうつるの?感染注意のシチュエーション
ノミは直射日光が当たらない縁の下や草むらに多く生息しているので、外へ放し飼いの猫だと、簡単にうつってしまいます。
また、人が外出時に靴や衣類と一緒に持って帰ってしまうこともあるので、注意してください。
草むらなどを歩いたときは、玄関の外でよくはらってから部屋へ入りましょう。
完全な室内飼いの猫でも、犬を飼っている家は、定期的に散歩する犬からノミやダニがついてしまうことがあります。猫と犬を同居させている場合、きちんとした対策と予防が必要です。
また、保護した野良猫などには必ずといっていいほどノミがついています。まずは獣医さんでノミやダニを退治する薬を出してもらいましょう。
家の周りに野良猫が多くいたり、外で触ったときに衣類へ飛びついて家まで持って帰ってしまうのです。外にいる猫を触ったあとは、きちんと手洗いをして衣類を洗濯しましょう。
また、部屋が1階で草むらなどがあった場合、網戸から入ってきてしまうこともあります。
注意しようがないことですが、刺されているなと感じたら掃除や薬局などにある駆除薬品を使うなど、ノミ・ダニ対策を心がけましょう。
ノミの寄生で引き起こされる、猫の怖い病気!
ノミは血を吸う虫、吸血虫です。
血を吸われたときに刺されたかゆみで、身体を強く引っかいて皮膚に傷ができてしまいます。そこからさまざまなウイルスや細菌に感染し、炎症を起こしてしまうことも。
また、強いかゆみは猫の精神的なストレスにもつながります。
ノミが引き起こすさまざまな症状についてご説明します。
ノミで起こる皮膚病、アレルギー性皮膚炎
ノミに何度も血を吸われることによって、ノミの唾液にアレルギー反応を起こすノミアレルギー性皮膚炎を引き起こすことがあります。
刺されたことによる物理的刺激と、ノミの唾液による化学的刺激で強いかゆみを伴う皮膚炎です。
自分の身体を噛んだり引っかいたりすることで二次感染が起こり、皮膚の症状がさらに悪化して化膿性皮膚炎に進行することもあります。
猫伝染性貧血は猫がかかりやすい感染症
赤血球が異常化し、貧血になってしまう疾患です。
この症状を引き起こしている猫に寄生していたノミやダニが次の猫に寄生し、感染してしまうことがあります。
外部の猫との接触を減らし、ノミ・ダニの駆除をしっかり行うことで防ぐことができます。
毛づくろいで飲み込んでしまうこともあるサナダムシの寄生
ノミは他の寄生虫を媒介してしまう恐れもあります。
いわゆるサナダムシとよばれる瓜実条虫がノミの体内に生息している場合、毛づくろいで飲み込んで、お腹の中に入ってしまうことも。
猫のお尻に白い粒のようなものがついていたら、それがサナダムシです。
サナダムシがお腹に入ると、下痢や嘔吐を引き起こします。病院で虫下しの治療を受けてください。
猫のノミは人間にもうつる!?人間への影響とは
ノミは猫だけではなく、時として人間にも被害を与える場合があります。
ノミは人畜共通で感染します。人間とそれ以外の脊椎動物、どちらにも感染・寄生する病原体が原因で起こる感染症のことを「ズーノーシス」とよび、猫ノミはまさにその元となる寄生虫です。
では私たちがノミに刺されるとどのような症状があらわれるのでしょうか。
ノミに刺されたときにあらわれる症状
人がノミに刺されると、多くの場合は激しいかゆみが起こります。かくことによって細菌感染したり、赤く腫れあがった水ぶくれになることもあるので注意が必要です。
ノミに刺された中心には肉眼で噛み跡が確認できるはずです。一ヵ所を刺したあと、その周りを刺すので、同じ部分をたくさん刺されることもあります。
また、室内でノミの繁殖しているところを歩いた場合、ちょうどひざの下らへんを刺されます。これは、ノミのジャンプ力がだいたいひざ下の高さくらいだからです。
最近ひざから下を虫に刺されることが多いなと思ったら、ノミの繁殖を疑ってください。
しかし、猫を抱いているときや寝ているときなどはどこを刺されるかわかりません。
さらに、遅延型反応といって、強いかゆみは刺されてから1~2日たってでることもあり、どこで刺されたのかわからなくなることも。
子どもは免疫力が弱く腫れやすいので注意してあげてください。
寄生された猫に引っかかれると「猫ひっかき病」に
バルトネラ菌というウイルスを体内に持っているノミが寄生している猫に引っかかれたりかまれたりした場合、猫ひっかき病とよばれる疾患に感染してしまうことがあります。
数日から2週間ほどの潜伏期間のあと、傷を受けた部分の
- 膿疱
- 発熱
- 疼痛
など、完治までに数週間から数ヶ月もかかることもある怖い感染症です。
猫のノミがうつってかゆい!かゆみを抑える対処法
ノミに刺されたことに気づいたら、まずは身近なもので対処しましょう。
アルカリ性の石鹸で洗い流すことで、かゆみがましになることがあります。
ノミが血を吸うとき、身体に自分の唾液を注入します。その唾液が酸性なので、アルカリの石鹸によって中和するのです。
また、家にある人はアロエの皮をむいて、なかのゼリー状の果肉を患部に塗ってみてください。
アロエにはかゆみや痛みを軽減する消炎・殺菌作用だけではなく、アロエチンという毒素を中和してくれる成分がふくまれています。
大切なのは強く引っかいて二次感染を起こさないことです。
強くかきむしって刺された場所が水ぶくれになりつぶれてしまうと、あとが残って何ヵ月も消えないことがあります。
あまりにもかゆかったり、刺された箇所が多いときは皮膚科を受診してください。
良質なフードとノミ・ダニ対策で愛猫を守ろう
ノミはとても小さな虫ですが、大きな病気に感染するきっかけになる恐ろしい寄生虫です。
猫に必要な栄養素がたっぷりふくまれた添加物の少ない安全なフードで、身体や皮膚を丈夫にし、ノミやダニを寄せ付けない環境をつくりましょう。
また、毛の長い猫や外へ出る猫は特に注意してください。
犬は散歩があるので室内だけで飼うことがむずかしいですが、猫は基本的に外へ出す必要はありません。草むらや土、他の猫からもノミがうつるので、できるだけ室内飼いを心がけましょう。
外にでる猫の場合は 毎日のノミ駆除を徹底してください。
外へ出さないことがストレスになるようなら、猫草を与えたり、おもちゃで遊んで運動不足を解消しましょう。
また、冬はノミのいる部屋の温度を上げないように気をつけてください。ノミが住みやすい環境をつくらないことが一番の予防・対策になります。
畳やベッドに日を当てることで殺菌効果があるので、必ずカーテンを開けて部屋に日をいれましょう。
質の良いフードで体調を整え、もしノミやダニを猫の身体に発見したら、動物病院へ連れて行って様子を見てください。
寄生虫から愛猫を守るため、フードの見直しやブラッシング、部屋の掃除など、毎日の生活からノミ対策をはじめてみてはいかがでしょうか。