しなやかで機敏そうに見える猫ですが、意外と弱い生き物です。さまざまな理由でケガをしたり、病気になったりします。
ここでは、猫に多いケガのひとつである、やけどについてご紹介します。やけどは、普段は活発でない猫にも起こりやすいケガです。人間のこどもにも共通して言える注意点が多いので、対策も立てやすいはずですよ。
可愛い猫に痛い思いをさせる前に、ぜひ気をつけてあげてくださいね。
日常に潜む危険を知ろう。猫のやけどの原因はこれ
屋外を自由に闊歩できる猫にとっては、ケガのリスクはつきものです。放し飼いの猫は、完全室内飼育の猫よりも、いつでもたくさんの危険にさらされています。
ですが、やけどについては、室内飼育の猫のほうが、そのリスクは高いかもしれません。猫のやけどの原因について、ひとつずつ挙げていってみましょう。
暖房器具
猫のやけどの原因としてもっとも多いのは、何といっても暖房器具によるものです。猫は温かい場所を好みますから、自然と暖房器具の傍に寄っていきますよね。
もっとも危険な暖房器具は、石油ストーブです。ストーブの天板にヤカンを載せたりできるタイプの、反射式石油ストーブとも呼ばれるものですね。このストーブの天板に飛び乗ってしまい、肉球をやけどする猫もいます。リスクの高い暖房器具です。
遠赤外線ヒーターも危険です。「電気だから安全」と思ってしまいがちですが、至近距離では結構な高温になるものです。じわじわと熱が伝わるので、ちょっと近寄った程度ではその危険を察しにくく、猫もついヒーターに近寄りすぎてしまいます。
猫は、肉球以外の全身を毛皮で覆われています。だからこそ、熱さに鈍いという特徴があります。「毛が焦げても平気な顔をしている」なんてこともありますね。こんな時は、毛皮の下の肉がやけどしている可能性もあるので、注意が必要です。
安全そうに見えるホットカーペットも、低温やけどの危険があります。低温やけどは、体温よりすこし高めの温度に長い時間触れ続けることでおこるやけどです。44℃から50℃程度で、6時間から10時間の接触が目安です。
調理器具
室内飼育だからこそ気をつけたいもののひとつに、調理器具があります。IHクッキングヒーターやホットプレートをよく使うお宅は、特に気をつけてください。
調理したあとのIHクッキングヒーターは、しばらくの間、それなりの高温を保ちます。ある程度冷めれば、上に乗っても「温かくて気持ちいい」程度の温度になりますが、高温調理をした直後はやはり危険です。
また、調理をしたあとのフライパンや鉄板なども、猫にとっての危険物になります。ホットプレートなども要注意ですね。その他にも、揚げ物をしたあとの油をひっくり返してしまったりすることもあります。
台所は、猫にとって危険がいっぱいです。普段から気を付けておきましょう。
お風呂
現代では、風呂釜がむき出しのお宅は減っていますね。それに伴って、お風呂でやけどするリスクも減っています。風呂釜がむき出しのお宅や、ガス炊きのお風呂を使われている方は、ちょっと気をつけてあげてくださいね。
湯沸しのシステムによっては、必要以上の高温にならないように、設定管理できるようになっています。ですが、「スイッチを入れたら、スイッチを切るまで追い炊きし続ける」というタイプもあります。
熱くしすぎたお湯を冷ますため、湯船のふたや浴室のドアを開けておいたりするので、余計に猫が事故を起こすリスクが高くなるのです。熱く沸かしすぎたお湯が入っている湯船に、猫がドボンと落ちてしまうと、全身やけどで大変なことになります。
夏場のトタンやアスファルト
これは、自由に出入りする猫や屋外飼育の猫にありがちの事故です。
夏場の日光は、思いがけないほどの強さで、あらゆるものを熱します。特に、黒いアスファルトは熱を集めやすく、人間が裸足で歩けないほどの熱さになるのです。最近では、暑さのあまりにアスファルトが粘つくなんて報道もありますね。
トタンも、金属なので熱を集めやすく、うっかり触ってしまうと危険な物体です。薄くて扱いやすいので、物置の屋根などによく使われています。太陽光で焼けたトタンに猫が飛び乗ったら、まちがいなく肉球をやけどしてしまいます。
危険なものから猫を守ろう。対策方法をご紹介します
「これが危険なんだ」ということさえ分かれば、猫を守るのは簡単ですね。あとは飼い主が気をつけてあげればいいだけです。
基本は、危険なものに猫を近づけないことと、触らせないことです。猫に言い聞かせるのはまず無理ですから、物理的な防護策を講じましょう。
危険なものには触れないようにする
猫を危険から守るために、もっとも大切なことです。触ってしまうからケガをするのです。危険なものには、はじめから触れないようにしておきましょう。
ストーブなど、猫が自ら近づいてしまうものには、バリケードを築いておきましょう。ストーブそのものを檻でかこってしまえば、猫はそれ以上近づくことはできません。
人間の赤ん坊や高齢者用に、ストーブ用のバリケードが市販されています。ですが、猫の場合は、ジャンプして上から入ってしまう場合もあります。バリケードの高さに注意しましょう。
ストーブをバリケードで囲う場合には、火事にならないよう重々注意が必要です。一番安全なのは、危険なタイプのストーブは使わず、温風ヒーターやエアコンを使うことですね。
危険な場所には行けないようにする
湯船でのやけどや、アスファルト・トタンなどでのやけどは、その場所に行けないようにすることで危険を防止できます。
猫の手足は人間ほど器用ではありませんから、ドアを閉めておいたり、鍵をかけたりしてしまえば、もうその部屋に出入りすることはできません。危険なところには行かないように、人間がコントロールしてしまいましょう。
最近では、飼い猫は完全室内飼育が推奨される傾向があります。室内飼育には、運動不足などのデメリットもありますが、安全を確保するという面ではこれ以上の方法はありません。
使ったものは、早く片づける
調理器具での事故は、使用した器具を早く片づけることで防止できます。フライパンやホットプレートなどは、この典型ですね。
「冷めてから片付けようと思っていた」という場合や、「熱いまま洗うと、器具を傷めるから」と考える方もいるでしょう。その場合は、濡れ布巾などをあてて底を冷やし、温度を下げておきましょう。IHクッキングヒーターも同様です。
人間が触って熱くない程度まで温度を下げておけば、猫が触ってもやけどをすることはありません。
やけどをしたときの、応急処置方法を知っておこう
痛そうな猫の様子を見ていると、冷静ではいられないかもしれません。痛みのあまりに唸り声を上げたり、猫がパニックになってしまっている場合もあるでしょう。
ですが、しっかりした対応をすることで、やけどを軽く抑えたり、治りを早くしたりすることができます。あくまでも冷静に対応しましょう。
猫のやけどをすぐに発見できたときは、まず、しっかりと冷やしましょう。熱でやけどをした場合、組織の損傷は、じわじわと進行します。冷やすのは、それを食い止めるためです。
それから、獣医へ連れていって、やけどした部分の組織をきちんと見てもらいましょう。やけどは、表面からざっと見ただけでは、その重症度がわかりにくい場合もあります。専門家の目で、きちんと観察してもらいましょう。
目視ですぐに「重傷だ」と分かるようなやけどは、なおさら獣医での治療が必要です。感染症の予防や脱水症対策などで、点滴やお薬の塗布などをおこなうでしょう。ひどい場合は、ただれた皮膚や毛皮の除去など、手術が必要になるかもしれません。
素人が見て「たいしたことはない」と思っても、実は見えないところで患部がひろがっている可能性があります。猫の様子がおかしいと感じたら、とりあえず獣医へ連れていくことをお勧めします。
飼い猫の安全は、飼い主の責任。しっかり守ってあげよう
縁あって家族になった、大切な愛猫です。
愛くるしい猫が、痛かったり苦しかったりする思いをするのは嫌ですよね。ものを言えず苦しんでいる猫を見ていると、「自分がケガしたほうがマシ」とさえ思うかもしれません。
そんな思いをしないように、猫の安全は飼い主がしっかり守ってあげましょう。
猫は、外敵に弱みを見せないように、ケガや病気を隠しがちです。猫のやけどは、毛皮の下や肉球など、ぱっと見では分かりにくい場所に負うことが多いものです。普段の様子と違うことに気づいたら、見えないケガや病気を疑いましょう。
普段懐こい猫が触らせるのを嫌がったり、やけに一か所を舐めていたりするなら、その部分をやけどをしている可能性があります。また、毛が禿げていたり、肉球の皮剥けがあったりすれば、それもやけどのせいかもしれません。
猫の脳みそでは、身に迫るさまざまな危険をすべて予測することなどできません。猫自身ができない危機管理は、飼い主が補ってあげる必要があります。飼い猫が不要なケガをしないように、飼い主がしっかり守ってあげましょう。