ツボとは東洋医学の1つで、指圧や針やお灸をして刺激を与えて体に様々な効果をもたらすものです。
猫にもツボは存在しており、その種類は数百にも及ぶと考えられています。猫に指圧やマッサージをすることで体に良い影響を与え、さらに体に触れることによりスキンシップにもつながります。
言葉を話すことが出来ない猫にはこのスキンシップが体の不調や病気発見につながるため、非常に重要なものとなるのです。
ツボを刺激する事で得られる効能や、ツボへのマッサージ方法を探っていきます。
猫の主要なツボを知ろう
我が家の猫をモデルにして、猫のツボの代表的な場所を紹介いたします。
耳のツボ【耳尖】 (じせん)
猫の三角耳の先端にあるツボ。人間の場合は耳を縦に折り曲げると耳の先端が尖がることが由来。目の周りの血流をよくし、目の病に効果がある。
頭のツボ【天門】(てんもん)
頭のてっぺんの真ん中にあるツボ。古代中国では頭のてっぺんには、天に続く門があると考えられていたことが由来。風邪などの発熱、脳炎、四肢の痙攣に効果がある。
顔のツボ【人中】(じんちゅう)
上唇と鼻の下の間のツボ。水溝という別称もある。猫の鼻の真ん中にある筋に沿った、唇の上の部分。鼻と口の境目に位置するので人中と呼ぶ。熱中症、咳、ショックに効果がある。
顔のツボ【地倉】(ちそう)
口の両脇部分。地は大地から取れる作物や食べ物の事で、倉は食べ物を貯蔵する倉庫の事。食べ物を食べる口元に位置する為この名前がついた。足の衰えやよだれに効果がある。
首のツボ【風池】(ふうち)
耳の後ろで首の付け根あたり。風邪がこの部分から入り、またくぼみになっている為風池と呼ばれている。風邪の初期症状・口内炎・気管支炎に効果がある。
首のツボ【大椎】(だいつい)
首の後ろ付け根部分、7つある頸椎の一番下の部分。頸椎の中で一番大きいことから大椎と呼ばれる。人間の場合は風邪を引くとこの部分が腫れることがある。風邪・気管支炎・口内炎に効果がある。
背中のツボ【脊中】(せきちゅう)
第11・第12胸椎の棘突の間。背骨のちょうど真ん中に当たる事が名前の由来。胃の症状は胃の周辺だけでなく、背中側にも表れるため消化不良に効果がある。
背中のツボ【命門】(めいもん)
背中の中心線、腰椎の2番目と3番目の間。生命の原動力がこの部分にあるとされることから、命門という。腎臓・腰痛・排尿に効果がある。
足のツボ【後三里】(あとさんり)
下腿上部の外側、膝から2センチのところの筋溝の中。一里は一寸の意味で、下から三寸あるので後三里という名称になった。
食欲不振・後ろ足の麻痺・下痢・嘔吐・胃腸炎・消化不良・腹痛・半身不随・発熱・関節炎・口内炎など様々な効果がある。
しっぽのツボ【尾根】(びね)
その名の通り尾の付け根。猫にとって大事な神経がいくつか通っており敏感な部分。便秘や下痢に効果がある。
しっぽのツボ【尾端】(びたん)
しっぽの末端部分。便秘に効果がある。
肉球のツボ【湧泉】(ゆうせん)
肉球部分。人間の場合は足の裏の部分で、足でグーをした時に一番へこむ場所。
万能ツボともいわれ生命力や生殖能力を司り、生きるためのエネルギーが湧き出る場所である為、湧泉と呼ばれる。
猫の場合は前足と後ろ足があり効果が異なる為、両足ともツボをマッサージするとよい。前足の肉球は疲労回復や安心感を与え、後足の場合は肥満や代謝を良くする・安心感を与える効果がある。
喉のツボ【天突】(てんとつ)
喉の下の中心線、肋骨のはじめのすぐ上の部分。天は上部を意味し、人間の場合胸から見ると突き出している様に見えるためにこの名前で呼ばれる。肺を正常に動かす効果がある。
お腹のツボ【中脘】(ちゅうかん)
お腹の中心線、みぞおちとおへそを結んだ線の真ん中。脘とは腑のことであり、五臓六腑のうち六腑の1つである胃のことを指す。胃の真ん中にあるツボのため中脘という。
そのため吐き気止めや胃の調子を整える効果がある。
お腹のツボ【丹田】(たんでん)
おへその下あたり。丹とは不老不死の薬の事。この部分に気が集まり不老不死の薬となる気を生成することから、丹田と呼ばれる。疲労回復、ストレスを減らし心の安定に効果がある。
頭のツボ【百会】(ひゃくえ)
おでこのあたり。多くの気の経路が交差し合っているところから、百会の名称がつけられた。半身不随・下痢・神経痛・心のリラックスの効果がある。
頭のツボ【四神聡】(ししんそう)
百会のまわりにあり、その名前が示す通り4箇所ある。神は精神の事、聡は聡明の事であり、精神を落ち着かせて頭をすっきりさせる効果があるところからこの名前がついた。気持ちを落ち着かせて元気にさせる効果がある。
他にもたくさんのツボがあり、それぞれ色々な効果があります。
マッサージ方法を覚えてスキンシップを行おう
プロのマッサージの方が公開しているツボマッサージテクニック動画を見ながら、上記のツボの位置を確認してみましょう。
動画の中にもありますが、いきなり猫にマッサージを始めてはいけません。優しく声を掛けて、マッサージが始まる事を伝えるようにします。
また、猫が体に触れられるのを嫌がったり、体調があまりよくない時には無理をしてはいけません。このような時にツボを刺激すると、体調が悪化する事があると考えられています。
お腹はデリケートな部分なので、力加減に気を付けて優しくマッサージをするようにしましょう。
その他の場所でも、触ったり撫でたりすることで拒否反応や痛がる様子を見せた場合には、病気が隠れている可能性が高いです。早めに病院へ相談するようにしてください。
マッサージやツボ押しは猫との信頼を築いてから
また猫との信頼関係がまだ出来ていない場合は、信頼関係を築くところから始めましょう。
人間にも同じことが言えますが信頼できる人にマッサージされるのと、あまり信頼していない人にマッサージされるのでは、後者の方がマッサージ効果が弱いと言われています。
猫が飼い主に体をたくし、甘えるようになれば信頼関係が出来ていると言えるでしょう。
また人間側もツボを押したりマッサージする時には、手に付けているアクセサリーや腕時計を外し、自分の爪を切って猫を傷つけないように注意しなければなりません。
1日15分から30分程度、1週間に1回はツボ押しを含めたマッサージを行うと効果的です。最初は時間がかかりますが、慣れてきたらやりやすい方法でアレンジして猫へのマッサージを行うと良いでしょう。
子猫のうちから定期的に行っていれば、早い段階でマッサージが習慣になります。大人になってから始めた場合は忍耐が必要ですが、飼い主との信頼関係が出来ていれば、猫が飼い主のマッサージを受け入れてくれるはずです。
ツボとは経穴。気が通る重要な箇所のこと
ツボという名称は一般的な通称で、専門的な用語としては経穴(けいけつ)と言います。中国の医学や武術などで「気」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
東洋医学では人間の体も自然界の様々なものも、この気によって構成されていると考えています。
気は流動的なものであり、気が動き生物や自然界に作用する事により、様々な現象が現れるとされています。気がなくなれば、その物質や生命はなくなってしまうと考えられています。
そして人間など生物の体に気が常に流れており、気は経絡(けいらく)と呼ばれる道を通っており、経穴はその道の主要な箇所であると考えられています。
経穴は気が溜まりやすい場所でありますが、同時に悪い気もたまりやすくなっており、この経穴を治療する事で体の不調を改善する事が出来るという考え方なのです。
東洋医学の知識がない一般人がツボを刺激して叩いたり押したりしても、あまり変化があるようには感じません。
しかし東洋医学の専門家が見ると気の不調がわかり、ツボを刺激する事でその不調の原因となっている内蔵に刺激を与えて気の流れを変える事が出来ると言われています。
ツボは神経が集まっている場所と考えられている
人間の場合ツボは361か所あるとされています。この数はWHO(世界保健機関)により世界共通として認められている数で、実質的には2000以上のツボがあると考えられています。
このツボは科学的には根拠はないものの、ツボの場所は人間の体の中でも神経が集まっている場所と一致していると考えられています。
神経が集まっている場所だから、押したり針を入れることで刺激となり効果があるのではないかと言われています。また刺激する事で脳へも刺激が伝わり、リラックス効果が期待できるのです。
猫のツボはすでに古代中国で確立されている
この世界のあらゆるものは気によって構成されているのですから、猫にも経穴は存在しているはずです。では猫のツボとは一体どこなのでしょうか。
猫にも数百のツボがあり、馬や犬などの動物と一緒に古代の中国で確立されました。現在では専門家が使う医学書として、猫のツボの図解も流通しています。
いつも一人でツンとしているイメージの強い猫ですが、意外にもマッサージが好きな猫は多く、ツボをマッサージされると気持ちよさそうにしている猫も多いのです。
猫のツボ押しやマッサージは重要な健康管理
またマッサージすることは、猫とのスキンシップや体の不調の発見にもつながります。
猫も人間と同じく様々な病気にかかりますが、病気の治療で最も大切なのは早期発見です。早く見つければ見つけるほど、その病気を改善できる可能性が高くなるのです。
しかし、多くの飼い主は病気が重症化してから病院へ行く事も多く、その時にはすでに手遅れになっていることも決して少なくはないのです。そしてその飼い主の多くが、もっと早く病院へ連れてこなかったことを絶望し後悔するといます。
それは飼い主が猫をほったらかしにしていたのではなく、毎日ケアはしていたけれど、病気に気づくことが出来なかったというケースも多いと言います。
猫の習性として、体の不調を隠すということも一因でしょう。猫のみならず、野生動物は外敵から身を守るために体の不調は隠す習性があるです。
安全な環境にいる飼い猫でもその習性は同様です。そのため、飼い主が猫に触れることにより、体の不調に気づいてあげることが重要になってきます。
マッサージのベテランになると、触れることにより不調な箇所がわかるそうです。不調により気の流れが滞り体温が下がり、具合の悪い場所やその周辺が冷たくなるので、どこが不調なのかわかるのです。
ブラッシングをしたり栄養のある食事を与えることも大事ですが、猫の体に直接触れて異変がないかを感じ取る事も重要な事なのです。
スキンシップを通して猫の異変にはいつも注意をしておこう
ツボを刺激し、マッサージすることは猫の回復力を高めるだけでなく、飼い主との信頼関係を築くことができます。
病気になって症状が出て初めて医師の治療を開始する西洋医学に対し、東洋医学は今は元気でもその健康状態を保つために体のバランスを整えるため、医師に体の状態を見て貰うという違いがあります。
ツボへのマッサージは、まさに健康を保つために必要なものと言えるでしょう。
猫にマッサージや指圧なんて必要ないのでは、と思う人もいるかもしれません。しかし体の大きさや骨格の違いはあるけれど、猫も人間も基本的な体のつくりは同じなのです。
人間にツボがあるのだから、猫にもツボがありそれを刺激する事で様々な効果が表れると考えるのはごく自然のことです。
スキンシップを通すことで、異変にも気づきやすくなります。医師への相談もスムーズにいくでしょう。
それにより、ストレスも少なくなり長生きすることが出来るのです。猫との大切な触れ合いの時間を作って、猫が健やかに暮らせるようにしていきましょう。