人間の足元にすり寄ってくるのは、典型的な猫のしぐさですよね。すりすりされると、甘えられているんだなあとうれしくなってしまいますが、実は、猫のすりすりには他にも理由があるのです。
我が家の「きなお」に会いに兄一家が遊びに来たとき、きなおはひとりひとりにすり寄っていきました。初対面なのにすりすりするなんて、猫は猫好きがわかるのかなあと思いました。
すると、義姉が「猫がすり寄るのって、自分のにおいをつけているらしいね」と言ったのです。それはどういうことなのでしょうか。
「好き」なだけじゃなかった?猫がすりすりしてくる理由
猫は、どんな気持ちですりすりしてくるのでしょうか。それにはいくつか意味があります。
ここはぼくの場所!
猫の額や口の周りには「臭腺」という器官があり、そこからフェイシャルフェロモンという、人間にはわからないにおいのフェロモンが分泌されています。
壁、家具などに体をこすりつけるのは、「ここはぼくの場所」というマーキングの意味があります。つまり、自分の縄張りだと言う主張をしているのです。
▼猫のおしりの近くにも臭腺はあるんですよ
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1匹の猫が生きていくために必要な、一定数の獲物を確保するための狩り場を縄張りといいます。さらにオスの猫は、子孫を残すために、複数のメス猫の縄張りを覆う形で縄張りを確保します。このため、オスはメスより強い縄張り意識を持っています。
飼い主さんに対してすりすりしてくるのも、「この人はぼくのもの」というアピールと考えられます。
また、外出して帰ってきた飼い主さんには、外のいろんなにおいがついています。
猫にしてみれば、嗅ぎ慣れないにおいで不安になるため、すりすりして自分のにおいをつけようとするのです。
飼い主さんのお風呂あがりにすり寄ってくるのも、自分のにおいが消えてしまったとか、シャンプーなどの他のにおいがついてしまっていることに気づいてマーキングしているのですね。
▼お風呂上がりの臭いが嫌でマーキングをしているという説もあります
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大好き!うれしい!
飼い主さんにすりすりしてきたときに、甘えた声で鳴いたり、しっぽがまっすぐ立っていたりしたら、「大好き!」「うれしい!」「なでて!」と、甘えている証拠です。だっこしたり、優しくなでたりしてくださいね。
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猫がしっぽをパタパタ振る。そのときぼくはこんな気持ち
おねだりしている
甘えてすり寄る場合と状況は似ていますが、脚にまとわりついてしつこく鳴くときは、「ごはんちょうだい」など、おねだりの意味でしょう。
猫は賢い生き物で、それまでの経験から「すりすりしたら、飼い主さんが構ってくれる」ということを学習していて、それをごはんのおねだりに利用しているのです。
ここで猫のかわいさに負けてエサを与えてしまうと、悪い習慣になってしまったり、猫の肥満につながったりする恐れがあります。ここはグッと我慢しましょう。
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単なるあいさつ
仲の良い猫どうしだと、すれ違うときに頭や鼻、体をすり合わせることがあります。
これはお互いのにおいを確認し合う、あいさつのようなものです。ですので、人間に対しても単なるあいさつという場合があります。
ゴツン!頭突きするほどの激しいすりすり
すりすりが高じて甘えたい気持ちがエスカレートすると、頭突きをしてくることもあります。
これはもともと、仲の良い猫どうしや、母子の間で行われる行為で、愛情表現のひとつです。
猫は飼い主さんのことが大好きなので、他の猫にするのと同じように頭突きをするのです。
すりすりから一転、急に甘噛みしてくる
すりすりしていたかと思うと、突然ガブリと甘噛みしてくることがあります。喉をゴロゴロ鳴らしながらの甘噛みは、愛情表現です。
猫は、親子で、または仲間どうしでお互いに甘噛みをしながら育ちます。遊びながら甘噛みすることで、噛む力加減を学んでいきます。
甘噛みとはいえ、猫の歯は鋭いので、結構痛いですよね。爪も立てて腕や脚にしがみついてくるので、ちょっと困ります。
でもそれは愛情表現ですから、甘噛みされても、きつく叱ったり叩いたりするのはやめてください。もし、痛いくらいに噛んできたときは、優しく離すようにします。
▼猫が甘噛むをするときの心理とは
猫が甘噛みをするのはどうして?猫の気持ちとやめさせる行動4つ
その他、飼い主さんがなでているときに甘噛みしてくるのは、なで方やなでる場所が気に入らないとか、「もうやめて」という意味でもあります。
動く人間の手が獲物に見えて、本能的に噛んでしまうことも。また、子猫は歯がかゆいからという理由で何でも口に入れたがります。
好かれていないのかな?すりすりしない猫
品種や性別、育った環境によっては、すりすりしてこない猫もいます。チンチラ、ペルシャ、白猫、三毛猫などは、プライドが高くて自立心が強い傾向にあります。
保護猫の中には、甘え方がわからない子もいます。野良猫生活が長いと、人間との生活に慣れていないからです。
愛情を持って育てながら辛抱強く待てば、しだいに猫との信頼関係ができてきます。そのうちすりすりもしてくれるようになるでしょう。
飼い主さんの態度が原因の場合もあります。猫は、大きな声を出す人や猫の目をじっと見る人、べたべた触り過ぎたり追い掛け回したりする人が苦手です。
▼猫が苦手とする人のタイプをしっかりチェックしておきましょう
猫が嫌がる人の特徴!当てはまるものがないかチェックしよう
猫と仲良くするには、静かに、猫のペースに合わせて行動することが大事です。
思う存分すりすりしてもらおう
猫がすりすりしてくるのは、結局は飼い主さんのことが大好きでひとりじめしたいというのが主な理由なのですね。
それがわかると、ますます愛しく思えてきます。「信頼してくれてありがとう」という気持ちで、思いきりすりすりしてもらいましょう。