はっはっはっ・・・と忙しく口呼吸する犬を見ても、不安を抱く人はいないと思います。
しかし猫が口呼吸をしているとなると、犬のように激しい呼吸でなかったとしても、これはかなり心配になりますよね。
口を半開きにした猫が口呼吸をする(あるいはそのように見える)とき、猫にいったい何が起こっているのでしょうか?
今回は猫が口呼吸をする原因(病気や病気の前兆、猫の精神状態)、口呼吸をした際の対処などについてお話します。
猫が口呼吸をするのは何らかの異変!どんな症状がみられるか
健康な猫が口呼吸を行うことはほぼありません。つまり、猫が口呼吸をしている時点で、何らかの問題が起こっている可能性が高いと解釈する必要があります。しかも、そのトラブルが重篤なものであることが多いです。
口呼吸とはいっても、たとえば何らかの理由で口を半開きにした状態でも、呼吸はちゃんと鼻からしているので問題ない場合もあります。そこでまずは、どういった口呼吸が猫にとって危険であるのかを考察します。
猫の口呼吸とはどういう状況を指すのか
犬を除いて考えると、基本的に、人間を含む動物が口呼吸をすること自体、いろいろな問題があります。人間の場合は鼻がつまっているケースで口呼吸をしますよね?口呼吸をしなければならない理由が「鼻づまり」です。
猫の口呼吸も、人間同様「そうしなければならない」という理由で行われます。猫の場合その理由が人間以上に重篤な場合が多いです。まずは、「対処が必要な猫の口呼吸」を考えます。
- 猫が口呼吸をしているかどうかを見極める要素
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- 口呼吸が認められた前後の食欲がない、元気がない
- 口で呼吸をしているというだけでなく、呼吸自体が苦しそうである
- 口呼吸により、胸よりもお腹の膨らみが大きくなる
- 口呼吸に混じってむせるような咳が認められる
- ハァハァとピッチが速い口呼吸とともによだれが出る
(参考:猫の症状「呼吸がおかしい」-久米川みどり動物病院 より)
口呼吸の有無にかかわらず、おそらく上記のいずれも、「ちょっとおかしいな」とか、あるいは「どう考えても様子がおかしい!」という症状と感じられるかと思います。
3番目の「胸よりもお腹の膨らみが大きくなる」という症状については、健康な猫の呼吸法が採用されないためにおこる症状です。つまり、ふだん通りの呼吸をしたいのに、口呼吸しかできないことで起こります。
というのも、猫の正常な呼吸法であれば、胸もお腹も膨らみに大差はないからです。ところが何らかの原因により肺が正常に機能しなくなったため、腹式呼吸に呼吸の比重が寄ってしまうと「胸<お腹」の状況に至ります。
問題は、上記の口呼吸がなぜ起こるのか、です。その原因を探ります。
専門家も警鐘をならす、猫が口呼吸する原因
過度の緊張や激しい運動により、口呼吸が本来苦手な猫も、一時的にせよ口呼吸を取り入れることもまれにあります。偶然そういうシーンを目にしても、少し様子を見てもとに戻れば問題ありません。
しかし運動した様子もなく、緊張を迫られた感じでもないのに口を半開きにして口呼吸をしているなら、そこに必ず何らかのトラブルが隠されています。よくあるケースとして、以下の病気やケガが考えられます。
- 猫が口呼吸をする主な原因「8つ」
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- 骨折や外傷などの強い痛み
- 横隔膜ヘルニア、肺の腫瘍など呼吸器疾患
- 胸水、重度腹水
- 猫伝染性感染症、トキソプラズマなどの感染症
- 心筋症、血栓症などの心疾患
- 極度の緊張やストレスを強いられた際のストレス障害
- 熱中症
- 貧血
(参考:猫の症状「呼吸がおかしい」-久米川みどり動物病院 より)
痛みが原因で口呼吸が起こるの?と思うかもしれませんが、人間だって激痛に襲われ苦悶の表情を浮かべれば、自然と口が半開きの口呼吸になりますよね?そもそも(人間の)鼻呼吸+腹式呼吸はリラックス状態での呼吸法です。
猫も状況としては似ています(同じではありません)。口呼吸が苦手な猫が口を半開きにしてまで口呼吸をするということは、それだけの差し迫った状況であることを意味します。激痛もそのケースです。
横隔膜ヘルニアは、事故や落下によるケガの際の衝撃で起こりやすい症状です。強い衝撃により横隔膜が裂けてしまうことがあります。すると、心臓や肺などの臓器が本来ないところまでずれ込みます。
このずれ込む症状が、人間のケースと同様「ヘルニア」と呼ばれ、横隔膜のトラブルが原因のヘルニアなので「横隔膜ヘルニア」と呼ばれます。
中には交通事故や落下事故などがなくても、先天的な構造的欠陥による横隔膜ヘルニアが起こりやすい猫もいるようですね。
猫の胸水や腹水は、さまざまな病気で起こる現象です。悪性腫瘍など、重篤な疾患の末期症状として胸水、腹水があらわれます。症状しては「腹腔や胸腔に水がたまる」という症状です。
少々水がたまるくらいならどうということはないのですが、胸水・腹水でたまる水の量が非常に多いため、肺を圧迫して呼吸困難になることがあります。その場合、やはり口が半開きの口呼吸に頼らざるを得ないですね。
猫伝染性感染症は、いろいろな種類の猫感染症の総称ですが、猫どうしのケンカなどから感染することもある怖い感染症です。トキソプラズマは、猫だけでなくすべての哺乳類が感染する危険がある感染症です。
特に猫を飼っているご家庭の妊婦さんは要注意とされるのがトキソプラズマです。感染経験がない猫のほうが感染しやすい種類の感染症でもあります。
猫の血栓症(けっせんしょう)は、心筋症の合併症として起こることが多い心疾患です。主に動脈の分岐ポイントに血栓(血液のかたまりが血管をふさぐ)をつくることにより起こります。
極度の緊張やストレスが原因で口呼吸になることがありますが、この節の冒頭でも触れたように、大事に至らないケースもあります。
しかし猫にとってストレスは大敵です。緊張やストレスが原因で口呼吸が起こっていると考えられる状況では、できるだけ静かで暗くて涼しい場所、狭い場所に猫を連れて行ってあげましょう。
その際に、あまり大声を出して声掛けしたり触ったりしないで、飼い主さんも静かにそばで様子を観察するようにしてください。しばらく観察しても口呼吸が治まらないときは、病院に問い合わせ、治療をしましょう。
人間や犬にとって熱中症は危険ですが、実は猫にとっても熱中症は極めて危険な状態です。イメージ的に、猫は暑さに強いように感じられますが、夏場の室内や車内では熱中症が起こりやすいので要注意です。
夏場、室内や車内で猫が口呼吸をはじめたら、熱中症にかかっている危険があります。すぐに冷房を入れたり水を与えたりする必要があります。できるだけ涼しく静かなところで安静にしましょう。
熱中症の場合、口呼吸が治まっても、よだれが出る、元気が戻らない、食欲が戻らないなどの症状が継続したら、できるだけ早いタイミングで病院に連れて行ってあげてください。
猫の貧血の場合、人間同様少々のことでは口呼吸をするような事態には陥りません。しかし重篤な貧血では酸欠が起こり、より多くの酸素を吸い込むために口呼吸をすることがあります。
逆に口呼吸をする必要がある貧血では、単なる貧血ではなく、もっと他に何らかの原因が隠されている場合がありますので、この場合はすみやかに病院で検査すべきです。
なお、猫の貧血では歯茎が白っぽく変色する場合がありますので、歯茎の色も要チェックです。
▼貧血症状で歯茎が白くなっている猫の写真
猫の口呼吸は猫にとっての異常事態!原因をつきとめ素早い対応を
上記はいずれも重篤で緊急を要する猫の口呼吸の事例・原因のご紹介でした。上記ほど重篤な原因ではないものの、たとえば人間同様風邪による鼻づまりが起こっているときにも、口呼吸をすることがあります。
他にも、たとえば口内炎ができたために舌を出す必要があって口を半開きにしている場合などもあります。この場合厳密には口呼吸をしていないわけですが、何らかの原因はあると解釈すべきです。
ですから口呼吸をしているようには見えなくても、「最近舌を出していることが多いな」と感じたときには、口の中のトラブルの可能性も考えてみてください。ただし、舌を出すクセがある猫もけっこういますが。
他には激しい運動が口呼吸の理由だったりもしますが、とにかく上記の重篤な口呼吸にはできるだけ早く気づいてあげていただきたいものです。猫の命にかかわる問題ですから、軽くは考えないようにしたいですね。
みんなのコメント
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私の猫が今そうなってて凄く心配です。
何かに噛まれたのかどうか知らないんですけど手に怪我をしていてそれが原因で凄く元気がないし食欲もないですどうすればいいですか?