猫が好きな人なら「香箱座り」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
猫と一緒に暮らしている人なら、香箱座りを目にしたことがあると思います。
また、身近な動物である猫が取るスタイルということで、現代だけでなく、江戸時代や明治時代でもたびたび題材にされました。
最後に、浮世絵に描かれた香箱座りを紹介します。
香箱座りの呼び名自体は、ごく最近作られたもの
いつからこのような呼ばれ方をするようになったのかは定かではありません。
森鴎外や芥川龍之介などの文豪の作品の中には「香箱を作る」という表現は登場しますが、「香箱座り」という言葉自体はありません。
インターネットの登場で、猫に関する様々な姿が見られるようになった
私自身も香箱座りという言葉は最近になって聞くようになった記憶がありますので、インターネットで使われ出したものがSNSなどで広まったのではないかと予測しております。
インターネットの普及に伴い、猫が活躍するようになったことは言うまでもないでしょう。今では「ネコノミクス」という言葉も生まれるほど、猫の経済効果は高いと言われています。
飼い猫は家の中にいる事が多いですが、インターネットとSNSの登場で、これまで見る事のなかったそれぞれの家庭の猫の様子を見ることが出来るようになりました。
スマートフォンの登場以降は、その場で撮影した取れたての猫の動画を、すぐにインターネットにアップロードすることが出来るようになりました。
猫とインターネットは相性が良いと言われています。ネコノミクスとかネコブームというものが登場する前から、ユーチューブなどの動画の再生数を上げたければ猫を出せ、と言われていました。
このことから、沢山の人が、猫の画像や動画を載せている事がわかります。
猫に関係する様々な呼び方は、ネットから広まったものも多い
インターネットから有名な猫が沢山登場するようになりました。
それに伴い、猫に関係する言葉も普及するようになったと考えられています。
香箱座りという言葉も、まさにそのような経緯で広まったのでしょう。
香箱座りをしている猫は、多少リラックスをしている
さて、この香箱座りにはどんな意味があるのでしょうか。猫は様々なポーズを私達に見せてくれます。
座り方も色々な形がありますが、本来猫は注意深い動物です。飼い猫と野良猫では生きている環境も違うので、野良猫には見られないポーズを飼い猫が見せることも良くある事です。もちろんその逆もあり得るでしょう。
香箱座りとはこのように、前足を折りたたんで体の下に入れた状態のことを言います。
いずれにしても、その形が箱のように見えれば香箱座りと言えるでしょう。
香箱とは日本の文化の中で使われるものなので、当然ながら外国ではKOUBAKOZUWARI、とは言いません。
ハンバーグに似た料理でミートローフというものがありますが、このローフと同じ意味の単語です。日本と同じく、箱のような形から連想されてつけられた名前と言えるでしょう。
この香箱座りは、ある程度猫がリラックスしている状態の時に見せる座り方になります。
猫は犬よりも野生の頃の特徴を残しており、もともと警戒心が強い生き物です。
警戒が必要ない状態である時に、見せることが多い
透明なガラスケースなどの上に猫が座ると、いかに器用に前足を折りたたんでいるかがわかります。また、後足やお腹は地面に密着した状態になっています。
人間に例えるなら、体育座りをしている状態に近いと考えられます。お尻を地面についていれば、起き上がるのにわずかに時間がかかるでしょう。
野生の状態であれば、このわずかな時間が命取りになります。
また、他のネコ科の動物が香箱座りを時々見せることもありますが、たいていの場合は動物園にいるネコ科動物であることが多く、やはりある程度の安全が確保された中で見せることが多いようです。
香箱座りからごめん寝へ変形する場合もある
なお、この香箱座りから頭を前足に乗せた状態になると、猫の独特な眠り方である「ごめん寝」へと変化をします。
我が家の猫はごめん寝をしたことがないため、具体的にどんな状況でこの寝姿が見られるのかわかりませんが、いずれにしても、人間と一緒に暮らす猫だからこそ見せる姿と言えるでしょう。
香箱座りは、江戸時代や明治時代でも親しまれていた
香箱座りは最近になって使われた言葉と書きましたが、この座り方自体は昔から知られていました。
最初に述べた森鴎外や芥川龍之介といった明治や大正の文豪だけでなく、江戸時代から明治にかけての浮世絵でも親しまれていたようです。
おもちゃ絵の中でたびたび描かれる香箱座り
- 歌川国年 おもちゃ絵
- 新版ねこ尽シ
- 明治17年(1884)
歌川国年は江戸末期から明治にかけて、いくつかの作品を残した浮世絵師です。
桶で足を洗う擬人化された猫のまわりに、香箱座りをした猫が描かれています。
かつて、妾の女性が猫を飼うことが多かった
- 楊洲周延
- 雪月花 雪 別荘
- 明治32年(1899)
楊洲周延は江戸末期から明治時代にかけて活躍した浮世絵師で、美人画を描く事に優れていました。
外は雪景色の隅田川。旦那を待つ女性の傍らで猫が香箱座りをしています。
香箱座りは丸くて可愛らしい姿だからこそ、多くの人に親しまれてきた
猫は身近な動物であり、人間に寄り添って生活をしています。だからこそ、今も昔も様々な姿が話題になり、芸術作品の題材にもなるのでしょう。
なぜ猫が香箱座りをするのか。その真の意味は猫にしかわかりません。
けれど、その可愛らしい姿はいつの時代でも愛されて、キャラクターとして形作られてきました。
これからも猫の香箱座りは、人間に愛される事に違いありません。
みんなのコメント
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にゃ!!