猫又と化け猫の違いとは?それぞれの成り立ちや特徴を分析!

良く知られている猫の妖怪といえば、猫又と化け猫があげられるでしょう。

どちらも猫の妖怪として知られていますが、違いはあるのでしょうか。猫又と化け猫の違いを、それぞれの特徴や成り立ちを追いながら、調べてみたいと思います。

猫又や化け猫は伝承は江戸時代にピークとなり、浮世絵や歌舞伎などに登場するようになりました。

現代でも猫の妖怪はマンガやアニメなどによく登場しますが、江戸時代にはどんな猫の妖怪が描かれたのか、紹介していきます。

猫又と化け猫、はっきりした違いはない

まずは、化け猫と猫又の定義について見ていきましょう。

地方や時代によって化け猫と猫又の特徴が混同されている場合もあるため、明確な違いはないのですが、だいたい次のようになっているようです。

猫股は長生きしてしっぽが2つに分かれた妖怪

猫股と書く場合もある。

人間に飼われている猫が長生きするとやがてしっぽが2つに割れて、人の言葉を話す猫又になると言われる。

その長生きの年数は地方などで異なるが、7年から15年位とされている。

地方によっては20年の場合もある。また葬式や墓場から使者を奪う妖怪、火車(かしゃ)は猫又が化けた物という説もある。

化け猫は猫の無念の死から生まれる妖怪

魔力を持った猫の妖怪。無念の死を遂げた猫や、人間に殺されて恨みを持った猫が魔力を持ち妖怪となった姿と言われている。

猫又と違いしっぽは1本に描かれることが多い。

猫又同様、長生きした猫が化け猫になる話もある為、猫又と同一視される場合も多い。

猫又は鎌倉時代にはすでに登場している

まずは猫又の成り立ちからみていきます。

現在確認されている書物で、猫又という言葉が出てくる一番古いものは鎌倉時代の公家である藤原定家(1162-1241)の書いた日記である「明月記」と言われています。

この明月記は定家が当時の政治の様子や民衆の様子、文芸の事や天文の出来事などを56年間記したもので、当時の様子を知るうえで大変貴重な資料となっています。

その中に、奈良からやってきた使者が「猫股という猫のような目をして犬のような体の化け物が出て、一晩で7、8人の死者が出た」と話していた、という記述が登場します。

ここでは猫の妖怪とはっきり書かれていたわけではありませんので、猫ではなく別の獣であった可能性も考えられます。

さらに鎌倉時代後期に書かれた随筆「徒然草」(1330年頃)では、人を食らう猫又という妖怪の話を聞いた、とある僧の話が登場します。

僧が夜道を歩いていると、飼い犬が足元に飛びついてくるのですが、飼い犬を猫又だと勘違いし小川に転がり落ちて大騒ぎになる、という話です。

古典の教科書に掲載される非常に有名な話なので、記憶にある方も多いかもしれません。

このように鎌倉時代にはすでに猫又という言葉が認知されていたことになりますが、どのようにして猫又という妖怪が形成されていったのかははっきりとはわかりません。

猫又は中国の山猫の妖怪がモデルという説も

一説によれば、中国に伝わる仙狸(せんり)という妖怪が日本に伝わり、猫又に変化したのではないかとも言われています。

狸という文字を使いますが、たぬきのことではありません。もともとこの文字は山猫の事を指しており、仙狸とは山猫が歳をとって神通力を身に着けた妖怪とされています。

仙狸が日本に伝わり、歳をとると魔力を持つという猫又のイメージが形成されていったのかもしれません。

また猫又は本来山に棲んでいるものとされていたようですが、飼い猫が猫又になるという伝承も存在し、江戸時代には広く一般的に認識されるようになっていきました。

長い尻尾の猫が猫又になると言われていた為、江戸時代には尻尾の短い猫が好まれたそうです。

余談になりますが、猫の尻尾を形成する遺伝子が通常と違うパターンになることがあり、ごくまれに2つの尻尾を持った猫が生まれる事があります。

今では遺伝子上の関係と分かっていますが、もしかしたらこの2つの尻尾を持つ猫が実際にいて、それを見た人が猫又という妖怪を作り上げた可能性もあるかもしれませんね。

化け猫は人間に恨みを持つ猫とされているが、猫又と同一視されることも多い

無残に殺された猫、あるいは無念の死を遂げた猫が化け猫になるといわれていますが、猫又同様に年を取った猫が化け猫になるという伝承がある地域もあり、しばしば猫又と混同されます。

猫又との大きな違いは、浮世絵などで尻尾が1本に描かれることが多いということです。

人間に化ける力があり、あるいは人間の言葉をしゃべり、人間に取りついたりすることもあると言われています。

ただしこれらは猫股にも共通する特徴なので、場所や地域によって猫又だったり化け猫だったりする、というのが実際の認識と言えるでしょう。

鍋島の化け猫騒動は、化け猫の登場する有名なフィクションの1つ

化け猫が登場する話で有名なものが、現在の佐賀県である肥後国佐賀藩に伝わる「鍋島の化け猫騒動」があげられます。

ただしこれは実際に起こったお家騒動をもとにつくられたフィクションであり、史実として記録されたものではありません。

肥後国佐賀藩の2代藩主の鍋島光茂と碁を打っていた臣下の龍造寺又七郎は、ふとしたことから鍋島光茂の機嫌を損ねてしまい、その場で切り殺されてしまいました。

それを知った又七郎の母は恨みの念を残しつつ自害してしまいます。この又七郎の母が飼っていた猫が、自害した母の血を舐めて化け猫へと変化し、鍋島家に入り込んで家臣や側室たちを次々に食い殺し、鍋島家を苦しめていきます。

しかし、光茂の忠実な部下である小森半左衛門がこの化け猫を退治し、鍋島家をすくうという話です。

あくまで創作なので、その話により様々なパターンが存在し、登場人物の名前が変わっていることもあります。

実際の所はもともと佐賀藩を治めていたのが龍造寺隆信であったところが、龍造寺隆信の死去によりその右腕でのちに義弟となった鍋島直茂が実権を握りました。

それを受けて隆信の孫が自殺。またその父も急死にしたため、直茂は龍造寺の霊を鎮めるため祠を建てました。

このことが、龍造寺家の恨みの念が化け猫を作り出した、という創作として描かれるようになっていきました。

江戸時代にこのような芝居が上演された事で、恨みを持った猫が化け猫になり人々を襲うという話が広く知られるようになっていったようです。

猫又も化け猫も大きな違いはなく、ほぼ同じ存在とされる

以上の事から、猫又も化け猫はほぼ同一のものであり、時と場合により別になるという、かなりあいまいな存在であるといえるでしょう。

どちらにしても、このような猫の妖怪が作られていった背景には、猫の持つミステリアスな生態の影響もあると言えそうです。

日本だけでなく、西洋でも猫は魔女の仲間といわれ迫害された歴史があります。

暗闇で光る目や、犬のように飼い主に従順ではなくきまぐれなところなどが、猫がミステリアスな生き物として認識されていったのかもしれません。

また、猫の鳴き声は人間の子供の声のように聞こえることがあります。外で子供が騒いでいるのかと思ったら、猫の声だったという経験をしたことはないでしょうか。

このことが、猫がしゃべったという伝承の元になっていった可能性があります。

かつては数年しか生きられなかった猫。長生きすること自体が不思議だった

今でもノラネコの平均寿命は5、6年と、現在の飼い猫の15,6年に比べるとかなり短くなっています。かつての猫たちも、数年の平均寿命であったでしょう。

だからこそ、10年以上生きる猫はとても珍しい存在で、それだけ長生きする猫は何か不思議な力がある、と考えられるようになったのかもしれません。

猫又も化け猫も、長生きすると妖術を使う、言葉を話せるなどの特徴があるのはそのことが理由と考えられます。

現在の飼い猫は20年生きる猫も多い為、現在の私達から見ると飼い猫のほとんどが猫又や化け猫になってしまうことになりますが、そのような当時の平均寿命の違いがあるのです。

猫だけでなく、タヌキやキツネ、ヘビと言った他の動物も不思議な力を持っていて人間をだましたり襲ったり、といった伝承が各地に残っています。

日本は古代より自然災害の多い国です。また、それによる農作物の不作が発生し飢饉が起きたり、疫病が流行ったりということが頻繁におきました。

動物たちの持つ不思議な生態が、このような人々の災害や疫病、飢饉に対する不安と結びついて人間に危害を加える妖怪、という存在を生み出していったという説もあります。

時代が進むにつれて、猫の妖怪は親しみのあるキャラクターとなっていく

この妖怪という存在は、時代が進むにつれてよりユーモラスに、そして親しみのあるキャラクター的な存在へと変わっていきます。

化け猫、猫又。これら猫の妖怪は創作としての題材に大変な人気があり、現在でも様々な猫の妖怪が登場する物語が作られています。

江戸時代には、猫の妖怪が活躍する作品が沢山作られた

江戸時代は印刷技術が発展したこともあり、絵物語や浮世絵、そして歌舞伎などの様々な芸能の中に猫が取り入れられるようになりました。

その結果、猫又や化け猫といった存在は広く大衆に知られるようになっていきます。最後に、江戸時代に花開いた猫の文化を数点紹介いたします。

鍋島の化け猫騒動をもとにした歌舞伎が登場。しかし鍋島家からクレームが入る

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  • 花野嵯峨猫魔縞 嘉永6年(1853)
  • 江戸時代の浮世絵師、歌川国貞作
高山検校が直島大領直繁と囲碁で争ったが、直島大領直繁に切り殺されてしまった。検校の飼い猫が猫又となり、直繁の後室嵯峨の方に化けて夜毎に直繁を苦しめていく。

鍋島の化け猫騒動をもとにした歌舞伎の演目「花野嵯峨猫魔縞(はなのさがねこまたはなし)」を描いたもの。登場人物は鍋島の化け猫騒動をモデルにアレンジされた、別の人物になっています。

この演目を上演する前日に、鍋島家から公演の差し止めを言い渡されてしまいました。さらに鍋島家の家中の侍たちが稽古場に切り込んでくるという事件が発生、主演の団十郎たちは事前に通知を受けて帰宅していた為、難を逃れたという逸話が残ってます。

この演目は中止となり、明治になってから上演されました。

猫又のダイナミックな姿と、主人を殺害した直繁への恨みの表情が描かれています。

猫漫画のさきがけ!歌川国芳は多くの猫の作品を描いた

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  • 見立東海道五十三次 岡部 猫石の由来 弘化4年(1847)
  • 江戸時代の浮世絵師、歌川国芳作
「尾上梅寿一代噺(おのえきくごろういちだいばなし)」を描いた錦絵。古寺に棲む老婆が深夜に化粧をしている。

様子を見てみると、油を舐める猫の姿があった。歌を歌うとどこからか猫又が現れ歌に合わせて踊り出した。

古寺に棲む猫又が登場する演目で、お化けが舞台から飛び出すなどの大がかりな仕掛けと衣装の早変わりなど、見どころ満載で大評判となりました。

踊っている猫又はどことなくミステリアスで、可愛らしくも見えます。

またこの錦絵を書いた歌川国芳は大変な猫好きの浮世絵師で、猫を描いた作品をたくさん残しており、常に10匹前後の猫を飼っていたそうです。

猫に戒名をつけていたほどで、弟子たちにも猫を描くことをよく薦めたりしていました。

型破りの浮世絵師、河鍋暁斎は地獄絵や幽霊画を多く描いた

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  • 惺々狂斎画帖(三) 安政5年(1858)から明治3年(1870)の間で作成されたもの。
  • 江戸末期から明治時代にかけて活躍した、河鍋暁斎作
日本橋の小問物問屋、勝田五兵衛のために描いた画帳にある作品の1つ。

河鍋暁斎は歌川国芳の弟子になったこともありますが独立し、様々な流派の技法を取り入れて型に捕らわれない作品を残しました。世界的にも評価の高い浮世絵師の1人です。

大きな化け猫に驚く男性達の姿が描かれています。驚きのリアクションの男性達とは対照的に、迫力満点の化け猫はどことなく可愛らしい感じもします。

猫の妖怪たちは恐れられる存在から、親しみのもてる存在へと変化していった

江戸時代以降、猫又も化け猫もキャラクターとしての存在が確立し、今ではアニメやマンガでも欠かせない存在となっています。

かつては恐れられていたこの猫の妖怪たちも、数百年のうちに様々な特徴が加えられていき、今ではどこか親しみのある存在へと変わっていきました。

言い方を変えれば、日本の歴史と多くの人々たちが共同して作り上げたキャラクターといえるかもしれません。

それはかわいらしくてどこかミステリアス、という猫の持つ不思議な魅力があってこそだったと言えるでしょう。

中世の頃はまだまだ珍しい存在であった猫も、今ではごく身近な存在となりました。

これからも、妖怪を含め様々な猫のキャラクターたちが作られていくでしょう。

みんなのコメント

  • ドカ☆∈ より:

    子供の頃は「猫嫌い」
    冬の ある日、掌サイズの子猫を拾ってしまい獣医に診てもらい数週間スポイトで薬を与え目薬を差し…
    最高の愛猫となりました。
    24年、共に暮らし裏庭に眠ってます。
    犬好きは猫が嫌い、猫好きは動物が好き!

  • だいだらぼっち より:

    ちょっとした創作の参考として猫又を調べていましたが、分かりやすい見出しと興味深い説明で、つい読み込んでしまいました。
    昔の美術画も、解説やエピソードも書いてあって楽しく読めました。
    私は臆病なため猫を触れないのですが、インターネット上で見かける猫の画像はとても目を惹かれるものがあり、猫を飼っている人がとても羨ましいです。外国よりも猫好きが多いとされる日本人の心理も、このようにずっと昔から親しまれてきた生き物だからなのかもしれませんね。

  • クーとルルのママ より:

    うちの猫たちは2匹共しっぽが長く、もしかして猫又?と思い、読んでいくうちに…
    長生きすると人間の言葉をしゃべってくる??
    今でも(6歳と7歳)6歳の子は、私の口真似なのか(?)返事をする時は『ニャ〜?』ではなく、『ウ〜ン?』と人間らしからぬ返事を…
    7歳の子はとても無口だけど、人間が話してることは100%理解できているし…

    猫という動物はとても知能が高い動物だと思います。
    もっと年老いて、いっぱい話してくれるようになったら、なんて楽しい毎日に❤️
    猫又、大歓迎^_^

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