猫に欠かせないカリウム。不足すると起きる低カリウム血症の怖さとは

今回は猫に欠かせないミネラル「カリウム」のおはなしです。

生きていくために必ず摂取しなければならないミネラルは、ヒトの場合で16種類あり、ネコもヒトと同じ種類のミネラルが必要だといわれます。その中でもカリウムは特に重要です。

私たちヒトの体は、通常の食生活や生活習慣をとっていればカリウムが不足することが少ないので、同じミネラルでもカルシウムや鉄に比べ、カリウムのことを意識する機会は少ないように思います。

しかし、猫はまたヒトとは違う事情でカリウム不足におちいりやすく、時にカリウム不足が猫に深刻な障害をもたらすことがあるのです。

猫の飼い主さんは、猫にカリウムが不足する原因、カリウム不足が起こす病気について、しっかり理解しておきましょう。

カリウムってどんな成分?猫にも欠かせない栄養素を知ろう

カリウムは生物の体に少量に含まれるミネラル(無機質)のひとつ。猫によっては不足する可能性が高い栄養素です。

カリウムは、鉱石、植物、動物など自然界に幅広く存在する金属の一種です。元素記号K、原子番号19とも呼ばれます。

このような表現をするとピンと来にくいのですが、園芸をする人なら、チッ素、リン酸と共に植物の生育に必要な栄養としてもカリウムをよくご存知ではないでしょうか。

カリウムは、魚、肉、野菜、果物など幅広い食品にも含まれています。また近年は汗を大量にかいた時に失われる電解質(イオン)として、経口補水液やスポーツ飲料のCMなどでもその名を目にしますね。

カリウムは生物が生きていくために絶対欠かすことのできない栄養素です。かつ、猫は一部のビタミンBやアミノ酸のようにミネラルを自分の体内で合成することができないため、カリウムは毎日の食事から補給していきます。

食物から体内に取り込まれたカリウムは、小腸で吸収されるとすみやかに全身の細胞に運ばれ、最終的には腎臓から尿と一緒にすべて排泄されていきます。

体内のカリウムの量は食事や排泄によって増えたり減ったりしますが、カリウムが担当する仕事はとても複雑なため、血液中のカリウムが少しでも増えたり減ったりすると、すぐ体の機能に問題が出るようになっています。

しかし、生物の体はうまくできていて、腎臓にはカリウムの量を調節する機能が備わっているのです。

カリウムが増えすぎた場合は腎臓が尿と一緒にカリウムを排出し、体内のカリウムが不足している場合は、カリウムを排出せず血液に再吸収・再利用させるので、血液中のカリウム濃度はだいたい一定に保たれるようになっています。

なぜ猫にカリウムが必要?カリウムのはたらきを知ろう

カリウムの大きな特徴は、体内に存在している間にナトリウム(Na)と互いのバランスを取り合いながらはたらき、生命の維持に直接かかわっているところです。

体内のカリウムはその98%が細胞内に存在し、細胞内はカリウムの濃度が高くなっています。ナトリウムは細胞外に多く含まれています。

細胞内と細胞外は細胞膜という薄い膜でへだてられ、カリウムやナトリウムがイオンという形で出たり入ったりしています。

このはたらきは「イオンチャネル」や「イオンポンプ」と呼ばれるもので、カリウムの性質を特徴づけるものになっています。

カリウムは、このはたらきによって、猫の生命を維持するために必要な次の役割をこなすことができています。

  • 体液の浸透圧を調整する
  • pHを維持する
  • 神経や筋肉の刺激を正常に伝導する
  • 余分なナトリウムを排出する

体液の浸透圧を調整する

カリウムはナトリウムと共に体液の「浸透圧」を調整しています。

浸透圧というのは、濃度の濃い液体が濃度の低い液体のほうへ流れ、互いの濃度を一定に保とうする圧力のことです。

血液や体液の水分量や濃度は、食事や活動によって常に変動します。しかし極端に浸透圧が高くなったり低くなったりすると、細胞がしぼんだり血液中の赤血球が破裂したりして危険です。

そのため、カリウムとナトリウムは常に細胞内外の水分を移動させ、浸透圧を調整しています。

pHを維持する

血液のpHは常にほぼ7.4に保たれていますが、これより酸やアルカリに傾いてしまうと生物は生きていけなくなります。カリウムはpHを調節する作用を持ち、pHが酸やアルカリに傾くのを防いでいます。

神経や筋肉の刺激を正常に伝導する

カリウムとナトリウムは、神経の情報伝達や筋肉の収縮をするという重要な役割もになっています。

筋肉や神経は、細胞内にあるカリウムイオンと細胞外にあるナトリウムイオンが細胞を出入りする際にわずかな電流が生じることで、その刺激によって正常に動くことができているのです。

心臓の収縮もこの電流の刺激で動かされているため、カリウムとナトリウムのバランスが少しでも乱れると心臓に負担がかかり、最悪の場合は心臓の動きが止まってしまいます。

そのような事情からも、カリウムの血中濃度は一定でなければならないのです。

余分なナトリウムを排出する

カリウムに対してナトリウムが増えすぎると体内のミネラルバランスが崩れて体の機能に障害が起こるので、カリウムは余分なナトリウムを体外へ追い出す作用を持っています。

体内のナトリウムが増えすぎると、カリウムが腎臓に送られてきたナトリウムを尿と一緒にどんどん排出させ、ナトリウムを減らします。

猫がナトリウムをとり過ぎると心臓に負担がかかりやすくなるのですが、ヒトも猫も塩分は容易に取り過ぎてしまう傾向があるため、食生活では意識して塩分制限をすることが求められています。

カリウムの作用は複雑なので、役割について説明すると難しいお話になってしまうのですが、生命を維持するために欠かせないなミネラルだということが改めておわかりいただけると幸いです。

こんな変化に注意!猫のカリウム不足で起こる特徴的な症状は

カリウムが不足して血中のカリウム濃度が低くなる状態は「低カリウム血症」と呼ばれます。

猫が低カリウム血症におちいると、カリウムが不足するために全身の筋肉に障害が起こり、次のような症状がみられるようになります。

低カリウム血症の症状
  • 筋肉の量が減ってくる
  • 少しずつ体重が減ってくる
  • 活動量が減ってくる
  • ふらつくようになる
  • 足がもつれる、足を引きずる
  • 立てなくなる
  • 顔が上がらず首をうなだれている
  • 食欲不振
  • 食べた後に吐く
  • 便秘
  • 呼吸が早くなる
  • 鳴き声が変わる
  • 四肢の筋肉痛を伴う

猫にカリウムが不足すると消化器官の働きが低下するため、食欲不振や便秘が起こりやすくなります。また食欲不振から食事の量が減ることに加え、カリウム不足で筋肉がやせ衰えていくため、体重が減ってしまいます。

食欲不振や痩せはほかの病気でもみられますが、猫の顔が不自然に下を向いていることが多くなったら特に注意しましょう。

猫が首をうなだれるのは、低カリウム血症の特徴的な症状です。首を支える筋力が低下するため、顔を上げることができなくなってしまうのです。

休む時には顔を床につけてうつぶせのような姿勢になることから「ごめん寝」をしている時の体勢に似ているとも言われています。

猫ちゃんのごめん寝は可愛い仕草ですが、よく似た姿勢を頻繁にとるようになったら体調不良によるものなので、見過ごさないようにしたいです。

※猫がごめん寝をする習性について詳しくは猫はなぜごめん寝をするのか。その理由と猫の気持ちを解説をご覧ください。

次にご紹介する動画は、低カリウム血症になった猫の症状がわかりやすい動画です。飼い主さんが猫の異変に気付いて検査を受けさせ、カリウム濃度の低いことが発覚した時の様子が公開されています。

▼劇症型低カリウム血症の疑いから復帰した猫(You tube)

もし猫がこのような姿勢を取るようになったら異常を疑って受診するようにしましょう。

高齢の猫は要注意!猫のカリウム不足が起こる原因は

猫が極端に偏った食事を続けている場合は、カリウムの不足する可能性も考えられますが、キャットフードなど通常の食事をとっている限り、猫にカリウムの不足することはほとんどありません。

猫のカリウム不足は、どちらかというと食事からカリウムがとれていないために起こるというよりも、すでにほかの病気にかかっていてカリウムが体外へ過剰に排出され低カリウム血症を併発しているために起こります。

猫の低カリウム血症の代表的な原因には、次の病気があります。

  • 腎不全
  • 甲状腺機能亢進症
  • 副腎の腫瘍

どの病気も若い猫には少なく、老化によって起こりやすくなっているので、猫が高齢期にさしかかったら発症する可能性も考え、病気にどのようなものがあるのか、チェックしておきたいです。

腎不全

低カリウム血症は腎不全とはセットで起こりやすい病気です。

腎不全で低カリウム血症が起こりやすいのは、腎臓機能の低下によって尿量をコントロールすることができなくなり、尿量が異常に増えて、尿と一緒に大量のカリウムが排出されてしまうためです。

腎臓機能が低下して体にさまざまな症状が起こるようになった状態を腎不全といい、10歳以上の猫で起こりやすくなります。猫の死因で最も多いのも腎不全となっています。

猫は中年期から腎臓の機能が低下しやすくなり、慢性腎臓病にかかる猫も増えてきます。腎臓は一度機能が低下すると元に戻りにくく、機能が低下しやすいので、慢性腎臓病が悪化して腎不全を引き起こすことが多くなります。

猫が腎不全になりやすい理由や症状について詳しくは猫の腎不全。予防のためにできる事&餌選びでチェックする成分2つで説明しています。

甲状腺機能亢進症

高齢の猫に多い「甲状腺機能亢進症」も低カリウム血症を併発することがあります。

甲状腺機能亢進症は、喉にある甲状腺という器官から甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の機能が活性化し過ぎて体に負担がかかってしまう病気です。

猫が甲状腺機能亢進症にかかる原因ははっきりわかっていませんが、猫の内分泌系の病気では最も多いとされています。

この病気を発症すると多飲多尿が起こり、尿と一緒にカリウムがどんどん排出されるために低カリウム血症を併発しやすくなります。

ホルモンの影響で、猫は活動的になったり性格が攻撃的になったりして食欲も亢進するので、一見とても元気なように見えます。

しかし、食べても食べても追いつかないくらいエネルギー消費が激しくなるので、食欲がある割にどんどん痩せていくのが大きな特徴です。進行すると心臓に負担がかかり過ぎて死に至ることもあります。

副腎腫瘍

腎不全や甲状腺機能亢進症に比べるとそれほど多くないのですが「副腎腫瘍」という病気によっても、低カリウム血症を引き起こすことがあります。

副腎腫瘍は名前のとおり、副腎という臓器に腫瘍ができる病気です。

副腎は左右の腎臓の上にある小さな臓器で、さまざまなホルモンを分泌する役割を持っていますが、腫瘍のせいでホルモンの分泌が異常になると、そのホルモンの作用で体にさまざまな障害が起こるようになります。

副腎腫瘍によって起こる症状は、どのホルモンが異常に分泌されるかによって異なり、いくつかの種類があります。

そのなかで低カリウム血症につながりやすいのは「原発性アルドステロン症」「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」です。

原発性アルドステロン症は猫にしばしばみられる病気です。

副腎腫瘍によって、アルドステロンというホルモンの分泌が異常になると、アルドステロンがカリウムの排泄を過剰に促進させるため、低カリウム血症を併発しやすくなります。

また、コルチゾルというホルモンによって起こる「クッシング症候群」は、犬やフェレットに起こりやすい病気ですが、高齢の猫にもしばしばみられます。クッシング症候群は多飲多尿を伴うためカリウムが不足しやすくなります。

カリウム不足が起こるその他の原因

カリウムは、病気以外の理由で不足することもあります。

あり得るのは、嘔吐や下痢によるカリウムの流出です。嘔吐や下痢を繰り返して体内の水分が大量に出ていくと、体液に含まれる電解質も一緒に出ていってしまうため、カリウム不足が起こります。

また何らかの病気でカリウムの含まれていない輸液の点滴を受けている時、体内の水分が増えて体液のカリウム濃度が薄くなり、低カリウム血症を引き起こすこともあります。

利尿作用のある薬を使用している時も排尿回数が増え、体に必要なカリウムが尿と一緒に出ていき、カリウム不足が起こりやすくなります。

猫のカリウム不足を予防・治療する方法は

猫のカリウム不足は健康な猫に突然起こるというよりも、すでに何かしらの持病を持っている猫が低カリウム血症を起こすケースが多いです。

猫は高齢になるとカリウム不足を伴う病気にかかりやすいこと、また低カリウム血症が重篤になると死に至ることを考え、まずは猫が若くて健康なうちから健康管理をきちんと行い、病気にかからないようにすることが大切です。

そして、猫が腎臓病や甲状腺機能亢進症などのカリウムが流出しやすい病気にかかったら、獣医師の指導のもとに適切な治療を受け、低カリウム血症の併発を予防することが必要です。

猫のカリウム不足に気づくには

もし猫に低カリウム血症が疑われるような症状がみられたら、すぐに受診して獣医師に相談し、カリウムが不足しているかどうか診断してもらいましょう。

猫のカリウムが不足している時に起こりやすい症状は、多飲多尿と首をうなだれる姿勢です。この2つの症状が出始めたら早めに受診することをおすすめします。

ただ、健康な猫でも体調や気候によって水を飲む量や尿量が増えることは珍しくありません。もし、猫が多飲多尿かどうかはっきりわからない場合は、実際に水を飲む量と尿量を測ってみるとよいでしょう。

水を飲む量と尿量を自宅で測る方法については老猫がかかりやすい病気のツートップ!腎臓病と甲状腺機能亢進症内で説明しています。

低カリウム血症の治療

病院で血液検査を行い、血中のカリウム濃度が3.5q/L以下になっていれば、カリウム不足と診断されます。

カリウムが不足している場合は、体外からカリウムを補給する処置をとることで、カリウム不足を解消させることができます。

軽症の低カリウム血症ならば「フィトケア」などのカリウム補助剤を与えることで改善されます。また、カリウム濃度が低すぎる場合は、輸液を定期的に受けて血中カリウム濃度を少しずつ高めていく処置も必要になります。

血中のカリウム濃度が正常範囲に戻れば、良好な予後を迎えることができます。

ただし、低カリウム血症が重度まで進行して、すでに末期の腎不全や呼吸停止など重篤な障害を起こしている場合、またはカリウム不足を起こしている病気が重篤な場合は、カリウムを補給しても体の機能が回復できない可能性が高くなります。

とにかく早めに処置をしてカリウム不足が起こす機能障害を阻止することが大切なのです。

猫が高齢期に入ったらカリウム不足の問題を意識しましょう

猫に不足してはいけない栄養素では「タウリン」がよく知られますが、カリウムはタウリンと違って食事が原因で不足することは少なく、高齢の猫が発症しやすい病気によって不足しやすくなっています。

カリウムが配合された食事をきちんと与えていても、病気にかかってカリウムが体外にどんどん流出するようになれば、低カリウム血症は避けられなくなってしまうのです。

こうしたトラブルで猫が辛い思いをすることにならないよう、飼い主さんは猫の体とカリウムの関係を把握し、猫が高齢期に入ったらカリウム不足の問題を意識することをおすすめしたいです。

みんなのコメント

  • ゴンゾー より:

    今まで飛び回っていたのに、気がつけばよろよろしていて、足の麻痺慌てて病院に行ったら、カリウムが尿と一緒に出てしまう為、動けないと、入院して点滴してなんとか退院したけど、1週間経つとまた、同じ。また、入院の繰り返し。餌も食べてくれないし、薬も嫌がるので日々衰弱。まだ10年しか生きてないのに、今週も病院に行こうと思う。

    • ハウルちゃん女子 より:

      13才くらいのうちの子も、カリウム不足。

      腎不全だし、背中の腫瘍に水が溜まるし。

      ウェットフードに、液体薬を混ぜ混ぜして、

      自宅で延命生活してます。。

      今のところ、私のベット上までジャンプできてる。

      それが唯一の運動。

  • NERO より:

    平成31年2月18日に歩く際うなだれるように猫が歩いていたため病院にいきました。

    血液検査をすると、低カリウム血症、甲状腺機能亢進症、脱水症状と診断されました。
    猫の年は19才で年齢的にも慢性腎不全になってる可能性もあると言われました。

    食欲不振も見られ水分もとってくれません..
    ずっと動かず寝てばかりです。

    獣医には、治療も進められましたが…親が「年も年だし体にも負担かかるだろうから治療はしないからね」と言われてしまいました。

    費用も高くなるのは分かりますが…大切な家族が苦しんでいるのにこのまま衰弱していく姿をただ見ていくのは…すごく辛いです..

  • ハウルちゃん女子 より:

    カリウム不足の猫ちゃんに、フランス製フィトケアK60という、グルコン酸カリウムというサプリが、2500円くらいでアマゾンで買えます。
    明治乳業のクエン酸カリウムは、3000円くらいです。牡蛎エキス入りで臭いです。
    うちの子は、明治のを飲ませて、カリウム値は足りましたが、クレアチニン値が高値になり過ぎました。。飲ませるの止めました。。
    病院処方のカリウムのほうが、安定します。。

  • ゆめちゃんず より:

    17歳のオス、食欲が無くなり動物病院で血液検査をしたらカリウム値が低いとのこと。
    点滴をしてもらいました。
    腎臓の値も少し良くないです。
    高齢猫だから人間が気を付けてやらないといけないですね。

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