帰宅後の楽しみと言えば、まずは冷蔵庫を開けて缶ビール!とりあえずのアテは冷やっこだけでもいいですし、最近は冷凍食品の枝豆もなかなか侮れません。
と、まあ毎日のフランクな宅飲みはいいものですが、たまにはきちんと枝豆茹でて器も選んでガラス徳利に冷酒の晩酌タイムと洒落こんでみるのも乙なもの。ついでだからつくねも焼いちゃう?シメのお茶漬けも凝っちゃう?
ウキウキと準備していたら愛猫の熱い視線に気が付きました。
「その四角い白いのに載ってるのはかつおぶしですね、知ってますよ」「今焼いてるそれ、ささみパウチみたいな匂いがしますね、知ってますよ」
と喉をぐるぐる鳴らしてお口むちゃむちゃ舌なめずりをしています。
これはもう、猫の分も用意するしか納得してもらえなさそうですね。
猫と楽しむ、飲み会おつまみレシピ
たとえそれが自分は食べられないものであっても、飼い主が美味しそうに食べていれば気になってしかたがない猫は多いものです。
飼い主としても、猫と美味しいものをシェアして、何ならイッパイ酌み交わすことが出来たらどんなに楽しいでしょう。けれども、人間の食べ物は猫の体に良くないものも含まれていますし、猫にお酒なんてもってのほか。
しかし、調理前に取り分けて味付けを控えれば、同じ食材を楽しむことは出来そうです。愛猫と楽しめる宅飲みレシピを作ってみました。
本日のお品書き。
- 枝豆
- 冷やっこ
- つくね
- 鯛茶漬け
- またたび水
以下、レシピの解説です。
枝豆
良質なタンパク質やビタミン、カルシウムを含む猫も食べられる緑黄色野菜です。
塩を入れずに茹で、猫用に2房ほど取り分けて冷まし、薄皮も剥いて小さく刻みます。今回、人間用は器に上げてから塩を振りましたが、もちろん別の鍋で最初から塩を入れて茹で上げてもかまいません。
冷やっこ
タンパク質、脂質を含み、なおかつ低カロリーなヘルシー食材で猫にも向いています。にがりの濃度が気になる方は絹ごしを選ぶと良いでしょう。
猫用はお豆腐を小さく切ってレンジで軽く加熱しておきます。子猫や老猫向けには崩して寄せ豆腐風にするのもいいですね。薬味は使えませんので、いろどりに枝豆を少々と猫用のかつおぶしをぱらりと。
人間用は生姜も葱もお好みで載せちゃいましょう。大葉とミョウガは如何ですか?個人的なオススメはザーサイとキムチを細かく刻んで醤油とごま油を少しだけかけます。美味しいですよ。
つくね
鶏肉はタンパク質やビタミンA、ナイアシンを含み皮膚や粘膜、血管を健やかに保つのに有効です。
猫用は鶏ひき肉を調味する前に小さじ一杯ずつ取り分け、あまりいじらずにふんわりつくね型に成形します。レンジを弱にして様子を見ながら30秒ほど、色が変わって肉汁が出てきたら加熱完了。肉汁は取っておいて鯛茶漬けに使ってもいいですね。冷めたら卵黄を少しだけ、いろどりに使いました。
人間用はお好みで調味して下さい。今回は塩・コショウ・すりおろし生姜・ごま油・片栗粉と共にざっくり混ぜ、軽く焼いてから醤油・酒・砂糖のタレを焼きつけました。
鯛茶漬け
鯛は低脂肪で消化にも良い良質なたんぱく質を含みます。鯛アラをことこと煮込んで作るスープは猫が喜んでくれますが、人間も美味しく頂くためには下処理に塩やお酒や薬味を使うことになるので、今回はお刺身用の身を茶漬け用に薄くそぎ切りにしました。
猫用にごはんをちんまりよそい、親指の爪ほどに切った鯛のお刺身を数切れ載せてお湯を注ぎます。ごはんを柔らかくしたいのでこのまま冷めるまでふやかしておいて、ごはんがスープを吸った頃合いに、つくねから出た肉汁をお湯で割った「追いスープ」をかけました。こちらもいろどりに枝豆を少々。
人間用はごはんをよそったあと、お刺身を載せてお茶や出汁を注ぎます。葱・わさび・刻み海苔等はお好みで。今回はごはんの上に白だしと塩、直前に擦ったゴマを軽くかけ、香り付け程度に醤油をたらした後にお刺身を載せてお湯を注ぎました。
これだけでも出汁と脂がしっかり浮いてくるのが鯛さんのいいところですよね。
またたび水
水に一晩、実をまるごと漬けて作る方法もありますが、今回はまたたびの乾燥葉をお茶のように抽出して冷ましたものを作りました。
お茶のような香ばしい良い匂いがします。緑茶の10倍ものビタミンCを含むそうで、健康茶として常飲する人もいるそうです。お味の方はクマザサ茶に似ていてほろ苦く、悪くありません。
実を生のまま、あるいは乾燥させたものを度数の高い蒸留酒に漬け込んだ「またたび酒」、猫は呑めませんが人間用には薬草酒として大変健康に良いとのことです。
が、今回はお味の評判で怖気づきまして、普通に辛口純米酒です。
右が猫用、左が人間用、これで準備は整いました。猫もソワソワとお膳の上を気にしています。
さあレッツパーリー!猫との楽しい宅飲み会の始まりです。
猫と飲み会の理想と現実
こう、縁台の真ん中に猫用と人間用のお膳を並べて置いて、それぞれが両端に座るんですよ。そして夕焼けを眺めながら…。
―ねえ猫さん、いい風が出てきましたね「にゃあ」―冷やっこって年中美味しいですよね「にゃん」―つくねのお味はどうですか「うにゃにゃ」―朝引き若鶏らしいですよやっぱり鮮度が違いますか(ゴロゴロ)―おや、またたび水が空ですね。こいつは失礼「にゃーん」
…みたいな、みたいな、ね?
おつまみとお酒と愛猫と私。なんとまあ激しく自分酔いを誘うファクターなのでしょうか。是非、ご自分と愛猫に当てはめて想像してみて下さい。
ひとしきり妄想を楽しんだ後で、こちらが現実になります。どうぞ。
猫選手、スタートダッシュでまずはつくねに向かいましたね。食いつきは抜群。取られてなるものかと咥えてダッシュ、勢いよく食べています。お次はやはり鯛茶漬け。肉食動物の本領発揮、動物性たんぱく質は見逃しません!真っ先に鯛を平らげ、出汁の染み込んだごはんも美味しそうに食べています。
枝豆でインターバルを取りながらお豆腐に取り掛かりましたが、柔らかさに負けて咥えてダッシュが叶いませんでした。ここでは前足を充分に踏み込んで力強く食べ進めて行きます。さすがです。およそ6分で一気に完食!
…となりまして、あのう、またたび水は?
乾燥葉の状態では喜んで齧っていたマタタビ葉ですが、水となるとちょっとお口に合わなかったようです。市販の粉末を水に溶いたものはそれなりに飲んでくれました。
酔っていたのか単にテンションが上がっていたのかは判別しかねますが、撫でて、と寄ってきたのでお撫でしますと「ガブリ」、手を離すとまた撫でてとやってきて、かといって撫でれば「ガブリ」その繰り返しでした。
たまに酔っぱらうとくだを巻いて、肯定すると怒り、否定するともっと怒るタイプっていますよね。宅の猫もどうやらそんな絡み酒のようです。
私とて猫飼い主の端くれです。この結果は薄々わかっていましたとも。いいんです。降って湧いた「いつもと違うごはん」に、ご機嫌で床に転がる猫を肴に呑むお酒はそれはそれで楽しかったです。
それにしても宅の猫の食事風景ときたら…咥えて逃げる、身を屈め耳を伏せて食べるなど、完全に行動が野良猫のそれですが、最近まで餌の収奪が激しい大所帯で暮らしていたせいかと思います。決して日頃、飼い主が猫とごはん奪い合ってるから、とかではないのです。本当ですよ!
猫とおつまみ飲み会を開催するときの注意点
折角のほろ酔い気分につまらない水を差すようで申し訳ありませんが、注意点がいくつかあります。
猫に人間の食材を与えることは賛否両論有ります。特定の食材でアレルギーの出る猫も居ます。
今回、複数のおつまみを一度に出しましたが、初めて与える食材をこのように複数組み合わせて与えてしまうと、アレルギーが出てもアレルゲンの特定が難しくなります。新しい物を与えるときは1種類ずつまずは少量を与えて様子を伺ったほうが無難です。
また今回は、撮影を意識して豆皿を使用していますが、ヒゲがお皿の縁に当たるのを嫌がる猫も居れば、小さすぎる食器は下顎の汚れに繋がり、顎ニキビの原因ともなります。とても食べにくそうでしたので、実際は大きめの餌皿に入れてあげてください。
全メニューとも、調味料を使わない猫用レシピで人間もそれなりに美味しく頂けます。作り分ける手間を省いて猫用レシピを人間もおつまみにしたっていいのですが、その際に猫の目の前で同じ皿から取り分けて与えるのはあまり宜しくありません。
飼い主が食べているものは自分も食べていいもの、今後ももらえるかもしれない、と誤解させていらぬ期待を持たせてしまうのもかわいそうですし、感染症予防のためにも好ましくありません。人間用のお膳はテーブルの上に隔離して猫の目に触れない、与えないご配慮をお願いします。
猫が食べても差し支えない食材を選んではいますが、お豆腐のにがり、卵黄、マタタビなどはたくさん常食させるのはオススメできません。いわゆる「今夜は飲み会だから特別」ということでひとつよろしくお願いします。
猫用と人間用のメニューを複数同時進行というのは初めての挑戦でしたが、葱を刻む、生姜をちょっと切る、そのまま猫用の食材を切るのは不安なのでその都度しっかり洗って拭く、というのは結構な手間でした。まな板と包丁は猫用と人間用、2セット用意しておくのがオススメです。
猫のためのお酒も添えて、今晩は家飲みをどうですか?
愛猫とお酒を共にしたい、この願いは万国共通のようで、アメリカはコロラド州のペットグッズメーカーApollo Peakは猫用ワインを発売しています。
ビーツで色付けしてあって見た目もワインそっくり、配合されたキャットニップによって効果も期待できそうな代物で、他にもチキン、サーモンのそれぞれ白とピンクのシャンパンや、雰囲気も抜群な猫用グラスも売られています。なんとも購買意欲をそそられますが、残念ながら国外発送はしていないそうです。
日本ではペット専用飲料メーカーB&H Lifesが2013年に限定1,000本で猫用ワイン「ニャンニャンぬーぼー」を発売しました。こちらは9割の猫が飲まない、という評判にもかかわらず、大人気を博したそうです。現在はすでに入手できませんが、当時知っていたら飲まないとわかっていても、私も手を出したと思います。
ウイスキーキャット然り、酒蔵猫然り、古くから穀物を使ってお酒を造る現場には猫が不可欠でした。そのためか、猫のラベルを冠したお酒は海外ワインにも日本酒にも様々に存在しています。
どれもこれも片っ端から集めたくなるような可愛さですが、その中でももっとも気になるお酒が滋賀県の酒正株式会社が発売している純米吟醸「ねこ酒」。
猫エイズキャリアを指すりんご猫をイメージした「苹果猫」と、避妊去勢手術済の地域猫を指すさくら猫をモチーフにした「猫花見月」の2本セットで、販売価格の10%が保護猫活動費になります。
当然、猫と一緒に呑んで楽しむことはできませんが、ある意味で猫のためのお酒と言えるでしょう。
猫ラベルの酒瓶を並べ、猫も食べられる食材縛りで持ち寄ったお料理で猫好き仲間と宅飲み会なんてのも楽しそうですね。
美味しいおつまみと良いお酒、かわいい猫を眺めながら今夜も充実の宅飲みタイムをお過ごしください。