猫が服を嫌がるのは当然のことです。自然界には存在しない猫の服をわざわざ着る必要はありません。
ただ、最近の猫ブームで猫用の洋服もたくさん販売されるようになりました。
かわいいお洋服を着せてあげたい気持ちはわかります!でも、猫にとって負担のない安全な服を選んであげましょう。
猫が服を嫌がる4つの理由!服を着せることのデメリット
室内飼いの猫をながめていると、猫の行動は、寝る・食べる・グルーミング・遊ぶ・排泄するの5パターンくらいしかないように思えます。人間からするとうらやましい限りですね。
ただ、猫に服を着せると、この中のどれかに制限がかかってしまいますので嫌がります。具体的に嫌がる理由をあげてみると次の4つになります。
- グルーミングできない
- 違和感がある
- リラックスできない
- 体温調節ができない
1つずつ見ていきましょう。
1.グルーミングできない
猫はグルーミングが大好きです。食餌のあとは念入りに口の周りをぺろぺろしています。また柔らかい体を利用して足の方まで毛づくろいをします。
服を着ると、動きが制限され自由に動けなくなります。また、グルーミングしたい場所の毛が隠れてしまいます。服の上からでもぺろぺろやろうとする猫もまれにいますが、本来の効果はなくなります。
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2.違和感
洋服のデザインにもよりますが、ボタンや紐で締めつけられるので、普段の感覚と違ってきます。人間もケガをして絆創膏を貼ったり包帯を巻いたりすることがありますが、どうしてもそちらに意識が飛んでしまうと思います。猫も同じように違和感を感じてしまうでしょう。
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3.リラックスできない
これまで説明してきたように、グルーミングができなくて違和感を感じてしまうとリラックスできません。服に気をとられて、寝ることもできなくなってしまうかもしれません。猫にストレスを与えてしまうことになります。
4.体温調節ができない
猫は、肉球の裏にしか汗腺がありません。体から汗をかくことができませんので、毛づくろいをしたときの唾液が蒸発することによって、熱を発散しています。猫が熱を放散する約30%がグルーミングによる唾液によるものだという研究結果もあります。
ですので、服を着ることでグルーミングができなくなると、体温調節もできなくなってしまう恐れがあります。
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かわいいだけじゃない。猫に服を着せるメリット
猫が服を嫌がる理由を説明しましたが、デメリットだけではありません。効果的な利用方法もあります。
- 術後のケア
- エリザベスカラーの代わり
- 寒さ対策
- 飼い主の癒し効果
1つずつ説明していきます。
1.術後のケア
避妊手術など、メスを入れて皮膚を切って縫合した手術の場合は、抜歯までのあいだはそのままにしておかなければなりません。手術の内容や動物病院によって処置の仕方は異なりますが、洋服を着せて猫がいじらないようにする方法があります。
画像は私の猫が避妊手術をしたときに、病院が付けてくれた服です。
他の飼い主さんのお手製のもので、しっかり患部が隠れ排泄するときも汚れず、背中で結ぶタイプになっています。
2.エリザベスカラーの代わり
術後のケアでも使われますが、皮膚炎など猫がなめたら悪化してしまうような症状の場合は、首に巻くエリザベスカラーを使うことがあります。パラボなアンテナみたいな形をしています。
動きも視界も制限され、神経質な性格の猫にはストレスがかかりますので、負担の少ない服で代用することがあります。
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3.寒さ対策
寒くなると猫は毛の隙間に空気を入れて暖かさを保っています。また、丸まったり、他の猫や毛布などに接することで、寒さをしのぐ工夫をします。ただ、高齢になると筋肉が落ちてくるので、寒さに敏感になります。これをおぎなうために、服を着ることも効果的です。
4.飼い主の癒し効果
犬ほどではありませんが、最近は、飼い主が楽しむための猫用の服も多く売られています。嫌がる猫が多いせいか、全体的に腕を通して着るデザインより、羽織る程度の簡易なタイプの方が多いようです。また、帽子や頭巾もよく目にします。
猫のストレスにならない程度で楽しむとさらに可愛さがアップしますね。
ちなみに私の経験ですが、私の猫は断脚という大手術をしました。そのときの傷口を保護するというより、痛々しい傷口や毛をそった皮膚を見たくないという家族のために服を着せました。
幸い、猫は何の抵抗もなく服を着てくれ、小型犬を飼っていた知人からたくさん服を譲っていただき、とても助かりました。
個人的には猫に服を着せることに反対でしたが、意外なことに、いろいろ着せ替えているうちに楽しくなってきたのです。猫の大手術で気分が滅入っていましたが、このことで私や家族の気分も紛れた思い出があります。
猫に服を着せるときの3つの注意点
メリット、デメリットを考えながら、猫に服を着せるときの注意点を考えてみましょう。
無理強いしない
初めて猫に服を着せたとき、どういう状態になるか観察し、無理強いしないことが大切です。
変化なし、普段通り | ○ |
---|---|
固まって動かなくなる | △ |
脱ごうとして動く | △ |
パニックになる | × |
△のときは、時間が経つと普段通りになることもあります。何分という特定ができないのが難しいところですが、しばらく経っても同じ状態が続いている場合は、着せない方がいいでしょう。
ご参考まで、私の猫の画像です。左の猫は、変化なし・普段通りの例、右は固まってしまった例です。
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事故防止
事故には十分気をつけましょう。
- ひっかける
- 食べる
服がどこかに引っかかって身動きが取れなくなってしまうと大変危険です。特に、紐やボタンなどの装飾、袖にゆとり部分があったりすると、危険度は増します。狭い場所に入り込んで奥の方で身動きが取れなくなってしまったら大変です。
また、このような装飾があると猫も気になってしまうため、噛み切って食べてしまうかもしれません。装飾がなくても、脱ごうとして引っ張っているうちに破れて、飲み込んでしまう可能性もあります。首輪も同じような注意が必要です。
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時間と環境に気を配り目を離さないこと
猫に服を着せる場合は、慣れるまでは少しずつの時間で試してみましょう。最初は数分で試してみて、何日もかけて少しずつ時間を長くしていって慣らすことです。
着せている間は必ずきちんと見守り、事故のないようにしてください。周りの環境にも気を配り、障害になっているものはないか気をつけましょう。
猫の服の選び方&着せ方~デザインのシンプルなものから少しずつ時間をかけて
術後ケアなどの必要に迫られて服を着せるとき以外は、猫が嫌がるようなら着せないことです。そして、ストレスがかからないようにするのが鉄則です。凝ったデザインで着せるときに時間がかかる服ですと、猫がパニックになって脱がせるときはその倍以上に時間がかかります。
人間がケガをするかもしれませんし、猫との信頼関係も揺らいでしまいます。羽織るだけ、被るだけのシンプルなデザインの服から始めて、少しずつ時間をかけながら試していきましょう。
決して猫は服を来て喜ぶわけではありません。勝手な人間側の自己満足ですので、そのあたりはご了承くださいね。
みんなのコメント
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猫が嫌がっているかどうか、見極めるのは、人によっては、難しいと思うので、飼い主の癒し効果という理由では、猫に服を着せるのは、やめた方が良いと思いますよ。猫に、慣れさせるのではなく、飼い主の方が、段階的に、猫に服を着せない事に、慣れていった方が良いのではないでしょうかね?