猫が何か匂いを嗅ぐとき、小さな鼻をちょんと近づけて、鼻の下をひくひくとさせますよね。小さな鼻を持った猫ならではの愛らしい行動ですが、実はこの「鼻ひくひく」、意外な危険が潜んでいることがあります。
もし、愛猫が鼻をひくひくさせているところを見かけたら、安全なのか、危険なのか見極めるポイントを知っておくとよいでしょう。
猫にとって鼻は、生きる上で人間以上に重要な器官です。猫が鼻をひくひくさせる理由や、危険なパターンをご紹介します。
猫が鼻を頻繁にひくひくしていたら、呼吸困難を疑おう
猫が鼻をひくひくさせているとすれば、大きく分けてにおいを嗅ごうとしているか、それとも呼吸しようとしているかのどちらかです。
においを嗅いでいるだけなら問題ありませんが、呼吸しようとして鼻をひくひくしているのであれば、それは病気かもしれません。
試しに、飼い主さんが口を閉じたまま、鼻だけで大きく呼吸をすると、鼻がひくひくするはずです。猫は何らかの理由があって、このような大きな呼吸をせざるを得ない状態になっているのです。
猫は鼻そのものが小さいため、呼吸困難になっていたとしてもあまり見た目からはわかりません。
「鼻ひくひく」は猫が大きく呼吸をしている時の数少ないサインになります。猫の鼻ひくひくが見られたら、飼い主さんは注意しましょう。
猫にとって嗅覚は最重要センサー
鼻をひくひくさせる行為に注意しなければならないもう1つの理由として、猫にとっての嗅覚の重要度が挙げられます。
嗅覚が優れている動物というと、ペットを飼っている人たちが真っ先に思い浮かべるのは犬かもしれません。しかし、猫も実は嗅覚は非常に優れている生き物です。
猫は人間ほど視力がよくなく、人間が視覚から得ているあらゆる情報を嗅覚から得ます。例えば、
- 他の猫のお尻のにおいを嗅いで、相手が誰かを判断する
- 食べ物が腐っていないかどうか、鼻でかぎ分ける
- においを嗅いで、だれのにおいがついているかで縄張りや所有権を判断する
といった具合です。猫にとって嗅覚は、五感の中でも最重要といっても過言ではないセンサーの役割を果たしています。
そのため、もし猫が鼻をひくひくさせている時、鼻づまりなどで嗅覚が上手に働かなくなっていると、これらのセンサーが役目を果たせず、大変なことになってしまいます。
食欲が落ちてごはんを食べなくなるなど異変がないか、飼い主さんは十分にチェックしておきましょう。
鼻をひくひくさせるのが続いているなら、様子を見ないで病院へ
鼻の下をひくひくさせて続けているのは、猫が鼻で必死に呼吸している状態です。頻繁に鼻をひくひくさせるところを目にするのであれば、気づいた時点でできるだけ速やかに病院で検査を受けましょう。
猫が鼻をひくひくさせているのは、よく見ないとわからないほど小さい仕草なので、つい見逃しがちです。また、見つけたとしても、飼い主さんはそれが緊急事態だと思いにくいかもしれません。
「いったいなぜひくひくさせているんだろう?」「何日か様子を見よう」というように、のんびりと構えてしまう飼い主さんもいるかもしれませんが、実は癌など大きな病気である可能性もありますので気をつけましょう。
また、できれば病院へ行く前のチェック項目として、
- 鼻や口から異音がしないか
- 目の粘膜の色などに異変がないか
- 食欲は落ちていないか
- 元気はあるか
- 口の中や耳の中が黄色く染まる「黄疸」を起こしていないか
- よだれは垂らしていないか
なども見ておくのがおすすめです。
猫が鼻をひくひくしている場合に考えられる病気
では、具体的に鼻をひくひくしている場合にはどんな病気が考えられるのでしょうか。
参考として主なものを挙げてみましょう。ただし、鼻をひくひくさせる=呼吸困難、と考えると、実は鼻をひくひくさせるような症状が出る病気はご紹介しきれないほどたくさんあります。
命に関わるものも、きちんと治療すれば完治するものもありますので、必ず自己判断せず獣医さんの診断は受けるようにして下さい。
鼻炎(猫風邪)
猫に多いのはやはり猫風邪などで鼻が詰まって、上手に呼吸ができないというパターンです。本当に呼吸が苦しくなると、口を開けて口でハァハァと呼吸するようになってしまいます。
しかし、そこまではいかない場合は鼻をひくひくとさせて、必死に息をする様子が見られます。自然治癒に任せていたり、予防接種を受けていなかったりすると、鼻炎の症状が残り慢性的なものになってしまう可能性もあるため注意して下さい。
熱中症
今までずっと元気だったのに、突然ぐったりとして鼻をひくひくしているという場合は熱中症になっている場合もあります。
気温が高い日に、空気の通りのない部屋に閉じ込められてしまうと、猫は数十分足らずで熱中症となってしまうことがあります。熱中症で息がつらくなり、呼吸が激しくなって鼻をひくひくとさせているのかもしれません。
熱中症は一歩間違えば命を落としてしまうものです。楽観視せず、猫の首や脇を冷やして病院に連れていきましょう。
癌
猫が鼻をひくひくしている場合、癌のような命に関わる病気の場合もあります。鼻をひくひくさせる場合、注意したいのが胸水などの症状です。
軽い風邪だと思っていると、このように重篤な病気である場合もあるので、早期治療を心がけましょう。
安全な鼻ひくひくは、「その場限り」のものだけ
一方で、特に心配のいらないケースもご紹介しておきましょう。基本的には、安全なケースは「その場限り」で鼻をひくひくさせる仕草が終わっているという場合です。例えば、以下のようなケースです。
- なにか気になるものに鼻先を近づけ、ひくひくとさせてにおいを嗅いだ
- たまたま鼻がむずむずしていた(くしゃみの前など)
- 鼻をひくひくさせるところを見たのは1回だけで、それ以降一切見ていない
このように、その場でたまたま鼻をひくひくさせるのは正常な反応なので気にしなくて大丈夫です。嗅覚に敏感な猫は、人間が気がつかないようなごくわずかな匂いにも反応することがあります。
しかしながら、もし、その場では「鼻ひくひく」が止まっていたとしても、1日に何回もひくひくさせたり、今まで全く気にならなかったのに、ある日を境に頻繁に見るようになったという場合は病院で診てもらった方がよいでしょう。
猫のいつもの呼吸数を知っておこう
もし、猫が鼻をひくひくさせていた時、病気かもしれないと思うと不安でなりませんよね。そんな時、あらかじめ知っておくとひとつの判断材料になるのが猫の呼吸数です。
猫が普段、1分間など特定の時間内に何回くらい呼吸しているのかを知っておくと、いざという時に「いつもより呼吸が速くて浅い、きっと苦しいんだ」と気がつくことができます。
もし、愛猫の正常な呼吸数をまだ知らなければ、健康な時に数えてみるとよいでしょう。運動や睡眠など、呼吸の変わるような行為の前後でない、リラックスしている状態での呼吸数を調べます。
一般的に、猫の呼吸数は1分間に20~40回と言われていますが、これはあくまで目安に過ぎません。猫によって個体差があります。
大切なのは「いつも何回呼吸しているか」ということなので、1回だけでなく何回か、あるいは何日かに渡って観察してみましょう。数カ月に1度程度、思い立った時に観察してみるのもおすすめです。
愛猫の普段の呼吸を知っておくことで、いざという時異変に格段に気がつきやすくなります。また、異変に気がついてから「いつもはどうだったっけ?」と慌てることもなくなるはずです。
日付と呼吸数をメモして、わかりやすいところに置いておきましょう。
病気の場合は酸素室の存在を知っておこう
もし、何らかの病気が原因で猫が鼻をひくひくさせていた場合、ぜひ知っておきたいのが酸素室の存在です。酸素室での治療は主に呼吸に関わる重篤な病気の場合に用いられます。
呼吸困難というのは人間からしても想像がつくとおり、大変に苦しい状態です。飼い主さんにできるのは、薬を飲ませたり、寝ている体勢に気をつかったり、加湿したりといったことですが、それではあまり目に見える効果がないこともあります。
そんな時に酸素室をレンタルして自宅に置き、愛猫を中に入れてあげると、猫は呼吸が非常に楽になります。
酸素室は月に数万もの維持費がかかったり、家庭用では温度や酸素濃度の調整が難しかったり、愛猫と触れ合う機会が減ってしまったりといったデメリットもありますが、正しく使えばとても役に立ちます。
気になる場合は獣医さんと相談しながら導入を検討してみるとよいでしょう。
猫が鼻をひくひくさせたら要注意。呼吸に異常がないか気を配ろう
鼻をひくひくさせる猫の姿は愛らしいものですが、実は呼吸困難に陥っている可能性もあります。
もし、愛猫が鼻をひくひくさせていたら、それがその場限りの一過性のものなのか、それともずっとひくひくさせているのかよく観察してみましょう。
人間でも風邪を引いてひどい鼻づまりのまま過ごすのはつらいものです。口呼吸をほとんどしない猫となればなおさらですので、もし鼻をひくひくさせる状態が数時間も続くという場合は動物病院へ行きましょう。
呼吸困難を引き起こす病気には重篤なものもありますが、早期治療で完治することもよくあります。後悔しないよう、猫の様子に気を配りましょう。