誰しも子供のころ「肉だけじゃなくて野菜も食べなさい」と言われたことがあると思います。
大人になると野菜はもはや好きとか嫌いではなく「積極的に食べないといけない気がする」存在となって食卓に君臨するわけですが、さて愛猫の食卓はどうでしょうか。
カリカリしてますか?ウェットですか?そういえば猫たちはお肉ばかりでお野菜は食べなくて大丈夫なの?とフードの裏の成分表示を見てみると、意外にも何種類もの野菜が使われています。
基本、完全肉食であるはずの猫のフードにどうして野菜が使われているのでしょうか。今回はキャットフードに野菜が入っているその理由に迫ります。
キャットフードに配合されている野菜
ペットショップへ行き、よく目にするメジャーなキャットフードの原材料を片端から読んでゆくと、まずトウモロコシがほぼ大抵のメーカーで使われています。
次いで多いのがほうれん草、にんじん、かぼちゃ、さつまいも。さまざまなメーカーに渡ってトマト、グリーンピース、ズッキーニ、ブロッコリーのほか、リンゴなどの果物が使われているのが見受けられます。
こちらのフードでは野菜パウダーが主に使用されていますね。生野菜との違いについてメーカーに問い合わせたところ、生野菜を普通に加工する場合と栄養は大差なく、パウダーにすることで管理しやすく、安定した品質で配合できるというメリットがあるようです。
海外メーカーの高級フードでは赤レンズ豆を始め各種ビーンズ、西洋カボチャ、ケール、カラシ菜、カブラ菜、ニンジンなど10品目を超す野菜が使われているものもあり、原材料の野菜だけでおしゃれなサラダが出来てしまいそうですね。
バターナッツスクワッシュなんて私も食べたことないですよ…!
なぜ野菜が配合されているのか
完全肉食動物の猫は肉や魚の動物性食材からもビタミンCやKを合成することが可能で、ヒトのように野菜から摂取する必要はありません。
逆に、雑食動物の犬やヒトのように緑黄色野菜からビタミンAを生成することは出来ないため、野菜を食べても栄養にはなりません。むしろ腸があまり長くないため、消化に時間がかかる生の野菜などは体に負担がかかってしまいます。
それではなぜ多くのキャットフードで原材料に野菜が使われているのでしょうか。
まず、大前提として猫にとって最も完全な食事は「小動物をまるごと食べること」です。ねずみや鳥類などの小動物の成分内訳は大体水分70%、たんぱく質14%、脂肪10%、炭水化物0.5%、200gの小動物からは350kcalのエネルギーが摂取できる計算になります。
小動物の肉のみならず骨や血、内臓、消化器内に残留していた植物まですべて摂取することで、カルシウムやビタミン、食物繊維が補えます。牛の心臓の生肉だけを与え続けていた猫がカルシウム欠乏症になったという事例もあります。バランスが大事なんですね。
屋外の猫たちは葉をかじったり、小さな獲物を捕まえたりと自力でミネラルやビタミンを補給できますが、室内の猫たちは飼い主から与えられるフードが唯一の栄養源。
肉だけでは不足しがちな食物繊維やミネラル、ビタミンなどの栄養素をサポートするため、キャットフードに野菜が使われているというわけです。
野菜はどんなはたらきをするの?
キャットフードに使用されることの多い野菜についてその効果を順番に見ていきましょう。
トウモロコシ
食物繊維が腸を整えます。粒のままのトウモロコシの皮は非常に消化されづらく雑食である私たち人間でも食べた翌日にそのまま…ということもありますよね。肉食の猫にはまず消化できませんが、加熱粉砕することで食物繊維を有効に取り入れることが可能となります。
また、肉類に不足しているアミノ酸を補う役割も果たします。しかし、トウモロコシをはじめとする各種の穀物は低質なフードでかさましに使われている印象が強く、猫が消化吸収できないばかりか、アレルギーの原因にもなりえます。
トウモロコシについてはあまり含有量の多くないフードを選んだ方が良いでしょう。
ほうれん草・にんじん
ベータカロチンの抗酸化作用で免疫力を高めます。ビタミン類を多く含むため、肌や内蔵粘膜の健康にも効果的です。
生のままのニンジンは消化しづらく、生のままのほうれん草はシュウ酸による尿路結石が懸念されますが、キャットフードに含まれている場合はどちらも加工の際に加熱粉砕されているため実害はありません。
残った微量なシュウ酸はフード内のカルシウムと結合して排出されてしまうしくみになっています。単体では猫の体を素通りするだけになるこれら緑黄色野菜の脂溶性ビタミンは、油脂と併せて加熱加工することで栄養の吸収率が上がります。
さつまいも
ほのかな甘みから焼き芋が好き、という猫も多いようです。糖質、ビタミン、食物繊維を兼ね備え、尚且つ加熱しても栄養素があまり損なわれないという点がキャットフードに向いている野菜です。
消化しやすいため、穀物などに比べて猫向きの炭水化物と言えます。人間でも「炭水化物や糖質は体に良くない」などといわれて完全に排除し続けてしまった結果、健康を損うこともあるように、食事はやっぱりバランスが大事。
澱粉を栄養化する酵素のアミラーゼ、肉食動物であれば必要ないはずなのに何故か猫にも備わっており、少量であれば炭水化物も栄養の一助になるようです。
野菜入りフードのメリットとデメリット
野菜入りのキャットフードを猫に与えるメリットとデメリットはなんでしょうか?
メリットその①食物繊維が取れる
グルーミングで毛を飲み込んだり、運動不足だったり、お水をあまり飲みたがらなかったり、と室内で暮らす猫たちは便秘になりやすい傾向にあります。
野菜入りのフードから食物繊維を取り入れることで腸内の便がまとまりやすくなり、排出する機能も高まります。猫は野菜を消化吸収することはできませんが、猫の腸内にいる善玉菌は、猫が消化できなかった食物繊維を糧に、腸内環境を整えて健全な便を作ってくれます。
猫にとっての野菜は猫のごはん、というより猫を元気にしてくれる善玉菌のためのごはん、と言えるでしょう。
メリットその②カロリーオフ
材料に野菜を使用することにより、量は同じでも肉100%のフードよりカロリーを抑えられますし、猫にとって野菜は肉や魚よりも消化に時間がかかるため、腹持ちも良くなります。
とはいえ大量に穀物が使用されている場合は猫の健康の為でなく単にメーカー側のコストダウンの為であったり、大量のグルテンがアレルギーの引き金ともなりうるため注意が必要です。
デメリットその①体に合わない場合もある
生のままの野菜と違い、フードに加工された野菜は猫が消化できないという事はまずありません。しかし、やはり自然界では口にしないはずの野菜、成分が体に合わない猫もいます。
野菜入りのフードにしてから下痢や嘔吐、食欲不振などの異常が続くようなら使用は見合わせて、獣医さんに相談しましょう。既に前項でも書きましたが、トウモロコシなど穀物を多く含んでいるフードでは、個体によってはアレルギーを引き起こす可能性があります。
デメリットその②添加物への不安
野菜入りをアピールするフードの中にはいろどりからも野菜を感じさせるために着色料が多用されている場合があります。野菜の健康成分より、着色料の害の方が多いなんて事にならないように、気を付けて選びたいものです。
野菜入りフードがおすすめな猫
屋外を動き回れる猫に比べて、完全室内飼いの猫はどうしても運動量が不足して、腸の動きが不活発になりがちです。快食快便は元気の源、食物繊維が取れる野菜入りのキャットフードは運動不足で便秘がちな猫にオススメです。
また、前述したとおり、カロリーオフや腹もち効果も期待できるので食べたがりで肥満が気になる猫にも良いでしょう。
トッピングや手作りごはんにもOK
野菜があまり入っていないフードを愛用中でも、野菜をトッピングして与えたり、野菜を使った手作りごはんレシピを活用する方法もあります。
基本は、あくまで少量をしっかり加熱して使用すること。細かく刻んだりすりつぶしたり、猫の胃腸に負担をかけないひと手間を加えてあげてください。
新陳代謝を促し、抵抗力や免疫力を高め、美肌(美毛並み?)を保つのに、有効な野菜たち。愛猫の健康のために積極的に取り入れていきたいですね。