酸化防止剤エトキシキンがキャットフードの成分表に記載されない理由

日用品の買い物をするとき、裏の成分表示のラベルは読むほうですか?

前半部分はわりとなじみのある品目が並んでいて、後半部分は保存料や着色料といった添加物がカタカナの薬品名で並んでいますね。今ではそれがどんな添加物なのか、ネットですぐに調べることができます。

しかし、どうやら成分表示に書かれていない、良くない成分が潜んでいることがあるみたいなんです。

今回は猫との暮らしの中で必要不可欠なキャットフード、その成分表示ラベルの行間に潜む酸化防止剤エトキシキンの危険について迫ります。

エトキシキンはどんな薬剤か

エトキシキンは石油から精製されています。1940年に石油の抗酸化剤として使われていましたが、その後、1954年に油脂への抗酸化作用が認められ、アメリカでは食品の酸化防止剤として使われはじめました。

安価で効果が高いため、海外で広く、農薬や殺菌剤、そして食品の酸化防止剤として使われています。

日本国内では食品への添加はもとより農薬としての使用も禁止されていますが、輸入飼料や輸入ペットフードにエトキシキンが使われていても、基準値を下回っていれば良しとされ、食品衛生法の枠組みの中で基準値をもうけています。

農薬としては許可されていませんが、収穫後のりんごや梨の変色防止には使われています。

どうして酸化防止剤が必要なのか

私たちのお肌から金属、そして食品、すべてのものは酸素に触れた瞬間から化合して「酸化」を始めます。お肌ならシワやシミ、くすみなどの老化、金属なら錆び、食品では風味の減損や毒素として現れるのです。

現在、国産のキャットフードの8割がドライタイプのいわゆる「カリカリ」、乾燥していて長期保存が可能な使いやすいフードですが10%ほど水分が含まれているため、腐敗やカビの繁殖の危険性はゼロではありません。

何より、エネルギー源として油脂、嗜好性を高めるために魚肉油が使われていますが、これらの油脂は特に酸化が早いため、酸化防止剤が不可欠です。

キャットフードは開封して空気に触れた瞬間から酸化が始まります。酸化した食品の急性症状としては下痢や嘔吐があり、長期摂取ではがんのリスクも高まります。
酸化防止剤がまったく入らないというのもそれはそれで猫の体に危険なのです。

エトキシキンの潜む原材料

現在、国産のキャットフードに「エトキシキン」の表示のあるものは皆無ですが、表示に無い=エトキシキンがまったく含まれてはいない、ではないのが怖いところです。まずエトキシキンが隠れている可能性あるミールについてご説明します。

成分表示の中で「かつお」「まぐろ」「鶏肉」など具体的な品名ではなく単に「肉類」「魚類」とあったとき、それらはミールを指します。肉副産物とも書かれます。

食用の哺乳類、魚類の肉の中で人間の食用に向かない部位、あるいは4Dミートと呼ばれる食用にならない肉を粉状、ペースト状にした低品質のたんぱく源です。

4Dミートとは、DEAD(死んでいた動物の肉) DISEASED(病気だった動物の肉) DYING(死にかけていた動物の肉) DISABLED(障害があった動物の肉)の総称で、人間の食用に向かないグレードの肉を指します。

そもそもが安価なペットフードや飼料として取引されるため、高価な酸化防止剤が添加されているとは考えにくく、エトキシキンが使われている可能性は高いでしょう。

また、魚粉の場合は赤道を超えて輸送されてきている場合、輸送中の発火を防ぐためにエトキシキンを使用することが国際規則で決められているため、どうしても最初から添加は避けられません。

このように、直接の表示がなくても成分を曖昧にした「油脂」「魚粉」「肉類」の表示があれば、原材料の時点ですでにエトキシキンは使われてしまっているということです。

そして、原材料に使われている添加物には表示の義務がありません。

エトキシキンの危険性

飼料安全法により家畜の為の飼料の成分は表示することが義務付けられていますが、ペットフードは販売量を農水省が集計するのみで添加物等の成分表示義務はありません。法的にはキャットフードは「食品」でも「飼料」でもないわけです。

人間が直接食べる「食品」、最終的に食品になる家畜の為の「飼料」には厳しい基準値が設けられていても、いずれでもないキャットフードにはそこまで規制がない、というのが現状です。

しかし、2007年にアメリカでメラミン入りのフードで猫が大量死した事故をうけて、日本でも2008年に「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律」が施行され、その中でエトキシキンは猫に対し150ppm(総量の0.015%)を越えてはならないと定められました。

しかしこれは150ppmまでなら添加してよいという事です。

アメリカのメラミン入りフード事故は、アメリカのメーカーがフードにメラミンを添加したわけではなく「メラミンを含む飼料で育った中国の家畜の肉」を輸入して原材料としたために起こりました。

エトキシキンも飼料として広く使われているため、同様の事故に繋がるのでは?と思えてしまいますが、そこは人間の口にはいるもののこと、国内での使用上限は0.0001%とされています。

それにしても0.0001%で効果を発揮するエトキシキン、どれだけ強力なんでしょうか。飼料より恐らく油脂の含有量が多いからとはいえ、キャットフードに飼料の150倍量が許容されるというのも恐ろしいように思います。

2013年に食品安全委員会が行った、犬をはじめとする動物実験の結果報告書は前文ネットで読むことが出来ますが、例えば犬の上限基準値75ppmを下回っている場合などはほとんど異常が検知されていません。最長5年の投与実験でも発がん性が認められていません。

しかしラットでは早い段階からがんをはじめ様々な異常が起きていますし、犬でも投与量の増加に伴って肝臓、腎臓をはじめとする臓器の異常や胎児の発育に影響が見られます。

同資料ではりんごにエトキシキンの噴霧を行ったり、エトキシキンを含む飼料を扱う作業者が患う重度の皮膚炎がエトキシキンによる可能性が高いと結論付けています。

確実に安全性が約束されたわけではなく、無添加の方が猫の体のために良いのはもちろんですが、基準値以下であればただちに影響はないと言えそうです。

愛猫の健康のためにできること

原材料に含まれている場合は回避の難しいエトキシキンですが、せめてリスクを回避するためにも、

  • ミールなどの来歴不明な肉類・魚類が使われていない。
  • ローズマリー抽出液や緑茶カテキンなど、天然由来の酸化防止剤を使用している。

この二点に注意してフードを選びたいものです。

また、酸化は紫外線、温度、湿度によって加速します。特に抗酸化剤を使用した場合は酸素による酸化より紫外線による酸化の方が早いため、内袋が透明ビニールや一部が透明で中が見えるようにしてある場合は早々に遮光性の高い容器に移し替えた方が良いでしょう。

合言葉は「ノーモア直射日光 ノーモア高温多湿」。フード選びと酸化に気を付けて、今日も愛猫の食卓へ安全なフードを!

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