猫ちゃんが甘えてくれるのは信頼の証し。飼い主としては嬉しい限りですよね。
そこには「懐いてくるからこそ可愛い。」というような思いもあるかもしれません。飼い主さんが「猫ちゃんに思う存分甘えて欲しい。」と思うのは当然のことでしょう。
でも、もしも過剰な飼い主への依存から、猫ちゃん自身が苦しい思いをしていたとしたら…?
今回は猫ちゃんの心の病気「分離不安」について考えます。甘えっ子の猫ちゃんの飼い主さんは、是非、参考にしてくださいね。
分離不安は飼い主と離れることへの不安からおこる
分離不安の正式名称は「分離不安障害」といいます。愛着のある存在から離れることに極度の不安を感じる症状で、おもに小児に対して使われることが多い心理学用語です。
ペットの分離不安は、ペットが飼い主と離れることを嫌がり、その不安から様々な問題行動を起こすことをいいます。
愛猫は大丈夫?分離不安の症状をチェック
分離不安による問題行動には次のようなものがあります。
- 大声で鳴き叫ぶ
- 落ち着きなくウロウロする
- 食欲不振、下痢、便秘
- 不適切な場所での排泄行為
- 過剰なグルーミングや自傷行為
- 他の人(猫)に攻撃的になる
飼い主さんの不在時に、上のような症状が複数あらわれる場合は、猫ちゃんは分離不安の傾向があるといえるでしょう。
原因は親離れができていないことと完全室内飼いという環境
犬と違いマイペースで単独行動をとる習性にもかかわらず、猫の分離不安が増えてきているのは、最近の猫ちゃんをとりまく環境の変化によるものと考えられます。
昔、猫はほとんどが人から譲られたり拾ったりして飼うものでした。しかし、最近はペットショップやブリーダー、譲渡会などからのお迎えが多くなっていますね。
そのため、多くの子猫は早い段階で母猫から引き離されて、人間のお世話を受けています。このように母猫からの自立を経験しないまま成猫になった猫ちゃんたちは、「母猫に対するような甘え」を飼い主さんに求めるようになります。
母猫は、出産後、子猫の面倒を見ながら、生きていくのに必要な基本的なこと(エサの食べ方、排泄、狩りの仕方など)を教えます。そして、子猫は母親や兄弟とのつながりの中で徐々に社会性を身につけていきます。
その後一定期間を過ぎると、今度は母猫は子猫に対して威嚇や攻撃をして自立を促します。このような猫ちゃんの「親離れ」は、生後3ヶ月~6ヶ月あたりに行われます。
ペットショップにいる子たちは生後2か月までには母猫と離れているため、きちんと親離れができていないケースがほとんどですね。
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さらに、様々な事情から完全室内飼いが奨励されている今、猫ちゃんと飼い主さんとの関係性は、より密接なものになっています。なので、猫ちゃんの飼い主さんへの依存度はますます高まる傾向にあるといえます。
親離れを経験しておらず、また、飼い主さんへの依存度も高い猫ちゃんの中には、先に紹介した分離不安特有の問題行動を起こしてしまう子もいます。
後追いを繰り返したり、留守中にそそうするなどの問題行動は、決してわざとやっているのではありません。こうした「不安感からくる問題行動」は猫ちゃんにとっても、とても辛いことです。
ですから、決して叱ったりせずに、適切で効果的な対応策をとることが必要になります。
分離不安の対症療法
分離不安の原因が明らかなら「原因そのものをなくしていまう」という考え方もあります。でもペットショップでのお迎えが一般的な今、母猫からの自立経験は難しい状況ですし、完全室内飼いも猫ちゃんの健康や安全のために必要なことですね。
従って、改善策としては対症療法を考えるべきでしょう。効果的な方法は次のようなものです。
落ち着ける場所を用意する
部屋の中に猫ちゃんが安心して落ち着けるスペースを作ってあげましょう。サークルやケージ、ペット用ベッドの他、キャットタワーなどの高い所、ダンボールの箱など隠れられる場所も、猫ちゃんにとっては安心できる場所になります。
お気に入りの毛布やぬいぐるみなどで落ち着く子もいます。留守番の時などには、それらを出しておいてあげるのも良いでしょう。
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退屈させないように工夫する
遊び好きな猫ちゃんは、飼い主が出かけた後に退屈してしまい、より寂しさを感じてしまいます。おもちゃを置いておく、TVを付けたままにする、お気に入りの動画や音楽を流しておくなどの工夫をしてあげると良いですね。
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また、窓のカーテンを開けておくのも、外の様子が見られて退屈しのぎになります。
お出かけの時に声掛けしない
外出の前後に「行ってくるよ。」「いい子にしてた?」などの声掛けをすると、分離不安の猫ちゃんの不安感をあおることになります。
そのような習慣化している声掛けをやめ、さりげなく出かけて帰ることで、「飼い主さんはいなくなってもいつの間にか帰るから大丈夫。」と思わせることができます。
甘えに過剰に反応しない
精神的自立を促すためには、猫ちゃんの甘えに過剰反応しないことが大切です。「騒いでいるからなだめる」というような接し方はやめて、触れ合う場合はなるべく飼い主の方からアプローチするようにします。
たとえば、帰宅直後に猫ちゃんが鳴きながら後追いをしてきても、しばらくは相手にせず、落ち着いてから構ってあげます。「落ち着いている方が相手にしてもらえるんだ。」と感じさせることが重要になります。
別部屋で過ごす
家にいても別の部屋で過ごす時間をつくることも大切です。特に寝室には入れないようにしましょう。(猫ちゃんのそそうは飼い主さんの寝床にしてしまうことがほとんどです。)
別部屋に猫ちゃん用のベッドやケージを用意して、そこで寝かせるようにします。
多頭飼いで遊び相手をつくる
多頭飼いで猫同士の関係性が濃くなると、飼い主さんへの依存度が軽減します。遊び相手ができることは良い刺激にもなりますね。
ただし、必ずしも猫ちゃん同士、相性が良いとは限りませんし、「飼い主さんのお世話が増えて負担になる」などのデメリットもあります。また、飼い主さんをめぐっての嫉妬やケンカもおこるかもしれませんね。
1匹で飼う場合は積極的にいっしょに遊んでストレスを解消してあげる必要があります。たとえ短い時間でも集中的に構ってあげると良いでしょう。
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甘えん坊がストーカーに!?時には自立を促すことも必要。
我が家の愛猫、コタロウも分離不安気味です。
飼い主が部屋から出た後に大声で鳴き続けたり、パニックのようになって、ドアに思い切り体当りをしてしまうこともあります。他にも、家族同士でおしゃべりしている時に間に入ってきて甘噛みしたり、無理やり肩に乗ってきたり…。
初めは「甘えん坊な性格」とだけ思っていたのですが、後追いが徐々にエスカレートしてストーカー行為気味?になり、分離不安が疑われたことから、少し距離を保つように私自身の行動を見直すことにしました。
その結果、相変わらず不在時に鳴くことはありますが、ドアへの体当たりは多少減ってきたようです。
甘えん坊の性格は確かに可愛いですが、留守中に猫ちゃんが必要以上に寂しがって辛い思いをするのはかわいそうですよね。
また、万が一、動物病院に入院するような場合に治療を円滑に進めるためにも、あらかじめ分離不安を治しておくことは必要でしょう。
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一人ぼっち?にゃんだかさみしいにゃ…
分離不安は、1対1で猫ちゃんを飼っている場合に特に起こりやすいものです。甘えっ子の猫ちゃんと甘えさせたい飼い主さん。とても微笑ましい関係なのですが、一方でお互いに依存してしまいがちな関係であるともいえます。
災害時、入院の時…、様々なことを想定すると、やはり、ある程度の精神的な自立は必要なものですよね。時には母猫になったつもりで?猫ちゃんの「親離れ」も考えに入れておきましょう。
分離不安の症状がひどい場合は薬での治療も可能です。是非一度、動物病院に相談してみてくださいね。