私たち人間は、疲れたときに栄養ドリンクを飲んだり、食欲がないときに栄養補給のためのゼリーを食べたり、食事以外から栄養を摂取することで自分の健康を管理することができます。
しかし、動物は疲れているときも栄養が足りないときも、与えられたごはんを食べることしかできません。
しゃべれず、意思を伝えることができない愛猫に、元気で長生きしてもらうためには、毎日の食事によるケアが必要不可欠です。
キャットフード以外の食事によるケアに、猫用のサプリメントがあります。
今回の記事では、サプリメントの必要性や与える場合の注意点など、まだそれほどポピュラーではない猫用サプリメントのあれこれについてご紹介します。
猫にサプリメントは必要?フードだけでは心もとない理由
最近のペットフードには、猫が生きるために必要な栄養素がバランス良くふくまれています。
実は、身体に疾患がなく、体調も良好であれば、猫がサプリメントを摂取する必要はほとんどありません。
普段食べているキャットフードで十分必要な栄養補給ができているなら、サプリメントをプラスするのではなく、まずは毎日のフードの質や量を管理することが優先です。
しかし、便秘や関節症、免疫力の落ちてしまったシニアの猫など、飼い猫に気になる症状がある場合、サプリメントはとても有効なアイテムになります。
また、ペットフードは確かに十分な栄養素がふくまれていますが、調理の過程で高熱の処理をするため、結果として必須の栄養素が壊れてしまうこともあるといわれています。
身体との相性や、薬を飲んでいる場合、飲み合わせも問題になります。
キャットフードと同じで用途による種類も多いので、選び方の基準がわからず、困ってしまいますよね。
猫用のサプリメントってどんなもの?栄養補助食品として活用しよう
サプリメントは、食事に+αで摂取するものです。
普段の食事ではまかないきれない不足しがちな栄養成分を、サプリメントとして体外から摂取するものなので、もちろん主食ではありません。
動物病院専用のサプリメントもありますが、ペットショップで市販品として販売されているペット用のサプリメントも多くあります。
犬用・猫用・兼用のものもあるので、適当に与えるのではなく、獣医さんと相談しながらきちんと選びましょう。
栄養バランスの良い食事と、猫の体調にあわせたサプリメントで、愛猫と長く元気に過ごしてもらいましょう。
サプリメントはあくまで栄養補助食品
「サプリメントで病気が治る」と勘違いしている人もいるかと思いますが、サプリメントを摂取することで、その猫がもっている疾患が治るわけではありません。
サプリメントに期待できる効果は、病気の治療ではなく、病気の予防と健康の促進です。サプリメントは医薬品ではなく、あくまで「栄養補助食品」、ということですね。
医薬品ではないので副作用などの心配はありませんが、ペットの健康状態に適したサプリメントを選ぶことが大切です。
あきらかな疾患があるときは、まず動物病院を受診しましょう。
一方サプリメントは、安全性が食品と同等で、管理・販売に特別な資格を必要としません。
猫にサプリメントを与えることによるメリット
では、サプリメントを与えることによるメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
サプリメントで栄養をプラスできる
猫に必要な栄養素をプラスしたくても、飼い猫が今のキャットフードを気に入っている場合、別のキャットフードに切り替えることはむずかしいです。
しかし、サプリメントなら、キャットフードを変えないままプラスで栄養を与えることができます。
サプリメントは毎日のフードはそのままに、必要な栄養素を補うことができる便利なアイテムなのです。
食欲がないときにでも簡単に食べられるサプリメント
手軽に栄養補給できるサプリメントは、飼い猫の食欲がなく、なかなかごはんを食べてくれないときにも役立ちます。
フードより簡単に食べられるので、たまたま食欲がないときなどに猫用のサプリメントを用意してあると便利です。
数日たっても元気が戻らないときは、必ず獣医さんに診てもらいましょう。
薬に比べて効果は及ばなくても、副作用が少ない
病院の薬は強力で効きやすいですが、副作用も起こりやすいといわれています。
サプリメントは病院でだされる薬よりも安く副作用も少ないのですが、もちろん薬の効果には及びません。
飼い猫の体調が悪いときはすぐに病院へ行くべきですが、毎日のサプリメントで体調を整えることで、結果として病院にかかりにくくなり、薬などの副作用の影響も受けずにすむというメリットもあります。
猫も私たち人間と一緒で、夏に食欲が落ちたり冬は風邪をひきやすくなったりと、季節の変わり目に身体を崩してしまうことがあります。
季節ごとに起こりやすい問題が異なるので、その期間の疾患にあわせたサプリメントを与えてもよいでしょう。
毛が生え変わる春や秋には、腸に毛玉が溜まってしまわないように毛玉が排出しやすくなるサプリメント。冬は寒さから関節痛になりやすいので、軟骨成分を補うサプリメントなど、季節と体調にあわせて選んでください。
便秘、毛玉、関節…猫のお悩みごとにみるサプリメントの種類
猫用のサプリメントについて検索すると、数えきれないほど多くの種類があることに気づきます。
猫の症状からみるサプリメントの種類についてご紹介します。
- 便秘
- 毛玉
- 関節
- 認知症
- 目の疾患
- 歯の健康
- 尿路結石
- 肝臓
- ダイエット
猫がなってしまいやすい便秘を解消してくれる食物繊維のサプリ
猫は便秘になりやすい生き物です。フードや環境の変化で簡単に便秘になってしまいます。
また、水分不足によって便秘になったり、シニアになり内臓機能の衰えから便秘になってしまうなど、その原因はさまざまです。
便秘をそのままにしておくと、私たちと一緒でお腹が張って苦しくなり、身体にも悪影響です。健康的な排便のために、どのようなサプリメントを選べばよいのでしょうか。
便秘に有効な成分といえば食物繊維です。
食物繊維には、
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
この2種類があります。
水溶性食物繊維は水分を腸まで運び、カチカチになった便をやわらかくしてくれます。
不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維で、便の体積を増やし大腸を刺激することで排便を促してくれます。
この2つの食物繊維が多くふくまれたサプリメントを選びましょう。
毛玉の排出を促してくれるサプリ、毛玉が腸内に溜まりにくくしてくれるサプリ
猫は毛づくろいで飲み込んだ毛が胃の中に溜まると、吐き出すことで毛がつまらないようにします。
しかし、毎日のグルーミングで飲み込んだ毛が大腸にたまり、ひどいときには開腹手術でとりだすようなことにもなりかねません。
毛玉を溜まりにくくするフードもありますが、猫の腸内毛玉に効果的なサプリメントもあるので、試してみてください。
できてしまった毛玉を便と一緒に排出しやすくするためには、できてしまった毛玉を便と一緒に排出することが大切です。
原材料には
- 潤滑剤
- 食物繊維
- 乳酸菌や酵素
などが使われます。
潤滑剤が油分の作用で毛玉をスムーズに排出させ、継続して摂取することで飲み込んでしまった毛が溜まりにくくなる効果も期待できます。
また、食物繊維によってお腹の調子が整えられ、乳製品や酵素は弱った胃を活発にしてくれる作用があります。
腸に溜まる毛玉を解消するためのサプリメントはさまざまな種類があるので、症状に応じて選んでみてください。
シニアや肥満の猫に検討したい関節を保護するサプリ
猫は老いとともに関節炎になる可能性が高くなります。シニアの猫だけでなく、肥満の猫にも関節の疾患は切っても切り離せない問題です。
関節炎は痛みがひどく、悪化すれば歩くことがむずかしくなるなど、つらい症状があらわれます。
関節炎の主な原因として、激しい運動や老化による関節のすり減り、体重の増加による関節への負担などがあげられます。
関節に有効なサプリメントの働きとして、
- 軟骨成分を補うもの
- 炎症を抑えるもの
- 過度な体重増加を防ぐもの
- 活性酸素を減らすもの
などがあります。症状によってぴったりのものを選んであげてください。
徘徊や夜泣きをしだす前に!認知症を予防するサプリ
猫も人間と同じで、11~14歳になると認知症の初期症状が出るといわれています。
徘徊や夜鳴きなど、その症状はさまざまなので、飼い主さんも戸惑うことが多いかと思います。
猫の認知症は基本的に完治しない病気であるとされています。もちろん、サプリメントで完治することはありませんが、認知症を予防することはできます。
効果的なサプリメントの成分として、
- α-リノレン酸
- DHA
- EPA
などがあげられます。
オメガ3脂肪酸という体内では生成できない成分を、食べ物やサプリメントから摂取することで、脳細胞に刺激を与え、脳を活発にする効果が期待できます。
認知症はゆっくりと症状が進行していく病気です。抗酸化作用を強化したサプリメントで認知症を予防しましょう。
目やになどの目の疾患に効果的な栄養が入ったサプリ
目やにやかゆみ、白内障など、猫の目の疾患はさまざまなものがあります。
もちろん、白内障を完治するなどという効果はサプリメントにはありませんが、
- ルテイン
- アントシアニン
- L-リジン
などの成分は目の疾患に効果があるといわれています。
「天然のサングラス」ともいわれているルテインは強力な抗酸化作用があり、目を守ってくれます。アントシアニンも有害な紫外線から目を守る効果があります。
また、L-リジンは結膜炎や角膜炎を引き起こすヘルペスウイルスを予防する効果が期待できます。
口臭や歯周病は健康の敵!口内環境を守るサプリ
人間と同じで、歯の健康は全身の健康につながります。歯垢の除去や口内環境を清潔に保つことが大切です。
猫は歯磨きをしませんが、ガーゼで優しくふいてあげたり、無理のないデンタルケアをしてあげてください。虫歯や歯周病の原因となる悪玉菌の増殖を防ぐことができます。
歯の健康に効果がある成分として、口腔内善玉菌というものがあります。
これの善玉菌が、口腔内にある悪玉菌の活動を抑制し、歯周病や口臭の原因となる菌を防いでくれるのです。
しかし、年齢や栄養の偏り、環境の変化によって悪玉菌が増加してしまうと、善玉菌で抑えることができず、病気の原因となってしまいます。
口腔内善玉菌をサプリメントで摂取することによって、悪玉菌の増殖を防ぐことができます。
病院での治療とともに検討してほしい尿路結石のサプリ
尿路結石は猫にとって大変つらい疾患です。尿道にシュウ酸やリン酸の決勝ができ、おしっこをするときに激痛がはしります。
- クランベリー
- DL-メチオニン
- クエン酸
などの成分がふくまれたサプリメントが尿路結石に効果的だといわれていますが、おしっこが出にくい・痛がるなどの症状が見られた場合、まずは動物病院で見てもらってください。
サプリメントだけでなく、食事療法も必要になるので、獣医さんの指示に従ってきちんと治療を進めましょう。
大事な肝臓を守る成分が入ったサプリ
猫は肝疾患になりやすいといわれています。
肝臓はさまざまな機能を担う大切な器官です。毒素を分解できなくなると、生命を維持することが困難になる場合もあります。
肝臓機能をサポートするためのサプリメントはいろいろとありますが、まずは病院で疾患を確認し、解毒をサポートするものや肝臓自体の回復をサポートするものなど、症状にあったサプリメントを選びましょう。
- タウリン
- マリアアザミ
- BCAA
などが肝臓機能に効果的な成分であるといわれています。子猫やシニアの猫は特に肝臓が弱りやすいので、サプリメントや食事でしっかりとケアをしましょう。
猫に肥満はつきもの?ダイエットを目指すサプリ
飼い猫は、運動不足によって肥満になりやすいといわれています。また、ついおやつをあげすぎてしまうことで肥満になってしまう場合もあります。
肥満は重い疾患につながるリスクがあります。普段から気を付けましょう。
ダイエットに効果的な成分として
- L-カルニチン
- グルコマンナン
などがあげられます。脂肪を燃焼させ、脂質や糖質の吸収を抑えることで、ダイエット効果を得ることができます。
突然の食事制限は危険です。獣医さんと相談して、ゆっくり継続的にダイエットしましょう。
猫用サプリメントの正しい与え方
当たり前のことですが、猫が自分の意思でサプリメントを口にすることはありません。猫に気持ちよくサプリメントを食べてもらうには、飼い主の工夫が必要になるのです。
サプリメントはどうやって食べさせるの?
サプリメントを与えることによって、ストレスになってしまっては意味がないので、できるだけ自然に与えましょう。
- ペットフードに混ぜる
- 好物と一緒に与える
- 空カプセルに入れて与える
- 水に溶かして与える
など、獣医さんやペットショップなどで相談し、愛猫の負担にならない方法を考えましょう。
サプリメントはどれくらいあげるの?
もっとも重要なのは決められた摂取量を守ることです。たくさん与えたからといってすぐに効果がでるわけではありません。
むしろ、小さな体に負担がかかってしまうこともあります。
猫の身体にあったサプリメントを毎日適切な量だけ飲ませることが大切です。
また、1日に何種類も飲ませるとかぶった栄養素が過剰摂取になってしまうことも。飲み合わせに注意してください。
与える時間や量をきちんと決めて、過剰摂取してしまわないよう注意しましょう。
フード自体がきちんと必須な栄養素を計算してつくられているものです。
フードとサプリメントを同時に摂取することで、栄養分が偏ったり過剰摂取になってしまうことも。
あくまでもメインはフードで、サプリメントは補助として使いましょう。
サプリメントを与えるときの注意点
サプリメントを与えるときの注意点はさまざまありますが、まず一番大切なことは、人間のサプリメントを絶対に与えないことです。
人間にとって無害でも、猫にとっては危険なものが多く、重い疾患を引き起こしてしまう可能性も。
また、サプリメントを摂取したことで顔が腫れたり、かゆみが出てしまった場合、アレルギーの可能性があります。
飲み始めて1週間ほどは、変化がないかどうかきちんと見てあげてください。身体にあわないと感じたらすぐに使用をやめましょう。
さらに、サプリメントによっては保存料など、猫の身体に有害な添加物が入っているものもあります。原材料をきちんと確認し、天然のものを選びましょう。
病院でもらう薬を飲んでいる場合、併用する場合は必ず獣医さんに相談してください。
栄薬の効果とサプリメントの効果が反発し 症状を悪化させてしまうこともあります。
粗悪なサプリメントに注意!
残念なことに、サプリメントのなかにはペットブームにつけこんだ意味のないサプリメントも存在します。
「健康のため」というあいまいな理由ではなく、どのような症状を改善・予防したいのかをはっきりと見据えて使用しましょう。
サプリメントはあくまでも健康を補助・増進させるためのものなので、絶対的な効果が得られるわけではありませんが、普段のケアとあわせて摂取することで、免疫力の向上にもつながります。
良質なものかどうか、きちんと確認してから使用しましょう。
愛猫に元気で過ごしてもらうために
最近、ペットへの健康志向がより高まっているように感じます。
動物を「飼う」という考え方から、家族のように「一緒に暮らす」存在へと変わってきているのです。
愛猫の健康の基本は、毎日のフードにあります。
サプリメントは愛猫の病気を治すためのものではなく、あくまで病気の予防や健康維持のための栄養補助食品です。
もちろん、栄養バランスが整った食事や規則正しい生活を続けることも大切ですが、食事と併用してサプリメントを与えることでさらに健康寿命を伸ばしたり、体力を維持することができます。
獣医さんと相談して、ぜひ試してみてください。