猫を飼っていると、なかなか長時間の外出は難しいものです。しかし仕事の都合や、たまの長期休暇での旅行、あるいは急な病気などでどうしても自宅を留守にせざるを得なくなることがあります。
そんな時、留守の間だけ、愛猫の様子を見てくれる親戚や友人などがいれば何の問題もありません。しかしそのような環境にない場合、愛猫のお世話をどうするかは飼い主さんにとって大きな問題です。
ペットシッターに依頼するという手もありますが、留守中の家に招くのは抵抗があるという人も多いことでしょう。そこでもうひとつの選択肢となるのが、愛猫を預かりお世話をしてくれるペットホテルの利用です。
この記事の目次
ペットホテルってどんなところ?ペットホテルによって違う猫の待遇
ペットホテルは、ペット専門の預かりサービスです。飼い主さんが不在にする際、ペットホテルに愛猫を預けることで、ペットホテルが代わりにお世話をしてくれます。
利用は日帰り~数ヶ月以上に渡る長期まで、幅広く対応していることがほとんどです。
小さめのケージに入ってお留守番する日帰り向けの安いプランから、ひと部屋をまるまる貸し切って自由に動き回って滞在するようないわゆるVIPルームプランまで、ペットホテルによって様々な料金プランが用意されています。
また、自宅までの送迎サービスや、トリミングサービスなどを実施しているペットホテルもあります。
ペットホテル滞在中の猫の待遇は、ペットホテルによって、また猫の慣れ具合によって、
- 個別に猫をケージの外に出して、スタッフさんが一緒に遊んでくれる
- 他に預かっている猫も一緒にケージの外で追いかけっこしながら遊ぶ
- 基本的にケージから出さず、ケージの中の移動のみ
- 昼間はケージの外で遊び、夜はケージの中で寝てもらう
など様々です。滞在期間や料金プランによって異なることもあるので、利用する際はよく確認しておきましょう。
特に安いプランだとごく小さなケージの中に入りっぱなしというペットホテルもあります。猫がストレスにならないだけの空間を確保できるプランを選びましょう。
ペットホテルは予約制!早めに電話で確認しよう
ペットホテルの利用は一般的に予約制です。
また、年末年始やGW、お盆などのシーズンは旅行で預ける飼い主さんが多いことから繁忙期となります。数ヶ月前に予約が埋まってしまうこともあるので、できるだけ早めに電話で確認しておくのがおすすめです。
ちなみにキャンセルするとキャンセル料金がかかることもあるので注意しましょう。
VIPは人間並?ペットホテルの費用の相場
ペットホテルの費用は前払いが一般的です。安いプランで1日2千円、やや高めのプランで4千円。VIP待遇の場合は1日5千円~1万円ほどです。平均するとだいたい1日3千円が相場となっています。
また割引サービスも豊富にあり、多頭飼い割引や長期割引、初回のお試しプランなどを実施しているところも多いのでチェックしておくとよいでしょう。
至れり尽くせり。ペットホテルによっては病気の猫にも対応!
ペットホテルに預けることができるのは基本的に完全室内飼いの健康な猫のみとなります。しかし、中には病気の猫、まだお留守番に不向きな子猫、あるいは介護が必要な高齢の猫などでも対応してくれるペットホテルもあります。
ちなみに、どのペットホテルでも近所の動物病院と提携しているため、万が一預けている間に病気や怪我があった場合もきちんと対応してくれるはずです(医療費は別途かかります)。
預けるならどっちがいい?ペットホテルと動物病院での違い
実は動物病院でもペットの預かりサービスを実施しているところがあります。ただし、基本的に動物病院の預かりサービスは専門のペットホテルほど快適な環境ではありません。部屋も犬と猫で共同であることがほとんどです。
また、犬の場合は散歩がありますが猫の場合はケージから出して遊んでくれるようなことはありません。あくまで短期の利用向けと考えてよいでしょう。
例えば動物病院の先生に馴染みがあり、あるいは持病があってかかりつけの動物病院の方が愛猫に負担がかからないと考えるのであれば、動物病院の預かりサービスを利用するのも手です。
できるだけいつもの環境に近づけよう。預ける時に用意するもの
動物病院に病気や怪我で入院する時と違い、ペットホテルに健康な猫を預ける場合は身ひとつでというわけにはいきません。愛猫が慣れない環境でも快適に、かつ安全に過ごすことができるよう、飼い主さんは以下のものを用意しておきましょう。
いつも食べているフードやおやつ
愛猫を預ける際は、必ず食べ慣れたフードを愛猫専用として用意しておきましょう。ペットホテル側でも用意はしてあるところがほとんどですが、慣れない環境に慣れないごはんでは愛猫のストレスがたまってしまいます。
基本的に全ての愛猫の食事は飼い主さんが事前に用意するほうがよいでしょう。
また、ペットホテル側は他に預かっている多くの猫に対応しなくてはなりません。ペットホテル側の負担を減らし、また確実に食べ慣れたかたちでごはんをあげてもらえるように、フードを持ち込む際は1食ごと小分けにしておきましょう。
ただし長期の場合は小分けにすると痛んでしまうこともあるので、ペットホテルにどうするか相談するのがおすすめです。
首輪と迷子札
愛猫を家から連れ出す以上は、しっかりと首輪と迷子札をつけておきましょう。
完全室内飼いで普段つけていないという猫の場合、慣れない環境で慣れないものをつけられると余計にストレスになる可能性があります。事前に時間をかけて慣れさせておきましょう。
その他猫が普段使っているおもちゃ、ベッドや毛布、トイレ砂
新しい環境に置かれた猫が少しでも慣れてくれるよう、愛猫のにおいがついたものを持って行くとよいでしょう。ペットホテルにもよりますが、普段使っている猫用ベッドや毛布などを持ち込んでよいところも多くあります。
また、トイレ砂についても全てではなくとも、いつも使っている砂の一部を持って行ってあげると慣れないトイレでも使ってくれやすくなります。その他、使い慣れた小さなおもちゃをいくつか持って行ってあげるのがおすすめです。
愛猫取扱説明書
もしなにか特別に愛猫に気をつけてもらいたい点があれば、口頭でペットホテル側に伝えるのではなくしっかりと紙に記しておきましょう。
- ごはんを小分けに与えないと吐いてしまうので、ごはんを1日3回あげてほしい
- 持病があり、薬を飲んでいるので食後に持参した薬をあげてほしい
- 耳の中が汚れやすいのでたまに見てあげてほしい
- アレルギーがあるので原料に魚を使ってあるフードは与えないでほしい
など、常識的な範囲であれば、また長期になるほど対応してくれるペットホテルも多くあります。事前にペットホテルにどの程度まで対応してもらえるかどうか聞いておくようにしましょう。
1年以内のワクチン接種証明書(コピー可)
まともなペットホテルであれば、必ず直近1年以内でワクチン接種してあるかどうかの証明が必要です。
3種~7種のワクチン接種を受けた時にもらった証明書、あるいは接種証明のシールが貼られたワクチン手帳などを提出できるように準備しておきましょう。コピーで問題ありません。
飼い主さんの身分証明書(運転免許証等)
生き物を預かるため、飼い主さんの身分証明書も必要となります。運転免許証や保険証など飼い主さんの名前、住所がわかるものを用意しておきましょう。
中には豹変する場合も……ペットホテルに預けない方がいい猫とは
飼い主さんにとっては便利なペットホテルですが、猫にとっては突然ペットホテルに預けられることは一大事です。猫によってはペットホテルに預けることによって体調を崩したり、問題を起こしたりする場合があります。
中には豹変する猫もいるので預けてみないとわからない部分はありますが、以下のような場合は最初から預けない方がよいでしょう。
ストレスに弱い性格の猫
臆病だったり、激しく人見知りするタイプの猫は特に預けることをやめた方がよいでしょう。ペットホテルに猫を預ける最大のデメリットがストレスです。
猫は家につく生き物ですので、突然環境が変わることは猫に多大な負担をかけてしまいます。
わかりやすく例をあげるなら、動物病院に連れてこられた時の猫、あるいは、愛猫が家に初めて来た時の様子を思い出してみるとよいでしょう。今までと全く違う環境に置かれ、不安な顔で固まってはいなかったでしょうか?
あの時の様子がペットホテルで再現されると考えてみてください。ましてやペットホテルに預けている最中は飼い主さんの姿もなく、周囲を知らない人間、知らない猫の鳴き声に囲まれて過ごします。
ペットホテルに猫を預けた後、全くいつもと変わらず普段のどおりだったという猫ももちろんいます。しかしその一方で、ストレスのあまり病気になってしまった猫、最悪は食欲を失い死んでしまった猫もいます。
また、子猫や老猫は特に環境の変化によって体調を崩すということも考えられます。いくら良質なペットホテルを探したとしても、猫にとっては環境の変化そのものがよくないことなのです。
ペットホテルに預ける前に、愛猫が環境の変化に耐えられるかどうかよく考えた方がよいでしょう。
気が強すぎる猫
警戒するあまり、見知らぬ他人には豹変し攻撃的になる猫も、ペットホテルに預けるのは控えた方がよいでしょう。
ペットホテルのケージの中で威嚇を繰り返し、入り口で待ちかまえ、スタッフさんの手が射程距離に入った瞬間猫パンチ!となってしまうと大変です。スタッフさんに怪我をさせてしまいます。
ペットホテルという場所柄、スタッフさんも様々な猫のお世話をしており、ある程度のことには慣れてはいます。
しかしあまりに度を超えていると、最悪は「お世話ができません……」とペットホテルからお断り、あるいは預けている途中で連絡が来るというケースも。猫自身のストレスにもなるので、預ける前に愛猫の性格を考えておきましょう。
普段は穏やかな性格なので安心していたのですが、ベテランの獣医さんすらお手上げになるとはいったい……。
預ける前にちょっと待って!2泊3日までは自宅でのお留守番も検討しよう
ペットホテルでは日帰りから対応してくれるところもあります。しかし、猫のストレスを考えるのであれば、日帰り~数日程度の留守であればペットホテルを利用するのではなく、家で留守番してもらう方がよいでしょう。
2泊程度の留守番であれば、水やフード、トイレをしっかりたくさん用意しておくことで猫だけでも乗り切ることができます。
確かに猫だけでお留守番していると
- 夏場エアコンが故障して猫が熱中症になった
- 自動給水(餌)器が故障して、水やフードが出てこなくなった
- 突然病気や怪我で倒れたのに、留守だったために発見が遅れた
などのリスクもあるのでケースバイケースではありますが、
- 停電や故障で家電の一切が使えなくなっても大丈夫な環境を整える
- Webカメラで室内を監視する
- 毎日は無理でも、たまに友人に見に来てもらう
など飼い主さんの工夫でなんとかできることも多くあります。ペットホテルは猫に負担をかけますから、できるだけ家で過ごすことができないか考えてからにしましょう。
隅々までチェックしよう!ペットホテルを選ぶ時の注意点
ペットホテルはピンからキリまで様々です。
優良ペットホテルでは「なんて猫のことを考えているペットホテルなんだろう!」と感動してしまうレベルですが、劣悪なところになると本当に猫のことなんてまるで考えられていないのではないかと疑いたくなることもしばしばです。
預ける前にきちんとペットホテルの内部やサービス内容を確認し、嫌な予感がしたら別のペットホテルに変えましょう。
犬と猫が分かれて過ごせるか
一般的なペットホテルでは犬と猫両方を扱っています。
そのため、猫によっては犬の鳴き声におびえてストレスとなることがあります。ペットホテルを選ぶときは猫だけの部屋があるか、また犬が吠えても聞こえない環境になっているかということもチェックしておきましょう。
あるいは、最初から猫専門のペットホテルを選ぶという手もあります。
常にスタッフがいるかどうか
ペットホテルに預けるメリットのひとつが、飼い主さんが留守中に猫が倒れても発見してくれる人がいるということです。
しかし、24時間体制でスタッフさんが常駐しているペットホテルがある一方で、夜は人がいなくなってしまうペットホテルも存在します。預ける以上は万一のことがないよう、できる限りいつでも人がいるペットホテルを選ぶのがよいでしょう。
また、もしも病気の猫など容態が急変する可能性のある猫を預ける場合は、動物介護士の資格を持ったスタッフ、あるいはより経験豊かなスタッフがついているかどうかも確認しておくべきです。
ワクチン接種、ノミ・ダニ対策が必須になっているかどうか
ほとんどのペットホテルでは預ける前にワクチン接種証明書の提出が必要です。しかしノミやダニ、あるいは他の病気に関してはチェックがないことがあります。
ペットホテルには当然、他の猫もたくさんいます。万が一他の猫に接触して病気やノミ、ダニなどを移されないよう、ワクチン接種やノミ・ダニ対策をしっかりしてから預けましょう。
また、ペットホテルの中には長期滞在の場合など、広い部屋の中で他の猫と一緒に遊ぶ時間を設けているところもあります。もちろん他の猫もワクチン接種証明があるはずですが、他の病気を持っていないとは限りません。
飼い主さん自身が気づいていない病気が潜んでいるかもしれません。リスクをできる限り減らしたいのであれば、そもそもペットホテルに預けることをやめるか、他の猫と接触することがないペットホテルに預けるようにしましょう。
見学できるかどうか
大切な愛猫を預ける以上、どんな環境に置かれるのかは飼い主さんであれば知っておきたいですよね。よいペットホテルの基準として、ペットホテルの中を見学させてくれるところを選びましょう。
衛生面の問題で直接足を踏み入れることができないという場合もありますが、代わりに写真やカメラなどで内部を見せてくれることもあります。雰囲気や掃除の具合、あるいは脱走対策がきちんとなされているかなど確認しておくと安心です。
猫同士の姿が見えないか
猫にとって、他の見知らぬ猫の姿はストレスになります。ペットホテルの中を事前に確認し、猫のケージが向き合っていてお互いに相手が見えてしまうような状態になっていていないか確認しましょう。
優良なペットホテルでは、他の猫の姿が一切見えないようにきちんと気配りされているはずです。
猫に配慮した作りになっているか
犬と猫両方を扱っているペットホテルであっても、どちらかというと設備が犬向けになっている場合があります。猫を預ける部屋をよく確認し、猫に合った作りになっているか事前に確認しておきましょう。
例えば、広いスペースを駆け回る犬と違って、猫は上下運動ができる部屋の方が合っています。キャットタワーやキャットウォークなど、猫が登れるところがあることがポイントです。
カメラによる監視など、愛猫の様子お知らせサービスがあるか
ペットホテルに長期間預ける場合は、Webカメラのサービスがあるところを選ぶとよいでしょう。スマホのアプリと連動して、飼い主さんがいつでも愛猫の様子を確認することができます。外出先でも安心です。
繁忙期には注意
飼い主さんが長期の旅行や帰省をしやすい、GWやお盆、年末年始といった時期はペットホテルにとって繁忙期です。
繁忙期は予約が取りにくいというだけでなく、預ける料金自体が高くなったり、普段よりも提供されるケージが小さくなったりするペットホテルもあります。
また忙しさのあまり、普段よりケアが行き届かない部分が出てくる可能性もあります。お世話の難しい猫を預ける場合はよく検討してからにしましょう。
長期になればなるほど広いところを選んでおこう
ペットホテルに預ける期間が長いほど、できるだけ広いスペースで過ごせるプランを選びましょう。
多くのペットホテルでは、猫は基本的にケージに入って過ごします。しかし、普通は安いプランであればあるほどケージは小さくなってしまいます。
小さいケージの中での生活は、わかりやすくたとえるならばペットショップに並ぶ猫たちのような環境です。料金はかさんでしまいますが、できるだけ広いスペースを用意してあげる方が猫の負担が少なくなります。
猫のストレスを考え、猫のことを考え抜かれたペットホテルを探そう!
どんなに猫のことを考えているペットホテルを選んだとしても、ペットホテルに預けるという行為そのものが、猫にとって大変なストレスになります。
しかし、無理に長期間自宅で留守番させることもまた、猫にとって突然の事故や病気のリスクが伴います。
飼い主さんはできるだけ家族や友人、あるいはペットシッターに猫の世話を頼めるようにしておき、どうしてもやむを得ない場合のみペットホテルを利用する方がよいでしょう。
ペットホテルによって預けている間の方針は様々です。できるだけいろいろなホテルを実際に見て回り、最も愛猫が安全に、リラックスできそうなところを見つけましょう。